Side:ゆかり
きりたん達が校内放送を聞いて移動した後、全身から気怠そうな雰囲気を放つ結月ゆかりが女子寮の自室に到着した。
ゆかり「…………」
(部屋の扉に人が触れた形跡無し。)
何故か寮長室に居なかった女子寮長とガキどもに関連性は無し。
そう判断すると、女子寮廊下窓から飛び降りて地上に降りる。
ゆかり「……あ。」
だが、降りる先にいた銀髪の少女と目が合った。
踏み殺すのもマズいので、多少強引に窓の外枠を掴んで体勢を変えて、壁を蹴って進路を変えた。
だが……
「待ってたよ、お姉ちゃん……」
少女は笑うと、胸元から金色のモンスターボールを取り出し、ゆかりに向けて放った。
???「イッちゃえ、ごっくん。」
金色のモンスターボールから出てきたのは紫色の丸いポケモン、マルノーム。
自身の特徴の大口を開けて、ヘドロばくだんを撃つ。
ゆかり「ざっそう。」
ゆかりは自身に襲いかかるヘドロばくだんに向けて、モンスターボールを掲げ、そのままフシギバナを解き放つ。
フシギバナ「バナアアアーー!!」
ヘドロばくだんが直撃するも全くダメージにならず、物理法則に則り、マルノームにすてみタックルで突撃する。
ごっくん「ノオオオオーー!??」
そのままマルノームを踏みつけて、銀髪の少女につるのムチを放った。
???「ーーッッ!!!」
ここまでゆかりの指示は一切無く、フシギバナの動きにも無駄が無い。さらに速い。この行動が予測の範囲外だったのか、少女はつるのムチを避けきれずに捕まった。
???「ぐうっ!??い…痛いよ、強く絞めすぎ、お姉ちゃーーきゃっ!」
少女が言い切る前に、ゲッコウガが喉元に三日月型に模った“みずしゅりけん“を添えていた。
ゆかり「フワァ……で、アンタは誰ですか?」
依然として気怠げな態度を崩さないが、ゆかりの目には人としての温かみが一切消えている。下手なことを言えば、彼女が何者であれ、命を消す。そういう目だ。
例え、目の前の少女が、自分を姉と呼んでいても。
不用意な返答は、この学び舎で有ってはならない事件が起こる。
???「………私のこと、分からないの?何で…?お姉ちゃん……」
だが、銀髪の少女は質問に質問で返した。
ゆかり「知るか」
時間の無駄を感じ、ゆかりが無慈悲な指示を出すーー
???「だいばくはつ」
直前、少女は信じられない行動を起こす。
ゆかり「ちっ!」
マルノームが指示通りの行動を起こし、辺り一面が爆音に包まれ、爆風で吹き飛ばされた。
砂煙が晴れた頃には、まもるの技を解除したフシギバナ、ゲッコウガ。そして、間一髪ゆかりの間に立ったゲンガーが、銀髪の少女の視認を試みる。
ゆかり「辺りに血痕も服の破片も無い……予めエスパーポケモンのテレポートが控えていた……?」
逃げられたか。そう考えた瞬間ーー
ゆかり「だったら“だいばくはつ“をする意味が無い。」
ゆかりはそれまで立っていた場所から飛び退いた。
その一瞬後で、れいとうビームが着弾する。
ゆかり「ぐっ……!!」
足に僅かに擦った。
敵を確認するために足に触れた、れいとうビームの角度から敵の位置に当たりを付けて視線を向ける。
ゆかり「……何?」
そこで、信じられない光景が映った。
青の躰、美しく羽ばたく翼。そして、頭部には氷の結晶。纏いしは、氷の粒子。
「~~♪」
唄うような鳴き声の鳥ポケモン。
伝説の氷の神ーーフリーザーが、そこにいた。
ゆかり「フリーザー……?マキさんのゲットしたものとは別固体??いや、それより」
青色の鳥ポケモンの遥か上空。だいばくはつでボロボロになった女子寮の最上階に立つ、緑色の髪の少女。
ゆかり「何でそこにいるんです?ずんだ餅」
東北ずん子が、そこにいた……。
銀髪の少女……いったい何りんなんだ?!