アップデート?で色々と追加されましたねぇ。色がつけられるようになったのは驚きです。
色々試そうかなと思ったけど、今回はお試しで最後の方に少し入れてます。色は多用したら変になりそうですね。重要な部分だけで行こうと思います。
今回はスパルタクスの活躍は特にないよ!
あと文字数少なめです!済まない
男は真祖と呼ばれた。
人々がとある人間────ウラド・ドラキュラを血を吸う悪魔だと蔑み、それを吸血鬼と侮辱した。本人は決して血を飲んだ訳でもないが、彼の所業がそうさせたのだ。
しかし、ウラド・ドラキュラは吸血鬼では無い。ウラド・ドラキュラ公は列記とした人間である。しかし人々は確かに恐怖した。
ドラキュラ公に、吸血鬼に。
そんな畏れの感情は暗闇にて密に集まり、やがて人の形を形成した。
紅い眼をした一つの種族。新たに誕生した怪物。人々はその怪物による被害が増えるにつれて、更に畏れ慄いた。
架空の存在であった吸血鬼は、異例の速さで妖怪となった。
そんな真祖のスカーレット卿は、凄まじい力を持つ吸血鬼だ。
ウラド公が授かった異名「ツェペシュ」を模したかのような力。
『ありとあらゆるものを貫き穿つ程度の能力』
あらゆる防御を突破しうる究極の一点突破。そんな一撃を放つ事が出来る。
彼は強い、当然だ。天狗に近い速度、鬼に近い力、魔法使いのような魔法適性。
ありとあらゆる面において優れた力を持つ吸血鬼が、それら全てを『防御不能の一撃』に変えることが出来るとすれば・・・・・・弱いわけが無かった。
「ふふふははは!吾輩に従えばその命は奪わんでやろう!!さぁ、吾輩に下るがいい」
多くの中級妖怪達は、そんなスカーレット卿の強さに恐れをなして庇護下に入った。反抗したものは殺され、そしてそれを止める人物は誰もいなかった。
「やはり、おかしい」
スカーレット卿はそう呟いた。思わず出てしまったというような、そんな感じだ。
彼は現状を怪しんでいた。何を、と言われれば、大した邪魔が入らない事だ。
確かに、吸血鬼が誰も戻ってこないのは驚いた。しかし、妖怪の賢者と呼ばれる八雲紫を相手取っているのだ。その程度なら有り得るだろう。
だが仮に八雲紫に吸血鬼達を殺されたとして、何故自分を邪魔しないのか。
それがスカーレット卿には分らない。
本来ならば部下の吸血鬼達が中級妖怪を襲い、味方につける計画だ。それをスカーレット卿が自らやっているに過ぎない。確かに速度は落ちるが確実性は増す。
止めにこないはずがないのだ。
「(まさか腑抜けているのか?)」
スカーレット卿は考えを巡らせていく。八雲紫以外にも敵対勢力は存在する。
天狗だ。
妖怪の山に住む天狗達は、数といい統率力といい、吸血鬼と真正面から戦える勢力であることは間違いない。
中級妖怪達を掻き集めている今、彼らが動かない道理は無いのだ。
妖怪を集めるということは即ち、戦争を起こすための兵を集める事だ。
敵軍が自軍のお膝元で軍隊を編成しており、自軍にはそれに対抗する戦力がある。
ならばどうするか、など考える必要も無い。より強大な戦力を得る前に潰すのだ。
その程度天狗たちに分からないはずもない。
「(ならば・・・・・・なぜだ?)」
スカーレット卿は考える。
「(吾輩は泳がされているのか・・・・・・?だが、だとしたら何故だ?)」
しかし、スカーレット卿は考えていない事があった。
自分があまりにも強く、やっている事が明らかに目立ち、尚且つ悪い事だから。気がつけなかったのだ。
『自分が忘れられている』
『自分よりも先に解決しなきゃいけない事がある』
『やべぇ人妖のバランスがやべぇ』
そう、彼は忘れられていた。
仮に覚えていたとして、八雲紫と妖怪の山からはこう思われることだろう。
山「あれ?スパルタクスと比べると可愛いもんじゃね?」
紫「それよりもバランスやばくね?妖怪の山損害どれくらい?」
山「不味いですわぁ。正直、吸血鬼は対処いらなくね?」
紫「確かに。中級妖怪達が徒党を組んだところで一掃すればいいね」
山「え?きゅうけつき?なにそれって感じですわぁ。人間怖いわー」
紫「中級妖怪達増えすぎてるし間引きできて一石二鳥じゃね?人間と言うか笑顔筋肉が怖いんだけど」
山「新人に掃除任せるかぁ」
紫「そうねー」
実際、こんな会話は無かった。なにせスパルタクスが未然に防いでいる。だが、概ね彼らの意見としてはこんな感じに違いない。
「(だが・・・・・・仮に泳がされていたとしても計画は続行する。いや、せねばなるまいよ。このスカーレット卿の名を世に知らしめるためには)」
彼は知らない。もうすぐその原因がやって来ることを。
ドゴォンッッッ!!
爆音が響く。
「なんだ!?」
驚愕し、しかしスカーレット卿は即座に理解した。
─────────襲撃だ。
油断させた後に攻め入るつもりだったのだと。おそらく外には空を埋め尽くすほどの天狗と、そしてあの八雲紫が居るのだろう。
そう考えてスカーレット卿は広い廊下を飛んで移動する。空気を貫く矢の如く、彼は飛翔する。
音の出処は何処だ。吸血鬼の優れた聴力を全力で使用し、周囲の音を探る。
そうすれば妖精のメイドやゴブリン達があわてふためきその現場へと向かっている音を聞き取った。
「そっちか───!」
どうせ屋敷は跡形も残らないだろう、とスカーレット卿は壁を突き破る。
何度も何度も壁を貫き、やって来たのはこの館、紅魔館のホールだ。
二つの階段が伸びる、城のような作り。赤いカーペットが敷かれ、月を象ったステンドグラスが正面にデカデカと存在している。
このステンドグラスは月の明かりを室内に届かせるための強力な魔道具だ。ここは玄関ホールでありながら、さながら処刑場であった。
スカーレット卿はそこに一人の男を発見した。重厚な扉を突き破ったのだろうか、扉は破壊されており、男は地面を抉りながら滑り込んできたようだ。男は倒れており、しかし何故か笑っていた。
ひと目でわかる狂人に、スカーレット卿は話しかける。
「貴公は八雲紫からの刺客か何かか?」
一般人からすれば唐突な話で混乱するだろうが、それが刺客であれば十分に伝わる内容だろう。
もとより、話し合うつもりなどないし、殺す気マンマンのスカーレット卿なのだが・・・・・・。
「八雲紫っ、圧政者の事か!」
スカーレット卿が八雲紫の名を出しただけで、男の目はギラギラと輝き、笑みがよりいっそう強くなる。スカーレット卿は見抜いた、八雲紫と目の前の男は敵対関係にあると。そして未だに男が生きているという時点で余程の強者だという事も。
「・・・・・・では聞くが、吾輩の元に付き八雲紫を倒すつもりは無いか?」
「ほぅ?」
男は今気が付いた、と言わんばかりにスカーレット卿を見る。その目は何かを探っているようで実に不愉快だとスカーレット卿は感じた。
「私の名はスパルタクス。叛逆者である。ところで君は─────圧政者だね?」
何かを確信したように、スパルタクスは立ち上がる。
スカーレット卿も確信した。これは敵だ。いや・・・・・・爆弾だ。とりあえず放り込んでおけば好き勝手暴れる手駒だと。
「厄介なものを放り込んだな・・・・・・!八雲紫!!」
スパルタクスが両腕を大きく開き、立つ。「来い」と言っている。スカーレット卿は理解し、けれどその誘いに乗らない。
彼は狡猾だ、圧政者にして叛逆者でもあり、殺戮者でもあった。
「ふん、くだらん。貴公は飛べないのだろう?ならば吾輩は空を飛び、魔法を使うだけで良い」
「ははははは!素晴らしい。だが、それは先日乗り越えた!」
「─────何?まさか貴公、ほかの吸血鬼を倒したのは・・・・・・!」
「私である。」
スパルタクスが言い放った紛れもない事実が、スカーレット卿を警戒させる。
「(吸血鬼100体を1人でだと・・・・・・?!いや、待て。闇討ちを繰り返せば・・・・・・ダメだ、斥候として放ったな数人以外は纏まって行動するように命令した。奴らがそれを破るとは思えない・・・・・・つまり、この男はそれらを全て殺したのだろう。)」
スカーレット卿は指先に小さな魔力弾を生成する。そして、その弾に能力を付与した。
「仕方あるまい・・・・・・!」
放たれた魔力弾は、空中で四つに分裂し、スパルタクスの四肢を全ての貫いた。その威力は凄まじくスパルタクスの四肢が千切れ飛ぶ。
「ぬぅ、イイぞぉははははは!」
「狂人めが・・・・・・ふむ、地下のあの部屋にコイツを放り捨てろ」
「おお!!私を縄で縛るか!!ははははは、圧政、圧政である。より強く縛られ、より強く虐げられた時こそが叛逆の真価ッ!」
スカーレット卿は半目になってスパルタクスを見る。回避されると思っていた一撃はまさかの直撃、更には多少暴れたものの、縄で縛られた後は大人しく連れ去られる。
「(何しに来たんだ・・・・・・)」
実は彼、スパルタクスは妖怪の山侵攻中、最奥部にて天魔の本気の一撃でこの紅魔館まで吹き飛んできたのだ。
天魔は紅魔館と潰しあってほしいなぁーと送り込んだのだ。
なのでスカーレット卿が考えていた、襲撃という可能性は間違っていない。実質彼らは爆弾を抱え込んでしまった。
「やっと・・・・・・やっと来てくれた・・・・・・!」
しかしそれも、今までも・・・・・・一人の可憐な少女の願ってきた、微かな希望の現れである。
その日、少女は──────
マッスルッッッ!!!!!!(大声)