新たな王が現れた。その事実はあの怪物が倒されたその次の日には城下町の人々に噂していた。曰く大地を揺るがす怪物を討ち滅ぼした英雄。誰も抜く事が出来なかった聖剣を抜いた存在。
あの怪物の存在を人々は忘れる事は出来ない。あの魂すら震えさす咆哮、山よりも遥かに巨大な身体から炎を吹き出す姿を
人々は新たな王の姿を夢想した。新たな王は容姿端麗、民の事を第1に考える好青年だとか筋骨隆々で覇気溢れる武人だとか、理想の騎士、カリスマ溢れる存在だとか。
新たな王の存在を知っている者はそんな夢想に対して悲し過ぎる現実を教えるがあぁ、無知は罪なり。そんな言葉は無知な大衆の言葉に流されていく。
そしてそんな噂が流れる新たな王は
「やぁマイロード。朝食ご一緒させてもらっているよ?」
「控え目に言って死ね」
アルトリアの作ってくれた朝食をキングメーカーに勝手に食べられてブチ切れ一歩手前だった。新たな王は強くて脳筋な阿呆だという事を知る者は意外と少ない。
◎月☆日
朝起きるとマーリンが人の分の朝食を勝手に食べていた許さん。そしてそんな重罪人は笑って誤魔化し今日の予定と前に話した戴冠式の事について話し始める。
特に理由もなく来てアルトリアが作ってくれた俺の分の朝食を食べていたとしたら俺は怒りで我を忘れていたかもしれない
ふむふむ、戴冠式はもう直ぐか。
そう言えば戴冠式は何処でするんだ?王宮はまだ直している途中だしそういうのって何か大切な場所でするんじゃないのか?
えっ?あの木を既に改装しているからそこでやる?その後国中から力自慢の者達を集めてそこで大会を開く?
まぁ戴冠式なんてチャチャっと終わるだろうし良いと思うようん。
え?俺が新たな騎士を決める?というか俺の側近を決める?仕事手伝ってくれたりしてくれる人とかか?
…マーリンとか?
あっ違うのか。成程俺の身の回りの事ねぇ…いらんなぁ。
あっアルトリアにボディガードとして雇う的な事もあり?
いや待てそのボディガードがアルトリアにナニかをするかもしれん。それにアルトリアには俺とケイがいる。なら問題はないな、うん。
側近云々は無しにしても俺が決めなきゃ駄目なのか…他の騎士にもその権利あげるから複数人で決めても良い?
えっ?誰に決めてもらうつもり?
そりゃマーリンだろ?ケイだろ?前の大会で最後まで勝ち残った騎士2人だろ?
アルトリアはまだ騎士見習いだしこんな事に参加しなくても良いだろうから取り敢えずこの4人で最終決定だな。頼りにしてるぞマーリン。俺は剣の腕とか才能とかは見ても分からないからそこら辺は皆様が頼りです
特にマーリンはアルトリアに剣を教えていたんだから期待MAXだぞ?まさかアルトリアに剣を教えていた人が剣の腕とか才能とかが分からない筈ないからな。まぁ…お前に出来ない事は俺には絶対に出来ないから俺の分も安心して選んでくれ
◎月―○○○―日
もう直ぐ行われる戴冠式と大会の準備についての話し合いがあった。
まぁ俺は聞いてるだけだったんだけどね。というか殆どマーリンが準備してたからそれを了承して下ろすだけの作業みたいな感じだった。そして話が終わった後マーリンから呼ばれた話をすると
「戴冠式では新たな王として相応しい一言を頼むよ」
「えっ」
「因みに僕は考えないから頑張ってね」
「」
次いでにマーリンからそんな無茶振りをされ困った俺がいるらしい。
…本当どうしよう?
───
「…成程。一言だけ言っても良いか?」
「良いぞ。ドンと来いドンと」
「お前馬鹿だろ」
「分かってたけど非常に心に来るッ!」
夜も更け、物音がして目を覚ましたら食卓で頭を悩ます馬鹿がいた。というかゲットだった。机の上に突っ伏す馬鹿の周りには今までその一言を考えていたのか机の上が散らかっておりその苦労が伺える。終わったら片付けろよ。
「というか何で俺1人で考えねばならんのだ。ちょっとくらい手伝ってくれてもバチは当たらないだろうに」
「…マーリンの考えは分からないが馬鹿なお前に王として成長して欲しいと思っているんじゃないか?」
「…一つ聞くが俺の何処が馬鹿だと?」
「…薪割りを任せれば薪の代わりに斧を割り素手で薪を割るレベルの馬鹿だな」
「…くそっ。何か言い返してやろうと思ったが言い返せる隙がないッ!」
「…そういう所も馬鹿だな」
「ぐうの音も出ない」
そう言うと頭を搔きながら悩み始める馬鹿…はぁ。今回だけだぞ
「…確かにお前は馬鹿だ。薪割りを任せれば薪の代わりに斧を割り素手で薪を割る馬鹿だ。正直俺の人生の中でお前以上の馬鹿を見る事はないと思ってる程の馬鹿だ。考えなしの脳味噌が筋肉で出来てるレベルの馬鹿だ」
「そこまで言わなくても良くない…?」
そう言うといじけそうになる馬鹿にまぁ聞けと言い話を続ける。こんな事を話すなんて小っ恥ずかしくてやってられん。本当に今回だけだぞ。
「だが、そんな考えなしなお前だからこそ俺達はお前に救われた。あの時、お前が王になろうとしていなかったらきっとアルは王になっていただろう。そしてアルは王になる事を受け入れていたと思う」
「…アルトリアは真面目で優しいからなぁ」
「…あぁ。アルは真面目で皆が大好きな優しい子だ。きっと王になれと願われたらあの子はきっと王になるだろう。この何時滅びるかも分からない国の舵取りをする為に自分の心を押し殺してでも」
「俺はそんなアルの姿だけは絶対に見たくなかった。だが、お前が王になってくれなければ間違いなくアルが王になっていた」
「…俺だってそんなアルトリアは見たくない。あの子はそのまま優しいまま成長して欲しい」
そんな事を話しながらアルの姿が脳裏に浮かぶ。もしもあの時アルが王になっていたら。自分の心を押し殺し泣く事も笑う事もなく王としてあろうとするアルの姿を
…そんな姿…死んでもごめんだ。
「お前は確かに考えなしだ。だが、そんなお前だからこそ俺達はお前に救われた」
「お前にとって王とはなんだ?」
「…王とは誰にも負けない力を持ってて皆を守る存在。決して誰にも負けない力を持って戦うのが王だ」
「力がないと何も守れない。知識があろうとも魔術が使えようともカリスマがあろうとも絶対的な力の前には全て無力だ」
「俺はこの世界で一番強い。どんな怪物が襲いかかろうともこの国を守る事が出来る」
「アルトリアにはその力がない。だが俺にはある。だったら俺が王になるしかないだろ」
そう噛み締めるように呟くゲット。そこには絶対の自信と自負、そしてそれが決して間違いではないという確信があった
「俺達はお前に救われたんだ。アルトリアが王になる悪夢から、そしてあの化け物からこの国を救った」
「お前が馬鹿で何が悪い、お前が俺達を力を持って守る。だから俺達が王であるお前を後ろからサポートする」
「…分かったら1人で悩まず人に頼れ。お前の頭で考え付く事なんてロクなものじゃないだろう」
「……」
「…無言になるな。なにか言え」
そう言い切るとゲットは驚いたようにこちらを見詰める。そしてこちらを見詰め暫くの時間が経つと何かに気付いたのかパッと立ち上がる
「…ッ!そうか!そうだよな!ありがとうケイ!俺、何言うか決まった!」
「…そりゃ良かった」
「こうしちゃいられん!少し行ってくる!」
「おい待て!せめて机の上を…ってアイツ速ぇ」
そのまま走り去るゲットの背中に声を掛けるも聞こえておらず、ぐちゃぐちゃなままの机の上を見てため息を吐きながら片付けを始める。
「…こんな時間になんの音ですか?」
「あぁ…起きたかアル。騒がしくて済まなかったな」
「あれ…?ケイ兄さん。顔が笑ってますけど何か良いことでもありましたか?」
「…慣れない事はするものじゃないなと思っただけだ」
今日の事はアルに秘密にする事にしよう
現在のゲット君に対する原作キャラの思い
アルトリア
血塗れの所を見付け、それから一緒に暮らし今はもう家族同然の存在。それから美味しいご飯を作ってくれたり毎日が馬鹿騒ぎで少し疲れるが楽しい
まだ騎士見習いだが立派な騎士になる為に頑張りたいらしい
「まだまだ騎士見習いですが精一杯頑張ります!」
ケイ
誰が呼んだかアルトリアモンペ1号(2号はゲット)一緒に暮らしてからアルトリアの笑顔が増えたのが嬉しいらしい。
アルトリアが王にならずにすんで心底安心しゲットに対する信頼感がMAXを通り越し親愛感となる
アルトリアを嫁に出すなら相手にはゲット以上のスペックとアルトリア愛を求めている
…どう考えてもコイツ嫁に出す気がないぞ?
「アルを嫁にしたい?なら俺とゲットの屍を超えていくんだな」
マーリン
誰が呼んだかキングメーカー。現在過労死必死枠、ゲットに対しての感情は不明。本人が感情がないと言い張る為分からないったら分からない
「マーリンお兄さんにお任せあれ」