ある人々の話をしよう 作:締切り3秒前
1.5部に出てくるエミヤオルタのマテリアルバレを見てしまった結果です
あとがきにマテリアル文をふわっと書いたのを置いておきます
微修正しました
――ある守護者の話をしよう
その男は、傭兵だった。弱者を救うため、人々が幸せに暮らすため、活動していた。
――男は正義の味方になりたかった
その為なら、自分は何でもできると、そう思っていた。
――男は贋作だった
望みすらも誰かからの貰い物だったが、それでも望みは本物だった。
――そう、本物だった筈だ
だが、男は今何をしている?
――関わったすべての人間を堕落させ、自殺させる、崇められるおぞましい魔性の女を殺そうとしている
それは男の目的だ。そのために、いま、男は何をしている?
――彼女を守る、何の罪もない、ただ心酔していただけの一般人を殺した
その前には、何をした?
――同じように、信者を、それを庇った家族を、恋人を、友を、殺した
男の後ろには、今何がある?
そう、男の後ろにあるのは、女を殺すために殺した、信者と言う名の無辜の民。
男が救いたいと願っていた彼らを、男自身が手にかけていた。
その矛盾に、男の心が悲鳴を上げる。こんなはずではない、こんなことをする為にここに来たのではないのだと、正義の味方になろうとしたわけではないのだと。
だが事実、男は今も信者を手にかけている。何故、何故。
双剣を持つ手が震える、心が軋み、今にも壊れてしまいそうだ。
一見善良な市民を手にかけた。
――彼はあの女のために、明らかにかなわない男に挑んできた
幸せそうな恋人を手にかけた。
――彼らもまた、女を守るために身をなげうってきた
小さな子どもを手にかけた。
――こんな小さな子どもすら、女に心酔するのかと寒気がした
殺す、殺す。ひたすら殺す。
守ると決めたものを、正義の御旗の元、刻み、裂き、確実に殺していく。
正義とは、こうも残酷なものなのか。これほどまでに矛盾にまみれたものなのか。
女のもとに辿り着いたころ、男は手にかけた
女はそんな男を見て嗤う。そして問うた。
「目的のために無辜の民を手にかけた気分はどうです?」
男は静かに答えた。
「何も」
「何も感じない。感じるものか。感じてたまるか。アレは必要な犠牲だ。
何も感じないと言いたげな男に、光を無くした瞳の彼に、女はまた嗤う。
「そうやって、あなたは自分が傷ついてないふりをして、大切なものすら切り捨てて、大義を貫くのですね」
そんなことをせずとも、私に溺れてくだされば幸せになれるというのに。そんな女の
――それからのことは言うまでもない
男は大義の為に犠牲を良しとし、正義のための犠牲を出し、その体を削り、腐り果てていき、最期は刑に処されることになる。
その後、人類の抑止力であるアラヤと契約し、
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エミヤがオルタった理由→キアラ(マテリアル内では「魔性の女」と称されている)を殺すための道中で信者を殺し続けたため
第三スキル→その非道を行うことに対する抵抗をなくす洗脳スキル
この情報に自分自身の解釈を加えたものがこちらになりました
彼自身の在り方を哀れと呼ぶべきなのかは自分も分かりませんが、キアラの空恐ろしさは感じてしまいます