オリジナル設定、オリジナルキャラ、物語中盤から擬人化等、それらが苦手な方はブラウザバックを推奨します。
それでも良いという方は、お付き合いください。
※火の試練 キャプテン テンの挿絵を追加しました。衣装が替わっているのは描きたかっただけです(´・ω・`)
「アローラ! 火の試練にようこそ!」
童貞を殺すセーターのお姉さんが現れた。若い男性にとっては色々と目のやりどころに困る人だ。
「テンさんってば、またそんな格好で……」
ウスユキが頭を抱える。偶々用事が合って、ヒトミの火の試練についてきてくれたのだが。
「あら、いいじゃない。ダンスっていうのは、情熱的なものよ」
「とても情熱的だと思います」
ヒトミはあくまで具体的には言葉にしないが、サムズアップをしている。
「……サイテー」
立っているだけで汗が流れる程日差しが強い。火山と呼ばれるだけあり、異常な熱気を感じている。
「ガジュからも聞いてるわ。凄腕のトレーナーだって……体が火照っちゃいそう」
「火傷で済まないかもしれませんよ」
ヒトミのヨワシはかなり強くなっている。元々のステータスもよく、タイプ相性さえ悪くなければ、十二分に闘えるはずだ。
「楽しみね♪ さぁ、始めましょうか」
踊り台に扮したバトルフィールドのど真ん中に立つのは、主ポケモン。
「……ローブシン?」
異様なまでに膨れ上がった、二本の腕、それに伴い鍛え上げられた肉体は、一切の無駄のない筋肉に覆われている。両手には、地面に突き立てるように、骨を持っている。
「持ち物は当然、ふと~い骨よ♪」
ひたすら攻撃に特化した、ガラガラ・リージョンフォルムだ。
「いくぞヨワシ! お前の力を見せてやれ!」
モンスターボールから、小さな魚が現れる。だが、闘いの時には群れた姿になり、巨大な力を発揮し、時にはサメハダーさえ逃げ出すほどの海のポケモンなのだ!
ピチッ、ピチッ
勿論、水が無いところでは泳ぐ事は出来ないぞ!
ピチッ……ピチッ
闘うために、その力の全てを振り絞り、立ちあがろうとする。その姿は、真面目で勤勉なヨワシの姿そのものだった。
「……ヨワシ」
ピチッ……
「ヨワシーーーーーーー!」
「と言う事がありましてですね」
「分かるわ」
久しぶりに戻ってきたコニコシティの食堂で、ヒトミはライチと向かい合って座る。
「色違いが出てテンション上がってたんです、嫌な予感はしてたんですけど、ヨワシが頑張っているの見てると、もしかしたらって思って」
あのあと、ヨワシはポケセンスタッフに治療してもらいました。
「炎タイプには水ポケモンが有利、それは勿論あるけど、あそこで動き回れる水ポケモンって中々いないのよねぇ」
ライチの話によると過去の試練突破者は地面タイプを駆使して乗り越えている事が多いらしい。
「それで、ライチさんに相談って何かしら?」
「まぁ、ヨワシは別のところで頑張ってもらうとして、ラランテスも相性が良くないですし、正直あのガラガラに勝てる気がしないんですよね」
「でも、諦める気はないんでしょ?」
「勿論、手持ちを増やそうかと思ったんですが、育てる時間も含めると長くなりそうだし、選択肢は増やしておきたいと思いまして」
そこで、ライチが少し考え込む。
「そうねぇ、別に他の島の試練を先にする、っていうのは悪くないかもしれないわね」
最初の島の大試練を突破してから、他の島に送り出すのが、基本的な島めぐりとなる。そのため、ヒトミ自身もこの話をするまでに時間がかかってしまった。あまり例を見ない事案だが、試練に立ち向かうにあたり、意欲的な案であれば島クイーンとしても受け入れてくれるだろう。
「余計な事かもしれないけれど、他の島の試練も同様に厳しいわ。他の試練なら、という考えなら辞めておきなさい」
「承知してます。負けっぱなしは嫌ですから」
「ただ……いくならメレメレ島にしなさい。ハラさんなら事情も聞いてくれるでしょうし」
「やっぱり、受け入れにくいものですかね」
ライチは少し苦い顔をする。
「他の島キングだと……ちょっとね。ウラウラ島もそうだけど、ポニ島の島キングは特に厳格な方だから」
他の島で試練を突破できないから、という理由で来たトレーナーを歓迎する、ということは有り得ないだろう。ライチにその辺も弁えて行動していくべきだと、厳しく注意される。
「ただまぁ、今の試練の状況も考えると、脱落者ばかりになるよりか、良いかもしれないわね。私は応援するわ」
「ありがとうございます!」
そうしてヒトミは、メレメレ島に出立する準備を整えていった。
「なによぉ、お姉さんを置いていっちゃうなんて、このひとでなしぃ」
「ちゃんと戻ってきますって、テンさん。絶対、リベンジしにきますから」
「がっはっは、まぁお主なら他の試練もやり遂げるだろう! ワシも強くなって、戻ってきたら再戦といこうぞ!」
「はい、ガジュマルさんもお元気で」
「いい、メレメレ島についたら一番にハラさんに挨拶するのよ。それから、守り神様にも失礼の無い様にして、カプ・テテフ様よりずっと好戦的な方なんだから、雷落とされるんだからね」
カプ・コケコの雷であれば、人間であればひとたまりもない。世の中には十万ボルトを受けて平気なマサラ人がいるらしいが、それはアニメだけの話だろう。
「ウスユキちゃんってば、心配性ね。そんなにヒトミ君がこの島を離れるのが嫌なの? だったらついていけばいいのに」
「そ、そんなんじゃないわよ! 大体私はキャプテンだから、離れる訳にはいかないし!」
「そんなに心配しなくっても、ちゃんと戻ってきますよ」
ヒトミは心配性なウスユキに、ハグをする。
「強くなって、帰ってきます。今までありがとうございました」
「……うん」
名残惜しむかのように、船に乗り込む。ヒトミはライチと一緒に、メレメレ島に向かう。
「ごめんね、ヒトミ君。ウスユキは心配性だから」
「分かってますよ、あの人がそうなのも今に始まった事じゃないですし」
アーカラ島は広くて狭い島だ。色々な人とポケモンが寄りそいあって生きていて、海もジャングルも山もあって大自然に囲まれてとても良い環境といえる。
「……ガジュマルもテンも、キャプテンが終わったら島を出ていくからね」
トレーナーとして大成を目指すのであれば、逆にアローラ地方は狭いくらいかもしれない。世界はまだまだ広がっていて、カントーもジョウトもカロスもイッシュも、まだ見ぬポケモンやトレーナー達との出会いを求めて飛び出すのは無理の無い話だ。
「試練に負ければ脱落して、無事に達成しても島を離れていく……ウスユキさんも複雑でしょうね」
キャプテンという立派な立場を得たとしても、彼女は残されていくという不安が募っているのだろう。寂しがりで陽気に振舞う彼女に、寄り添ってきたキャプテンがその地を去るのは、耐えられないのかもしれない。
「ガジュマルもテンも自由奔放だから、やりたいことがあったらすぐに飛び出しちゃう様な子なのよ。ウスユキも気配りが上手だから、周りにすぐ気にいられるし、すぐ仲良くなるんだけど」
キャプテンという立場が、彼女をアーカラ島に閉じ込めてしまっているのかもしれないとライチは言う。
「別に、メレメレ島に行ったからと言って帰って来てはいけないってことはないのよ? きっと、皆喜ぶわ」
ライチも複雑な気持ちなのだろう。残って欲しいという気持ちはある、でも試練や風習が足かせになることもある。
「そうっすね、お金が無くなったら、飯食いに帰ってきます」
ヒトミが軽く喋るとライチは笑い出す。しんみりとした雰囲気がどこかにいってしまった。
「また皿洗いから始めないといけないわね」
読了ありがとうございました。ここから先はポケモンのデータになりますので、興味のない方は飛ばしていただいて問題ないです。
ヴェラ火山 火の試練 主
ガラガラ
ほねずきポケモン
アローラ図鑑No.164
特性:いしあたま
持ち物:太い骨
火山ではガラガラがいるためか、踊りについては伝統、ということにしてあります。カキもテンさんに手とり足とりナニとり教えて頂いたという設定です(ゲス顔