君はルールを守る人?破る人?   作:3148

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中国語のテッカグヤが格好よかったのでラランテスの多言語の名称を調べたら蘭螳花でした。読み方は分かりませんが、擬人化した時の名前にしてもよさそうだし、わるくないんじゃね、と思ったので初投稿です。

オリジナルキャラ、オリジナル設定、擬人化等苦手な方はブラウザバック推奨です。

それでも良いという方は、お付き合いください。


第三十話

 出会えたのはショタグラジオでした。

 

 それから、ヒトミはエーテルパラダイスに向かう事が多くなった。研究室の方ではなく、一般開放地域の方だ。ハノハノビーチに続いて、ここも観光スポットなので観光客は平日でもかなり多い。ましてや、珍しいポケモンと会えたり、触れ合ったり、ライドポケモンの質も高い。そして職員の対応も良し、広告も大体的に打ち出しているので、観光施設としてそこそこの売り上げを叩きだしているようだ。つまり、コバンザメの如く、ポストカードを売りつけていくお仕事に勤しんでいる訳だ。

「お二人さん、ちょっといいですか?」

「ん、なんですか?」

ヒトミはカップルで来ている二人に声をかける。良い雰囲気だったので、男の方は少し不機嫌の様だが、それも問題ない。

「記念に一枚、買って行きませんか?」

先程ライドポケモンの試乗の際に、二人並んでいるイラストだ。いつものようにラフィに色を付けて貰い、幻想的に仕上げている。

「わぁ、凄く綺麗! これって写真、じゃないですよね」

「ドーブルが色を付けたものになります。ただの写真より、良い思い出になると思いませんか?」

男の方もその絵を見て、表情が明るくなる。

「綺麗に描かれているし、記念に一枚買ってもいいんじゃないか」

「うん、そうだね」

毎度あり、と料金を貰ってポストカードを渡す。本日も商売は順調、今日のポケ豆はちょっと豪勢にしても良いかもしれない。

鼻歌交じりで他に反応がよさそうな客がいないかとぐるぐると歩いていると、丁度入口から陰になるところから、何処かで見た事がある子供が近づいてきた。

「おいお前、俺を誘拐しろ!」

「……は?」

 

 言われるがままに袖を引かれて、貯水器の管理室らしき場所に入り、鍵を閉める。

「ここなら普段誰も出入りしない。定期点検も夕方の閉館後だから大丈夫だ」

「はぁ……それで、家出でもしたい訳?」

金髪で黒を基調とした服だが、明らかに質の高い身なりをしている。それに、特徴的な髪形、ヒトミはこの少年を知っている。

「俺の名前はグラジオ、エーテル財団代表ルザミーネ母さんの息子だ」

ヒトミはこの時、ウルトラホール、UB、ウルトラボールについては関わってはいたが、タイプ:フルの研究についてはほとんど知らなかった。

「今の母さんは、おかしくなってしまった。タイプ:ヌルはもう限界なのに、実験を止めようとしないんだ……だから、ここから逃がさないといけない。でも、俺一人だとここを出る事もままならない」

「だから、脱出の手助けをしろ……って?」

つまり、二年前にタイプ:ヌルを連れて逃げるというイベントが、まさにこのタイミングらしい。

「じゃなきゃ、無断で商売してること、警察に知らせるぞ」

「いや待て、それは困る」

ジュンサーさんに知られてしまっては、不味い。身分証明も碌に出来ないため、そういった場面になると、刑務所行きもありえてしまう。

「大体、そんな子供の通報で、警察が動くと思うか?」

「エーテル財団の職員に相談すれば、問題ない。それに、皆知ってて見逃してるだけなんだからな」

グラジオが現状を的確に把握している事にヒトミは驚く。ヒトミの立場としては、スカル団所属、非正規労働、擬人化ポケモンと捕まる要素が三拍子揃っているので、グラジオがその気になれば、まず不自由な暮らしを強いられる事は明白だろう。

「オーケーオーケー、まずは冷静になろう。ビークールって奴だ。つまりは、お前とその実験中のポケモンを連れだせってことだな」

「そうだ、協力しろ」

「それじゃあ、確認事項が幾つかある。そのポケモンを連れだすことは可能か?」

「研究室のカードキーは職員の物を借りる事が出来る。研究の時間は決まっているから、昼間の間なら気付かれないはずだ」

流石ルザミーネさんの息子だ、とヒトミは感心する。

「それじゃあ、昼間にそのポケモンを連れだして、ここで合流する。職員はお前の顔を知ってるな」

「……そうだな、ほぼ全員が知っていると思う」

「船に乗り込む姿を見られたとしたら、止められるか?」

「止められるか、母上にすぐに連絡がいくだろうな。そうなると、船の上か付いた先で捕まることになるか」

グラジオは考え込む。思考から答えに至るまでの早さはルザミーネ譲りか教育のたまものか。

「となると、少なくとも此処を出る間は気付かれる訳にはいかない。とまぁ、その辺は俺が変装の用意をするから、なんとかしよう」

「それで本当に大丈夫か?」

「職員だって暇じゃないんだ、一々乗っている子供が誰かまで注視することはないだろ。それに、ポケモンを持ってても不思議なことなんて何一つない。あとは、観光客らしい服装と目立つ髪形を隠す帽子をして、お前がガキっぽく振舞えばばれないかも知れない」

「……かもしれない、か」

「状況次第だ。お前の事を良く知ってる職員が気付いてしまえばそこで終わりだからな」

「なら、観光客が多い日にしよう。数が多くなれば、その分だけ注意が逸れるはずだ」

「となればイベントの日だな、直近でいつになる」

「今週の日曜日、三日後に家族向けのイベントがある。子供と一緒にポケモンと触れ合おうってイベントで、ライドポケモンと広場を開放して、他の地方の四天王に来てもらうらしい」

有名人も呼んでの呼びこみらしい。お金は寂しがり屋だから、お金があるところに集まるって、本当上手い事いったものだ。

「三日あれば変装の準備は充分だ。その研究って言うのは日曜日の予定は?」

「むしろ、その日は職員がイベントの対応と片付けで総動員する。私用がない限り、次の日まで研究室に入る人間はいない」

「それじゃあ、二人分のチケットと変装用具を俺が準備する。そして、観光客に紛れて定期便に乗り込む。それでいいんだな?」

「ああ、構わない」

なんでこんなことになっちゃったんだろうなぁ、と呟いた後ヒトミが疑問を投げかける。

「島に渡った後は、どうする?」

「……幾らか金は持ってる。とりあえずは最寄りのモーテルに部屋を借りて、あとはそれから考える」

グラジオの行く先はスカル団しかない、のだろう。さらに言えばグズマからルザミーネさんに連絡がいって、事なく脱出したとしてもいずれはバレルということだ。むしろゲーム内でもばれてて放置だったのかもしれない。あとはモーテルの費用とか、その辺りが問題になってくる。スカル団所属となると、彼の経歴としては問題になるので、とりあえずはスカル団の用心棒って立場にしないと不味い。かといってまだまだ子供バイトして一人暮らしってのも厳しいのは想像につく。社会経験も少ないだろうし、なにより箱入り息子だ。

「いいか、俺には時間がない。お前に拒否権はないんだ! 分かったか!?」

相当焦ってるということが話し方から伝わってくる。

(ルザミーネさん、貴女の思い通り愛情たっぷりに育ってますよ、性格の曲がり方まで遺伝してますが)

「了解、それと俺の名前はヒトミだ。お前じゃない」

グラジオが呆気にとられた顔をして、初めて笑顔を見せる。

「そうか、悪かったな。よろしく頼む、ヒトミ」

ヒトミは年上なのに呼び捨てにされたことが腑に落ちなかったのか、一瞬戸惑う。

「まぁいいか、よろしくグラジオ」

 ちょっとフレンドリィで嬉しいとかないんだからね!

 




読了ありがとうございました。今回はショタグラジオ回です。

子ども一人でどうやって逃げたのかなぁ、と妄想してたら主人公手伝っちゃえYO展開になりました。まぁ、ヒトミも吝かではないのでいいと思います(笑)

今回はここまで、次回もお付き合い頂ければ幸いです。

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