アッセイ!(挨拶)
なんと言うか、ワンパターンになってしまう。
次の話はあれだ、ほのぼのを目指そう。
スパルタクスは歩き始めた。
と言っても、何処へ?と言われれば、決まった場所などない。
本能のままに飛び出してきたのだ、帰り道など分かるものか。
既に傷は癒えている。ネタバラシをすると、八雲藍の全力の一撃を受け止めながら、
今までの戦闘で溜め込んだ魔力の殆どを、藍の攻撃の相殺と体の回復に注ぎ込んだ。
「あぁ」
なんと言う叛逆であったか。スパルタクスは思い返す。
圧政者が必死の形相にて放つ攻撃を、このスパルタクスの咆哮は打ち消したのだ!と。
圧政者が与えた苦痛の数々は全て無駄となり、結果、負傷したのは圧政者だけである。
圧倒的と言って差し支えない勝利である。
さて、そんなことは置いて置いて、スパルタクスは何処に行くのか。
実は、何と!スパルタクスは何も考えていない。
驚愕の事実だが、スパルタクスは弱者を守ること、圧政者を倒すこと位しか考えてないのだ。凱歌を歌おうにも、歌うべき場所は知らない。
なので今はテキトーに歩いてなにか起きるのを待つしかない。
なんて、考えていた時だ。
「随分と楽しそうに笑っていたが・・・・・何かあったのか?」
スパルタクスが叛逆の余韻に浸り同じ場所をぐるりと回っていると、黒い髪の女性が話しかけてきた。服装は赤と白の巫女服に見える。
「なに、圧政者に一太刀浴びせたのだよ」
そう言ってスパルタクスは特に驚くことも無く、また、戸惑うことも無く笑顔で振り返りそう言った。
尚、振り向いた時に見えるのが圧政者だったらいいなぁ。と、思っていたり思ってなかったりする。
「圧政者・・・・・?まぁ・・・・・よくわからないが、余程の妖怪と戦っていたのだろう。周りを見ればよく分かる。妖力が並々と漂っているしな」
「うむ、その通り。猛獣であり、圧政者でもあった。だが!あの程度では私の体は無傷である!」
・・・・・古傷だらけではあるのだが。
「なるほど、確かに目新しい傷は無さそうだ。余程の手練と見える。少し話でもしないか?私は知人が来るのを待っていてね」
「うむ、いいだろう」
スパルタクスは話を聞く様だ。これは驚くべきことである。なにせ、あのスパルタクスだ。
ニッコリとした笑みを、優しげな微笑みに変える。
「とは言え、立ち話ではなんだろう?見た所、力が自慢と見える。そこらの木を斬って貰えないだろうか?」
と言うかこの巫女。古傷だらけの青白い肌をした巨漢相手に一切物怖じしない。実際スゴイ。
「私の名はスパルタクス。よろしく頼むぞ、同士よ」
「え?あ、あぁ。知ってるとは思うが、博麗の巫女だ」
「ふぅん!!」
「・・・・・聞いてないな?」
スパルタクスは巫女の話を完全にスルーし、椅子を用意した。しかし、少し違う点があるとすれば、斬ったのでは無く、引っこ抜いた事か。
ちなみに、巫女は斧を手渡していたのだが・・・・・。
なぜ巫女が斧を?・・・・・それはもちろん、何処ぞの妖怪に投げつけるためである。
「まさか引っこ抜くとは思っていなかったよ」
「ははは、では、私は行くとしよう」
おおっと、今までの地の文はなしだ、無し。やはりスパルタクスは話を聞かないらしい。
「いやいやいや、少し可笑しくないか?」
「何を言う。あちらで戦いの気配がしているのだ。弱者を守ることは使命である。私は、ユク」
ツッコミを入れる巫女に、スパルタクスは自らが感じ取った事を伝える。
そう、この近くで戦闘があるのだ。彼の知覚能力は非常に高いらしい。
「・・・・・そうか、引き止めることは出来ないな。では気を付けてくれスパルタクス殿」
「はは、ありがとう博麗の巫女!最も狭き牢獄に繋がれた奴隷よ!!いつかその枷を外し、共に叛逆を成そうっ」
背中を巫女に向けたまま、手を振ってそう叫ぶ。
数秒としない間に、スパルタクスは森の中へと消えていった。
「はぁ・・・・・」
青白い肌が、視界に入らなくなって数秒。巫女は小さくため息を付く。だが、決してイラ付きなどは無いように見えた。
「そうか・・・・・貴方は分かってくれるか」
横に倒された木に腰掛け、そっと空を見上げる。
この幻想郷に張られた結界。
博麗大結界。
これは、妖怪達を守る物だ。決して、人を救うものでは無い。
その維持のため、私は生きている。
「それにしても・・・・・遅いな、紫達は」
この日、紫達は此処には現れなかった。
決して不満はない。だが・・・・・僅かな────
霧の湖。その湖畔に、一つの館があった。
赤く、朱く、そして紅い。
名を、紅魔館。
吸血鬼の住まう悪夢の館である。
「──────くくく・・・・・」
そんな館の一室。カーテンが全て閉められた真っ暗な部屋の中、1人の吸血鬼はほくそ笑んでいた。
「八雲紫、貴様を殺し、全てを我がものにしてくれる・・・・・くくく・・・・・はーっはっはっは!!」
吸血鬼が両手を大袈裟に広げれば、何かがバタリと倒れ込む。
吸血鬼が手を叩く。そうすればすぐ様、執事が部屋へ入り、それを片付けた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そう、言うまでもなく分かるだろう。圧政者である。
しかし、今は『まだ』スパルタクスにバレていない。
霧雨はスパルタクスが居なくなってから、日曜大工に励んでいた。
トンカチを持ち、釘を持ち、譲ってもらった廃材を再利用して入り口を直す。
さて、いい汗をかいてきた頃合で、てってってっ!と軽い足音が。
「おっと、まいったなぁ。魔理沙が帰ってくる前に直そうと思ってたのにな」
どうやら霧雨には小さな子供が居るようで、その子が帰ってきたと考えたらしい。
だが、残念な事に帰ってきたのはその魔理沙と言う子供では無い。
「あ、あのっ!」
やって来たのは1人の少女。
「お?どうしたんだい?お客さんかな?」
自分の予想が外れた事に少し驚きながら、霧雨はお菓子を取りに行こうと店の中に踵を返す。
いや、返す前に聞き捨てならない単語が聞こえたのだ。
「攫われちゃったの!!魔理沙ちゃんが!攫われちゃったの!!!」
「・・・・・な、に・・・・・?」
血の気が引くとはこの事か。血塗ろのスパルタクスに出会った時よりも、傷口が既に無く、妖怪かと怪しんだ時よりも。体から全てが抜けるような、そんな感覚がしたのだ。
「・・・・・っ!!」
しかし、それも一瞬の事。店の中、武器や防具、巫女のお札など、身を守るためのものをかき集める。そして金もありったけ。
「君!慧音さんには!?」
「ほ、他の子が言ってるよ!」
「ありがとう!!」
霧雨は少女に礼を言って駆け出した。
目的地は上白沢慧音・・・・・人里の守護者の元へ。
ひた走ること2分。大きな広場には既に特徴的な髪の女性が立っていた。その周りには屈強な男達が。
「はぁ、はぁ・・・・・慧音さん!ウチの子が・・・・・!これも、使ってくれ!」
「これは、霧雨殿。あぁ、話しは聞いているよ」
霧雨は背負ってきた風呂敷を開く、中には店一番の品々が。
そんな様子をみて慧音は目を細め、しかしすぐさま真剣な表情へと戻った。
「いいか皆、相手は確実に妖怪だ。それも、新参者だろう。人里に潜り込み攫って行ったようだ。早急に救助に向かうぞ!」
「「「おおぉおお!」」」
霧雨も防具を着込み、槍を背に背負う。戦う気なのだ。
「・・・・・そうか、行こう。霧雨殿。魔理沙ちゃんを助けるぞ」
「はい!」
森を、青白い塊が駆け抜ける。
「はーははははははははっ!!!どこだ!何処にいる!」
そう、スパルタクスである。
彼の並々ならぬ嗅覚が、こちらで弱者が虐げられており、なおかつその場に圧政者がいると告げていた。
「ふははははは、我が愛からは逃げられぬ!!おぉ!愛!愛だ!」
そんなこんなで走り続けること30秒。一瞬、木々の間で金髪が踊った。
「圧政者かっ!?」
この男、金髪に敏感になっている。
なにせ、今のところ出会った圧政者は皆金髪、スパルタクスの頭では「この闘技場における圧政者は金髪。」なんて理論が完成しているかもしれない。
足が沈み込むほど思いっきりブレーキをかける。地面がいくらかめくれ上がったがそんな事は気にしない。
スパルタクス、大喜びで圧政者がいると思しき場所に飛び込んだ。
「雄々おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
後に、この日の出来事は霧雨によって語られる。
曰く──「人間って妖怪だったっけ?」
さて、そんな事は置いておいて時間軸は戻ってくる。
スパルタクスは見てしまった。
「おぉ!んん?圧政者か」
金髪の幼女に今まさに遅いかからんとしている貴族っぽい男性達。そう、明らかなロリコンか、若しくは自分よりも立場の低い者に何かを強制させる圧政者か。
どちらも同じような気がしたのでスパルタクスは喜んだ。
「な、なんだ貴様は!へんな叫び声と共に現れおって!妖怪にでも追われたのか?!」
「否、追ってきたのだ!!」
「なっ───!!」
速攻。
もうパッと見で圧政者。瞬時にわかる圧政者加減に、スパルタクスは行動に出た。
そう、パンチである。
しかし、なんという事か。圧政者は血煙になるのでは無く、霧となって攻撃を回避したではないか!
スパルタクスの脳裏に、懐かしいものが思い浮かぶ。
そう、たしか、こんな感じに避けるやついたよなぁ、圧政者で。
と言った緩い感じで思い浮かべた。ちなみにヴラド公である。なお、なぜ緩いのかと言うと、本人はヴラド公を倒したつもりだからだ。
「ぉお滾る!再戦の時か!!ははは!!叛逆をせねば!」
・・・・・どうやらそこらにこだわりは無いようで。
何度もなんども殴りかかる。しかし、全てを避けられてしまう。
だが、スパルタクスも負けていない。さり気なく、子供から男達を引き剥がした。考えての行動だろうか?否、まぐれである。
「ぬぅ?大丈夫かね、少女よ」
「うぅ、ひっぐ・・・・・怖いよぉ」
スパルタクスがニッコリと金髪の少女に話しかける。安心したのか余計に怖がったのか、女の子は泣いている。
それにより更に闘志が燃え上がった。
子供とは弱者の筆頭。
最も守られるべき存在。
であれば成すことはただ一つ。
「安心したまえ、私が君を守ろう」
スパルタクスの思考は「最も困難な状況」を選ぶ。故に「圧政者を滅ぼす」から「圧政者から子供を守りつつ、圧政者を滅ぼす」に変化する。
そう、スパルタクスはこの子に一切の傷を付けず助ける気なのだ。
「はっ、下らない」
「人間ごときが我々に歯向かうか!」
「死ね、劣等種」
わぁお。素晴らしい。完全な圧政者である。スパルタクス君のボルテージがぐんぐん上がっていく。
その爛々と輝く両眼は、目で殺せそうな程。きっと何時か見るだけで圧政者を殺せるようになる事を夢見て。
「さぁ!来るがいい!!・・・・・君は私の後ろにいたまえ」
スパルタクスには勝算しかない。いや、正確には自身が負ける姿を思い浮かべるという事が出来ない。
ゆえに、その圧倒的なまでの自信とキュートなスマイルが相手を怯ませる。
相手から見ると絶望的な状況にあるのに、笑っている。と言うことは、状況を一変させる手札があるという事だ。
なにせ、〜〜の能力。なんて物がある世界だ。もしかしたら「圧政者だけを殺す程度の能力」なんてものもあるかもしれないしないかもしれない。
「撃て!!」
3人の男は翼を生やし空へ。
この時点でスパルタクスの敗北は確定したような物だが、スパルタクスは笑っている。
放たれる魔法の数々は火、雷、氷、中には単純な妖力弾もある。
それらはスパルタクスの体に当たり、魔法としての力を実現させる。
燃やし、感電させ、凍らせる。これだけでも十分に分かるだろう。食らったら人は死ぬ。
だがしかし!スパルタクスは人にして人にあらず。
「ふーははははははは!いいぞ!いいぞぉ!!」
「な、なんだこいつは!!」
「知るか!私の知る人間ではない!」
リアクションも素晴らしい。スパルタクス君のボルテージはMAXだ。
「ひ、ひぃいいいい!?」
とは言え、スパルタクスの後ろに隠れる少女は人間。スパルタクスの体が2mを超えていなければ、簡単に魔法が当たり死んでしまうだろう。
それについてはスパルタクスもよく分かっている。よく見れば飛んでくる、しかも自分から外れる魔法に手を差し伸べているではないか。
───つまり自分から当たりに行っている。
「はははは!少女よ!笑いたまえ!!この加虐に!この劣勢に!負けていながら笑え!ははははーははは!!」
「わら・・・・・う・・・・・?」
正しく魔法の嵐。雨あられと飛んでくる魔法の中、スパルタクスは少女に向けてそう言った。
そんなこと、出来るわけがないと少女は思う。
だが、目の前の男はどうか。絶望的な状況だ。武器もなく、まともな防具もない。それなのに名前すら知らない少女の為に体を盾に、魔法を防ぎ続けている。
笑えない・・・・・筈なのに、その背中が驚く程に大きく見えて・・・・・
「あ、あは、はは・・・・・」
少女は涙をながしながら、引き攣った笑いを浮かべる。
スパルタクスが背後目にそれを見て、笑みを一層深めた。そして────
「はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」
我笑死了。これ程愉快な事は早々ないと、スパルタクスは笑う。
笑死我了。これだけの笑いを催させる彼らに叛逆を。
耐え忍ぶのだ。笑い、耐える。単純でありながら、決して交わらぬ水と油。
それを混ぜて魅せるのがスパルタクス。
爆炎が上がる、抱きついて守る。氷柱が飛来する、仁王立ちして受け止める。落雷が落ちる、飛び上がり当たりに行く。
「はぁ、はぁ・・・・・なんだこいつは!まだ死なないのか!?」
火傷、裂傷。凍傷。落雷が通った場所は蚯蚓脹れの様に腫れ上がり、最早見ていられる怪我ではない。
体全体にその傷は付いている。顔もまた、例外ではない。
少女がもしもその顔を向けられたなら、ひっくり返ること間違いなし。
「・・・・・もう終わりかね?」
スパルタクスが攻撃は終りか、そこまでなのか?と問いかける。
相手3人の攻撃を全て受けきったスパルタクスは、いざ攻勢出ようかと足に力を込める。
──────しかし。
「・・・・・居たぞ!まったく、貴様らは勝手に抜け出しおって。・・・・・なんだソイツは」
「危険です!我ら3人の魔法をすべて受けきった化け物です!」
「ただの人ではないか」
敵が増えた。単純明快、危険度増大。
しかしかし、まだまだ増える。まだ増える。
「ふん、まぁ良い。あのお方の作戦のついでだ、引き潰すとしよう!!全員、的当ての時間だ」
ニッと笑った男の口元には牙。そう、なんと彼ら・・・・・吸血鬼なのである。
わかってた?それならば重畳。現在、スパルタクスの前には100人規模の吸血鬼が存在している。
その口元を卑しく歪め、これから起きる虐殺に心を昂ぶらせている。
その下卑た目線が、人を人と思わぬ所業が、自らの絶対的地位を信じて疑わぬその心が。
「私は大嫌いだ。故に、死ね」
スパルタクスが快笑する。飛びかかりながら放つ一撃は────やはり回避される。
「っと。人とは思えぬ敏捷だ。───────ほう、皆の者、あの人の子を狙え」
吸血鬼達は皆一様に、魔法陣の展開された腕を少女に向ける。向けられた少女は全てを諦めた様な、弱々しい姿に見えた。
────そうだ。この状況こそが。
スパルタクスの最も求めていた状況である。
明確な弱者と強者がいる戦場で、尚且つ、非情なほどに不利な戦いで、さらには命の危険がある。
「うてぇ!!」
「きゃぁぁぁぁ!」
放たれる数百の魔法。先の3人と比べると明らかに威力が上がっている。
悲鳴を上げる少女。
スパルタクスは走る。敵ではなく、少女の元へ。
困難な選択をする彼の思考は、やはり少女を守らんとした。
「はは────────!!」
打、打、打。内蔵がぐちゃぐちゃになるほどの衝撃。焼け焦げ神経が死に、感覚のなくなる体。
凍結し、砕ける足。雷の衝撃で吹き飛んだ腕。
魔力で出来た剣がスパルタクスの下顎を吹き飛ばし、地面から伸びた茨がスパルタクスを締め付ける。
そんな光景から連想されるのは「死」。人であれば、否。人でなくてもこれは、死ぬ。
「──────────!!」
だが、爆炎の中。強風の中。吹雪の中。砂嵐の中。
───その目は笑っている。
なぜ、笑うのか。
それは、自らが希望であるから。
後ろに、絶望に暮れる少女がいるから。
守るべき者を守るため、笑わなくてはならない。
己が笑うことで、少しでも、一瞬でも良いから笑ってほしい。
───だからこそ。絶望に叛逆を。
「───────────!!」
決して膝は着かない。着けば敗北、少女は死ぬ。
圧政に屈しはしない。屈せば最後、少女は死ぬ。
圧政者を倒さねば自分は死ぬ。だが、倒す為に動いたならば、少女は死ぬ。
自己回復は追いつかない。
宝具の使用は少女を巻き込む。
──絶望的。
──否、断じて否。
勝てない事など分かっている。
この身に滾り行く魔力が、自分がどれだけのダメージを受けたか理解させてくれる。
放てば勝てる。
「まだ倒れんのか。本当に化け物のようだな」
吸血鬼が鼻で笑う。無駄に硬いだけで、何も出来ない案山子であったな。と。
そして、手を高く上げる。・・・・・とどめを刺すのだ。
「全員、総力をつぎ込むぞ」
魔力が収束し、武器を象っていく。斧、剣、槍。
「放て!」
まるで散弾のように放たれたそれら。受け止めるだけではスパルタクスの体を貫通し、少女を殺すだろう。
────この瞬間こそが。
「スパルタクス!!」
───叛逆の時。
飛来する魔力の武器の中、最も早く飛来したのは・・・・・魔力のない無骨な剣。
スパルタクスは残っていた右手で本能的にそれを掴む。目線の先には霧雨が。
ありがとう。心の中でそう言って。スパルタクスは剣を肩越しに構える。
武器なしではただの爆発だ。だが、武器に乗せて放てばそれは・・・・・強力無比な一撃と化す。
「─────────ォォオォオオオオ!!」
凄まじい速度、めまぐるしい程の速度で体が修復される。
─────1歩、前へ。
身体を数多の武器が貫いて───けれど、体を突抜ける前に、再生して受け止める。
─────2歩。まだ、前へ。
腕が吹き飛び、しかして治り。足が千切れ、けれども前へ。
─────3歩、ために溜めた一撃を解き放つ。
「我が、愛は!爆発っするぅぅううううう!!!」
剣に全ての魔力を乗せて、放たれるのは英雄の一撃。
圧政者に致命傷を与える、叛逆の一撃。
範囲を正面に絞り────破壊する。
「ば、馬鹿な───────────!!」
吸血鬼達全てが光に飲み込まれ・・・・・消滅した。
A,こんなスパルタクスで大丈夫か?(エルシャダイ的圧政者感)