オリジナル設定、オリジナルキャラ、物語中盤から擬人化等、苦手な方はブラウザバックを推奨します。
それでも良いという方は、お付き合いください。
「お前が、最近アローラに来たヒトミってやつか?」
夕暮れ時、いつものようにモーテルに戻ろうと一番道路を歩いていると、見覚えのある人間に出会う。
「……グズマ」
ヒトミがこうしてグズマと会うのは初めてだ。ハラやライチ、他の人物もいるのだから当然、グズマもいて当たり前だ。だが、ヒトミは緊張に体がこわばり、警戒心をあらわにする。
「んだおめぇは!」
「グズマさん、だろうがぁ!」
二人のスカル団の下っ端が後ろから現れる。ヒトミは背筋に冷たい汗が流れるのを感じる。威圧感、プレッシャー、オーラ、言葉では取り繕えない何かがその人物には、あった。
「黙ってろ、お前ら」
静かにグズマが喋ると、下っ端は縮こまる様に下がる。
「破壊という言葉が人の形をしているのがこの俺様グズマだぜぇ!」
まるで周囲の空気が震える様な雄叫び。上から見下ろすその視線は、肉食獣と変わらない。
(バトル……いや、今の俺の手持ちじゃグソクムシャ一体にやられて終わりだ)
草タイプのラランテスも、陸上じゃ闘えないヨワシも、ドーブルもまだ、闘える状態じゃない。
「……そのグズマさんが、俺なんかに何の用ですかねぇ」
ベルトについたモンスターボールに手を付けながら、後ずさる。逃げようとしてるのがばれたのか、下っ端が逃げ道をふさぐように道路側に立つ。後ろは崖、目の前三方は囲まれている。
「最近、噂になってんだよ。島めぐりの試練をこなしている余所者がいるってな」
「言うほどじゃないっすよ、タマタマです」
「とはいえ、何度かうちの下っ端も追い返されてるみたいだ。まぁ、比べ物にならねぇのは分かってんだが、勧誘しても良いんじゃねぇかって声もある」
「そいつは……ありがたいお話で」
一歩近づけば、一歩下がる。少しずつ、少しずつ崖に追い詰められている。
「だがまぁ、噂より使えねぇってんなら話は別だ。なぁ、トレーナーならバトルしてくれるよなぁ」
グズマがボールに手をかける。恐らく出すのはグソクムシャ、勝ち目などない。
「いいぜ……ついて来れるんならな!」
ヒトミは後ろに振り返り、崖を飛び降りて海に飛び込む。
(水中まで追ってくるならヨワシで相手するまでだ、追いつかれない様ににげるけどな)
ヨワシをボールからだし、背びれに捕まりその場から離れた。
「グズマさん、やっぱり腰ぬけだったんすよ」
「とんだ無駄足でしたね」
アーカラ島に戻る時にも後ろをついていく団員二人。グズマは何も喋らない。
「グズマさんがメンチ切ったらすぐに逃げ腰になって」
「最後はビビって海に飛び込んだ。思い出しただけでも笑っちまうぜ!」
ギャハハと、スカル団人が笑う。
「……お前ら、何が面白いんだ?」
一度だけ、グズマが振りかえる。それだけで、何もなかったかのように静まる。彼等は知っているのだ、グズマに歯向かったらどうなってしまうのかを。
(そうだ、あいつはそれを知っていた。俺を危険と理解していた。その上で状況を正しく認識して、海に飛び込んだ)
ヨワシを使っているという噂は聞いている。グソクムシャも水中で闘えない訳ではないが、流石にヨワシ相手では分が悪い、一対一では勝てたかもしれないが、追いかけて勝負するのは危険だった。
(つまり、あいつにとって勝機があったのはあの行動って事だ。向こうの手持ちが割れてりゃ、こっちの手持ちも幾つか割れてると考えた方がいい)
グズマは水ポケを更に隠し持ってる可能性を考えた場合、飛びこむ訳には行かなかった。
(そこらのトレーナーより、もしかすればキャプテンよりも、頭は回る奴かもしれねぇな)
ヒトミは才能にかまけて、ひたすらポケモン勝負をしているやつよりも、あの手この手をこねくり回すタイプだ。敵に回せば厄介だし、味方につければ使い道もあるだろう。
「……実力があれば、だがな」
この道は、いつも雨が降っている。傘はささない、雨避けに意味なんてない。気に食わなきゃぶち壊す、破壊が人の形をしているのが自分の姿だ。ならば、グズマは自分を破壊するのもまた、自分なのだと言う。雨を防いだところで、腹の底の溜まる鬱憤も破壊衝動も収まらない。なら少しでも、体の熱を冷やしてくれる方が、幾分かマシだ。
「……雨は、やまねぇな」
読了ありがとうございました。ここから先はポケモンのデータになりますので、興味のない方は飛ばしていただいて問題ないです。
グズマ 手持ちポケモン
グソクムシャ
そうこうポケモン
アローラ図鑑No.183
特性:危機回避
アリアドス
あしながポケモン
アローラ図鑑No.023
特性:むしのしらせ