オリジナル設定、オリジナルキャラ、物語中盤から擬人化等、苦手な方はブラウザバックを推奨します。
それでも良いという方は、お付き合いください。
「何から何までありがとうございます、寝場所と食事まで。体が動かなくてすみません」
ヒトミは何とか上半身を起こし、ベッドの上でスープを口に運ぶ。ラランテスは縁側に寝転がり、日光浴をして休憩している。
「試練の後は皆そんなものさ、それよりキャプテンに勝ったんだって? 凄い実力だな、君は」
ヒトミがせせらぎの丘の近くの民家に預けられ、1日が経つ。ようやく食欲が出て来て、体力もそこそこ戻り、なんとか動けるようになった状態だ。
「……」
部屋の外から覗きこむ瞳が見える、まだ幼いその瞳は興味と恐れが半々という様子だ。
「スイレン、入って挨拶しなさい」
「あ、あろーら……」
スイレンと呼ばれた幼女が控えめに挨拶をして、お父さんの横に立つ。袖を掴むあたり、まだまだ父親離れは出来ていなさそうだ。
「アローラ、スイレンちゃんよろしくね」
ひゅっ、と父親の後ろに隠れてしまった。
「すみませんね、人みしりなもので……」
「ははは、まぁ急に知らない人に会ったらこんなものですよ」
まだ体の重さと疲労感は抜けきらないが、あまりお世話になり続けるのも迷惑だ、と告げ、旅に戻る準備をしようとするヒトミ。だが、スイレンの父親に引き留められる。
「そうだ、ヒトミ君は釣りに興味はあるかな?」
「え、まぁ……興味はあります」
これから火の試練に向けて、水ポケモンをゲットしておきたいとはすでに話している。ギャラドスやヒンバスが釣れると聞いて、ヒトミも釣りに興味をもっていたのだ。
「釣り……する?」
スイレンちゃんがきらきらした目でヒトミを見ている。釣りという単語に反応しており、釣りが好きだということが一目でわかる。
「はっはっは、折角だし、一度してみませんか? スイレンも行きたがってるようですので」
「ええ、是非」
この後、めちゃくちゃ釣りの仕方を教えてもらった。
「ヒトミさん、調子はどうですか?」
ヒトミの釣果は三日間、丸坊主です。
「なんでかなぁ、素質がないのかなぁ」
スイレンのお父さんに教えてもらい、一通り出来るようになったのだが、一向につれる気配がない。ヒトミの横でスイレンちゃんも釣りをするのだが、釣れない日はない位上手い。
「素質は……ないと思います」
「……辛辣ぅ」
ヒトミは気は長い方が、それが逆に釣りに向いていないようだ。餌に食いついても反応が遅くて、逃げられたりする事もしばしばなのである。
「でも、続けていれば、チャンスはきます。諦めなければ、きっと良い出会いがある……父がよく言っています」
成程、良い言葉だとヒトミは呟く。釣り糸垂らしてるだけでだとしても、気の長いヒトミには性が合っているのか、飽きる様子はない。ラランテスも日向ぼっこして、楽しそうだ。
「……引いてますよ?」
「うおっ」
スイレンちゃんに言われるまで気付かなかった。急いで引き上げ、釣り上げる。手ごたえは小さく、大きい魚ではなかった。それでも、それは滅多にないチャンスだった。
「金色の……ヨワシ?」
「色違いだ!!」
桟橋の上で、少し岩が盛り上がっているスポットに釣り糸を垂らす。こういうコケやプランクトンが増えやすい所に、魚は集まりやすいのだろう。魚ポケモンの影がちらほら見える。
「ヒトミさん、順調ですか?」
「うん、順調だよ」
そういうと横にスイレンちゃんが座る。
「……一匹も釣れてなさそうですが」
「逆に考えるんだ、釣らなくっても良いさ、ってね」
「……?」
ヨワシを捕まえてから、とりあえずHC振りでレベル上げをしようと考えたヒトミは、コダック、ママンボウ、ヨワシをひたすら釣ったり水上をラプラスで移動してみたり、草むらを歩きまわったりしていたが、ヨワシが群れを作れるようになって、充分ヨワシでレベリング出来るようになってからは、やり方を変えた。
「餌に近づいてきたママンボウがヨワシに襲われてる」
ゲームではないので別に釣りあげなくても水中に待機させたヨワシがバトル出来さえすれば良い。群れた姿は攻撃力も高いので、ヒトミの釣りの腕も考慮すると効率ははるかに良くなった。
「面白い事を、考えますね」
ふふっと、スイレンちゃんが微笑む。まるで天使のように純粋無垢な笑顔だ。
「あっ、そういえば、赤いギャラドスって知ってる?」
ゲームの中では、スイレンは赤いギャラドスを釣り上げたというセリフがあった。ヒトミは何か話すことはないか、と考え込んでいたところ興味本位で尋ねてみたようだ。
「赤い……ギャラドス?」
スイレンの反応を見る限り聞いた事なさそうだ。
「そうそう、俺のヨワシみたいに、普通とちょっと違う色のギャラドスが……」
「詳しく教えて下さい!」
ヒトミは金色のコイキングとか、赤いギャラドスとか、遠い地方の伝説のカイオーガの話をスイレンにしていると、日が暮れてきた。
「よし、今日はこんなところかな」
ヨワシの群れも解散し、ヒトミに近寄ってくる。手を水で冷やしてから、頭を撫でる。
「♪」
このヨワシは素直な性格で、捕まえた当初からヒトミの命令に従っていた。育てるに連れ、懐くのも早いが、種族的に晩成型なのでレベル上げには時間がかかってしまう。次の試練に向かうにはあと一週間はかかりそうだ。
「あの、ヨワシにポケ豆をあげても良いですか?」
「ん、いいよ」
ヒトミが持ってきていた普通の青いポケ豆をスイレンに渡す。小さめに砕いて水面にばら撒くと、美味しそうにヨワシが食べ始める。
「……ヒトミさんは、変な人ですね」
「傷つくわぁ」
ヒトミにも自覚は少なからずあったのだろう。別世界から来た、と言う事もあって色々な意味でアローラ地方の人たちと違う事なのだから。
「なんというか、他の島めぐりの人とは違う感じがします」
その言葉に、ヒトミは戸惑う。温暖な地域で、島の人たちも優しい人が多い。全く問題が無いと言えば嘘になるだろうが、島の守り神がいる事も含めて、平和な世界だと思う。
「まぁ皆、島めぐりに関しては急ぎ足な気がするよ」
ヒトミは15歳と告げているので、後五年間ある。キャプテンになるのをあきらめさえすれば、育成に時間をかけることも十分に可能だろう。
「この島では、島めぐりを終えて一人前と認められます」
「でも、必ず全ての試練をクリアしないといけないわけじゃないんだろう?」
余程協力なポケモンを持っていたり、トレーナースキルが高ければ、カキやスイレンやマオのように早くにキャプテンになることもできるのだろう。だが、ヒトミにあるのは、ポケモンについての知識とこの先のアローラで起こるであろう事を少しだけ知ってるだけだ。
「私も、早く島めぐりをしたいです。一人前になって、ガジュマルさんのキャプテンを引き継いでいきたいですし……」
確かに、キャプテンは皆の憧れである。主ポケモンを育てる事が出来るし、何より育成環境が他と段違いの境遇になる。ガジュマルのヨワシや、ウスユキのラランテスも、その環境では有り得ない程の強さを持っていた。
「まぁ、スカル団みたいなのもいるしなぁ」
苦虫をかみつぶしたような表情でヒトミが呟く。島めぐりをこなせず、悪行にはしる集団。周囲からも白い目で見られ、迫害される。ゲームでは愛嬌のある感じのキャラだったが、まぁ実際には様々だ。名乗ってるだけみたいなのもいれば、積極的に迷惑をかける奴もいる。この時代はゲームのころほど、規模が大きくはなくまだ認知度はそれほどないけれど。
「……ヒトミさんは、島めぐりが出来なかった時が、怖くないんですか?」
読了ありがとうございました。ここから先はポケモンのデータになりますので、興味のない方は飛ばしていただいて問題ないです。
ヒトミの手持ちポケモン
ラランテス
ヨワシ←NEW!
特性:魚群
Lv:16
色違い
二匹目の枠をどうしようかと迷っていましたが、シナリオを考えている途中で夢特性ヒドイデを探していたら、色違いと運命的に出会ってしまったので登場させました。
ラランテスと一緒に壁張りトリルで暴れてもらってます、ウイの実持たせると結構固いです。