「…これはどうしましょうか?」
妖精郷のとある場所、この世界の長である一人の少女は困ったように溜息を吐く。どうやら彼女にとって非常に宜しくない事が起こったようだ。彼女の下で椅子兼足であるドラゴンも上にいる少女の顔色を伺ってビクビクしている。
「ウェェェイ!どうしたんですカチュア様ァ!?」
「あぁ…ポレゴンですか。いえ、少し困った事が起きましてね」
雪だるまの妖精、ポレゴンがその溢れんばかりのテンションの高さを持ってカチュアに話し掛ける。だが、そんなテンションのポレゴンを見ても心ここにあらずと言った姿でブツブツと呟くばかり
「本当にどうしましょうか…?」
「おっとカチュア様!それはもしかしてアレじゃないですか!?何でそれを持ってるんです!?」
「…ハァ。あの御方に会えてうっかり夢心地で渡すのと教えるのを忘れていました」
「あぁ!カチュア様はあの伝説のヒューマノイドのファンですからねぇ。話すのに夢中になっちゃいましたか」
「…それ以上は貴方の上半身と下半身がサヨナラしますわよ?」
ポレゴンの言葉に更に顔を落ち込ませ溜息を吐く。そんなカチュアの両手には不思議なものがあった。
それは赤色と水色の2色で構成されてある一着のスーツ。それはゲットのいた時代に存在していない。いや、正確に言うならば見つかっていない太古の時代に作られた兵器
「…で、どうするんです?そのクロスギア。確かゲット様にお渡しするつもりだったんですよね?」
「…どうしましょう?誰か良い意見はありますか?」
「「…」」
その言葉にポレゴンもカチュアの下にいるドラゴンも困り果てたように無言になる。そしてそんな2人の姿を見てカチュアは頭を抱えた。
「現在、地球にクロスギアが大量に転移してるとかどうすれば良いのよ…そして何でその事を伝え忘れるのよ私…」
「…カチュア様って案外ポンコツですかねぇ」
「──ッ!うるさいうるさいうるさぁぁぁい!」
「ハッハー!カチュアのポンコツ姿頂きましたぁ!」
妖精郷は今日も平和である。地球にクロスギアと呼ばれる超常の兵器が大量に転移してたとしても今日も平和なのである。そしてそのクロスギア達が集まり進化クロスギアとなる可能性があったとしてもこの妖精郷は平和ったら平和なのである。
「まぁ…また会う時に教えれば良いでしょう」
そうして問題を放置する事を決意したカチュアを見て椅子になっているドラゴンは人知れず溜息を吐いた。
───
「さて、城下町の復興も一段落ついた。ならば次は何をすれば良いと思うマイロード?」
「正解者にはこのマーリンお兄さんが今夜幸せな夢を与えようではないか」
マーリンは基本的に俺に指示を仰ぐ。俺はそういう事は苦手だから全部任せたいのだが問題形式で聞いてくる為中々に楽しく。ちゃんと考えて答えてしまう
「次に何をする…?そうだなぁ…街があり住民がいる。じゃあ次は食べ物とか着るものとか?」
衣食住が昔、俺が人間の時に大切だと聞いた事ある。家が出来たなら次はそれじゃないかと思い答えると
「はい残念」
「まぁそうだよな──っ痛ぁ!」
マーリンの声に合わせて俺の頭の上に鉄塊が降ってきた。何時も思うが、これ俺じゃないと間違いなく死ぬぞ
「確かに衣食住は必要不可欠だけど今回はそれじゃあない」
「…じゃあ何だよ?」
「人々に君という存在が絶対的な希望だと分かってもらう事だよ」
…は?
「──この国は今、未曾有の危機に立たされている。それは知ってるだろう?」
「周りにある諸外国の数々、そして何時来るか分からない万を超える蛮族の軍勢。そして君が討ち滅ぼしたあの怪物」
「今人々は不安なんだ。だからこそ絶対的な存在が必要だ」
「──どのような怪物があらわれようとも打ち倒し、万を超える蛮族の群れを消し飛ばし、諸外国の圧力に屈しない絶対的な希望」
「──君しかいないんだ。君は王になればこの国の希望になる。この国の人々はこう思うだろう」
「『烈火王がいるならばこの国は安泰だ!この王ならばブリテンを平和に導いてくれる!』とね」
「そして君の力を見て強欲で無能な者達以外の諸外国の王はこう思うだろう」
「『何がどうであれ彼の傘下に入れば絶対的な力の庇護の元に入れる事が出来る』とね」
「つまり…君が大々的に王である事を主張、つまりは戴冠式を行う事が必要不可欠なのさ」
「理解してくれたかい?」
マーリンは自らの主に進言する。この国今絶対に必要なもの、そして自分達は何をするべきかを。そしてそんな進言を聞いて主は唸る。その言葉一つ一つを噛み締め消化しているのだろう。
そして長い時間が立ち、主は顔を挙げた
「…すまん。3行で言ってくれ」
「君が戴冠式をすれば
人々は喜び諸外国は平伏し蛮族は死んで
この国は平和になる」
「…成程。じゃさっさと戴冠式するか」
「準備はこちらに任せてくれ」
その日マーリンは主に言いすぎたら処理能力がパンクする事を覚えた。
◎月♂日
今日はマーリンから戴冠式をしろと言われた。どうやら戴冠式をすれば何だかんだ上手くいくらしい。
そう言えば城下町の修復に忙しかったから戴冠式なんてする暇なかったなぁ。アルトリアとケイにも戴冠式をする事を話したら
「凄いです!頑張ってくださいね!」←アルトリア
「遂にお前が王か…さて、亡命の準備でもするか」←ケイ
と胸が温まる言葉と怒りで頭がホットになる言葉を頂きました。
言っとくけど俺が王でいる限りこの国は絶対に守るぞ?ウルトラマン的なポジションだぞ?制限時間なしのウルトラマンだぞ?
…全く。何が駄目だと言うのか
マーリン君から核兵器扱いされている殆ど飾り物の王様ゲット君の明日はどっちだ