鈴音side
「そ、そんな?!わ、わたくしの切り札が…破られるなんて…」
あたし達の反撃宣言の後、セシリアは崩れ落ちる。まあ、それはそうだろう。あたしを封じるための策が潰えてしまったのだから。そして、これは同時にチャンスでもある。セシリアにトドメを刺すなら…
「今よ!」
それと同時にあたしはセシリアのところへ駆け出す。
「行かせないよ!」
そんなあたしにシャルロットが立ち塞がる。しかし…
「お前の相手は私だ!」
それをラウラが横から打点の高いドロップキックで吹き飛ばす。
「鈴音!今のうちにセシリアを!」
「わかってる!」
やがてセシリアの元へたどり着いたあたしはセシリアを蹴りで打ち上げて空中で肩車の体勢となり、その上で肩からかかるセシリアの足を掴む。
「これで終わりよ、セシリア!九龍落城地!」
『鈴音ちゃん、茫然自失のセシリアちゃんに自らの最大技を叩き込むぅ!これは決まったかぁ!』
ラウラside
そんなアナウンスを私はシャルロットの攻撃を捌きながら聞くが、何か違和感を感じる。
(先ほどはチャンスと思い、鈴音を行かせたが、あのセシリアが何の抵抗もせず、やすやすと技にかかるなんて…)
私はふとセシリアを見るとその顔にはにやりと笑みを浮かべていた。
(まさか…技を破られて落ち込んでいたのは全て演技?!だとしたら…)
「鈴音!早く九龍落城地を解くんだ!それはセシリアの罠だぞ!」
「えっ、ラウラそれはどういう…」
「おやおや、どうやら顔に出てしまっていたようですね。ですが、ラウラさん、少し気づくのが遅すぎましたわ!部分解除!」
『あーっとセシリアちゃん、ISを部分解除して鈴ちゃんの両腕のクラッチを解いたぁ!そして、空中で首4の字に固めて行くぅ!』
「あの人の技は正直あまり好きではないのですけど…これも勝つためですわ!ロビンスペシャル!」
『そして、そのまま両腕で着地!見事な返し技ぁ〜!そして、鈴音ちゃん、最大技である九龍落城地が破られたぁ!』
そして、セシリアはゆっくりとロビンスペシャルを解除する。それと同時に鈴音は地面に倒れることとなった。
鈴音side
あたしはセシリアのロビンスペシャルをまともにくらってしまい、地面に倒れる。しかし、やられるわけには行かないと気力を振り絞る。そして、立ち上がろうとするとすると急に立ちくらみがしてくる。
(まずいわね、セシリアにくらった攻撃のダメージがここに来て一気に来た。ここは早めに勝負をつけたいけど)
しかし、今のあたしにはそんな一気に逆転を狙えるような技がない。最大技の九龍落城地は破られたし、レッグラリアートに至っては奥の手まで使ったっていうのに逆にそれを利用されて破られてしまった。
師匠から教わった奥の手…闘仙極意ネコジャラシ。これは自分の髪の毛を自在に操る技でさっきセシリアを引き寄せた時に使った。これを使えば不意をつけるかもしれない。でも…
(この技は使うのに多大な集中力が必要。とてもじゃないけど今のフラフラ状態じゃまともに動かせそうもない。ならどうすれば…)
「鈴音さん、来ないのでしたらこちらから行かせてもらいますわ!」
そんなことを考えているうちにセシリアはあたしに追い打ちを掛けようと接近してくる。そして、腕を掲げる。ナックルパートに入る気か。なら…
「こうなりゃこれくらいしかないでしょ!」
あたしはセシリアから繰り出された右腕のナックルパートを受け止めて、そのまま自分の方に引き寄ながらセシリアの首に足を伸ばす。そして、セシリアの肩の上に乗り、そこから右腕と首を三角締めに捕らえる。
ギチギチ
よし、しっかりと決まった!これなら…
「くっ、このっ?!ティアーズ!」
「嘘でしょ?!」
しかし、渾身の三角締めもセシリアのビットによる攻撃で強制的に外されてしまう。
(これでもダメか。あれ?なんでさっきセシリアは自分に誤爆する可能性もあったのに三角締めをビットで迎撃したの?九龍落城地やレッグラリアートを破ったなら自分の体術で三角締めくらい逃れられたはず…そうか!そういうことか!)
「セシリア!あんたを破る策が見つかったわ!」
あたしのこの宣言にざわつく会場内。しかし、セシリアは
「あら、鈴音さん?ここまでいいようにやられているのにそんな大きな発言は自分を追い込むだけでしてよ。そして、そこまで言うのなら…見せてもらいましょうか!その策というものを!」
とあたしの発言に毅然として返す。そして、その言葉の後、あたしとの距離を詰めていく。
「ここよ!」
しかし、あたしはそれを足払いで迎撃し地面にセシリアを倒す。
そして、ロメロスペシャルの体勢に持っていく。
『鈴音ちゃん、またもセシリアちゃんに関節技だぁ〜!』
ギチギチ
「くぅ?!で、ですがこんな技など…ティアーズ!!」
セシリアはロメロスペシャルを決めているあたしに対してビットで右側面から迎撃しようとする。そして、ビットからビームが発射される。
「そうくると思ったわ!」
それに対してあたしはビットの方向にセシリアの体が向くように傾ける。するとセシリアの体が盾となってあたしの代わりにビームに撃たれる。
「なっ?!しまっ?!きゃあああ?!くっ、戻れ!ティアーズ!」
このままビームをくらい続けるわけにはいかないと思ったのだろう。セシリアはビットを引っ込める。チャンス!
「まだまだ休ませないわよ!」
あたしは最初の正位置のロメロスペシャルに戻すとそのまま回転を掛け、地面を転がっていく。
「四川大水車よ!」
そのまま壁際まで転がりながら接近していき、技を解除してセシリアの頭を壁にぶつける。 あまりの衝撃にセシリアは地面に倒れる。その間にあたしは体勢を立て直してセシリアの反撃を警戒する。
やがて少し経つとセシリアは起き上がってくる。どうやら壁に頭をぶつけたのが効いたのかフラフラしながら立ち上がる。
「ま、まさかビットを逆に利用されるとは…他に脱出される方法もあったというのに何故ピンポイントで対策を…ビットがくると分かっていなければわたくしの体を盾にして防御するなど…」
「セシリア、あんたこの間のクラス対抗戦ではこんなに格闘技を使ってはこなかった。それに加えてあたしが三角締めをした時にビットでわざわざ迎撃した、少しでもあたしが避ければ自分に当たるかもしれなかったのに。それで思ったの、あんたの技術は付け焼き刃なんだって!」
その言葉に対してセシリアはシニカルな笑みを浮かべながらこう返す。
「わたくしの技術が付け焼き刃?寝言は寝ていうものですわ!わたくしの技術が優れていることはあなたの必殺技を二つも破った段階で分かるでしょう!そんなわたくしの技術のどこが付け焼き刃だというのですか!」
自信満々に返すセシリアに対してあたしは慌てることなく返す。
「確かにそうね。でもあんたはあたしの必殺技は破れたのに関節技にはわざわざビットを使って対処した。体術で抜ければ自分にビームが当たる心配も何もないのにね。しかも三角締めもロメロスペシャルも基礎技、本当に技術があるなら必殺技を破ったあんたが破れないほどの技じゃない。つまり…」
そして、どこぞの探偵のように右の人差し指でセシリアを指して真実を叩きつける!
「あんたの技術はあたしに対するメタ対策だけの技術!基礎が全然なっていないのよ!」
あたしがそう言うとセシリアは
「ふっ、ふふふ、あははははは、そうその通りですわ!わたくしの技術はあくまで鈴音さんに対するメタ対策!ですが鈴音さん、忘れてはいませんか?あなたとわたくしのシールドエネルギーの差は明確!そんな地味な関節技だけでは逆転など不可能ですわ!そして…」
するとセシリアは一気に距離を詰めてあたしを抱える。そして、そのままあたしを抱えあげてエアプレン・スピンをする。
「これで終わりですわ!」
セシリアはそのままあたしを投げようとする。
「セシリア!あんたは出す技を間違えたわ!」
ボンッ!
突然セシリアのブルーティアーズの腕部が爆発を起こす。それによってセシリアはあたしを投げ損ない、あたしはその隙を逃さずに足でセシリアの頭を挟み、ヘッドシザースでセシリアを空中に放り投げる。
「セシリア!あんたに見せてあげるわ!これがあたしの技術の粋を集めたあたしオリジナルの技よ!」
『さあ、鈴音ちゃんのオリジナル技、一体どんな技が飛び出すのかぁ?!
空中に放り投げたセシリアを追ってあたしはジャンプする。そして、そのままの勢いでセシリアの背部にヘッドバットをかます。
「今、見せてあげるわ!イロハの『イ』!」
『おおっ!鈴音ちゃんとセシリアちゃんの体の体勢がまさしくカタカナの『イ』になっているわ!』
そのまま追い打ちをかけるようにあたしはセシリアと背中合わせの状態となり、そこから首を両腕で捕らえ、セシリアの足をインディアンデスロックの形に固めていく。
「イロハの『ロ』!」
『イに続いて今度はカタカナの『ロ』にセシリアちゃんを固めるぅ!』
「最後は『ハ』の字よ!イロハの『ハ』!」
最後にあたしはセシリアがあたしの後ろ側に来るようにしてその状態からセシリアの両腕を取って、あたしの脇に挟み込む。そして、セシリアの両足首にあたしの両足首を引っ掛けて『ハ』の字型に開かせた体勢にホールドしてそのまま地面に向かって落下していく。
「これがあたしのオリジナル技!イロハ地獄巡り!」
ガガァン
そんな音とともに地面に落下したあたしとセシリア。
「グギャラア?!」
地面に落下したと同時にそんな叫び声を上げるセシリア。あたしはそれを聞くとゆっくりと技を解いていく。そして…
『セシリアちゃん、失神KO!失格よ!』
「はあはあ、か、勝てた…」
あたしはセシリアの敗北を告げるアナウンスを聞くと地面に仰向けに倒れる。
「あ、危なかった〜。あの腕部の爆発とセシリアの格闘技がもっと習熟していたら負けていたのはあたしだったわ。」
あたしが倒れている間にセシリアが目を覚ます。だがまだ起き上がれはしないのかあたしと同じように地面に仰向けに倒れている。
「う、ううん。はっ、わたくしは一体?!試合は?!」
どうやら状況が分かっていないらしく、首をキョロキョロと動かすセシリア。それに対してあたしは返す。
「26分13秒、イロハ地獄巡りであたしの勝ちよ。」
それに対してセシリアは自嘲気味に
「ふ、ふふふ、そうですか。負けてしまいましたか。ですが最後に教えてくれませんか。なぜあなたを投げる段階になってブルーティアーズの腕部が爆発したのかを。」
あたしに逆転の隙を許してしまったブルーティアーズの腕部の爆発の原因について聞いてきた。
「セシリア、あんたこの試合であたしに仕掛けた技ほとんど全部腕部に負荷の掛かる技ばかりしてたでしょ?そこにあたしのロメロスペシャルで腕部の関節にも負荷がかかった。そんな状態でエアプレン・スピンなんて放ったら爆発もするわよ。」
それに加えてブルーティアーズは元々遠距離用の機体、あたしの甲龍のように最初から格闘戦前提の機体じゃないから腕部が丈夫には出来ていない。それがこの結果を産んだということだろう。
あたしの解説に対してセシリアは
「な、なるほど。そういうことでしたか。ふふ、鈴音さん、今回はわたくしが負けましたが次は負けませんわよ。あなたの言う付け焼き刃じゃない技術であなたを地に伏せて見せますわ!」
自分が負けた理由に納得しつつも次はあたしを倒してみせると笑顔で宣言した。たっく、ラウラといいセシリアといいティナといいどうしてこうあたしの周りにはこんなにも強敵《ライバル》達がいるのかしら。でもあたしはそれが嬉しい。だって…
(こんなにも切磋琢磨できる仲間がいるなんて…あたし、相当な幸せ者じゃない。だから…)
「ふふん。言ってなさい、セシリア!次もあたしが勝つんだから!」
笑顔であたしはセシリアに対してそう返した。
如何でしたか?なんか、かなり待たせた割には展開あっさりしすぎましたかね?でもすみません。今、中検とTOEICのせいで中々時間が取れないんです。許して下さい。後、作者は感想欄の皆様のコメントを支えに頑張っていますのでドシドシコメントを下さい。それではまた次回お会いしましょう。