では、ここはどうだ?
地面から矢が放たれる。
一本、二本、三本。
矢続けに。追い込むように。不規則に。
ソレをバシャーモは“ビルドアップ“で受けきり、“みきり“で避ける。“ほのおのうず“で身を隠す。
ずん子「ふふふ……弱った獲物を逃がさないのは、アーチャーの基本です。」
ゆかり「………。」
ゆかりは自分のモンスターボールを前に突き出すが、収納技能が反応しない。
きりたん「茜さん、何でモンスターボールが反応しないんでしょうか?」
茜「う~ん…何でやろう??故障やろうか?」
きりたん「茜さんも分からないんですか?」
茜「う~ん…ウチもホウオウの巫女として勉強することを強いられとるけど、まだまだ修業中やしなぁ…
“くろいまなざし“なんて覚えとるんかな?」
うーんと頭を悩ませる二人の幼い少女に対して、声をかける金髪の少女が一人。
マキ「それはね、バシャーモの影に刺さってる矢だよ。」
茜「マキ先輩。それに葵!」
葵「お姉ちゃん!」
感極まって茜に抱きつく葵。
きりたん「弦巻先輩、あの影の矢に何かあるんですか?」
バシャーモの影に刺さる
マキ「一番最初のズナイパーの一矢はね、“かげぬい“って言うジュナイパー専用のワザだったからだよ。」
きりたん「かげぬい?って何ですか?」
マキ「う~ん…どう説明したら良いかな?
つまりね、“くろいまなざし“の効果を持った攻撃なんだよ。」
きりたん「そんなワザがあるんですか。
でも…………」
ずん子「ズナイパー!ブレイブバード!!!」
依然影の中に身を潜めながらも矢を三本番え放つ。
隠れとくせい“えんかく“の恩恵で直接攻撃のワザを鏃に込めて放つ。
バシャーモ「シャモ……ッッ!!」
矢の先端に竜巻が起こる。矢は形を留められずに崩れ去り、音速を超えた“空気の矢“が出来上がる。
かげぬいと虫の息になったHPの余力の無さで走ることすらままならないバシャーモに、擦ってもトドメになる最高威力のワザが襲う。
バシャーモ「シャアアアアアーーッッ!!」
バシャーモは後ろに吹き飛ぶ。
その後、パァンと空気が破裂する音が遅れて鳴る。
ずん子「これで1対1に……!!」
シュルリと赤い回収ビームが走り、戦闘不能前にバシャーモが他に戻る。
ずん子「え、な!?何で!?かげぬいでボールには戻せないハズ……」
ーーコロンコロン……。
軽いプラスチックの何かが地面を転がる音がした。
ずん子はソレを視認
ずん子「赤い……バトン?」
すっ…とソレを拾う青色の手が一つ。
ゲッコウガ「………コウガ!」
しのびポケモン、ゲッコウガだ。
ずん子「ゲッコウガ…何で!!」
きりたん「何が起こったんですか?弦巻先輩」
マキ「“くろいまなざし“に囚われても、ひんし以外でボールに戻す方法はあるんだよ。
それのひとつがあのワザ。
一般的なトレーナーには、名前すら認知されてないサポート技。その名も“バトンタッチ“だよ」
楽しそうに笑いながらワザの説明をするマキの方を気にせず、図鑑にメモするきりたん。
ずん子「くっ……ズナイパーはっぱカッター!!」
シャドーダイブの影から無数のはっぱカッターが吹き出し、ゲッコウガに向かう。
ゲッコウガ「ガアッ!!」
ソレをふぶきで凍らせ無効化する。
ずん子「次!“かげうち“」
ズナイパー「ぱあぁぁーー!!」
同じく影の中からかげうちの矢を射る。
ゲッコウガ「…………。」
それを苦も無く回避するゲッコウガ。
ずん子「連続で“かげうち“!!」
ゲッコウガ「…………フン。」
マキ「………………そろそろ限界のハズだね。」
きりたん「限界?」
マキ「うん。ゴーストダイブは本来あり得ざる影の中、つまり虚数空間に身を潜めて闇討ちするワザ。
本当はいないハズの異世界に居る様なもの。」
ずん子「ぐっ……当たらない……っっ!!」
マキ「もっと分かりやすく言うならね、アレは宇宙服無しで宇宙にいるようなものなんだよ。」
きりたん「な……」
マキ「そんな所に、いつまでも居られるくらいなら、“ゴーストダイブ“なんてしなくても、ただ隠れながら相手を攻撃するだけで勝てるんだよ。」
ずん子「もう時間が………ズナイパー!!全方位からリーフブレード!!」
虚数空間の中を動き回り、ゲッコウガの周囲に孔を開け攻撃準備に入るズナイパー。
ゆかり「……………正直、ゴーストダイブの待機限界まで待っても別に良かったんですがね……」
ゲッコウガの身の回りに無数の虚数空間の孔が空き、そこからリーフブレードが突き出される。
ズナイパー「じゅぱ!?」
その遥か前に、青い腕がズナイパーを掴み、虚数空間から引きずり出した。
ゲッコウガ「コウガァッ!!!」
そのままズナイパーを宙に持ち上げ、校門に投げつける。
ゲッコウガの“ぶんまわす“がクリーンヒットした。
ずん子「ズナイパー!飛んで!!」
ゲッコウガ「ーーガッ!?」
ズナイパーの飛行を許すまいと追撃を仕掛けようとしたゲッコウガは、足に纏わり付く“くさむすび“によって止められた。
マキ「ぶんまわすを喰らってる最中に結んだのか。」
きりたん「流石です、ずん姉様!」
ズナイパーは飛行限界まで飛び上がる。
ずん子「ズナイパー!あやしいひかり!!」
茜「ここで“あやしいひかり“かぁ、ずん子さんエグいな……」
ズナイパー「…………。」
ずん子「ズナイパー!?どうしたの!?」
マキがゲッコウガの方を確認すると、指をチョイチョイと振って“ちょうはつ“していた。
ゲッコウガ「…………コウ。」
ずん子「ぐっ……!!」
ゲッコウガは“たきのぼり“を使い水柱でズナイパーの位置まで高度を上げると、ふぶきで氷の足場にする。
ずん子「あ、あんなことまで……ゆかりの指示無しでやるの…!??」
マキ「……………。」
きりたんは、何かを覚悟した表情で、マキに向く。
きりたん「弦巻先輩。一つ…聞いても良いですか?」
マキ「なぁに?きりたんちゃん。」
きりたん「…………ずん姉様は、ゆかりに勝てますか?
……ううん、ゆかりに勝ったことがあるんですか?」
それは、姉を尊敬する妹としては悲しい質問だった。
それを、聞いてしまうくらい、きりたんはもう、姉が勝つ姿が想像出来なかった。
もう、既に起こった過去を確認しなければいられないほどに。
誰かに否定されなければ、信じることが出来ないくらい。
誰の目にみても明らかに、ずん子はゆかりに負けていた。
きりたん「教えて下さい。弦巻先輩」
きりたんだけで無く、ゆかりに師事する茜。この凄惨なバトルに怯えつつ、逃げずに見届けていたウナ。茜にしがみついていた葵。
皆がマキに集中していた。
マキ「………それはーー」
ドスン!!!!パリンーー。
何かが地面に衝突した音と、何かが割れた音がした。
皆が一斉に同じ方向を見ると
ゲッコウガ「…………。」
ズナイパー「…………。」
氷漬けにされたズナイパーの上に立つゲッコウガの水手裏剣が宛がわれていた。
ずん子「え~今回ズナイパーが使ったゴーストダイブからの攻撃は【ステルスダイブ】と言うオリジナル技です。ゲーム的にするなら」
タイプ:ゴースト
PP1
最大5ターンの間、攻撃しか出来ない代わりに、相手からの攻撃を受けない。
ターンの終わり毎に最大HPの1/5のダメージを負う。
ゴーストダイブを使用した場合、溜めは無くなりシャドーダイブが解除される。
ただし、相手がゴーストタイプの技を使用した場合、必中ダメージ倍となり解除される。
ずん子「実際あったら害悪ってレベルじゃないですね。
滅びの歌とかどくどくとかヤバいですよね。
…………まぁ、負けたんですけど。」
マキ「ずん子ちゃん……」
ずん子「マキさん、ここのゆかり絶対おかしいですよね!?転生物のチートじゃあるまいし!!!ズルい!!汚い!!貧乳!!ゆかり!!!」
マキ「どうどう」
ずん子「影に逃げて、攻略されたら空にって結構プライド砕いて実行したんですよ!?
あんな簡単に攻略しますか普通!!!
しかもポケモン自身のセルフサービスで!!!!畜生!!!!
次こそ見てろよ!!次回ーー氷の神が荒ぶりますから!!!」
マキ「………え?氷の神??ゑ??」←本編でずっとハブだったから知らない奴
ポケモンバトルに出血や打撲やら、リアルな描写を入れることで緊迫感を出したいと思っていますが、読んでみてどう思いましたか?
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緊迫感が出ている
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かえってバトルに集中できない
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その他(コメントで教えて下さい)