ポケモン×ボイスロイド ボイスポケット   作:SOD

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空には雷、地面には地震。水の中にはなみのりを。

では、ここはどうだ?


32シャドーステルス

地面から矢が放たれる。

一本、二本、三本。

 

矢続けに。追い込むように。不規則に。

ソレをバシャーモは“ビルドアップ“で受けきり、“みきり“で避ける。“ほのおのうず“で身を隠す。

 

ずん子「ふふふ……弱った獲物を逃がさないのは、アーチャーの基本です。」

 

ゆかり「………。」

 

ゆかりは自分のモンスターボールを前に突き出すが、収納技能が反応しない。

 

 

きりたん「茜さん、何でモンスターボールが反応しないんでしょうか?」

 

茜「う~ん…何でやろう??故障やろうか?」

 

きりたん「茜さんも分からないんですか?」

 

茜「う~ん…ウチもホウオウの巫女として勉強することを強いられとるけど、まだまだ修業中やしなぁ…

“くろいまなざし“なんて覚えとるんかな?」

 

うーんと頭を悩ませる二人の幼い少女に対して、声をかける金髪の少女が一人。

 

 

 

マキ「それはね、バシャーモの影に刺さってる矢だよ。」

 

 

 

茜「マキ先輩。それに葵!」

葵「お姉ちゃん!」

感極まって茜に抱きつく葵。

 

きりたん「弦巻先輩、あの影の矢に何かあるんですか?」

 

 

バシャーモの影に刺さる(やじり)に気がついたきりたんが、マキに問う。

 

 

マキ「一番最初のズナイパーの一矢はね、“かげぬい“って言うジュナイパー専用のワザだったからだよ。」

 

きりたん「かげぬい?って何ですか?」

 

マキ「う~ん…どう説明したら良いかな?

 

つまりね、“くろいまなざし“の効果を持った攻撃なんだよ。」

 

きりたん「そんなワザがあるんですか。

でも…………」

 

 

ずん子「ズナイパー!ブレイブバード!!!」

 

依然影の中に身を潜めながらも矢を三本番え放つ。

隠れとくせい“えんかく“の恩恵で直接攻撃のワザを鏃に込めて放つ。

 

バシャーモ「シャモ……ッッ!!」

 

矢の先端に竜巻が起こる。矢は形を留められずに崩れ去り、音速を超えた“空気の矢“が出来上がる。

 

かげぬいと虫の息になったHPの余力の無さで走ることすらままならないバシャーモに、擦ってもトドメになる最高威力のワザが襲う。

 

バシャーモ「シャアアアアアーーッッ!!」

 

バシャーモは後ろに吹き飛ぶ。

その後、パァンと空気が破裂する音が遅れて鳴る。

 

ずん子「これで1対1に……!!」

 

シュルリと赤い回収ビームが走り、戦闘不能前にバシャーモが他に戻る。

 

ずん子「え、な!?何で!?かげぬいでボールには戻せないハズ……」

 

 

ーーコロンコロン……。

 

 

軽いプラスチックの何かが地面を転がる音がした。

ずん子はソレを視認

 

ずん子「赤い……バトン?」

 

すっ…とソレを拾う青色の手が一つ。

 

 

ゲッコウガ「………コウガ!」

 

 

しのびポケモン、ゲッコウガだ。

 

ずん子「ゲッコウガ…何で!!」

 

 

きりたん「何が起こったんですか?弦巻先輩」

 

 

マキ「“くろいまなざし“に囚われても、ひんし以外でボールに戻す方法はあるんだよ。

それのひとつがあのワザ。

 

一般的なトレーナーには、名前すら認知されてないサポート技。その名も“バトンタッチ“だよ」

 

楽しそうに笑いながらワザの説明をするマキの方を気にせず、図鑑にメモするきりたん。

 

ずん子「くっ……ズナイパーはっぱカッター!!」

 

シャドーダイブの影から無数のはっぱカッターが吹き出し、ゲッコウガに向かう。

 

ゲッコウガ「ガアッ!!」

 

ソレをふぶきで凍らせ無効化する。

 

ずん子「次!“かげうち“」

 

ズナイパー「ぱあぁぁーー!!」

 

同じく影の中からかげうちの矢を射る。

 

ゲッコウガ「…………。」

 

それを苦も無く回避するゲッコウガ。

 

ずん子「連続で“かげうち“!!」

 

ゲッコウガ「…………フン。」

 

 

 

マキ「………………そろそろ限界のハズだね。」

 

きりたん「限界?」

 

マキ「うん。ゴーストダイブは本来あり得ざる影の中、つまり虚数空間に身を潜めて闇討ちするワザ。

本当はいないハズの異世界に居る様なもの。」

 

ずん子「ぐっ……当たらない……っっ!!」

 

 

マキ「もっと分かりやすく言うならね、アレは宇宙服無しで宇宙にいるようなものなんだよ。」

 

きりたん「な……」

 

マキ「そんな所に、いつまでも居られるくらいなら、“ゴーストダイブ“なんてしなくても、ただ隠れながら相手を攻撃するだけで勝てるんだよ。」

 

 

ずん子「もう時間が………ズナイパー!!全方位からリーフブレード!!」

 

虚数空間の中を動き回り、ゲッコウガの周囲に孔を開け攻撃準備に入るズナイパー。

 

 

ゆかり「……………正直、ゴーストダイブの待機限界まで待っても別に良かったんですがね……」

 

 

ゲッコウガの身の回りに無数の虚数空間の孔が空き、そこからリーフブレードが突き出される。

 

 

ズナイパー「じゅぱ!?」

 

 

その遥か前に、青い腕がズナイパーを掴み、虚数空間から引きずり出した。

 

 

ゲッコウガ「コウガァッ!!!」

 

そのままズナイパーを宙に持ち上げ、校門に投げつける。

ゲッコウガの“ぶんまわす“がクリーンヒットした。

 

ずん子「ズナイパー!飛んで!!」

 

ゲッコウガ「ーーガッ!?」

 

 

ズナイパーの飛行を許すまいと追撃を仕掛けようとしたゲッコウガは、足に纏わり付く“くさむすび“によって止められた。

 

 

マキ「ぶんまわすを喰らってる最中に結んだのか。」

 

きりたん「流石です、ずん姉様!」

 

ズナイパーは飛行限界まで飛び上がる。

 

ずん子「ズナイパー!あやしいひかり!!」

 

茜「ここで“あやしいひかり“かぁ、ずん子さんエグいな……」

 

ズナイパー「…………。」

 

ずん子「ズナイパー!?どうしたの!?」

 

マキがゲッコウガの方を確認すると、指をチョイチョイと振って“ちょうはつ“していた。

 

ゲッコウガ「…………コウ。」

 

ずん子「ぐっ……!!」

 

 

ゲッコウガは“たきのぼり“を使い水柱でズナイパーの位置まで高度を上げると、ふぶきで氷の足場にする。

 

 

ずん子「あ、あんなことまで……ゆかりの指示無しでやるの…!??」

 

 

 

マキ「……………。」

 

きりたんは、何かを覚悟した表情で、マキに向く。

 

きりたん「弦巻先輩。一つ…聞いても良いですか?」

 

マキ「なぁに?きりたんちゃん。」

 

 

 

きりたん「…………ずん姉様は、ゆかりに勝てますか?

……ううん、ゆかりに勝ったことがあるんですか?」

 

 

それは、姉を尊敬する妹としては悲しい質問だった。

それを、聞いてしまうくらい、きりたんはもう、姉が勝つ姿が想像出来なかった。

もう、既に起こった過去を確認しなければいられないほどに。

誰かに否定されなければ、信じることが出来ないくらい。

 

誰の目にみても明らかに、ずん子はゆかりに負けていた。

 

きりたん「教えて下さい。弦巻先輩」

 

きりたんだけで無く、ゆかりに師事する茜。この凄惨なバトルに怯えつつ、逃げずに見届けていたウナ。茜にしがみついていた葵。

皆がマキに集中していた。

 

マキ「………それはーー」

 

 

 

ドスン!!!!パリンーー。

 

 

何かが地面に衝突した音と、何かが割れた音がした。

 

皆が一斉に同じ方向を見ると

 

 

 

ゲッコウガ「…………。」

ズナイパー「…………。」

 

 

氷漬けにされたズナイパーの上に立つゲッコウガの水手裏剣が宛がわれていた。

 

 

 

 

 

 




ずん子「え~今回ズナイパーが使ったゴーストダイブからの攻撃は【ステルスダイブ】と言うオリジナル技です。ゲーム的にするなら」


タイプ:ゴースト
PP1
最大5ターンの間、攻撃しか出来ない代わりに、相手からの攻撃を受けない。
ターンの終わり毎に最大HPの1/5のダメージを負う。
ゴーストダイブを使用した場合、溜めは無くなりシャドーダイブが解除される。

ただし、相手がゴーストタイプの技を使用した場合、必中ダメージ倍となり解除される。


ずん子「実際あったら害悪ってレベルじゃないですね。
滅びの歌とかどくどくとかヤバいですよね。
…………まぁ、負けたんですけど。」

マキ「ずん子ちゃん……」

ずん子「マキさん、ここのゆかり絶対おかしいですよね!?転生物のチートじゃあるまいし!!!ズルい!!汚い!!貧乳!!ゆかり!!!」

マキ「どうどう」

ずん子「影に逃げて、攻略されたら空にって結構プライド砕いて実行したんですよ!?
あんな簡単に攻略しますか普通!!!
しかもポケモン自身のセルフサービスで!!!!畜生!!!!
次こそ見てろよ!!次回ーー氷の神が荒ぶりますから!!!」

マキ「………え?氷の神??ゑ??」←本編でずっとハブだったから知らない奴

ポケモンバトルに出血や打撲やら、リアルな描写を入れることで緊迫感を出したいと思っていますが、読んでみてどう思いましたか?

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