簪side
織斑を抱えて戻ってきた本音を待ち受けていたのは担任(笑)と幼馴染(爆)による糾弾だった。
「貴様ァ!もう既に勝負はついていた。何故一夏を攻撃したんだ!」
「篠ノ之の言う通りだ!もし一夏に何かあったらお前はどうする気だ!」
とりあえずこの人達はさっきの場面を見ていなかったのかな?あれはどう考えても事故じゃない?それより何故織斑君のシールドエネルギーがあんなに早くなくなったのか疑問に思い、担任(笑)に聞く。
「織斑君のIS『白式』でしたっけ?何であんなに早くシールドエネルギーがなくなったのですか?」
「それは零落白夜のせいだな。あれは私が使っていた単一使用能力だ。効果は単純、相手の絶対防御を無視して直接ダメージを与えるというものだ。しかし、その代わり発動している間自分のシールドエネルギーを消費する。」
「ところでその仕様について織斑君に説明しましたか?彼特に何も考えずに防御にも零落白夜使っていた気がするんですけど?」
「いいや、説明していない。私の弟だ、ぶっつけ本番でも成功する。なんせあいつは神童なのだからな!」
「千冬さんの言う通りだ!一夏は一か八かの場面で大抵成功してきた!故に一夏が負けることは絶対にないんだ!この本音とかいう女がイカサマをしたに違いない!故に貴様のISを没収し一夏に渡せ!」
「そうだ!話を逸らしても無駄だぞ!更識妹!先程貴様らのISを没収しないと言ったな。しかし、私の弟に怪我を負わせたのだ。もはや企業の加護があるといえど守りきるのは不可能だ!故に大事にならないうちに私が布仏及び同系統のものを持つ貴様らのISを没収する。穏便に済ませたいだろう?すぐさま私に渡せばこの件は不問としてやる。」
そんなことを担任(笑)と幼馴染(爆)が言ってくるが、私は毅然と返す。
「お言葉ですが、織斑先生あれは明らかに事故です。それと零落白夜の仕様を説明していなかったあなた方にも責任があると思いますけど?○○だからできる、○○なら大丈夫などと言って信頼するのはいいですけど、それもあまりに行き過ぎるとただの無責任な信頼になりますよ?『お前は巨○の星を目指すのだ!』が通じるのはアニメだからです。普通に現実でやるとアレただの虐待ですからね。一○さん訴えたら即刻有罪判決ですよ?それにこの件は当事者間だけで解決するような問題ではありません。どちらの意見も平行線ですからね。故に中立の立場の人間を呼んで…」
「う、うるさい!いいからさっさとISを寄越せばいいんだ!うおおおおーっ!」そう言いながら篠ノ之さん学園に真剣を持って本音の方に向かって突っ込んでいく。当の本音は織斑君を運んで疲れたのか変身を解除した状態で一息ついている。
まずい、変身も間に合わないし本音は完全に油断している。私は慌てて本音の前に行き、本音を庇おうとする。もちろんこんなもので真剣から身を守れるとは思えない。それでも本音は大切な友達で幼馴染だ。私がちょうど本音の前に来た時、篠ノ之さんの真剣が振り下ろされる。私は思わず目を瞑った。
しかし、いつまで経っても真剣が振り下ろされ、私の身体が切られた感触がない。恐る恐る目を開けてみるとそこには
「簪ちゃんに何をしようとしているの?」といつも愛用している扇子で真剣を受け止めているお姉ちゃんの姿があった。というか真剣を受け止められる扇子ってどんな強度してるんだろうとか思ったけどそこは考えちゃダメなところと思い心の奥底にその疑問をしまう。
「な、何だ!貴様は!邪魔をするな!」
「私は更識 楯無。この子の姉でこの学園の生徒会長よ♪」
そう言ってお姉ちゃんは篠ノ之さんの真剣を払い、手を扇子で叩いて真剣を地面に落とし、落ちた真剣を足で蹴飛ばしすぐに取れないようにする。
「簪ちゃん、大丈夫?」
「う、うん。私は平気。ところでお姉ちゃんはどうしてここに?授業中だよね?」
「私の中の簪ちゃんレーダーが危険度Aを差したからね♪先生に断りを入れずに慌てて教室からダッシュで来たのよ♪」
どこからツッコめばいいのか分からなかった。しかし、今回はそれで助かったのでツッコむのはやめておく。
簡単に自分の剣をあしらわれて落ち込んでいる篠ノ之さんを余所にお姉ちゃんは担任(笑)に向き直り言う。
「織斑先生。簪ちゃんの言う通りあれは事故です。それに今回の件は不問とするようにある方から言われてますしね♪」
「な、何だと?!一体誰なんだそいつは?!」
「私ですよ。織斑先生。」
そう言って現れたのは好々爺な老人でした。
「理、理事長?!な、何故ですか?!弟を傷つけられたんですよ?!それを不問とは一体?!」
「更識さんの言う通りあれは事故です。それに元々の原因は零落白夜の仕様を説明していなかった織斑先生、あなたでしょう?あなたは公式を教わっていない問題を公式を使って解けと言っているようなものです。その態度は流石に一教員としてあまりにも酷すぎます。さらに所有権のある企業の確認も取らず、一教員の判断だけで専用機を没収するのは越権行為にもほどがあります。いくらブリュンヒルデと言っても守ってもらわねばならない規則があります。しかし、あなたのブリュンヒルデという称号は重い。下手に罰を与えると女性権利団体から何を言われるのかわかったものではない。故に不問で落ち着けようとしているのですよ。更識さんや布仏さんには残念ですが、我慢してもらうことになりますがよろしいですか?」
「はい、私としても今回のことを大事にする気はないのでそれで構いません。」
「わたしも〜かんちゃんにも〜怪我は〜なかったので〜いいですよ〜」
私達はそう言う。 するとお姉ちゃんが
「待って下さい。織斑先生の件はともかく篠ノ之さんには何かしら罰を与えるべきだと思います。真剣を持って人に襲いかかったんですよ?」と言った。
すると理事長も思うところがあったのか
「わかりました。確かに篠ノ之さんの件は見過ごせませんね。篠ノ之さんには真剣の没収、学園中のトイレ掃除一週間、それと2週間の停学とします。」
普通に考えれば殺人未遂なのでこれでも軽く感じる。しかし、篠ノ之束の妹だからだろう。単純に恐いのだ。篠ノ之束の機嫌を損ね、日本のISを全て停止にされたりでもしたら、一気に日本の列強としての立場が崩壊する。ある意味篠ノ之束に支配された世界とでも言うべき状態なのだ。そんな状況を打開するための私達なんだけどね。
「ま、待て!私はただ正義の鉄槌をそいつらにかまそうとしただけだ!それなのに何故私が罰せられなければならない!」
などと幼馴染(爆)が吠えていたが、理事長はそれを視線で黙らせる。
「それでは私達はこれで失礼します、理事長。」
そう言って私と本音とお姉ちゃんはその場を立ち去る。
その背に幼馴染(爆)の恨みを込めた視線を受けながら…
翌日
簪side
「ということでクラス代表はオルコットさんに決まりました。」
「ま、待って下さい!試合は俺とセシリアが一敗。本音と簪が一勝でクラス代表が決まる状態じゃありません。昨日やらなかった残りの4試合をやるべきです。その上でクラス代表を決め…」
「織斑君、残念ながらクラス対抗戦までもうあまり時間がないんですよ。それにこれ以上授業時間を潰すわけには行きません。」と山田先生が言った。
「なら何でセシリアなんですか?!せめて勝った2人のどちらかがやるべきでは?!それに負けたセシリアが選ばれるんだったら俺にだって選ばれる権利があるはずです。それに俺は織斑 千冬の弟ですよ!十分な実力があるはずです。」
「勝った二人なら…『辞退しました(したよ〜)』うう、私のセリフ」
「な、何で辞退したんだよ?!はっはーん、もしや俺が織斑 千冬の弟だから気を効かせてくれたのかどうもありが…」
「私と本音は元々お姉ちゃんを馬鹿にしたオルコットさんを倒すためにクラス代表決定戦に参加したので元々クラス代表になる気はありません。それにあなたが何故クラス代表に選ばれなかったのかというとクラスの女子たちが…」
「織斑君って所詮姉の七光りだよね〜。」
「それに一撃も与えられないどころかあの8頭身になる前に負けるなんて雑魚もいいところだし。」
「何よりあんな醜態晒した人をクラス代表にしたらクラス対抗戦でも同じことをやらかしそうだしね。」
などと次々に口を揃えて言う。つまり消去法でオルコットさんは選ばれたというわけだ。
「この件についてはこれで終了です。クラス代表はオルコットさん。これはもう決定事項です。」と山田先生がはっきりと言う。
この話が終了しそうなところでオルコットさんが
「山田先生、少しお時間をいただいてもよろしいでしょうか?」
「どうぞ、オルコットさん。」と山田先生から許可をもらい、オルコットさんは私に向き合ったかと思うと土下座をしてきた。
「ちょ、オルコットさん。頭を上げてください。どうしたんですか?」
「あなたがおっしゃったのではないですか?わたくしが負けたらみんなの前で土下座して謝ってもらうと英国貴族として約束を反故にするような人間ではありませんよ、わたくしは。あなたの姉である生徒会長を馬鹿にしてどうもすみませんでした。」
オルコットさんはそう言った後、土下座をやめて立ち上がり、みんなに向けて言う。
「皆さんにも謝らねばならないことがあります。日本のことを馬鹿にしたことですわ。わたくしも自分の祖国が馬鹿にされたら怒るのですからあれだけボロクソに言ったわたくしのことを許してくれるはずもありませんが、これはけじめとして言います。日本のことを馬鹿にしてどうもすみませんでした。」
オルコットさんはそう言った後、クラスのみんなに向かってお辞儀をする。
するとクラスメイトたちも
「頭を上げて、オルコットさん。」
「そこまでされて許さないほど私たちは鬼ではないよ。」
「それよりもこれからセシリアって呼んでいい?友達になりたかったんだ、私♪」
「ええ、どうぞセシリアとお呼び下さい。」
オルコットさん改めセシリアがそう言い、今回のクラス代表騒動は終わりを告げた。山田先生は必死に泣くのを我慢している。担任(笑)?何でか知らないけど今教室にいないよ。織斑改め七光り君?この場で唯一目の前の出来事が信じられないのか嘘だ、嘘だと呟いているよ。ちなみに七光り君の味方の幼馴染(爆)は停学くらって教室いないよ。
そんなことを思いながら、私は騒動の終結に一息つくのだった。
その日の夜
簪side
「セシリア、クラス代表就任おめでとう〜。」
今はセシリアのクラス代表就任パーティを行っている。
私と本音は隅の方で飲み物を飲んでいるとセシリアが近づいてきた。
「更識さん、お姉さんの件については…」
「もういいよ。私の気も済んだし。それより私のことは簪と呼んで、お姉ちゃんとかぶっちゃうし。」
「わかりましたわ、簪さん。ところで何故布仏さんも参加したんですの?それに簪さんと親しいところを見ると旧友か何かで?」
「わたしのことも〜本音でいいよ〜。そうだね〜、かんちゃんとは幼馴染だよ〜、セッシー。」
「セ、セッシーとはわたくしのことですの?」
「うん、セシリアだからセッシー、いいでしょ〜。」
「気にしないで、本音は人のことを大体あだ名で呼ぶから気にしたら負けだよ。」
「そ、そうですか。それで相談があるのですが次のクラス対抗戦に向けてわたくしは優勝したいのです。そのためにお二人に特訓の相手をお願いしようかと思うのですが、よろしいでしょうか?」
「それは構わないけど私達でいいの?」
「はい、わたくしのビットを全て落とした簪さんと織斑さんとの戦いから近接戦闘に優れた本音さんに師事すればさらにわたくしはレベルアップできると思うのです。お恥ずかしながら近接戦闘に至ってはわたくし、あまり得意ではありませんので…」
「そういう事ならいいよ。よろしくセシリア。」
「ビシバシ行くよ〜、セッシー。」
「はい、よろしくお願いしますわ。ところでそこの観葉植物の影から覗いている水色の髪の方は生徒会長ですわよね。」
セシリアがそう言うと私と本音はあえて無視していた現実と向き合う事となった。
「簪ぢゃん、よがっだわねー。どもだちがでぎで!」
向き合いたくなかった現実を見ると観葉植物の側でお姉ちゃんが号泣しながらそんな事を言っていた。
「お、お姉ちゃん?!何も泣かなくても?!」
やがてお姉ちゃんは泣き止み
「だって簪ちゃん、毎回学校変わるたびに悩んでたじゃない?小学校の時なんか『おねえちゃん、ともだちってどうやってつくるの?』って相談に来るくらい…」
「お、お姉ちゃん?!は、恥ずかしいからやめてよ、そんな昔の話。」
私はこれ以上お姉ちゃんに昔の事を暴露されないように慌てて止める。
そんな姿を余所に
「う、噂通りのシスコンですわね、生徒会長。流石聖フランシスコンなんて呼ばれているだけありますわ。」
「ほんと〜にすごいからね〜おじょうさまの〜かんちゃんに対する溺愛っぷりは〜」
などと本音とセシリアが話している。ちょっと待て、何だ聖フランシスコンってそんなどっかの聖人みたいに言われているのかお姉ちゃんはというか入学してまだ一月もたたないうちに一年生にそんな不名誉な称号をもらっているというのが知られているのがかなりやばいと思う。というかお姉ちゃんも私の背後で自慢げに扇子を広げてその扇子に『YESシスターパイタッチ』とか書いて自慢しないで全然褒められてないからそれ。
そんなやり取りをしていると
「はーい、新聞部でーす。今日はクラス代表となったセシリア・オルコットさんに突撃インタビュー♪セシリアさん、今のお気持ちは?」
と言いながらお姉ちゃんの同級生で新聞部の部長である黛 薫子先輩がセシリアにインタビューする。
「そうですわね。わたくしに言える事はただ一つ。みなさんわたくしについてきなさい!勝利はその過程で自ずと生まれますわ!」
流石英国貴族、相手がどんな解答を求めているかを一瞬で当てた。その凄まじいまでの洞察力。そこに痺れる憧れる〜。
セシリアのこの答えに満足したのか、黛先輩は
「うーん、いいねいいねぇ!これならそのまま記事に使える!明日にはもう速報として出したいからこれから徹夜よ〜。じゃあ、黛 薫子はクールに去るわ。」
そう言って彼女はスキップで去っていった。いや、全然クールじゃないじゃん。
その後、消灯時間ギリギリまでみんなで飲めや騒げやの大騒ぎをしたのでした。
???side
私は黎斗に言われてここIS学園にやってきた。時刻はすでに夕方になっている。
「さあてととりあえずついたはいいけど、事務受付どこかしら?
この学園広いからわかりにくいのよね〜。とりあえず道を聞こう。あ、あそこにいる金髪とかちょうどよさそうじゃない?おーい」
「何かご用ですの?」
「うん、私は今日ここに転校しに来たんだけどさ。事務受付ってどこかわかる?そこに転校の書類を出しに行かなきゃいけないんだけど。」
「まあ、それならわたくしが案内しますわ。ついてきて下さい。」
「うん、お願いね。ところであんたの名前何て言うの?」
「わたくしはセシリア。セシリア・オルコットですわ。あなたは?」
「私は凰 鈴音。よろしくね、セシリア。」私はそう答えた。
いや〜、ついにクラス代表騒動が終わりました。しかし、なぜか今回が今までで最大の字数って… とにかくこれからも幻夢vsISをよろしくお願いします。感想もドシドシ送って下さい。待ってまーす。