「そぉいうわけで、よろしく頼むよぉ」
「「お任せください、ロズワール様」」
というやり取りから一時間は経った。
ロズワールが帰ってくるまでに見つけておいてほしいと頼んだ本を探すべく禁書庫の本を総当たりしているのだが。
「本が多すぎる!」
「バルス、口を動かす前に手を動かしなさい」
「スバル君、この山には無かったので戻しておいてください」
イ文字しか読めないスバルは本を運ぶ係りをし、専ら探すのはメイド二人の仕事だ。
「て言うか、タイトルくらい覚えておけよ」
ロズワールのぼんやりとした情報、何とか地方のなんとか魔法に関する研究報告書をまとめた本。と、探すには足りなすぎる情報で探している。
「ベア子、心当たりはないのか」
「無いのよ、そんな適当な情報だけでベティを頼らないでくれるかしら」
「研究報告書をまとめた本ってだけでいいからさ、手伝ってくれよ」
「嫌なのよ、それだけで何冊あると思っているのよ。そんなに読みたいなら本人が探しに来れば良いのよ」
屋敷の使用人総出、といっても三人だが、片っ端から本を探すもそれらしき本は見つからない。
一応怪しい本は外しているのだがそれだけでもかなりの量がある。
そうしてどれくらい経ったのだろうか。
「レム、バルス、後は任せるわ」
という言葉を残してラムが倒れ、本を運び続けたスバルの腕もそろそろ限界を迎え始めた頃だ。
「これじゃなかったらベティは知らないかしら」
と、ベアトリスが一冊の本を差し出した。
本をめくっていたレムと顔を見合わせる。
「ベーアー子ー!」
とスバルがベアトリスを持ち上げ振り回す。
「ちょっ、離すかしら!何をするのよ!」
「このツンデレが!探していてくれたのかよ」
「さっさっと出て行って欲しがっただけなのよ、早くこれを持って出ていくのよ」
「スバル君、レムは姉様を部屋に寝かせてくるので、本の方はロズワール様の執務室の方に置いてきてください」
「おう、了解」
ロズワールの執務室にベアトリスが見つけた本とラムとレムが見つけたそれらしき本の山を置いて、外の空気を吸おうと庭に出る。
「やっぱりあの禁書庫は掃除が必要だ」
今度掃除しに行こうと心に決めると。
「スバル君、買い出し手伝ってもらっても良いですか?」
とレムが出てくる。
「そう言えば、昼飯抜きだったな。エミリアたん達は大丈夫だったのか」
「はい、作り置きしておいたものがあったので。スバル君も食べますか?」
と差し出したのは蒸かし芋だった。
「おう、サンキュ」
夕暮れに染まった村までの道を二人で歩く。
「明日は二倍働かなきゃな」
「そうですね、お風呂だけは後でお願いできますか?」
「おう、任せとけ」
「何かこの会話、端から聞くと夫婦みたいですね」
「いや、普通に使用人の会話だと思う」
「では、夫婦みたいな会話をしてみましょう、あなた」
「おう、じゃあ、今日の夕飯はピーマル抜きで頼むよ母さん」
「か、母さん何て気が早いですよスバル君!わかりました、今日はピーマルたっぷりにします」
「なっ、だけどエミリアたんもピーマルは嫌い……」
「大丈夫です、スバル君の皿にだけいれるので」
「このやろう!」
と、頭を乱暴に撫でる。
「もう、丁寧に撫でてくれないと困ります」
「そんな顔をしながら言われてもなぁ」
「乱暴なのも、嫌いでは無いので」
村につき、買い物を済ませ戻ると丁度ロズワールが屋敷の前に舞い降りた。
「あらぁ、その様子だと見つけたみたいねぇ」
「おう、執務室にそれらしき本は置いといたからあると良いな」
「そう、では、さぁっそく見てくるよぉ」
と屋敷に入っていった。
「それではスバル君、お風呂の方の掃除をお願いします。レムは夕飯の支度に入るので」
「おう、そっちは任せた」
「その必要はないわ、ラムがやっておいたもの。買い出しお疲れ様、夕飯の支度をしましょう」
と、ラムが出てくる。
「あの姉様が、サボらないだと………」
「バルス、そこに膝まずいて感謝の言葉を述べるが良いわ」
「やらねぇよ、途中で居眠りしたやつに」
「姉様の寝顔はとても素敵でした」
「レムさん、仕事中の居眠りを肯定しちゃうのですか」
「それでも姉様は素敵です」
「いやぁ、非常に申し訳ないことが発覚したよぉ」
夕食中、ロズワールが言ったのはそれはそれはありがちな結末だが探し物に協力した側にはとてつもなく伝え辛い結末。
「執務室の引き出しに探していた本が入ってたぁわけで、三人には非常に申し訳ないことしたねぇ」
「なるほど、無駄働きだったわけだ。それなりの謝罪を用意してもらわなくてはな」
とピーマルたっぷりの料理を必死に食べながら言うと。
「そぉだねぇ。じゃあ今月の給料に謝罪分を上乗せしておくことにするからぁそれで良いかな?」
「俺たちはな。だがなロズワール、働いたのは俺たちだけじゃあないぜ、何とそこにいるベア子も協力したのだ!」
「あらぁ、あのベアトリスが。それはそれは」
「ふん!1ヶ月禁書庫に入室しないでもらいたいかしら」
「仰せのままに」
「ずいぶんと無欲じゃねぇかベア子」
「ベアトリスもスバルには言われたくないと思う」
さて、次の日からというと。
「スバルくん、後でこの本を持ってきて」
「スバルくん、この本を戻しておいて」
と、ロズワールに頼まれ禁書庫から本を持ってくるべく走り回るスバルがいた。
「頼むよぉスバル君、1ヶ月は入れないのだからぁ」
「納得いかねー!」
ピーマンってそんなに不味いのかな。