金の彼女 銀の彼女
???side
私が目覚めた時、それは培養カプセルの中だった。
「C-0037、それがお前の名前だ。」
そう言って私の入っている培養カプセルの前に立っている眼鏡をかけた科学者らしき男はそう言った。そして、私を培養カプセルから出して、緑色のいかにもな服を着せてとある部屋に連れて行った。そこは壁も天井も白く扉が2箇所ある以外何もない部屋だった。連れてこられた部屋にいたのは…
私と同じ銀髪の優に40人は超える子供たちだった。
私はその中に入っていくと一人の少女から声を掛けられる。黒の眼球に金色の瞳をしている銀髪の少女だ。
「あなたも被験体?何番?」
そう聞いてきたので私は自分の番号を答える。
「そう、私はC-0030、あなたの姉ってところかな?」
私達が話していると不意にどこからかあの科学者の声がする。
「今から君達にはある実験を行う。一定時間が経ったら、私達が迎えに行く。それでは健闘を祈る。」
そう言うと科学者の声は聞こえなくなる。そして、それから少し経つと何か音がして扉が開き、部屋に入ってきた。それは…
「IS?」
何故この部屋にISが入って来たのか分からなかった。気になったのかある一人がISに近づいていった。すると…
パァン
そんな乾いた音が部屋に響く。その音の後には…銃を構えたISと先ほどの一人が頭を吹き飛ばされた状態になっていた。もちろん即死である。すると周りの子達も我先にとISが入って来た扉に向かって走っていく。
「た、助けてぇぇえ」
「ここ開けてよー」
「ど、どうなってるの?!」
そんなことをしている間に無慈悲にもISは先ほどと同じく銃を構えて撃つ。な、なんだ何なんだこれは?!やがて扉に集まっていた子供達を殺し尽くしたISは私と私の姉(自称)の方に向かってくる。私は慌てて姉(自称)の手を引きながら部屋の中を駆ける。私のすぐ後ろで鳴る銃撃。いつ当たるのかわからない恐怖、それに押しつぶされそうになりながら私は全速力で逃げる。やがて私と姉以外が全滅した頃、先ほどの科学者が扉から入って来た。そして、
「おめでとう!君達は選ばれた存在になったんだ。生身でISの攻撃を避けられる君達は優れたIS操縦者となり得る逸材だ!」
そんなことを言う科学者。そんなことのために私と姉(自称)以外は全滅したのか!そして、私と姉(自称)はその科学者に連れていかれて、軍服を着せられる。
「今日から君達はドイツ軍の兵士だ!それを誇りに思い、日々研鑽を積んでくれ!」
そうして、私と姉(自称)はドイツ軍に入れられた。私と姉(自称)は違う部隊に配属されたため、様子を知ることは出来なかったが、たまに来る手紙で元気なのは分かっていた。しかし、姉(自称)はそのすぐ後に行方不明となった。配属されていた場所に襲撃を受けた、私が駆けつけたときには遅かった。もうすでに後に残るのはそこにあった軍事施設の崩れた残骸だけだった。私は無力感に打ちひしがれた。そして、その直後から私は軍として訓練するだけでなく、自分で自分に課した自主練もするようになった。その結果、実力がついたため、どんどんと昇進していき、2年後には1兵卒から中尉にまでなった。そして、自分の部隊を持つことを許された。シュヴァルツェア・ハーゼ通称黒兎隊と呼ばれることになる部隊だ。姉(自称)のこと以外にも私には努力する理由があった。私には夢があった。私の目の前で無残にも殺された仲間達や姉(自称)のためにも昇進してもう2度あんな研究を続けさせるのをやめさせるためだ。あんな悲劇はもう繰り返してはいけない。そして、部隊のみんなもそれに賛同してくれた。何故なら黒兎隊のメンバーはみんなISにあまりいい思い出のない者ばかりだからだ。ある者は女尊男卑で親を失い、ある者はISの台頭によって実家の工場を潰され落ちぶれたりなどなどだ。
そして、そんな私たちの元に新しい教官が派遣されて来た。それは男性だった。緑色の軍服を着て、髑髏の徽章のついた軍帽で目元が見えないようになっている見た感じ20代前半の男性だった。
「俺がお前達の新しい教官だ。俺が主に担当するのは生身での格闘訓練だ。もっとも今はこんな世の中だ。男に教えられることに納得のいかない嬢ちゃんもいるだろう。言葉よりも行動で示す。誰か俺と模擬戦をしよう、その結果で学ぶかどうか決めてくれ!」
今の世の中ならそんなことを言い出す隊もいそうだが、黒兎隊に限ってそれはない。しかし、実力を確かめたいとは思ったため、隊を代表して私が出る。一方教官は後ろで腕を組み、どっしりと構えている。
「それでは始め!」副隊長であるクラリッサ・ハルフォーフの合図で模擬戦がスタートする。私は足払いに行くが、体勢を崩せず、逆に足を掴まれる。そして、そのまま教官は私を仰向けに寝かせ、私の片足を取り、自分の足を差し込んでその足を軸にして自ら回転して私の足を締め上げる。キリキリと私の足が悲鳴を上げている。
「ギブアップだ。」
そう言って私は教官に降参した。
「俺の仲間の得意技の一つだが、どうだ?今のは?俺が教えるのはこういった関節技だ。いくらISに乗っているとしても関節技は知らなきゃ外せない。これは特に対人戦では効果が高い。」
確かにその通りだ。そして、教官は続ける。
「お前さん達は見たところ、今の世の中には染まってないようだな。目を見ればわかる、そして人に教わろうという姿勢も出来ている。」
「はい、私達は今の世の中の風潮には反対です。IS至上主義だか女尊男卑だか知りませんがそんなものに惑わされるのは愚の骨頂です。そして、私達は優れた技術を学ぶのに男だとか女だとかそんなことで人を見ません。あなたの実力は先ほどの模擬戦でわかりました。教官、どうか私達にご指導よろしくお願いします。」
「これは丁寧にどうも、こちらこそよろしく頼む。」
こうして私達と教官の日々が始まった。教官の見せる様々な技を私達は習得していった。そして、いつしか私達は教官のことを師匠《レーラァ》と呼ぶようになっていた。
しかし、そんな日々も長くは続かなかった。織斑千冬、IS世界大会のモンド・グロッソの優勝者である彼女はドイツで開いたモンド・グロッソ第2回大会の最中に一緒についてきた弟を誘拐された。そして、その捜索にドイツ軍が協力したため、私達の部隊の教官としてやってくるらしい。つまり、師匠《レーラァ》は用済みということだ。私達はこの出来事の陰にドイツ軍の陰謀を見た。ドイツで大会が起こって、その最中に誘拐される?そして、ドイツ軍がモンド・グロッソの警備をしていた。しかも選手の家族が来るというのなら、しっかりと警備をして置くべきだ。それなのに誘拐された?そんなのどう考えてもドイツ軍の自作自演ではないか、そうでなければ余程の無能じゃないか。そして、そんなことのために師匠《レーラァ》は解雇されたというのか?私達は怒りのあまり唇を強く噛み締めた。そして、その憎しみは不用心に弟を連れてきた織斑千冬に向いた。
そして、師匠《レーラァ》から教えてもらう最後の日に私達はお別れパーティをした。師匠《レーラァ》は意外だったのかすごく驚いていた。そして、師匠《レーラァ》はパーティの最後にこんな話をした。
「お前さん達、今回のことで織斑千冬を恨んでいるんじゃねぇのか?」
私達はこの言葉に首を縦に振った。そして、私は言った。
「私達の部隊は師匠《レーラァ》のおかげで強くなり、現に私は少佐に昇進しました。それなのにいくらIS世界最強だとはいえ人に教えたことのない織斑千冬を教官に迎えるために師匠《レーラァ》が辞めさせられるなんて?!」
「確かに織斑千冬は間接的に俺をお前達から奪った原因だと言える。でも、本人には何も悪いことはねえ、許してやれ。」
「何で師匠《レーラァ》はそんなことが言えるんですか?!自分の職を失う原因となった人ですよ?!それを許すなんて…」
私の言葉を聞いた後、師匠《レーラァ》はこう言った。
「俺がお前達に教えた技は俺の仲間達や俺自身の開発した技だというのは知っているだろう?」
「はい、それが何か?」
「実はな、俺の仲間には俺の親父を殺したヤツがいる。」
それを聞いて私は驚いた。師匠《レーラァ》はそのまま続けて言う。
「それが仲間の誰なのかもうわかっている、何せ俺の目の前で殺されたからな。」
「それじゃあ、師匠《レーラァ》は復讐したんですか?その人に」
「いいや、してない。それどころか俺はその人を手本として強くなろうとした。」
「な、何でそんなことを?お父さんの仇なんじゃ…」
「もちろん、最初は恨んださ。でもな、恨み続けるってのは案外難しいもんだぜ?それに俺とその人はある大会で戦うことになった、結果はその人の勝利さ。でもその人も俺との戦いで重傷を負って同じ病院の同じ病室に搬送された。そして、その日の夜、その人は病室を出て行き、山へ向かった。何をしていたと思う?」
私はこう言われて少し考えてみたが、この答えしか出なかった。
「ある大会というのなら師匠《レーラァ》との戦いが決勝じゃないなら、その次の対戦相手との戦いのための特訓とかですか?」
私の言葉に師匠《レーラァ》は首を横に振り、そして言った。
「いいや、やつはな俺の親父の一周忌の供養をしに来ていたんだよ。そして、俺の親父のことを生涯最大の難敵だった。だから全力で挑まなければ勝てなかったと言ったのさ。俺は感動したさ、親父との勝負をここまで誇りに思っていてくれたのかとね、そして器の大きさを知った。それから俺はその人を追いかけることを決めたってわけさ。」
「私達と織斑千冬にもそうなって欲しいと?」
「いいや、そこまでは言わねえさ。でも人を恨み続けるよりはそういった関係の方がいいってだけさ。」
そう言って師匠《レーラァ》は自分の軍帽についてある髑髏の徽章を取って、私に渡した。
「こいつは俺の親父から受け継がれたものさ、お前が貰ってくれ。」
「いいえ、こんな大切なものは受け取れません。それならあなたの子供にでも…」
「いいや、俺には子供はいねえ。お前は俺の持てる技術の全てを叩き込んだ。そんなお前だからこそこれを託せるんだ。」
そう言う師匠《レーラァ》の顔は笑顔だった。だから私は…
「わかりました。師匠《レーラァ》からの教えを大切にし、この髑髏の徽章を大切にさせていただきます。」
「そう言ってくれると俺も教えた甲斐がある。」
師匠《レーラァ》がそう言うと光が差し込み…
「懐かしい夢を見たな。」
そう言って私は起床する。今日はドイツから日本にあるIS学園に転校する日だ。何でもイグニッション・プランの成果のお披露目のためにIS学園に行くようにとの軍の上層部からの命令だ。
私は荷物を纏めて軍で与えられた部屋を出る。危ない危ない忘れ物をするところだった。
「いってきます、師匠《レーラァ》。」
そう言って最後に私は師匠《レーラァ》から貰った髑髏の徽章を胸につけた。
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簪side
「今日は皆さんに転校生を紹介します。それも2人です。」
ゴールデンウィーク明けの初のHR、山田先生がそう言うのを私は机にうつ伏せになりながら聞いていた。
「かんちゃ〜ん、起きてよ〜。」
「しょうがないでしょ、レベル5のガシャットの調整でゴールデンウィーク中ほぼ休み無しだったんだから」
私は前回の無人機襲撃の後、篠ノ之束がさらなる戦力を投入するかもしれないと思い、新しいレベル5のガシャットの開発に取り掛かった。そして、ついに完成した。その代わり、ゴールデンウィーク中ほぼ寝てないけど。
しかし、ずっと寝ているわけにもいかないため、私は頑張って体を起こして話を聞く。でも転校生?こんな時期に?それも2人も?
「では入って来てください。」
山田先生の声に合わせて教室の前の扉が開く。すると金髪ショートでアメジストの瞳の女の子と銀髪ロングヘアで左目に眼帯をした赤目の女の子が入って来た。私は驚く。主に金髪の方に。何故なら彼女は知り合いだからだ。
やがて金髪ショートが自己紹介をする。
「僕の名前はシャルロット・デュノア、フランスの代表候補生です。好きなものはお兄ちゃんです。みんなよろしくね。」
「ボクっ娘キター!!!!」
「しかもお兄ちゃん子!!!!」
「それで代表候補生なんてどんだけ属性過多なの〜、反則でしょ。」
「皆さん、静かにして下さい。もう一人いるんですから。」
騒ぎ始めたクラスのみんなを山田先生が諌めるとクラスは静かになる。この間の騒動のときに鈴音を助けた山田先生は人望が厚くなり、生徒達も山田先生の言うことをよく聞くようになった。シャルロットが自分の席に向かう。そして、その途中で私の机の近くに通った時、紙片を机の上に置く。そして、シャルロットは着席した。
すると銀髪ロングの眼帯っ子が自己紹介する。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ。軍隊に所属していたため、学生生活というものを送ったことがない。だから学生生活について教えてもらえるとありがたい。みんなよろしく頼む。」
ラウラの自己紹介が終わると遅れて来た担任(笑)がラウラに声をかける。
「ラウラ、軍の時のように私が指導を…」
「織斑先生、お言葉ですがこの学園には先生以外にも教員がいるので見識を広げるためにも他の方に指導をお願いしたいです。先生のやり方はもう軍で知っているので。」
そう言うとラウラは席に向かう。そして、その途中に織斑先生の方を向いて言う。
「ここでは私を名前で呼ばないで下さい、学校では私とあなたは教師と生徒。それにあなたは実の弟でも苗字呼びしているのだから、その方向で。」
そう言って席に座る。その顔は少し不機嫌そうだった。このラウラって子も何かありそうだね。でもまずはシャルロットに話を聞かないとそう思い、私は机の上に先ほど置かれた紙片を開く。それにはこう書かれていた。
『説明するから放課後生徒会室に来てね♪』
最後の♪に思わずイラっとした私はその紙を握り潰した。
どうでしたか?今回の2人に関しては原作より大幅に変えてあるので原作と違うと思ってもあまり突っ込まないで下さい。説明はしますから。それではまた次回お会いしましょう。