君はルールを守る人?破る人?   作:3148

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ナットレイ、ハッサム、リザがいる時点でラランテスがベンチ確定になるので初投稿です。

オリジナルキャラ、オリジナル設定、擬人化等、苦手な方はブラウザバックを推奨します。

それでも良いという方は、お付き合いください。

今回は対グズマ対戦編です。


第二十九・五話

 「以上で、報告になります」

ここはいかがわしき館の二階、グズマがいつも滞在する部屋になる。そこには、ヒトミとプルメリとグズマの三人がいた。

「そうか、まぁ、研究の方が進んでるのは俺も聞いてる」

グズマが興味なさそうに椅子に踏ん反り返る。どうやら報告内容もまともに聞いていなさそうだが、それはいつもの事なので他の二人も気にする様子はない。

「……で、いつもは来ないお前が来たのは、どういう理由だ?」

ヒトミは、実際にポータウンやいかがわしき館に入ることはあまりない。もちろん、収集がかかった時、スカル団として下っ端を集める時など、必要時は来るのだが、基本的にはアーカラ島のモーテルを拠点とし、報告なども出来る限り、電話や下っ端を使うようにしている。

「なんでってそりゃあ、トレーナーがグズマさんに会いに来るって言ったら一つしかないでしょう」

ヒトミが変わらない笑顔でそういうと、プルメリが驚愕する。グズマは肉食獣のような笑みを浮かべ、椅子から立ち上がる。

「そりゃそうだ。破壊という言葉が人の形をしている、このグズマ様がぶっ壊してやるよぉ!」

「勝負は二体二、問題ないっすよね?」

「おう、俺の手持ちは今ちょうど二匹だからな……お前は三つ持ってるみたいだが」

「ははっ、一匹はヨワシっすよ。ここじゃ闘えません」

「そうか、ならかまわねぇよ。ちなみに、負けた時は分かってるだろうなぁ!」

グズマの覇気が、部屋をまるごと震え上がらせる。

「へっ、そいつはないっすよ、グズマさん。俺が勝ち目のない勝負、すると思うか!」

二人がボールを構え、ポケモンを繰り出す。

「ぶち壊せ、グソクムシャ!」

「頼んだぜ、ラフィ!」

グソクムシャとラフィが対面する。大きさの差は歴然で、グソクムシャが圧倒しているようにも見えるが。

「ラフィ、ニードルガード!」

「グソクムシャ、であいがしらだ!」

草タイプ ニードルガード

ラフィが空中に棘の檻を描き出すと、それは実体化しグソクムシャの爪を防ぐ。

虫タイプ であいがしら

対面した瞬間、一瞬の不意を突き先制をとる技だが、ニードルガードの発生は早く、読まれていたこともあり、不発に終わる。

「ちっ、シェルブレードだ!」

ニードルガードが崩れ落ちる。同時に攻撃した爪を傷つけられたグソクムシャにダメージが蓄積されていることが分かる。

「ラフィ、バトンタッチ!」

ラフィが空中に円を基準として、幾つもの重なりをもった魔法陣の様な絵を残し、ヒトミと息を合わせ、ラフィをボールに戻すとともに、ラランテスのヒメがその場に現れる。

ラフィに照準を合わせていたグソクムシャのシェルブレードは、ヒメに直撃する。しかし、水タイプの攻撃とは相性が良く、ダメージは深くない。

「それがどうした、シザークロスだ!」

虫タイプ シザークロス

「ラランテス、リーフブレード!」

草タイプ リーフブレード

互いに鈍足のポケモンどうしが、己の武器をぶつけ合う。お互いの体力が削れ、ラランテスもグソクムシャも消耗が激しい。それと同時に、グソクムシャの特性が発動する。

特性 ききかいひ

一瞬でボールへとグソクムシャを戻すと同時にグズマが手持ちのボールを投げる。

「いけ、アリアドス、とどめばりだ!」

虫タイプ とどめばり

特殊な形状をした針が、ラランテスに襲いかかる。すでに消耗していたヒメは耐える事が出来ず、瀕死状態になる。

「よくやったヒメ、ゆっくり休んでくれ」

倒れたヒメをボールに戻しながら、ヒトミはヒメをねぎらう。グズマの場には攻撃力の上昇したアリアドスが待ち構えている。

「さぁ、あと一体だ……どうする?」

「行って来い、ラフィ!」

そうして、再びボールからラフィが現れる。

「ラフィ、きのこのほうしだ!」

草タイプ きのこのほうし

「はっ、無駄なあがきだな!」

アリアドスが眠りにつく、眠っている時間はさほどなく、グズマの掛け声で目を覚ますのも時間の問題だろう。

「ラフィ、へんしんだ!」

「……なっ!?」

ラフィが自分の体にめがけて絵を描き、まばゆい光に包まれると、その姿はアリアドスの姿になった。

「「ふいうちだっ!」」

グズマとヒトミの掛け声が重なる。だがグズマのアリアドスは目を覚まさず、アリアドスの姿になったラフィが一方的に攻撃することになる。

悪タイプ ふいうち

相手が攻撃モーションに入っていた時、その隙を突く形で先制する。それはたとえ眠っていたとしても、発動することができる。

「ちっ、やるじゃねぇか!」

ラフィから攻撃をうけ、壁際まで吹き飛ばされたグズマのアリアドスは目を覚まし、攻撃態勢をとる。

「ラフィ、もう一度だっ!」

「アリアドス、ふいうちだ!」

お互いに動き始めたのは同時だ。そして、一瞬の交錯で倒れたのは、グズマのアリアドスだった。

「ちっ、戻れ、アリアドス」

アリアドスをボールに戻すと、グズマが舌打ちをする。

「やるじゃねぇか、ヒトミィ!」

「さぁ来いよ、グズマァ!」

グソクムシャとアリアドスの姿に変身したラフィが対面する。お互いの指示が飛び交う。

「グソクムシャ、であいがしらだ!」

虫タイプ であいがしら

「ラフィ、シザークロスだ!」

虫タイプ シザークロス

先制技のため、グソクムシャの方が早く、ラフィにダメージを与える。傷は深いが、まだその動きは衰えていない。そして、アリアドスの姿になったラフィの牙がグソクムシャの鎧をはぎ取る。

(シェルブレードじゃない!?)

「キ……シャァアァ」

グソクムシャは、膝をつき、倒れこむ。ラランテスに受けた攻撃を含め、体力は限界に近いだろう。しかし、まだ倒れない。

「くそっ、ラフィ、かげぬいだ」

ゴーストタイプ かげぬい

「これでしまいだ!」

悪タイプ ふいうち

グソクムシャは瀕死間際の体を立ち上げ、ラフィの攻撃の不意を打つために駆ける。ラフィは、せまるグソクムシャをにらみつる。それと同時に、グソクムシャの影が変形し、グソクムシャに襲いかかろうとする。

 一瞬の交錯の後、倒れたのはラフィだった。グソクムシャから伸びた影は突き刺す寸前で止まり、もとの形へと戻っていく。

「……ち、くしょう」

己のふがいなさからか、拳を握りしめ、ラフィをボールに戻す。グズマも満身創痍のグソクムシャをボールに戻し、ヒトミに近づく。

「いい勝負だったぜ、ヒトミ。じゃあな」

そう言い残す、とグズマの蹴りがヒトミの腹部をとらえる。吹き飛ぶようにヒトミは窓ガラスを割って、窓の外へと放り出される。

「グズマっ! そこまでする必要があるのかい!?」

「俺に立ち向かうってことは、こういうことだろうが。それでもまだ立ち上がるなら、もう一度破壊してやるよ」

そういって満足そうに椅子に座る。どうやら自分がしたことに対して、疑問すら持っていないようだ。

「くそっ!」

プルメリが焦り、階段を駆け降りる。

 

 

館の階段をかけおり、プルメリは走る。

「姉御、さっきのでかい音は……」

「あとにしなっ、それよりヒトミが……」

土手っ腹に蹴りを喰らって、二階から落ちたのだ、無事ではすまないだろう。下手をすれば命すら失いかねない。館の扉を開くと、周囲の下っ端達が群がっているところがあった。恐らく、ヒトミが落ちた場所だろう。

「ヒトミっ!」

駆けつけると、なんとか意識はあるようだ。

「姐さん……どうしたんすか、そんなに……あわて、て」

呼吸をする度に顔をしかめる。どうやらアバラが折れ、もしかしたら内臓も傷ついているかもしれない。

「バカっ! 言ってる場合じゃないだろ!直ぐに病院に向かうよ!」

プルメリと下っ端の一人が支え、ヒトミをポータウンから連れ出す。

「やっぱ、姐さんは優しいなぁ……」

「黙ってな! ったく、本当に馬鹿なんだから……」

 

ポータウンからでて、歩いて行くと交番で呼び止められる。

「おい、なんだ。そいつは怪我人か?」

「……クチナシさん、二階から落ちたんだ。アバラが折れて、内臓も傷付けてるかもしれない!」

プルメリが答えると、クチナシが怒鳴る。

「馬鹿野郎! そんなやつを動かすんじゃねぇ! 救急車を呼ぶから、ここのソファーに寝かせろ!」

クチナシの適切な指示で、ソファーにねかせられたヒトミは意識が朦朧としているのか、呼吸も荒く、しきりに呻いている。

「もう少しで救急車が来る、お前らが一緒にいるとややこしいだろうから、戻ってろ」

「っでも! ヒトミが……」

そういうと、ヒトミが反応する。

「……姐さん、お……はだい、じょぶだから」

傷付き、痛みを堪えながら笑みを浮かべるヒトミ。その姿に戸惑ったものの、プルメリは歯をくいしばって交番を出ようとする。

「おい、こいつも持ってけ」

クチナシが手渡したのは、ヒトミが着ていたスカル団のタンクトップだった。

「そいつを着ていると、話が拗れる。とっとと行け」

プルメリはそれを握りしめ、ポータウンへ戻る。

 

 ヒトミが目を覚ますと、ウラウラ島の病院だった。どうやら治療は終わったらしく、腹部に包帯が巻かれている。蹴られた腹部と落ちた時に打ち付けた手足以外に特に痛みがない事を確認していると、クチナシが病室の扉を開く。

「ありがとう……やっぱ、クチナシさんは、優しいな」

病室に二人きりになって、ヒトミが口を開く。交番に運び込まれたところまでは意識はあったようだ。

「怪我人を放っておく警官がいるか、普通だよ」

そりゃそうだ、とヒトミは笑い咳き込む。

「ヒトミ、なんでお前はスカル団にいる? その気になれば行くところなんて、いくらでもあるだろうに」

クチナシが呟く。

「……そういうクチナシさんこそ、なんでスカル団を放置、してるんすか?」

「質問を質問で返すな。面倒だからだよ」

「スカル団は……グズマが倒れたら直ぐに、崩壊するような、脆い集団だ。目的も意識も薄い」

そう、独白の様にヒトミは呟く。

「何が言いたい?」

「自販機に群がる虫みたいなもんなんですよ。それが何かも分からないのに、いく場所がないから集まった……そんな掃き溜まりみたいな、所なんです」

クチナシは、言葉を選ぶように、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

「なら尚更、お前がいる場所じゃないだろ。お前は日の当たるところに行ける。ライチもウスユキも、なんならハラだって、認めてない訳じゃない」

ヒトミの呼吸が荒くなる。アバラが折れているため、呼吸するたびに痛みが走るのか、顔を何度も顰める。

「あいつら、野良猫みたいなもんなんですよ。本当は何処へだって行けるのに、道が分からないから、光に集まって、群れて、自分を守ろうとしてる」

「……ニャースと同じってか?」

クチナシが自嘲気味にこぼす。

「違いますよ。行ける場所があるのは、俺じゃない。あいつらの方なんだ、だけど行き方が分からないからふらついてるだけなんだ……だから、それが見つかるまで、ちょっとだけ間違えるのは、おかしい事じゃない」

「お前はスカル団があった方が良いって言うのか?」

クチナシが問う。

「……試練があって、守り神がいて、今のスカル団はセーフティネットの役割を果たしてるんだ。乗り越えられなかったやつの、モラトリアムになってる。だから、人に疎まれても消えない、無くならないんだ」

「だが、スカル団にいたって、そいつが良くなる訳じゃない。傷を嘗めあって、庇いあってるだけじゃねぇか」

そして、ヒトミはまた笑う。

「だから、クチナシさんも、手を出せないんでしょ? スカル団が無くなれば、元スカル団達は本当に行き場所を失う。虐げられて、の垂れ死ぬしか無くなる」

クチナシが黙りこむ。ヒトミの言う通り、今でこそ集団として成り立っているから、人々はスカル団を嫌いはしても、排除までは出来ない。だが、グズマという旗を失えば、力を失い、行き場もなくなり、彼らはどうなってしまうのか。のたれ死ぬ連中が出たとしても、おかしくはない。

「結局、どうにもならねぇじゃねぇか」

クチナシは俯き、頭を垂れる。おさめることも、解体することもままならない。手を出すことも出来ないのだ。

「大丈夫ですよ、現状を変えようとしているのは、俺達だけじゃない。ククイもマーレインも、グズマもプルメリもウスユキさんだって、スカル団の奴等だって、今日より良い明日を探してる」

ヒトミが呟く、まるで悟ったような表情をしている。

「だから、クチナシさん。出来ない事はやらなくていいんです。やれる奴がやってくれるなら、それでいいんですよ。わざわざ無理したって、こうなっちゃうだけですしね」

「……お前はグズマを倒そうとしたのか?」

「ええ、だけど勝てなかった。やってみるまで分からなかったし、いい勝負だったけど、グズマを倒すのは俺じゃない。そういう事なんだ」

「他に、出来る奴がいるのか?」

「いるよ。きっとそう遠くない未来にやってくる。アローラは変わるんだ、誰かじゃない、一人一人が動く事で、今も昔も……」

そこまで話を終えると、クチナシは席を立つ。

「それじゃあ、俺も待つとするかね。そういう日の下で働くのは、おじさんは苦手なのさ」

「ははっ、そいつが来たら、盛大に迎えてやって下さい。きっと凄い事を成し遂げるやつだから」

クチナシが尋ねる。

「お前は、どうするんだ?」

「俺にも、やることはありますよ。グズマには勝てなかったけど、そっちだけは譲れない、ね」




読了ありがとうございました。ここからはポケモンのデータになりますので興味のない方は飛ばしていただいて問題ないです。

ヒトミ
手持ちポケモン
ラランテス(NN:ヒメ)
Lv:50
実数値:H175 A152 B113 C90 D102 S45
技:ソーラーブレード リーフブレード にほんばれ
与ダメ 対グソクムシャ:78~93(A二段階上昇)

ドーブル(NN:ラフィ)
Lv:37
実数値:H159 A18 B32 C27 D47 S104
技:ニードルガード きのこのほうし バトンタッチ へんしん
与ダメ 対グソクムシャ:23(ニードルガード時)
    対アリアドス :88~104 確定二発(アリアドス変身時 A三段階上昇)
    対グソクムシャ:75~88(アリアドス変身時 A三段階上昇)

グズマ
手持ちポケモン
グソクムシャ
そうこうポケモン
アローラ図鑑No.183
Lv:63
種族値:H75 A125 B140 C60 D90 S40(合計530)
実数値:H187 A182 B200 C100 D137 S74
特性:ききかいひ
技:であいがしら シェルブレード ふいうち シザークロス
与ダメ 対ヒメ :42~50(シェルブレード、追加効果防御一段階減少)
        :120~144(シザークロス ヒメ防御一段階上昇)
    対ラフィ:57~68(であいがしら ラフィへんしん時)
    対ラフィ:60~71(ふいうち ラフィへんしん時)

アリアドス
あしながポケモン
アローラ図鑑No.023
Lv.55
種族値:H70 A90 B70 C60 D70 S40
実数値:H159 A121 B99 C79 D99 S66
特性:むしのしらせ
技:とどめばり かげうち ふいうち シザークロス
与ダメ 対ヒメ:48~56(ヒメ瀕死→攻撃三段階上昇)

ダメージ計算はポケモントレーナー天国様
実数値はPOKeMONNDS様
上記のサイトを使用させていただきました。ありがとうございます。
    
ちなみに九ターン目にグズマがシェルブレードを選択していた場合、むしのしらせが発動して、グソクムシャは落ちていました。
あとは乱数次第でどちらが勝ってもおかしくない、そういう状況にしています。

ポータウンのイベントの後、意味深な事を言ってた事とか、スカル団の近くでずっといたとか、理由を妄想してたら、スカル団の存在自体が必要悪だったというところにたどり着きますた。クチナシさんの意味深な発言もそこからかなぁ、と思ってます。

今回はここまで、次回もお付き合い頂ければ幸いです。

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