そしてまだ出ていないモンスターもガンガン出てきます
「どうせならば王宮を建て直さないかい?という訳でマイロード、一緒に妖精郷に行こう」
それが始まりの言葉だった。俺が王になって数日がたった頃、即ち住民騎士達総出で街を復興している時の話だ。
その日の分の仕事を終えアルトリアやケイの為の食事を作っているとそんな馬鹿の声の聞こえてきた。
「…妖精郷?可愛いスノーフェアリーが沢山いそうだな」
妖精と言われて思い浮かぶのはフィオナの森のスノーフェアリー達。あの時見た彼女達は元気だろうか。まぁ仙界王との戦いから数百年は平和が訪れる筈だしそこまで気にする必要はないと思うが
「まぁ、可愛らしい妖精が沢山いるのは間違いないよ。妖精に頼めば新しい城だって直ぐにでも創造出来る、ついでに城下の家々を直すことだって可能だ」
「ふーん」
適当に相槌をしながら鍋の火加減を見る。今日は野菜の出汁を贅沢に取ったブイヨンベースのスープに残り物の肉をぶち込んだ肉スープだ。
正直アクが出るからアク取りに目が離せない
「──という訳で夜迎えに向かうという事で構わないね?」
「あーうん。もうそれで良いぞ、ちょっと今忙しいからその話後で頼むわ」
「いや、言質は取ったから必要ないよ。それじゃあまた夜会おう」
その言葉を最後にマーリンは姿を消す。そしてそんな事に気付かない俺は先程の言葉をすっかり忘れて今日の夕飯作りに力を込めていた。
会心の出来となった夕食をアルトリアとケイと共に食べ
「腕を上げましたねゲット…お代わりを要求します!」
「何故だ…俺の何が足らないと言うのだ。ゲットに作れて俺に作れない訳が」
「ステイ、ケイ。席を立つな、座って食え」
そんないつも通りの日常を過ごし1日を終えた筈だった。そして俺はすっかりマーリンの言葉を忘れ眠りについた。
「──おはようマイロード。約束通り迎えに来たよ」
「…は?」
目が覚めると胡散臭い笑みがこちらを覗きこんでいた。イケメンだが目覚めにはとてもひどい顔だった。というか目覚めるなら可愛らしい大天使アルトリアの顔を見て目覚めたかった
(∴)月(ΦωΦ)日
目覚めたらマーリンに誘拐されていたで御座る。まぁそんな冗談は置いて、どうやら自分はとんでもない場所にいるらしい
マーリンの話を聞くと
「ここは妖精郷、三次元に存在する地球より数次元分ずれた位相に存在する、所謂あの世や常春の国とも呼ばれる地。竜種を始めとする殆どの幻想種が西暦移行の住処と決めた、"世界の裏側"と同一の場所…まぁ簡単に言うならば君が生きていた世界みたいなものだよ」
どうやら俺には難しい話だったみたいだ。何一つ理解が出来ない。マーリンが掻い摘んで簡単に説明してくれたお陰でフワッとは理解出来たが
そんな妖精郷に今いる訳だが、正直凄い。
何が凄いかって?もう妖精がクソかわいい。出るとこ出てて顔も人間を超えた美しさ。こんな場所に長くいると駄目になると確信する。
だって早速マーリンが
「ではマイロード。私は久しぶりに彼女達との交流を深めておくから、長との交渉は任せたよ」
物凄い良い笑顔で妖精を連れて何処へ消えたのだ。アイツマジで許さねぇ後でボコるわ
後、男型の妖精が主に雪だるまとか人外型の姿に物凄い既視感を抱いていた。
やべぇコイツら見覚えしかない。俺の故郷の自然文明にこんな奴らいたわフィオナの森のスノーフェアリーがこんな感じだったよなと思い一人の妖精に長の場所まで案内を任せた。
「Yeah!俺のソリに乗っていけば長の元まで直ぐに着くぜ!」
「あー…うん。ありがとう、所で君の名前は」
「俺かい!?俺の名前は冒険妖精ポレゴン!こう見えても昔は異世界で名の知れた冒険家だったんだぜ!」
「だよなぁ…ポレゴンだよなぁ…」
どう見てもポレゴンだった。というか本人がポレゴンだと認めた。正直妖精郷にいる奴等は見覚えのある奴らが沢山いると思っていた
「へぇ兄ちゃん俺の事知ってんの!?」
「だって俺超獣世界から来たし」
「…何だ同じ漂流者か。お互い辛いねぇ」
漂流者?聞き慣れない言葉に首を傾げる。するとポレゴンはその無駄に高いテンションで教えてくれる
「あぁ兄ちゃんは知らねぇのか!知らねぇのも無理ねぇさ、漂流者は俺達が使い始めた言葉でな!あの戦国武闘会でシーザーの野郎が暴れただろ?あのせいで色々な時代からモンスターがこの世界に飛ばされているらしいわ!」
「そんで俺みたいな非力なモンスターはマナのない場所では姿を保ってられない!そしてここの長が俺たちみたいな非力なモンスターをここに集めているって訳だ!」
予想外な事実が山ほど出て来て頭が痛くなる。暗黒皇グレイテストシーザー。背景ストーリーでは何時もコイツのせいにされている言っても過言ではない大戦犯。どうやら俺がこの世界に来たのもあの大戦犯が原因らしい
「そう言えば兄ちゃんは何処から来たんだ?見た所完璧な人型だしヒューマノイドか?」
「…小さな勇者ゲットって言えば通じるか?」
「へぇ!兄ちゃんがあの伝説のヒューマノイドかい!全く、長生きはしてみるもんだねぇ!」
「伝説?一体どういう」
伝説のヒューマノイドとは一体なんのことか、それを聞こうとした瞬間、ソリが急停止して降ろされる。どうやら長の元についたようだ。
「おーっともう着いてしまった!残念だが話はここでおしまい!という訳でまたな兄ちゃん!縁があればまた会おうや!」
「…っておい!待て!話はまだ終わって」
「ハッハー!走れソリよ!風のようにー!」
風のように走り去っていくソリとポレゴンを呆然と眺めていると後ろから存在を感じる。今まで感じた事のない感覚だ。弱い存在に強い存在が付き従っているような、不思議なマナの感覚
「お久しぶりです…いや、初めまして。小さな勇者ゲット、恐らく貴方に私の名前を名乗る必要はないでしょうが礼儀は必要です」
「私の名前は幻想妖精カチュア。この妖精郷を纏めあげる妖精達の長です」
良く分からないドラゴンを椅子にして悠然とした構えでカチュアがこちらを見ていた。
「それでこの妖精郷に何か用でしょうか?火文明の英雄よ」
「色々聞きたいけど、取り敢えずこれだけは聞いておく」
「…何でしょうか?」
「…ドラゴンを椅子にしてるけど…それ趣味?」
「はい。私ドラゴンを手篭めにするのが大好きなのです」
カチュアの天使のような笑みの下にある苦しそうなドラゴンの姿を見て同情を覚えたのは俺だけじゃない筈だと思う。
ポレゴン→パリピ
カチュア→ドS美少女