どうも、圧政者サン。シフシフですまない。
日にちが空いてすまない。
フィギュアヘッズが楽しくてすまない。
今回は物語りが割と進むような進まないような感じなんだすまない。
向日葵畑と言えばあの人だがすまない。
とりあえずすまない!
その男は───────太陽の畑に来ていた。
向日葵が太陽を追いかけ顔を向ける。
緑髪の少女が、そんな向日葵に水をやっていた。
微笑ましく、絵画になりそうなのどかな風景だ。人々がこの一瞬を見たのなら、きっと忘れられない思い出となるだろう。
目の覚めるような光景、目の覚めるような美人。目の覚めるような─────────一撃。
ここに人々はやって来ない。
なぜなら、そこには1人の少女がいるからだ。
最強の一角。幻想郷と言う魑魅魍魎の跋扈する闘技場の一角を、たった1人で担う少女。
まさしく化け物。
更に、人の寄り付かない理由としてはその性格にあった。残虐で無慈悲、一切の容赦が無く殺しにくる大妖怪。
・・・・・いや、語弊があった。寄り付かないのは人々だけにあらず。
同じく妖怪、怪物・・・・・魑魅魍魎達もここにはやってこない。この美しい花畑にはやってこない。
美しさに目を奪われれば、奪われるのだ。物理的に目を、否、全身を。
つまり。そこにスパルタクスがいるということは、何が起きるかなんて予想通りの予定通り。
計画ずみの計算尽く。
予想可能回避不可能。
そう──────────ティータイムである。
「へ、へぇ、そ、そそ、そうなの・・・・・」
「うぅむ、良いぞ!良い味だぁ!」
「ど、うも、ありがとう・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?・・・・・んん??
これは、どうしたと言うのだろう。
血を血で洗い、殴って蹴って斬って叩いてを繰り返す、血塗ろ☆レスリングの開催はまだだろうか。
なぜ彼ら彼女らは呑気に茶を嗜んでいるのか・・・・・分からない。わからな過ぎる。
「あ、あの、その・・・・・お名前・・・・・聞いてもいいかしら?」
幽香が若干おどおどとした風にスパルタクスに訪ねている。
なるほど理解した、これはスパルタクスが急に押し掛けたと思ったら茶を要求し、あれやこれやと言う内にティータイムに突入。
そして今更ながらに「誰だこいつ・・・・・」となっているのだろう。さしもの風見幽香と言えど、狂人の扱いはよく分からない様だ。もしかしたら1発殴ったのかもしれないが、コイツなら喜ぶだろう。扱いに困るのも頷けるというもの。
「おぉ!すまない自己紹介を忘れていた。私の名はスパルタクス。叛逆者である」
「そう。ねぇスパルタクスさん。・・・・・その、いつになったら帰るのかしら?」
自己紹介をした事で冷静になったのか、幽香はそう切り出した。
確かに、青ざめた皮膚に、筋骨隆々で2mを超える肉体。股間以外隠さない近未来叛逆ふぁっしょんだ。
少女の家の前に居るには似つかわしく無いだろう。と言うか事案案件だ。
帰って欲しいと思うのも頷ける。
それに対し、スパルタクスはお茶を飲み「ふぅ」と一息ついた後、向日葵を見つめ出す。
顔は柔らかな微笑みを浮かべている。
その視線の先には幽香が手塩にかけて育てた向日葵達。
幽香は警戒している。「こいつ、花盗む気か?」と考えているのがありありと伺える。
「素晴らしい。全ての花々が皆、喜びに満ちている。美しい光景だ・・・・・」
「・・・・・!」
しかし、予想は裏切られた。衝撃的な事実だが、スパルタクスは美しさを語れる男だったのだ。スパルタクスは語った。
向日葵が如何に素晴らしいのかと。
「向日葵は常に太陽を見ると言う・・・・・私も常に圧政者を睨みつけてきた。決して目を離さず前を向くのは難しい、苦行である。」
スパルタクスはどうやら太陽を強大な敵・・・・・つまり圧政者として比喩し、向日葵を叛逆者として捉えたのだろう。
正直、お金やご飯をくれる大人に付いて行く子供達・・・・・の方がわかりやすいと思うのだが。
「そ、そうなの・・・・・ここの花は全部、私が育てたのよ。種からね」
「おぉ、そうであったか。ははは、では礼を言わねばなるまい」
「お礼?」
「しかし、私は何も持っていない。故に、感謝の言葉で表そう。行動にて示そう・・・・・ありがとう風見幽香。この景色を何時か、幻想郷中に広げるのだ!!」
「えっ・・・・・!」
ポッ!と頬を赤く染める幽香。
幽香は花の妖怪だ、花畑はある意味本体と言っても過言では無い。
そんな花畑で幻想郷を染め上げよう・・・・・つまるところ、プロポーズ。
幽香はそんな熱烈な言葉に、言葉を失ってしまった。
さて、セリフを翻訳しよう。
スパルタクスは向日葵畑の様な幻想郷にしよう、と言いたいのだ。更に言えば向日葵とは叛逆者の比喩としてスパルタクスは扱った。
つまり、幻想郷を1つにまとめ上げて叛逆しようぜ!
という事を言っているのだ。勧誘である。
「・・・・・・・・・・わ、私なんかで・・・・・いいのかしら?」
しかし、何たる事か。この少女・・・・・風見幽香は、コミュ障で乙女思考で恥ずかしがり屋で家庭的な娘だった。
人を殴ったのはいきなり話しかけられたから驚いて。
妖怪を殴ったのは襲いかかって来たから。
残虐だとか言われているのは逆ギレして復讐に来た天狗一行を返り討ちにしたから。
紫に殺意を向けるのは単純にウザイから。
このように何一つ悪いことをせず、人が来ない事を悲しく思い、時折迷い込んでしまう外来人には人里を教えてあげて、怪我をしていたら薬草で治療してあげるのだ。
・・・・・そんな彼女に恋愛経験は無い。誰かを好きになった事はあるが、その名声と性格が邪魔をして近付けず、遠くの花の影からそっと見守る。その程度の経験だ。
更に言えばそれが長ーく続いたもので、こうして怖気ず近寄ってきて、挙げ句の果てにプロポーズなどされてしまえばイチコロだ。ワンパン、まじワンパンだから。まじ、これマジ。
と言ったくらい、敢えて乏しい語彙力で強調するほどにはチョロイ。
顔を赤くする幽香に対し、スパルタクスの返答は決まっていた。朗らかに笑って答える。
「当然である。共に歩もうでは無いか同志よ!はははは!」
「〜〜!!」
私なんかが彼女で平気?という問に対し、当然だ、一緒に生きよう。と返された。少なくとも幽香はそう考えている。
そして、スパルタクスの中では一つの方程式が組み上がっていた。
叛逆に誘う→叛逆者増える→圧政者倒せる→みんな幸せ。
狂った思考は、決して少女の恋心を弄んでいるなどと考えてはいない。
と言うか、スパルタクスとて理解しているのだ。見目麗しい少女達が、自分のような『朗らか抱擁系マゾヒスト筋肉ダルマ』に恋などする訳が無い、と。
故に、こうして勘違いは起きてしまった。
とは言え強力な仲間が増えたことに変わりはない。
スパルタクスは満足そうだ。幽香もとても嬉しそうにしている。なら、いいでは無いか。
「あ、その!」
「なんだね?同志よ」
「む・・・・・その同志はやめて欲しいわ。幽香って呼んで」
「わかった。で、何か用かね幽香」
「えっと、そ、そのね・・・・・」
幽香は一大決心をしていた。この短い時間でだ。
そう、同居である。
初心な生娘であることがバレバレである。まだ距離感が掴めないのだ。普通なら付き合ったら少しづつデートを重ねていき、その果てに同居は成る。
「す、住む場所はあるのかしら?スパルタクス」
「ふむ・・・・・」
とは言え、スパルタクスに強要する訳には行かない。幽香は我慢した。そしてそれは大正解だった。もしも「スパルタクス、貴方はここに住みなさい。いえ、住め!」とか言っていたら死んでいただろう。
スパルタクスはスパルタクスで考える。
住む場所はあるのか。スパルタクスは首を横に振るだろう。なにせ自分の家は無い。正直無くてもいいのだが・・・・・無いのは不便ではある。それもまた苦境、とか言って楽しめる男ではあるのだが質問には答えなくてはならない。
「宿泊できる場所はある。しかし、私個人の家は無い。だg「本当!?」ウム」
だが、と続けようとしたスパルタクスの話しに割って入り、幽香は興奮したように再確認する。スパルタクスは再確認されたので頷づいた。ただそれだけだ。
幽香は考えた。スパルタクスは外来人で、宿に泊まっている・・・・・なら、もう家で一緒に住んでも問題ないよね!と。
問題だらけの穴だらけだが、もとより相手はバーサーカー。話など通じないし、通じて見えるのは偶然なのだ。
「その、私の家で良ければ・・・・・一緒に住まない?」
「ほう・・・・・」
幽香は己の勇気を振り絞り、言った。
スパルタクスは考える。
叛逆者の本拠地に、この向日葵の畑はどうか・・・・・素晴らしい、その一言に尽きた。
実はこの男、迷い込んだ訳ではない。人里で情報収集を行い、圧政者っぽい奴をリストアップ。その後、こうしてやって来た。
だが、風見幽香は安全だとスパルタクスの本能は告げた。しかし、それら情報もあながち嘘という訳では無く、尾ひれがついてまわったのだと理解した。
敵は寄り付かず、人里からの距離も遠すぎることはなく、尚且つ花を扱う能力を持つという幽香が居れば決して敵は近付け無い。
即ち砦。
叛逆者の集う砦としては完璧に近い。
「ありがとう幽香。感謝する。私は君の同胞だ。君の剣として、盾として!!共にあろう!ははは」
「!!・・・・・ふふ、嬉しいわっ。よろしく、私の剣士様?じゃあ家の中に入りましょう?」
霧雨から新しい剣を貰っていたスパルタクスは、幽香に敬意を表し、戦士として誓いを立てる。
幽香からすれば重ねて告白されたようなものだ。真っ赤になって、ニヤニヤを隠しきれない様子で家の中に入っていく。
スパルタクスは付いて行くが、ふと思いとどまる。・・・・・このまま進むと頭をぶつけてしまう。
スパルタクスは屈んだ。しかし、どうした事か。進めない。
「む・・・・・?」
スパルタクスはチラッと横を見る。肩だ。肩が引っかかる。扉が小さく、入り切らないのだ。
スパルタクスの頭は高速回転した。この状況を打破するには・・・・・!
そしてついに行き着いた至極真っ当な答え。そう、外せばいい。扉を外せば中に入る事は出来る。
「ふんっ!」
ブチぃ!と片腕を引っこ抜く。違う、そうじゃない。
そして外に投げ捨てる。だが、ただ投げ捨てては向日葵畑が汚れる。なので全力で遠くへ。何も考えず全力で投擲した。だが、そうじゃない。
その後幽香の可愛らしい悲鳴が上がるが、それはまた別のお話し。
妖怪の山付近。スキマが開く。
「い、居ないわよね・・・・・?」
怯えながら顔をチョコンと出したのは、ヘナチョコゆかりんだ。
右よし、左よし、もう1度右よし。
「本当に居ないわよね?」
念のためにもう1セット。
しかし、スパルタクスは居ない。紫はホッとして、豊満な胸をなで下ろす。
しかし。
「んにゃぁ!?」
スキマから出た途端、何かが頭にクリーンヒットした。
「何なのよ!!誰よこんな腕投げた奴!・・・・・腕?」
憤った後、冷静になる。目を点にして、手の内にあるその筋骨隆々な青白い腕を見た。
─────めっっっっちゃ見覚えがあった。
「ひぃいいいい!イヤァァァアア!!」
紫は一目散に逃げ出した。
スキマを開いて家に猛ダッシュ。
襖を開いて押し入れから敷き布団を先攻ドロー。掛け布団を後攻ドロー。
布団にアクロバティックに侵入し、夢の中にボッシュート。
こうして、妖怪の山での会議は後回しにされるのだった。
「って紫様何してるんですかーーーーー!!!」
「だってだってぇ!!怖いのよ!恐ろしいのよ!!外出れなぃいいい!!」
ヘナチョコゆかりんは部屋に閉じこもり、結界を張って恐怖に耐えた。
耐えて、耐えて、耐えて・・・・・いる内に眠ってしまい、更に藍に怒られることになるが・・・・・それもまた別のお話しだ。
ゆかりんとゆうかりんの関係。
ゆかりん、ゆうかりんの本性(ド親切)に気が付く。
→仲良くならなきゃ!私の癒しを増やすのよ!(行動開始)
頑張って近づくが空回りし続け、結果としてウザがられ、更には「八雲紫を追い払う凄い妖怪が居るらしい」と腕自慢のバカ妖怪達がゆうかりんの元に押し寄せ、ゆうかりんはブチ切れた。
ゆかりんはまだ仲良くなる事を諦めていない。
が、スパルタクスに取られた。
悲しいね。
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