カマキリの擬態とは根本的に違うということで、変幻自在は無理かなぁと思いつつ、そんな感じのことしてる準伝説ポケモンでとるやんけと思いつき、タイプ:フルさんに魔改造計画が頭に浮かび上がったので初投稿です(最早ラランテス関係ないなこれ
オリジナル設定、オリジナルキャラ、擬人化等苦手な方はブラウザバック推奨です。
それでもと良いという方は、お付き合いください。
メレメレ島の船着場に着き、久々にアローラの地に足をつける。強すぎる日差しに少しくらみ、その光景を目に焼き付ける。
「さて、挨拶ぐらいはしとくか」
少し歩いて、ククイの研究所の扉を叩く。
「あぁ、ヒトミか、よく来てくれた。今大変なんだ、手伝って欲しい事がある」
「チャンピオンが居なくなったんだろ? グラジオに聞いたさ。それより、そいつが持ってたポケモン図鑑を見せて貰っても良いか?」
「構わないが、何かそれが重要なのか?」
「ちょっと確認しておきたくて、な」
ロトム図鑑を手に取り、ポケモンについて検索をかける。見事、全ての欄が埋まり、図鑑が完成していた。
「流石だな、やっぱり全部埋まってる」
「あぁ、確かに凄いよ。俺も全部埋めてくれるとは思わなかったよ。でも、それが何か関係があるのか?」
ゆっくりと図鑑を元の場所に戻すと、ヒトミは首を横にふる。
「いや、確認したかっただけさ。さぁ、折角来たんだし、ハラ様にも挨拶しとくか」
「久しぶりですな! 元気にしておりましたかな!?」
ハラの全力のハグに背骨が折れそうになる。
「痛い! 痛いっす! はぁ、ちょっとバタバタしてましたけど、この通り、ちょっとはまともになったつもりです」
にっこりと笑顔で返すと、ハラも笑顔になる。
「それは、何よりですな! 今は少し慌ただしいですが、落ち着いたら、他の地方の話でも聞きたいですな、それに、アローラが変わった事についての話もですな!」
「それは楽しみですね、是非行かせて貰いますよ」
ヒトミが次の島に向かおうとすると、人影が道を塞ぐ。
「おうおう、破壊が人の形をした様なグズマさんの登場だぜ」
「お久しぶりです、グズマさん。元気、ってのはちょっと違いそうですね」
鼻を鳴らし、グズマは腹立たしい様子をする。
「そりゃあ、ヨウのガキにあれだけ盛大に負けりゃあな。スカル団も解散だ、俺も一から鍛え直しだよ」
雰囲気が変わったグズマに、少し戸惑ったヒトミ。
「それで、そんなもん着てどこ行くつもりなんだ?」
そんなもの、というのはシャツの下に隠したスカル団のタンクトップの事だろう。
「いやぁ、懐かしいから着たかったんですよね。ここに居た時はずっと、これを着てたから」
グズマが、押し黙る。沈黙の後に、口を開く。
「お前は、何も言わないのか?」
本当に、これだから勘のいい人は苦手だ、とヒトミは呟く。グズマは確証も何も無いはずなのに、そんなことを言われてしまえば動揺してしまう。
「言いませんよ。墓の下まで持ってかなきゃならない事もありますしね。まぁ、墓があればいいんですが」
「縁起でもねぇことを言うんだな」
「縁起の良い事なんて、こっちに着てから言った覚えはないっすね」
「はっ、まぁ俺は止めないさ。そいつを着てたとしても、もうお前は俺の部下じゃねぇ。だがな」
「寂しいこと言わないでくださいよ」
「プルメリとグラジオには会ってから行け、じゃあな」
そう言って、二人は擦れ違う。これからの事を何も話してはいない、それでも二人は自分の信じた道を行くのだ。
ヒトミがアーカラ島につくとアーカラ島現キャプテンが勢揃いで迎えてくれた。
「ヒトミさん! ククイ博士からこっちに来るって聞いて……」
「マオ、スイレン、カキ、久しぶりだな。大きくなったな、ちゃんとキャプテンやってるか?」
スイレンが溜息をつく。
「ヒトミさんに言われたくないです。ヒトミさんこそ、釣りは上手くなったんですか?」
「ああ、全く釣れないままだぜ!」
「それ、自慢出来ないからね!?」
マオが突っ込みを入れる。
「仕方ないですね、また釣りの仕方、教えてあげますよ」
スイレンがふふふと笑う。
「ヒトミさんは、変わらないな。まるで、テンさんがいた時と変わらない」
「そう言うカキは、逞ましくなったじゃないか。強くなったからって、島巡りの挑戦者を苛めてないだろうな」
「まさか、テンさんの頃と比べたらもっと訓練しないとと思いますね」
「おっ、言ったな? テンさんのガラガラ、また強くなったらしいぜ。今度挑戦してみろよ」
そう言うと、カキの顔色が変わる。
この面子の中では、唯一テンがいた時期に島巡りしたキャプテンだ。勿論、結局負けたままで、なんとかクリスタルは貰うことになったのだが。カキにとってはトラウマになっている。
「嘘でしょう、まだ強くなるんですか?」
「そうビビるなよ。お前だってあと三年もすれば同じ立場になるんだぜ?」
島巡りを終えていないヒトミが言う言葉ではないのだが、それでも気易く受け入れてくれる。
「それじゃ、ライチさんに挨拶してくるわ。じゃあ、元気でな」
若いキャプテン達に後ろ髪を引かれながら、ヒトミはコニコシティへと足を運ぶ。
ライチさんの家の前に立つと、ノックする手が止まる。今更どのツラ下げて会えば良いのだろうか、そんな事が頭をよぎっているのだろうか。
「ノックしたって、ダイノーズしかいないよ。さっさと入りなよ」
「ら、ライチさん」
どうやらライチが丁度戻ってきた時に来てしまったらしい。
「まぁ、とりあえずは元気な顔を見せに来た事は褒めてあげる」
「ライチさんこそ、お変わりない様子で」
部屋を見渡すと、ザ・独身という雰囲気がして居た堪れない空気になる。
「今、失礼な事考えなかったかい?」
「いえいえ、まさかそんな!」
考えていた事が顔に出ていた様だ、慌ててヒトミは否定するがライチも不満そうな顔は戻らない
「ったく、近頃の男どもは根性が無くて情けないね。ちょっと押しただけで、すぐ腰が引けるんだから」
「ライチさん……」
仮にも島クイーンだ、忙しさや立場も合わさって釣り合う男性も少ないのだろう。
「まぁ、その話は良いんだ。良くないけど、あんたに話しても仕方ないしね」
「ええ、本当に仕方ないですね」
ライチは更に不機嫌になる。
「なんだい、ちょっとは紹介するとか気の利いたこと言えないのかい?」
そういうところが面倒臭いって思われるんじゃないっすかね、というとライチの拳骨が下りてきた。
「それで、何しに来たのか、話しても良いんじゃないかい? このタイミングでわざわざ、会った事もない奴を探しに来る様な奴じゃないだろ?」
ヒトミは首を横にふる。
「会って無くても、よく知ってますよ。要領悪いくせに、諦めが悪くて、馬鹿正直な奴です」
「あぁ、鈍臭いとこまであんたにそっくりだったよ。ポケモンの腕と釣りの腕は段違いだったけどね」
いつまでも上達しない釣りの腕は、ヒトミは半ばあきらめかけている。
「それじゃ、何処にいるか、知ってるんだ?」
「まぁ、多分そこだろうな、ってくらいには」
「教える気は?」
「ないですね、こればっかりは譲れないっす」
ライチの表情が険しくなる。
「目の前にいるのは島クイーンだよ。なんなら、船を止めて、あんたを閉じ込めるくらい、訳ないんだ」
「それでも、です。ルールを破ってでも、行かなきゃならない。その為に、ここに来たんですから」
ライチが歯をくいしばる。
「今日ほど、自分が情けないと思う日はないよ。なんで、あんた一人で行くのさ? 力が必要なら、皆貸すよ。なんだったら、島全体で協力したっていい!」
そして、ライチは俯く。
「だから私に、隠し事なんか……するなよ」
「すみません、結局ライチさんに貰ったもの、何も返せなくて。でも、今俺が立ち上がれるのは、ライチさんのおかげなんです」
ヒトミは、いつも手放さなかった島巡りの証を改めて握りしめる。
「なんで……まだ持ってるのさ。馬鹿じゃないのかい?」
「知ってるでしょ、馬鹿なんです。だから、こいつがないと、踏み出す勇気も持てないんすよ。こいつがあれば、諦めずにここに来れたんです」
「……必ず、帰ってくるんだよ」
何も言えずに、家を出る。ここから見える景色を、目に焼き付けるかのように、立ち止まる。
「随分、義理難いんだな、ヒトミは」
「グラジオこそ、わざわざ来るなんて気を利かせるじゃないか。来なくても行くのにさ」
立ち止まっていたヒトミにグラジオが声をかけた。少し俯き、口を開くまで時間がかかった。
「あそこに行けば、お前は後悔するんだろう?」
エーテルパラダイスを指差し、グラジオが話す。
「まぁ、な。大変だったろ? 辛かったろ? そんな時に側にいられなかったからな、原因を作ったのは俺なのにさ」
ヒトミがコスモッグを見つけなければ、ウルトラホールについて助言しなければ、何かが変わったかもしれない。変わる事が恐れて、アローラから離れたといっても間違いではない。ハンサムやリラと対策をすることで、ヒトミは少しでも罪悪感を減らしたかったのかもしれない。
「ふん、ヒトミがいてもいなくても何も変わらないさ。俺も、もう強くなった。ヒトミがいたから、あいつらと一緒に強くなれたんだ」
「なぁ、進化した姿、見せてくれよ」
「勿論だ」
グラジオがボールに手を伸ばす、そして投げられたボールからは、仮面を破ったシルヴァディが現れた。
「すっげぇな、カッコいいじゃないか」
グラジオが自慢げにすると、ヒトミにシルヴァディが近づいてきた。
「覚えてるんだ、ヒトミの事」
「ははっ、可愛い奴め」
頭を撫でると、気持ち良さそうに鳴く。本当に強くなったんだと、ヒトミは呟く。ボロボロだった二年前から、絆を繋ぐまで簡単で無かったであろうことは、想像に難くない。
「さて、良いもん見せて貰ったし、そろそろ行くかな」
「……帰って、くるよな」
「じゃあな」
ヒトミは振りかえらずに、手を振っていってしまう。
ウラウラ島に辿り着く。そこで、マーマネとマーレインが待っていた。
「なんだよ、皆して……暇人じゃないだろ」
ヒトミがそう言うと、マーマネが飛びついてきた。
「グフッ」
マーマネのタックルは重く、吹き飛びそうになるのをなんとか踏みとどまる。
「ヨウも大切だけど、ヒトミも大切!」
「君がいなければ、フェスサークルもGTSも完成しなかったんだ、感謝しても、したりないよ」
「馬鹿言え、俺がいなくたって、完成させてたに決まってるだろ。それが分かってるから、俺は出来るって言ったんだ」
そう言うと、マーレインが笑う。
「そうだね、ヒトミはいつもそう言っていたね。マーマネ、もう離さないと、ヒトミが困ってしまうよ」
そう言うと、マーマネは名残惜しみながら、離れる。
「はぁ、誰にも何も言って無いのに、どうして皆分かったかのように来るかな」
「ははっ、分かりやすいのは昔からだろう? アローラを離れる時だって、分かりやすかったんだから」
もうちょっと、顔に出るの隠さないとなぁ、とヒトミが呟いた。
「行ってきなよ、いつもみたいに僕達は待ってるからさ」
「おう、ちょっと行ってくる」
「えっ、ヒトミ!? いつ帰って来たのさ!?」
「ついさっき、姐さん久しぶり」
プルメリは珍しく慌てふためいて、混乱しているみたいだ。
「全く、帰って来る時も急なんだから、そんで何の用で来たのさ」
「まぁ、折角来たし、挨拶だけでもと思って」
「ふーん、それでいつまでいるのさ。それとも当分はこっちにいるのかい?」
そうなったらまたバイトだね、と笑う。
「そうだ、マオのところ新しいバイトが入ったのさ。あんたが言ってた、料理が好きな奴がさ、マオと仲良くなっちゃって、そのまま料理の勉強なんか始めちゃって……」
二人とも話したい事は、山程あった。解散した後のスカル団の事。それまでの事、これからの事。
「ねぇ、これからどこ行くのさ?」
「ちょっと、野暮用だよ」
「あたいもついてく、駄目かい?」
プルメリが心配そうな顔をする。
「え〜、姐さんの我儘だからなぁ、どうしようかなぁ」
「冗談じゃないよ! 覚悟はあるんだ」
それに対して、ヒトミは首を振る。
「違うよ、覚悟がないから行くんだ。弱いから、皆に会いたくなっちゃうんだよ。だから、姐さん」
「……なんで」
「さようなら、プルメリ姐さん」
プルメリと話したことで、覚悟は決まったのだろうか。いよいよ目的の場所へと足を向ける。
読了ありがとうございました。今回はポケモンのデータなどはありません。
もうちょっとでラストバトルです。
今回はここまで、次回もお付き合い頂ければ幸いです。