惑星サダラのサイヤ人   作:惑星サダラ

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左手に光を、右手に剣を

 サイヤ人の戦闘は数々の災害を起こしてきた。

 突然の大地震。突風。どこからともなく飛んでくる巨石。火山灰のような厚みのある埃。

 犠牲者の数も少なくない。奴隷の子どもが突風に飛ばされ、岩に激突して死ぬ。奴隷の家が大地震や巨石で壊れ、下敷きになって死ぬ。空を覆う埃は目や肺に入り込み、人体を内側から攻撃する。不調を訴える奴隷たち。サイヤ人でさえ病気になってしまう。埃は太陽光を遮り、気温を著しく下げる。さらには大地に積もっていく。植物が死んでいく。光が照射可能なビニールハウスを除いて、食糧となる植物も死んでいく。

 生まれた時から災害は起こり続けていたが、最近は特に酷くなってきた。戦闘が近い。

 

 俺がマットとの戦いで気絶してから1年。ここのサイヤ人の子どもも次々と徴兵されていき、今では残った子どもの平均年齢が3歳となっていた。ちょうど俺の年齢だ。サダラ王はいよいよ追い詰められているようだ。

 村長の娘であるダイコはギリギリのところで徴兵を拒んでいたが、彼女も徴兵されてしまったらこの村は終わりだな。

 

 俺の戦闘力はそれなりに上がったと思う。一瞬だけ高められる全力の戦闘力なら大人の下級戦士にもダメージを与えられる。もっとも、俺の場合は斬撃系の技があるから、そっちの方がサイヤ人に有効だけどね。

 むしろ最近は斬撃系の練習ばかりしている。まっとう強くなるには時間が足りないから、今すぐ大人のサイヤ人と戦えるようになろうと思うと、斬撃がいいかなってな。その分、ドレッシの下での修行は減らしている。

 修行方法は主に手に剣の気を纏って穴を掘りまくるだけ。災害のせいで奴隷の生活が厳しいので、畑を耕したり機械動かすのを手伝ったりもしている。そのために奴隷には感謝されている。心配もされているがな。徴兵を考えると、修行した方がいいのではないかとね。その度に修行の一環で力仕事をしていると答えている。

 

「ゴギョウくん、本当にドレッシさんのところで修行しなくてもいいの?」

「この穴掘りも修行だからね。気にしないで」

 

 この日、俺は奴隷が働くビニールハウス付近に穴を掘っていた。

 奴隷が身を隠すための穴だ。敵に発見されるのを防ぐというより、戦闘の衝撃波や飛来する岩で死なないように身を隠すための穴。

 特にこのビニールハウスは規模が大きく、美人の奴隷も多いので、念入りに作っておく。

 

 ん? 何か近づいてきている?

 

 俺は原作のZ戦士ほど気を読むのがうまくない。しかし、サイヤ人は気が大きく、出しっぱなしなので、よほどの雑魚でなければ気付ける。

 そして今、確実に複数のサイヤ人がこちらに向かって高速で近づいてきている。嫌な気だ。おそらく敵!

 

「お前達、早く穴の中へ逃げろ!」

「えっ」

「敵だ!」

 

 俺が叫ぶが、奴隷達は反応は鈍い。

 

「ちっ」

「えっ」

 

 俺は付近の女を抱きかかえ、穴へと飛び込む。

 

「いたっ」

 

 女を乱雑に置き、急いで穴を飛び出る。再び女を抱きかかえ、穴へと入る。

 

「うっ」

「わっ」

「きゃあっ」

 

 次々と穴へ入って行く女達。男は知らん。

 ここのビニールハウス内の女を全て穴へ入れた。男は無視して別の場所へ移動する。

 

 次いでやってきたのは工場。男達が医療ポッド、ビニールハウス、農業機械なんかを作っている。

 俺はドアを蹴破って中に入る。

 

「お前達! 早く隠れろ! 敵襲だ!」

「なっ!?」

「ちょっ、ちょっと待って! 機械を移すから!」

「ちっ」

 

 大慌てで近くのシェルターへ逃げる男達。ここはとても重要なので特別なシェルターを作っているのだ。

 男達の一部は高価な機械を動かそうとしているが、動きがとても遅い。

 

「貸せ!」

「あっ」

「す、すみません」

 

 男たちから機械を奪い、俺がシェルターへ持って行く。

 何度も工場とシェルターを往復し、重要な機械を確保して行く。

 そんな時だった。

 

 例の保育施設の辺りに邪悪な気が止まった。そして数秒後、大爆発が起こった。

 

「うぎゃああああああ!?」

「戦闘が始まったか!? に、逃げろ!」

 

 工場に残っていた男たちが一斉にシェルターへ逃げて行く。

 

 俺も、戦いに行った方がいいだろうな。

 正面から戦うと危ないから、狙いは暗殺だけど。

 

 空を飛べば敵に見つかってしまう。地べたも安心はできない。しかし地下ならば絶対に見つからない。

 俺は自分で作った地下道を通り、戦場へと急ぐ。地面は真っ暗だが気弾出しておけば光源になるので問題ない。地震の影響で潰れていたり地下水が溢れていたりするが、そこは強引に突破する。

 

 そうして保育施設付近に到着。上方から爆発の振動がひっきりなしに響いてくる。あまり出たくない。だが、逃げるだけというのもね。せっかく斬撃技を覚えたのだから使いたい。

 恐怖を押し殺し、地上へ上がる。ぴょこんと顔を出す。ここから保育施設までは1キロくらいだ。

 

「うっ、がほっ」

 

 地上は砂埃に溢れて、視界が全くなかった。戦闘の激しさを物語る。

 視界はないが、俺は気を追うことができる。上空にいくつもの気がある。

 

 敵は、8人か。やばいな。数は少ないが全員まっとうな戦闘員だ。うちの平均3歳の子どもの戦闘力じゃ相手にならない。今もバッタバッタと死んで行く。

 頼みの綱のダイコは、敵の一番強いやつと戦っている。この気の大きさはエリートサイヤ人だろうな。ダイコもエリートだが気の量は僅かに敵の方が多い。

 

 これ、勝てるのか? 俺一人で。無理っしょ。逃げよう。

 でも、実験してみるくらいはいいんじゃないか?

 

 俺が編み出した暗殺技。使わずに逃げるのはもったいない。

 

「ぐ、ぐぬぬぬぬっ」

 

 技1、気円斬。

 クリリンのと同じやつだが、作るのにとても時間がかかるし、遅い。たぶんクリリンの気円斬より大分質が劣る。

 

「はあ、はあ、はあ」

 

 約1分で一個完成。右手の上に準備しておく。

 

「ぐ、ぐぬぬぬぬぬっ」

 

 そして技2、繰気閃光弾。

 ヤムチャの繰気弾と天津飯の太陽拳を合わせた技。ヤムチャの繰気弾と違って遅いし攻撃能力もないが、ピカッと光るぞ。

 

「くくくっ」

 

 右手の気円斬。左手の繰気閃光弾。

 閃光弾で目を眩ませているうちに気円斬でザクッと切って殺す。完璧だ。我ながらえげつない技を考えついたものだ。

 

 しかし、何度も同じ手が通用するわけではないだろう。一度見られたら二度通用するかは分からない。だから、一撃で決めて、しかもこの戦いの勝利を確定させたい。

 ならば、敵のボスを殺すしかない。

 

 高速で動く敵のボスとダイコ。俺の実力では2人の動きを捉えることさえ難しい。目で見るにしても、気を追うにしてもだ。

 しかし、いつまでも高速で動くわけではない。時々ボディブローが響いて止まったり、岩にぶつかって止まったりする。そこを狙うしかない。

 

「ふんっ、雑魚が」

「ぐあああっ!」

 

 敵のおっさん。長髪でムキムキの大男がダイコを蹴飛ばす。ダイコは隣の山まで飛ばされ、その山にぶつかることで山を吹き飛ばす。それでやっと動きが止まる。

 

「その程度か! サダラの女は!」

 

 山に向かって叫ぶおっさん。

 

「おいおいタスレ! いい女なんだから殺すなよ!」

「がははははっ! こいつらガキばっかで戦いにもなんねえからよ! 女で楽しもうぜ!」

 

 村の子どもと戦っている敵のおっさんが、上空のリーダー格へと叫ぶ。

 彼等はかなり余裕がある。ダメージ1つ負っていない。

 

 いや、一人だけ苦戦している男もいる。というか負けてるな、あの男。エリートサイヤ人の娘、コリーに。単純にコリーの方が気が大きいし戦闘の才能もありそうだ。あれは楽に勝てるだろうな。コリーは戦いが嫌いだからなかなか止めを刺そうとしないけども。

 

 他の敵は、コリーに負けている男に対し、加勢する気配はない。一対一だし相手が女の子だからな。サイヤ人の誇りかな?

 いずれにせよ、相手のボスの動きが止まっている。今がチャンス!

 

 食らえ、繰気閃光弾!

 

 左手からバシュッと閃光弾を放つ。そいつは真っ直ぐ敵のリーダーに飛んでいく。

 

「ん? なんだこのヘロヘロのエネルギー弾は?」

 

 敵のリーダーは不思議そうな顔をして、片手を気弾に向ける。軽く掴んで押しつぶすつもりらしい。

 

 弾けろ! 閃光弾!

 

「うおっ。眩しっ」

「うえっ」

「鬱陶しいなあ。誰がやりやがった」 

 

 よし、閃光弾成功! 俺も光のせいで目は見えないが、おそらく敵も同じ状態のはず。

 だが、俺は気の気配で相手の位置が分かる。

 

 行け、気円斬!

 

 投げてすぐ、その場を移動する。気円斬が万一かわされてしまった場合、気円斬が飛んできた方向から俺の居場所がつかまれ、爆撃されるかもしれないからな。

 

 さささっと敵のいない方向へ移動する。且つ、ここには俺の作った地下道があるので入っておく。

 

 おっ、感じるぞ! 敵のリーダーの気がガクンと落ちた! もう死にかけだ!

 よし! 俺は賭けに勝ったんだ!


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