どうにか凰と距離を取り……息を整えるカイジ……!
「(二段階目……奴が次に龍咆を使用する……その瞬間を見極める……!)」
「(っち、このまま攻めてれば勝てるけど、疲れるわね)さて、もうあんたのペースでは戦わせな……」
凰が喋っている途中……急に鳴り響く爆音……アリーナの一角に……爆炎が発生する……!
カイジの目にはかろうじて……ビームの残光が見えただけであった……!
「なんだ……?」
「なによ……?」
呆然……呆気に取られ……互いに動きを止め……見やる、爆炎と黒煙の上がる一角を……!
『いっくんの活躍を邪魔するイレギュラー、消えてもらうよ!』(ラボ内での束の独り言『』)
転瞬……刹那……カイジ直感、察知する……切迫した死神の大鎌を……!
「……!!」
紙一重……避ける……カイジ……!黒煙の中から……
不意打ち……突如として飛来したビームを……!
『あぁん!?なんで避けれるんだよ!人間の反応できるタイミングじゃないのに!束さんやちーちゃんならいざ知らず!こんな有象無象の虫けらがぁ!』
「……また、会ったじゃねぇか。死にそうってわけ?俺……」
虚空を見つめながら……一人つぶやくカイジ……傍から見れば当然異常者……!
『なんだ、あいつ?わたしのゴーレムを無視して何喋ってんだよ!蒸発させんぞゴルァ!』
「試合中止!伊藤、凰!直ちに退避しろ!」
珍しく……焦燥感を伴った声で通信……千冬……退避命令……!
アリーナのシールドを破るほどの威力がある兵器……それを持った所属不明のIS……!
到底楽観視していられる状況ではない……!
「カイジ、試合は中止よ!すぐピットに戻って!」
「(間違いなく、狙ってやがる……俺の事……!目当ては俺……どっかの研究機関……いや、アリーナのシールドを突き破る威力だ……初めの不意打ちからして……明らかに殺しにかかってる……)鳳、逃げろ……!狙いは、俺……!食うことはない、巻き添え……!」
「はぁ?あんた、何言ってんのよ。自分を狙ってるなんて、なんでわかんのよ!」
「見てなかったのかよ……明らかに最初の一撃……狙ってきた、俺の事……それと直感……感じる……!」
「直感って、あんたねぇ!」
「ともかく……!俺が逃げたら追ってくる、確実に……そうすれば拡大……被害……!」
敵は規格外の兵器を所有している……そんな相手と追いかけっこをすれば……
学園内にどのような被害を齎すか……想像に難くない……!
「……私も戦うわよ!こちとら代表候補生、素人おいて逃げ出せるわけないでしょ!」
「伊藤君、凰さん!何を言ってるんですか!?教員の制圧部隊が向かいますから、早く避難してください!
「ほら、先生もこう言って」
そう言いながら……不明機より目を離した瞬間……襲い来る射撃……!
「……危ねぇ……!」
「きゃあっ!」
凰をも巻き込む位置へ飛んでくる……ビーム……!咄嗟に押しのけて回避……!
『っち、あいつも箒ちゃんの邪魔するから同時に始末しようかと思ったのに!まずはイレギュラーからやるしかないか……!』
「今のに反応出来ないなら指示に従え……!邪魔だ……!」
「っな……!(なんで、こいつは死角からも、会話中も、避けれるのよ!)」
「代表候補とか素人とか……死を前にして……無意味……!それに、俺のせいにするな……俺が残るから残るとか……はっきり言って迷惑……!命を賭けるのに、人の事を持ち出すな……!自分だ、自分なんだよ……」
自分が残ったから……石田さんや佐原は……いや、今考えることじゃねぇ……!
今は目の前……現実……迫る脅威の対処が先……!
「悪いが山田先生……それは聞けない相談だ……!アリーナの物理防壁すら熔解しかねない……逃げたら、大惨事……!」
「そ、それは……ですが、だからといって伊藤君を危険に晒す理由には!伊藤君!?通信が……!」
暖簾に腕押し……糠に釘……価値観の違い……ISの操縦者である真耶は……
今まで守られていた……その堅牢な防護に……怪我すら稀……死を意識などしない……
だが、身一つ……命を危機に晒してきた、カイジは……人の死は現実……
仮には死ねない……取返しが付かないことを……身を持って理解……!
故に、どうしても差……迫る脅威に……死を明確に……リアルとして認識できるかどうかで……
最早返事は待たず……通信を切るカイジ……!
そして、凰から距離を離すように……所属不明機へと近づいていく……!
『生意気にも逃げ回らずに突っ込んでくるとか!手間かからなくていいけどさぁ……狂ってんじゃないの、こいつ』
……世界の誰しもが思うだろう……ブーメラン……お前には言われたくない……!
「(しかし、今まで避けたのも運……俺の実力じゃねぇ。一度でも直感が働かなければ、間違いなく死……死ぬ……消える……跡形もなく……!問題は俺に残された武装……ライフルやグレネードで落とせるほど……やわじゃねぇ……あれだけの高出力の兵器を運用できるなら……SEも確実に膨大……ちまちま削ってたら、先に焼き殺される……!一応積んであるパイルバンカー……これならいけるだろうが……距離をどう詰めるか……!こんな所に単機……たった一人で送り込まれる……いわば精鋭……代表候補生も目じゃない……!狙いは正確……近づけば近づくほど……回避も厳しくなる……!)近づいちまったが、とりあえず距離を離して……様子見……!」
『っち、急に慎重になりやがった……!時間稼ぎのつもりか?こっちも制御プログラムを対応させての戦闘だから、やりにくいったら!』
未だ呆然とする凰を巻き込まないよう……不明機を観察する、カイジ……!
安全な距離を保ち、勘に頼らずビームを避ける……!
『っち、安全な距離を分かってやがる。あんまり時間を稼がれると、有象無象はいいとして、ちーちゃんが来たら終わりだ。できれば、こいつらを蒸発させてから、いっくんがヒーローのように登場!撃退!が理想なんだけど……とりあえず近距離戦闘モードONっと。さぁさぁ、さっさと蒸発しちまいな!』
束の操作により……不明機は急に動きを替える……!
「っげ、動いてきやがった……!そりゃ、直立不動ってわけねーよな……!」
突如、これまでのスタイルを替え……近接……殴り……殴打……!
「高出力の近接兵装は……持ってないのか……しかし、鳳の近接のほうが捌くのがきつい……?せっかく詰めた距離を離して、また近づいて……だが、正直このまま避け続けるのも厳しいな……時間を稼げば教員部隊が……とも考えていたが……」
しかし違和感……遠距離戦時の狙いの正確さの割に……近接戦闘は不得手か……?
とはいえ、俺にパイルバンカーを……撃たせるほどの間抜けではない……!
何か、相手の認識……それを根本から誤魔化すような……そんな手が、必要……!
「なら……遠距離戦で……落とさせるか……!」
『むぅ~、なんだかつかみどころがないなぁ!近距離戦受けてるかと思えば急にまた距離取る方を選択しやがって、どうみても遠距離じゃ勝機ねーだろうが!近距離でもないけどね!』
奴に、俺の死……撃墜したことを……認識させる……!
「(奴の狙撃と斜めに……交差……!)この軌道なら俺が死ぬ……か。いいぜ、撃って来いよ……!」
『次は近づいてきた?馬鹿め!今度こそ、この距離なら外さないよ!』
カイジ、決死……覚悟を決めて……自らの策へ……命を賭ける……!
果たして……カイジ……!