物理方面にもうちょっと強化が来たら、そこそこ使えそうな気がするけど、どうにかなりませんかね、ゲーフリさん。
オリジナル設定、オリジナルキャラ、擬人化等、苦手な方はブラウザバックを推奨します。
それでも良いという方は、お付き合いください。
場所はせせらぎの丘、ヒトミは何の気なしに釣り糸を垂らしていると、小柄な人影が現れる。
「試練の間に勝手にはいっちゃ駄目ですよ、ヒトミさん」
釣り竿を担いだスイレンだ。口では注意しているが、この光景は何度も繰り返されている。要するにヒトミは常習犯なのだが、スイレンも怒っている様子はない。隣に座って、スイレンも釣り糸を垂らす。
「悪いね、ギャラドスを追っかけてきたらここまで来ちゃったんだ、次からは気を付けるよ」
「ヒトミさんがギャラドスを釣るなんて、今日は雪でも降るかもしれませんね」
そんな他愛ない話をしていると、スイレンの横に小人があらわれる。
「スイレンさん、釣りをするです?」
「あら、ヨワシさん、居たんですね。ということは……」
岩影からピョコっと、耳と尻尾が揺れているのが見える。
「ラフィ、スイレンだから安心していいよ」
ヒトミがそういうと人影が顔を出し、スイレンを確認すると近づいてくる。
「ラフィさんは本当に凄いですね」
「へへっ、うちの自慢だからな」
ヒトミがそう言うとラフィの頭を撫でる。
「……というか、本当にどうなってるんですかね」
「やっぱり擬人化は不思議です?」
ヨワシが首を傾げる。
「基本はメタモンの変身の応用だからなぁ。と言っても、まだまだ分からないことばっかりだけど」
回想
「……どうすっかなぁ」
ヒトミの目の前には、島めぐりの証と、草のZストーン、水のZストーン、それと三つのモンスターボール。モーテルに引きこもり、考え込んでいる。もう三日もハラの鍛錬に出ていない、思いっきり服のまま海に飛び込み、ヨワシに掴まって逃げたはいいものの、人間は水ポケモンが泳ぐスピードには耐えられないし、そもそも飛び込んだ時点でそこそこダメージを負っていたし、ヨワシが人間は水中で呼吸できない事を理解しているはずも無く、ようやく陸地にたどり着いた時にはすでに気絶していた。ククイの研究所の近くでぶっ倒れているのをハラさんに発見してもらったのも遅かった。
「おかげで熱は出るわ、あちこち体が痛いわ、散々だったぜ」
ちなみに泳いでる間に何処かにぶつけたのか、体中擦り傷だらけだった。どうやら、漫画みたいに格好良くはいかないらしい。
だが、ヒトミが外に出ない理由ではそれではない。
「なぁ、ドーブル。お前はどう思う?」
一番道路でひたすらキャタピーを倒し、HPの努力値を上げ、コラッタを倒し続けてSの努力値を上げ切った。頭を下げてドーブルの技を覚えさせる為に、ウラウラ島にも行った。その結果、一つの結論に辿り着いた。
「……闘いたくないよな、臆病だもんな」
ヨワシやラランテスはまだ、種族値があるポケモンだ。勿論600族や伝説級と比べれば、見劣りするが、400を超えていて、特性や技が優秀であれば、現実の対戦でも使用される事はある。このポケモンの世界で言えば、中々それを超えるのは少数で、つまり言ってしまえば元々闘う素質はあるということだ。だが、ドーブルに関しては、種族値は250、加えて性格は臆病、どうしたって闘う事に拒否反応がある。
「あんなに、頑張ったのにな……」
それでも、ドーブルは努力値振り、技のスケッチに努力し育成は一通り終えた。慣れない技をスケッチして、傷つくたびにポケセンで回復し、ポケ豆をあげたり、ブラッシングすることでそこまではなんとか乗り越えた。そうして、迎えたトレーナー戦、ドーブルの初陣を迎えたその日、ヒトミは後悔した。ドーブルが技を出す事を躊躇したのだ。ポケモンだって生きている、感情がある、ドーブルはトレーナーや人間に対して、好意を抱いた。ポケモンを育てる事に、愛情を知ってしまった。野生のポケモンとは闘う事が出来ても、トレーナーの繰り出したポケモンに、攻撃することは出来なかった。
「俺が、間違えたのか?」
何故、疑問を持たなかったんだろうか。それは知らなかったからだ。知ってしまえば、迷ってしまう、今まで信じ続けた答に疑問を抱いてしまった。
「……試練に立ち向かわないといけないのか?」
このまま順調にポケモンを育てれば、火の試練にも、ノーマルの試練にも、いつかはライチやハラとの大試練が待っている。彼等は皆、勝利を望み、ポケモンと共に力を合わせて闘う事を望んでいる。
「ちくしょう……」
ヒトミは闘う相手をさえ思いやるポケモンを、間違えていない、そう呟く。それは、臆病でも優しい心だ。だけどそれは、闘う事を避ける事は、試練を諦めるということになる。
「ドーブルを使わずに試練を続けるのか」
違うと呟く、それは問題を無視するだけで解決ではない。バトルする事が恐ろしいとドーブルの初陣で感じてしまった。バトルとは他人を否定することで、自我を押し付ける行為になる。勝てば認められ、負ければ失う。何時だって勝つ側に居られる訳にはいかない。しかし、ヒトミが立ち上がる力は、ポケモンがくれる。ライチもハラも、ウスユキもガジュマルもテンだって、背中を押してくれる。だけど、スカル団は、そこに行ってしまった奴等はどうだったんだろうか。手を取ってくれる人間はいたのだろうか、ポケモンが支えてくれたんだろうか、誰も彼もがそうだった訳じゃない、きっと独りぼっちになってしまった奴だっているのだろう。
「それにきっと……」
負けたことを許さないのはきっと、自分自身だ。そこから足掻いて足掻いて、力を手に入れるのだ。グズマの様に、プルメリの様に……それはきっと、キャプテンや島キング達だって、同じはずなのに。
「俺は……どうしたらいい?」
答えは出ない、ヒトミはグズマに会った時に、ドーブルを出すことは出来なかった。グソクムシャに対して、唯一対抗策を持ったポケモンだったというのに、バトルする事を、恐れたのだ。
モーテルの扉を叩いたのはライチだった。海に飛び込んで怪我をした事をハラが伝えてくれたらしい。ライチは今まで来れなかった事を謝る。来てくれただけでも有難いとその意思をヒトミは伝える。
「ライチさん……試練は、乗り越えないといけないんですか?」
落ちついたところでライチに切りだした。その答えを見つけない限り、ヒトミは先には進めない。足が強張って、動く事ができないのだ。
「……その答えは、とても難しいことよ。乗り越えられなかった人間が今、全ての人が不幸せということではないもの。定食屋さんのおばちゃんも、ポケモンセンターで喫茶店をしているマスターだって、全ての試練を乗り越えた訳ではないのよ。立ち向かう事に、意味がある……そう、そうでなければいけないのよ」
ククイは言っていた、古ぼけた風習だと。試練を乗り越えた所で、井の中の蛙にしかなれないと。だけど、蛙にすら届かない者達も、確かに存在するのだ。
「試練に立ち向かう事に、意味がある」
ヒトミはこの三日間、ボールにも、島めぐりの証を手をとる事が出来なかった。その資格があるのか、ずっと迷っていた。
「だからね、ヒトミ。私が出来る事は背中を押す事だけ。闘うのは、立ち向かうのは……あなた」
そう言って、ライチがヒトミの手の平に島めぐりの証を置き、握る。
「今じゃなくて良い、越えられなくっても構わない……でも、目を閉じないで、諦めないで。貴方の心に、嘘はつかないで」
島めぐりの証の感触を、ライチの手は冷たく冷え切っていたヒトミの手に温かみを伝える。こんなにも、重たいものだったのか。こんなにも、尊い存在だったのに、ヒトミの頬には涙が流れる。
「ライチさん、俺……島めぐりを続けます。旅を続けて、答えを知りたい。俺が、ポケモンと一緒にどう生きていきたいのか、その答えが出るまで……諦めたくないよ」
静かに、深く頷いた。
その日から俺は、ポケモンを鍛えることをしなくなった。必要があれば野生のポケモンとも闘うし、避けられない闘いもあった。けれど、試練を行うのではなく、街を渡り歩いて、時にはラランテスと一緒に一日ひなたぼっこをしてみたり、ヨワシと一緒に海に潜り、様々な海のポケモンを見た。ドーブルはやっぱり絵を描くのが好きなようで、スケッチを買い与えると喜んでいた。
「俺だって、負けないぜ」
ヒトミも趣味で絵を描いていたのだ。社会人になってからは、あまり書く事はなかったけど、今だって忘れちゃいない。スケッチに鉛筆を当てて、景色を、人物を、ポケモンをドーブルと一緒にかいた。時には協力してドーブルに色を塗ってもらったり、同じものを描いて比べ合ったり、時にはどっちが上手いかで喧嘩もした。どうやらドーブルは色を塗るのは得意でも、構図やパースなんかは苦手みたいだ。綺麗な色を重ねたって、何か違うって言うとドーブルは怒る。俺が書いた風景画を見て、ドーブルは興味を示す。そんな風にして、少し試練から離れて、バイトしたり、ポケモンと過ごす時間を増やしていった。
読了、ありがとうございました。
シーズン2でクチートナイトとスピアーナイト使えんとかうっそやろ!?
はぁ~、ほんまつっかえ。
すでにスピアーとクチート育成終わりました、特に卵技とか不要だったんでさくっとおわりました。
今回は特にポケモンの紹介はなしです。