私、更識 簪は今人工島の上に建っているIS学園のざわざわと騒がしい教室にいる。そして、クラスメイトのみんなの視線はある一人の男子生徒に注目している。
彼の名前は織斑 一夏 女性にしか動かせないはずのISを動かした唯一の男性IS操縦者にしてISの世界大会であるモンドグロッソの第一回大会で優勝を飾った織斑 千冬の弟。
とにかく珍しいのだろう。当然だ。今まで女子にしか使えなかったIS。つまり、実質的な女子校状態だったところに急に男子生徒が現れればそれはみんな注目するに決まってる。それに席も教卓の目の前の席という思いっきり目立つ配置だからね。
そんなことを考えていると、教室の前の扉から先生らしき人が入ってきた。
らしきというのはどう見ても背が中学生女子くらいしかないからだ。
それなのにあのはち切れんばかりの爆乳、正直に言って妬ましい。お姉ちゃんも大きいから私も大きくなる素養はあるはずなのに…
その先生らしき人は黒板前にある教卓の前に立つと振り向いて黒板の近くにあるチョークを手に取って何かを書き始めました。
そして、終わった時には黒板にこう書かれていました。そして、彼女は口を開きました。
「1年1組の副担任の山田麻耶です。1年間みなさんと一緒に頑張っていきたいと思います。よろしくお願いします。」
しかし、クラスのみんなは織斑君の方ばかりを見て返事をしない。そのせいで山田先生は涙目になってる。なので返事を返しておこう。
「よろしくお願いします。」
「よろしく〜、せんせー」
と私と本音も返事を返す。
そうすると山田先生は多少持ち直したようで
「それではクラスの皆さんも自己紹介をしてください。勿論、教卓の前に立って、それとあいうえお順でお願いします。」
山田先生がそう言うとクラスのみんなもさすがに反応したようで順々に自己紹介をしていきます。そうしてやがて織斑君の番になりました。
「え〜っと、お、織斑君」
「は、はい!な、何ですか?」
「ゴメンね、次は織斑君の番です。だから自己紹介をして下さい。」
そう言われると織斑君はのろのろと立ち上がり、教卓の前に立ちました。やはりみんな気になるのだろう。ものすごく期待したような目で彼を見つめます。私はそれを横目で見つつ、データの整理を手持ちの携帯端末でやってる。
「お、織斑 一夏です。よろしくお願いします。」
『wkwk』
「い、以上です。」
ズコーと思わず全員が滑りそうなほど綺麗に転びました。
すると教室に入ってきたスーツを着た織斑君に似た女の人が織斑君の頭を出席簿で叩きました。っていうかそれ体罰だよね。
あんな先生だとバレたら面倒なことになりそうだと思い、私は慌てて携帯端末をしまった。
「諸君、私が諸君らの担任の織斑 千冬だ!私の役割は貴様らを役立たずから一人前のIS操縦者にすることだ。早く1人前になりたかったら、私の言うことには逆らうな!いいな!」
そんなことをのたまう担任(笑)に私は心底呆れていた。どれだけ自分に自信があるんだとそして、その方針で生まれるのはIS操縦者ではなく、軍人だろと
しかし、私のそんな思いとは裏腹に他の人たちは
「キャァーーーー!千冬様よ!IS界最強のブリュンヒルデ!」
「お姉様と呼んでもいいですか?」
「千冬様、私に夜の勉強会を開いて下さい!」
どうやらクラスのみんなには受けたらしいが、私からすればただの暴君の担任(笑)にしか見えない。
「…ふふ、そうだろうそうだろう。もっと私を尊敬しろ!」
いや、大半の人は尊敬の眼差しで見ているだろうが、少なくとも私や本音、あと山田先生もすごい苦虫を噛み潰したような顔をしているよ。
やがて私の番がやってきた。
「更識さん、自己紹介をして下さい。」
「…わかりました。」そう言って私は教卓の前に行くと、
「…更識 簪です。趣味はアニメ鑑賞。好きなものは特撮。嫌いなものは女尊男卑。よろしくお願いします。」
そう簡潔に言って私は自分の席に戻る。
それと同時にHRの終了を知らせるチャイムが鳴った。
授業終了後、私は疲れたような表情で机に突っ伏していた。元々私はISを超えるものを作るにあたってISがどのようなものかとかいったことに関してはかなり勉強したため、多分IS学園で学べることのほとんどはすでに知っている。すでに知っていることをもう一度のんびりペースで聴くのは正直言ってつらい。
「かんちゃ〜ん、だいじょ〜ぶ?」
かなり独特なマイペース口調で話しかけてきたこの子は布仏 本音。私の家に仕えるいわゆるメイドさん。明らかに袖が余っている制服を着ているのはこの子があまり身長が高くないから。それなのにも関わらず胸には確かなものを持っている。何で私より背が低いのに胸は大きいんだろう。本当に不思議。
「大丈夫じゃないよ。私、もう知ってるところだからあんまり聞く必要がないのに織斑先生が睨みきかせてておちおち寝てもいられないからつらい。」
「あはは〜、かんちゃんは真面目だなあ〜、わたしは先生に睨みきかされてても〜構わず寝てたら〜先生に起こされなくなったよ〜」
「それもそれでどうかと」なんて呆れた顔をして言っていると織斑君が近寄ってきた。
「やあ、更識さんだっけ?俺は織斑 一夏。よろしくな!」
なんて爽やかそうな顔をしている言っているけど、目が笑っていない。それどころかこちらを品定めするような目を向けている。特に
本音の胸部にすごい視線を向けている。本音もわかっているのか織斑君の方に顔を合わせずにいる。
「ゴメンね。織斑君、私今本音と話しているから後にしてくれない?」
やんわりと断りを入れると彼の後ろから黒髪ポニーテールの女の子が出てきて
「貴様!一夏の話を聞かないのか!」などと言ってきた。
「篠ノ之 箒さん。私は何も話を聞かないと言ってるわけじゃない。ただ今本音と話しているから後にしてって言っただけなの。それとも何?織斑君の話は何よりも優先しなきゃいけないことなの?」
「当たり前だろう。何せ一夏は千冬さんの弟で神童だ。話しかけられるだけでも光栄に思うべきだろう。」
何を言ってるんだろうこの人はとりあえずこういう類の面倒くさい人は無視するに限ると思い、本音と話し始める。
「無視するな!」そう言って篠ノ之さんは木刀を振り下ろしてきた。すると本音が立ち上がり、篠ノ之さんの腹部に裏拳を決める。まともに裏拳が入った篠ノ之さんは腹を抱えてうずくまり、木刀を落とす。それを本音は蹴りで遠くまで蹴り飛ばした。
「き、貴様!よくも!」
「も、もういいぜ、箒。また後にしよう。」
そう言って織斑さんは篠ノ之さんを連れて去った。そのすぐ後に金髪縦ロールの少女が話しかけてきました。なんか女尊男卑特有の香りがひしひしと伝わってくるんだけど…。
「ちょっとよろしくて?」
「ん、何?」
「まぁ、何ですの?!その態度は?!私イギリスの代表候補生であるセシリア・オルコットがわざわざ自分以外に入試試験で教官を倒した人たちを見に来たというのに!!」
「別に私達は何もそんなことを頼んでもないし、入試で誰が教官を倒したか何て興味ないし。」
そう言った瞬間チャイムが鳴った。
「くっ、また来ますわ!覚えておいて下さいまし!」
はあ、この学園にはあんなのばかりなのかなと初日から不安に襲われました。横で私を慰めるように私の頭を撫でてくれる本音が唯一の癒しでした。