それは答えを導き出そうとしていた。己の全ての性能を以てして演算し、どのようにすれば自分に与えられた問題の解決策を出せるのかを
地上に住む全てのモンスターを滅ぼす為の兵器とは一体なんなのか。
これを導き出そうとそれは様々な物を考え出しては破棄し考え出しては破棄を延々と繰り返す。
生物兵器は?それは直ぐに破棄された。それの記憶されてあるモンスターを超える存在を作り出せない。超常とも呼べる最強のモンスター達を超える存在の作り方が分からなかったのだ。
ならばガス兵器はどうだろうか。駄目だ瘴気にどの文明よりも圧倒的に強い闇文明をそれで殺せるとは思えない。
幾重にも幾重にも繰り返して解を求めた。だが、その解を導き出すのは酷く難しい。そんなある時、ソレにある一つの仮定を入力された。
それは直ぐにその仮定を入れて演算すると直ぐに解を導き出す事が出来た。
その仮定とは至って簡単。兵器以外でも良い、地上に住まう生物を滅ぼせる方法はあるのか。と太古の昔より存在しているそれは自分が作り出されてから今に至るまでありとあらゆる事を記録している。だからこそその存在を知っているのは当然の事であった。それは
曰く、この世界の全てであり、全てのマナが集まる場所。
曰く、太古の昔、この世界を支配していたとされる5体の王が眠りについた場所
誰1人として解明出来ないし見付ける見付ける事も出来ない神聖な領域。その場所の名前は仙界、そこに眠る五体の王。その内の一体の眠りを醒ますだけで全て解決するのだと。
それは使っていた者達は歓喜し直ぐにそれが指示した通りの事を始めていく。
必要なのは莫大な量の水のマナと光のマナ。二種類のマナを身体に取り込んだ存在、未来ではレインボー獣と呼ばれる存在を依り代に莫大なマナを与え一体の王を呼び出す事
呼び起こす存在は英霊王スターマン。遥か太古の昔、天空の城にて光を支配していた王の一体である。
さて、嘗て水文明が作り出した存在、夜明けの超人とリキッドピープルのDNAを掛け合わせて作り出した一体のモンスターの事を覚えているだろうか。それは作り出されて直ぐに自然文明に回収されたが、実はその時より遥か前からこの計画は始まっていたのだ。類まれなる頭脳と技術力でどの文明よりも早く超兵器の復活に成功していた水文明は既に動き出していたのだ。故に今更火文明が攻めてこようと問題はないし知った事ではない。
彼等は水文明最高の英智の結晶であるインビンシブルテクノロジーが算出した演算結果のままに動けば良い。唯それだけの話なのだから
水文明は笑う。時は満ちたと。後は計画に従い
この海中都市に攻め入ってくる火の軍勢達に反撃せず蹂躙されれば良いのだから。
水文明最強の力とは何なのか。それは知力。他の文明を寄せ付けない圧倒的な知力によって導き出される回答こそが水文明の力であり彼等にとってモンスターの持つパワー等二の次なのだ。
策を何十何百何千何万何億と張り巡らせ必ず自らの策を成功させる知力、それこそが水文明でありクリスタルツヴァイランサーなどブラフに過ぎないのだ。クリスタルツヴァイランサーはインビンシブルテクノロジーの英智によって作り出された模造品。対等の実力を持つ存在と戦えば一瞬で崩れ去る砂の城。
だがその砂の城すら水文明の計画の一つでもある。彼等に抜かりはない。後は唯待つだけ、自分から滅亡の引き金を引きに来る愚かな存在を待つだけなのだから
火文明は水文明に侵攻を開始した。目標地点は水文明の本拠地である海中都市、そこにある筈のインビンシブルテクノロジーの破壊もしくは行われている計画の頓挫、それらが不可能な場合は本拠地である海中都市の破壊である。
深海への侵攻は通常のモンスターでは行く事が出来ず1握りの強者だけで向かう事になる。向かうメンバーは、ヒューマノイドから機神装甲達に一撃勇者ホノオ。
アーマードドラゴンからは超竜バジュラとボルメテウスホワイトドラゴン。
アーマードワイバーンからはクリムゾンワイバーンにガトリングワイバーンが集まり、残った者達は何かあった時の為に自分達の持ち場に待機する。
海中都市に侵攻した火の軍勢は都市を破壊し尽くさんと暴れ回る。水文明は計画通りに蹂躙され命を奪われていく、圧倒的蹂躙、快進撃。破竹の勢いで進む火の軍勢を止める者はいない、元から止める気のない水文明は蹂躙されていくだけだ。水文明のクリーチャー達は死んでいきその肉体を構造していたマナは仙界へと集まっていく。それこそが水文明の狙い、莫大な量の水のマナが一度に仙界へと集まる。つい最近光文明が同じように大量のモンスターが死んでいき大量の光のマナを仙界へと集まっていた。
あの光文明と火文明の戦争すら水文明の計画の一つだったのだ。
そして中央インビンシブルテクノロジーにまで辿り着いた彼等の前に現れるクリスタルツヴァイランサー。それを超竜バジュラが簡単に消し飛ばす。その瞬間クリスタルツヴァイランサーを形成していた水のマナが仙界へと流れていく。
計画は完了した。インビンシブルテクノロジーは登録されてあった最後の行動を始める。クリスタルツヴァイランサーが死んだ瞬間、貯蔵されてあった莫大な水のマナを使いマナが流れていく場所を探り当てる。そしてその場所に接続し一体の王の眠りを醒まさせる。作り出されていた一体のジャイアント、それを依り代として一体の王が復活する。
火文明は全てが終わった後、何も気付かずにインビンシブルテクノロジーを破壊し海中都市を破壊し尽くし偽りの完全勝利を味わいながら海中都市を後にした。そして少し時間だが平和な時間が生まれる、偽りの平和な時間が。
水文明の計画が発動するのは近い。
(・◇・)月☆☆日
フハハハハ!圧倒的ではないか我が軍は!今日水文明の海中都市に攻め込んだ。水文明の本拠地、光文明の本拠地を攻め入ったあの時と同等かそれ以上の戦いを予想していたのだが、敵はあまりにも弱く逃げ惑うだけでコチラが蹂躙しただけになってしまった。いやぁ俺達も戦争しまくったせいで強くなり過ぎたのかね。強くてゴメンねぇ!?ほんとごめんねぇ!?
いやぁ一番の問題であったクリスタルツヴァイランサーがバジュラさんに瞬殺されて普通にインビンシブルテクノロジーを破壊出来て本当に良かった!
地上に住まう生命体全てを絶滅させる兵器なんて作れる訳がないんだよなぁ。というかそんなもん作らなくてももう直ぐ何処ぞの仙界王達が復活して俺達じゃ太刀打ち出来ないんだからそれを待てば良いのに。仙界王が復活したら大人しく恐怖政治に従って細々と生きていこう。それで良いや、どうせエターナルフェニックスが何とかしてくれるし!
取り敢えず宣言しておこう。
勝った!超獣世界。完っ!
フハハハハハハッ!ハーハッハッハッハッハッ!
「ねぇゲット。何を書いてるの?」
「うひゃあ!?……ってなんだ姉さんか。驚かさないでよ」
後ろから聞こえてくる声に思わず上ずった声をあげながら急いで日記を閉じる。日本語で書いているからこの世界じゃ読める人はホノオさんしかいないという事は分かってはいるけど、やはり隠し事がバレそうになるのは非常に怖い、特にジャスミンちゃんには隠している事がいっぱいあるからバレてしまったら俺は生きていけない。
「……ごめんね。ゲットが嬉しそうに何か書いてたから少し気になったの」
「大丈夫!もう書き終わったから!ただの日記だよ!日記!」
ションボリとするジャスミンちゃんを励ましながら日記を仕舞う。
ジャスミンちゃんは落ち込んだ顔も可愛いなぁ。まるで妖精のようだ。妖精だったわ、スノーフェアリーだったわ。
ゲットが下心全開である事に気付かずジャスミンは朗らかに笑いながら話し掛ける。その姿を見てホノオも笑うがその精神下では絶頂しているのはジャスミンに気付かれない。さて、そんな屑と妖精は
二人して笑いながら様々な話をしていく。ホノオは自分が戦場でどんな活躍をしたのか、今回の戦いがどれだけ圧勝だったのかを
そんなゲットと赤ちゃんの頃から一緒にいて本当の姉のように過ごしていたジャスミンは自分の弟が危ない目に合わなかった事に安堵してゲットの話す言葉に相槌をして嬉しそうに微笑む。
そんな姿を見て屑はジャスミンが自分の話を聞いて「そんな危ない事しないで」みたいな感じで泣きそうな顔にならない事から今日は話しても良さそうだと自分の活躍と父親であるヴァルボーグの活躍を話していく。
屑の話を聞きながら微笑む妖精。屑はそんな妖精の笑みを見ながら精神下でまた絶頂していた。畜生の屑である。ジャスミンが彼の考えている事に気付いてしまったら混乱し泣き喚き、屑は羞恥心と罪悪感で自害を選ぶだろう。
「ねぇゲット。ゲットはお姉ちゃんの事好き?」
「いきなりどうしたの?大好きにきまってるじゃん」
「うん……お姉ちゃんもゲットの事が大好きだからね」
ジャスミンの突然の言葉に屑は本心をぶちまける。だが、悲しい事にこの大好きはジャンルが違うと屑は分かっている。
自分の好きは異性として。ジャスミンの好きは家族として、赤子の時から自分を世話をしたから生まれた母性の愛から。
故に自分の心は隠さなくてはならないと決意している。家族に異性に対する愛情を持たれているなんてバレたら大変な事になると前世の常識が囁いているのだ
「だから死なないでね。一緒に生きようね」
「当たり前じゃん。姉さん置いて絶対に死なない。約束する」
そう言いながらゲットはジャスミンに向かって小指を出す。するとジャスミンはゲットが何がしたいのか分からず同じようにおずおずと小指を出す。ゲットは小指でジャスミンの小指を絡める。
「ゆーびきりげんまんうーそついたら親父のハンマーもーらう。指切った!」
「これで破ったら親父のハンマーで殴られる!だから絶対に破らない!」
「うん……信じるからね、約束破らないでね」
そうして2人は何気ない時間を過ごしていく。この時間がもう直ぐ無くなる事に気付く事もなく