まあ、今回の2人の会話はある程度予定していたので良し。
季節は春の開花を待つばかり。あと半月もせず、学園には新たな世代の子供たちが入学してくる。
そんな今、この時の気温は冬真っ只中のように寒い。
何故なら……
フリーザー「コォォォォーー!!!」
カントーに伝説を遺す三柱が1羽、れいとうポケモンのフリーザーが、遺憾なくその身の冷気を奮っているからだ。
ずん子「クスクスクス…」
その頭上に立つ東北ずん子は、学園に着くまで来ていた和服姿から、黒を基調としたボンテージの格好をしている。
ゆかり「…………。」
その姿を見上げて睨むゆかり。
フシギバナをボールに戻し、ゲッコウガだけが場に残った。
ずん子「いいのぉ?ゆかりちゃん。せっかく出したポケモン戻しちゃって。フリーザーと闘うんだよ?少しでも多くポケモンが居た方がいいんじゃない?」
ゆかり「………」
ずん子「……あっそ。どこまでもわたしを軽く見てるわけですか。ま、良いや。
凍らせちゃえ、フリーザー。ふぶき」
フリーザー「フアアアアーー!!」
ずん子の命令に従い、自身の纏う冷気を羽ばたきで奮う。フリーザーの前方、つまりゆかりに向かって凄い速度で建物や大地、草木を凍て付かせながら、ふぶきが襲いかかる。
ゆかり「…………」
なのに、何故かゆかりは動かないのだ。
ゲッコウガ「コオオオオォォ--ガアアアアアアアーーー!!!」
だが、ゆかりの指示を待たず、ゲッコウガは同じくふぶきをフリーザーに放つ。
ずん子「アハハハハ!無駄です、むううだぁぁでぇすぅぅぅ~!!」
ゲッコウガ「コウ……ガッ!!」
フリーザーのふぶきはゲッコウガのふぶきを上回り、威力も勢いも劣らない。
ずん子「アハハハハ!!凍りたいんですかゆかり?
氷像ですか?永久保存ですかぁ!?」
ゆかり「……………。」
ずん子「トドメを刺しちゃいますよ~フリーザー!!」
ずん子の指示で更に勢いを増すフリーザーのふぶき。
ゲッコウガも背中の主を護るために必死に力を出している。自分の中の力を、本来の全力をだそうと。
ゲッコウガ「コ…ウガァ!!」
だが……
ゆかり「…戻りなさい、ボケガエル。」
ゲッコウガ「ガッ…!???」
ゆかりはゲッコウガの抵抗を他所に、攻撃の途中でボールに戻してしまった。
抵抗するベクトルを失ったふぶきは、本来の威力のままに辺り一面を凍らせてしまった。
ゆかり「くっ…!」
ゆかりは間一髪で先ほどマルノームがだいばくはつで開けた女子寮の壁の穴に逃げ込んだ。
ずん子「逃げた……?何で……??
どうして?そんなに嫌?わたしとバトルするの…そんなに無駄なの?」
宙を飛ぶフリーザーより更に高い場所に立つずん子には、ゆかりが校舎に入って何をしているのかが分からず、手持ちのずんだイゴンを出して地に降り立った。
ゆかりが逃げこんだ校舎の床には、“あなをほる“で開けたであろう大穴が空いていた。
ずん子「フフフフ…じめんタイプ使いの私から逃げる場所が地下?アハハハハ。面白くないなぁ……」
ずん子はじめんを無視して進む。
ずん子「面白くないよ……だってさ、地面の下に潜ったら、じしんの影響は通常よりさらに大きくなって、ダメージが増える。
だから私は嬉々としてじしんを撃つ。そこで出来た隙を狙う。
そんなこと、もう長い付き合いの私が……ずっと貴女に勝ちたかった私が分からないハズがないじゃない。」
眉間にシワを寄せ、憎らしそうな顔をするずん子。
ずん子「ねえ、そんなことも予想出来ないと思った?分からずにじしんを撃つと思った??
ねえ何で?何で貴女は私が貴女の考えを理解出来ないと思ったの?
私はあんなにいつも
ゆかり「知ってますよ」
ずん子「きゃっ!?」
ずん子が叫び、最も隙が大きくなった瞬間、背後から急襲したゆかりが、ずん子に馬乗りになってうつ伏せ状態でコンクリートの床に這わせた。
ずん子「う、後ろに……!?どうやって…?」
ゆかり「くろすけ、れいとうビーム。」
ゲンガー「ガー!」
ずん子の質問に答えることなく、冷静にフライゴンを戦闘不能に持ち込むゆかり。
寮部屋の中では飛ぶこともままならず、4倍弱点のワザが直撃する。
ずんだイゴン「ぐぅ~!?」
ずん子「ずんだイゴン!」
ゆかり「ハァ…ハァ…さぁ、答えなさい。
あのフリーザーは何処から引っ張って来たんですか。」
ずん子「さあ、私には分かりませんよ。あの子は借りたんです。
ロケット団のナツメから」
ゆかり「ナツメ……ロケット団??
何を寝ぼけたことを…あいつらは潰したハズです。」
(ボスのサカキが失踪した。その後ロケット団の名で再興した組織は、その都度潰してきた。
何故、今更になって旧幹部のナツメが活動を……?)
ずん子「そんなことはどうでもいいです。
私は今、あなたに勝ちたい。それだけで充分だし、他のことなんて面倒なだけです。」
ゆかり「バカなことを。今、学園にはアンタの妹がいるの忘れたんですか」
ずん子「だったら、場所を変えましょう。それなら文句無いでしょう?それとも、学園を氷河期にしますか?」
ゆかり「気は確かかよ」
ずん子「確かに見えます?狂ってますよ。
ずっと勝ちたかった相手に、こんな方法で挑んでる時点で、私はもうオカシイ。
でも、貴女を倒した先に何があるのか、今はただ、それだけが。
私……気になります。」
ゆかり「ずん子………」
ずん子「お願い、ゆかり。
わたしと……戦って。恥も、プライドも、全部捨てて、出来る全てをやって、貴女を倒す。
かっこ悪くても、みっともなくても、自分の力じゃ無くても、私の『出来る』全てを、貴女にぶつけたいの。
だから、私の挑戦を受けてください。
【紫毒のゆかり】として。」
ゆかり「……………。」
ゆかりは、床に這わせたずん子を拘束する力を緩めると、ゲッコウガを戻すと、部屋の扉を開いて廊下に出る。ずん子も戦闘不能のずんだイゴンをボールに戻し、フリーザーに待機を命じ、ゆかりの後を歩く。
チャンピオンと、それに挑戦するチャレンジャー。
どちらからでも無く、そんな言葉が浮かんだ。
コレまでと違い、ついに対等に近い実力のトレーナーが激突する!!
……多分
※追記
ゆかりが見上げてずん子を睨む状況ですが、実はゆかりはずん子の顔まで見えていません。
オマケに服も通常の東北ずん子の衣装とは全く異なる物です。
それでもゆかりは、遥か頭上にいた少女が東北ずん子であることに一瞬で気付きました。
【挿絵表示】
ちょっと描きたくなったのでその時の状況を描いてみました。
シャーペンでサラッとね。
クオリティーは気にするな。
挿絵のタイトルは
【気付いて、私の