『僕のヒーローアカデミア』   作:Ph.D

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誤字報告ありがとうございます!!
あれの使い方がよく分からないので、誤字報告を正しく活かせているのか不安なところはあるんですが…

前回から今回の投稿までの間にスマフォの機種変更をしたこともあり更新が少し遅くなりましたm(_ _)m

では、第9話をどうぞ!


緑谷出久:オリジン

『まぁ、トレーニングだとか訓練だとか言っても頑張って努力する必要なんて』

『実はないんだ』

『今持っている力の使い方を変えるだけで十二分に戦えるようになるはずさ』

 

 現在、球磨川くんと緑谷くんは修行(訓練?)の内容を決めている。 

 

『ぬるい友情・無駄な努力・むなしい勝利』 

『それが僕のモットーだからね』

 

 果たして修行が始まるかどうかは...神のみぞ知るって感じかな。

いや、まぁこの世界の神は一応僕なんだけどさ。

 

「でも、努力をしないで強くなれるんでしょうか...?現場で活躍しているヒーローですら日々血反吐を吐くような努力をしていると聞きますし...無個性で中学生の僕が努力をしないで本当に『と、言いたいところなんだけど』

 

 緑谷くんがブツブツ言っていると思ったら、久しぶりの球磨川節だ。

 

『実は、僕も今一生懸命修行をしているところでね』

『いや、アイデンティティ(個性)が迷子になっているとか言われかねない話なんだけどさ』

『ま、それはそれで良いとして』

『出久ちゃん、君には過負荷(マイナス)式"欠点を伸ばす修行"をしてもらうよ』 

 

 ただのお勉強会のくせしてなぜ自嘲気味に「一生懸命修行」とか言えるのか、僕にはちっとも理解できないね。

いや、『かつては混沌よりも這いよる過負荷とまで呼ばれた僕がね...』みたいな意味の表情なんだろうけどさ。

血反吐を吐くような努力をしてしまってからそういう顔はして欲しいものだよ。

 

「欠点を伸ばす...?」

 

『そう、モノを腐らせてしまう、傷を開いてしまう、痛みを押し付けてしまう、そんな人間性における弱さを、欠点(マイナス)を伸ばすのさ』

『それで、君の話なんだけど』

『伸び代と未来しかない出久ちゃんの話なんだけど』

『君の欠点は無個性であることであり、さらに言えば非力であることだ』

 

 江迎怒江、志布志飛沫、蝶ヶ崎蛾々丸、いつか球磨川くんと肩を並べて戦った(負けた)彼らの過負荷(マイナス)と緑谷くんの無個性(ノーマル)を並べて考えるのは少しズレているような気もするが、まぁ球磨川くんの語りはいつも詭弁だからな。

ま、気にしたら負けだね。

 

「でも...どうやって...」

 

『下を向いたらいけないぜ?』

『いや、僕を見ろって意味じゃあない』

『下でも僕でもなく、きちんと"自分自身"を見るんだ』 

 

 そう言って、無駄に良いことを言って球磨川くんは言葉を切る。

そして少し意地悪そうに(いや、偏見やら色眼鏡やらではなくマジだ)笑い、驚くほど真面目な声で続けた。

 

個性(才能)があって恵まれていて希望に溢れた幸せ(プラス)な奴らと同じ土俵に立って、正道で努力して勝つ必要なんてないのさ』

『卑怯で邪道で負け越しでも、最後に白星をあげることはできるんだよ』

『少なくとも僕はそうだった』

負け犬()だって勝ち組(プラス)に勝てたんだよ』

 

「出久ちゃん、君だってそういう奴らに勝ちたいんだろ?」

 

-----友達ができないままで友達ができる奴に勝ちたい

努力できないままで努力できる連中に勝ちたい

勝利できないままで勝利できる奴に勝ちたい

不幸なままで幸せな奴に勝ちたい!-----

 

 そう言っていたのがいつのことだかもう僕には思い出せないが...

いや、言うほど昔じゃないな。

普通に思い出せるが...あの日の君と今の君と、見た目や雰囲気、周りの状況が変わっても、君の本質は一分一厘も変わっていないみたいだね。

 

「はい!」

「勝ちたいです!!」 

 

 そして、そんな球磨川くんの言葉はいつだって弱者の心に突き刺さる。

 

『よし』

『じゃあさっそくトレーニングに移ろうか!』 

 

「へ?」

 

 雰囲気を変えるような明るい声とともに球磨川くんが投げたのは、球磨川くん愛用の螺子だ。

 

「うわっ!?」

「そんなもの一体どこから出したんですか!」 

 

 緑谷くんが慌てて避け地面を抉る。

 

『ん?』

『あれ、言ってなかったっけ?』 

『僕、暗器使いなんだ』 

 

 そう言いながらさらにもう1本投げつける。

 

「っ...そうなんですか!?」

 

 いや...

 

『いや、嘘だけど?』 

 

 まぁ嘘だろうね。

 螺子を投げたことで生まれた砂埃を目くらましに緑谷くんへ急接近した球磨川くんは、そのまま横蹴りで緑谷くんを吹っ飛ばす。

 

 ちなみに、球磨川くんがいつも大量に取り出す巨大螺子は全部彼のポケットの中に入っている。

正確には、巨大螺子を砕いて生まれた破片をポケットの中に入れ、使う時になったら「砕かれた」という現実を『なかったこと』にして大きくして(というか元に戻して)いる。

 

「うぐっ...」

 

 意識はあるが起き上がれない様子の緑谷くんに、球磨川くんが声をかける。

 

『君の戦い方、欠点の伸ばし方についてなんだけどー』

 

「は...はぃ...」

 

 緑谷くんがお腹を抑えながら起き上がって答え、球磨川くんが指を折りながら説明をする。

 

『力がないから筋トレをする、不正解』

『力がないから相手の力を利用する、うーん三角』 

『力がないから他のモノを力を利用する...』

『これが花丸、大正解だ』

   

『他力本願、それが僕の、過負荷ら(僕ら)の正道だ』

 

 言いながら球磨川くんは螺子をかまえる。

 

『これから半年間、僕とトレーニングする時は筋トレもランニングもしなくていい』

『ただひたすら、機転と周りの力を使って僕と戦ってもらう』

 

 言い終えると同時に再び螺子を投げる。

今度は地面ではなく海浜公園に溜まったゴミの山にぶつかり、それを倒壊させる。

砂埃が止むとそこに緑谷くんの影はなくなっていた。

当然血溜まりがある、なんてこともない。

おそらくゴミ山の倒壊と砂埃に乗じて物陰に隠れたんだらうね。

  

『さて、どうくるかな』

 

 球磨川くんは再び螺子をかまえ、不敵に笑っている。 

 

 

 

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▽月曜日

 

 今日も球磨川さんとなんでもありのサバイバル鬼ごっこ(という名の実践形式の訓練)をしている。

 

『おっと…!』

 

 球磨川さんの死角から自転車のタイヤを投げつけ、場所を気取られる前に遠くへ逃げる。急いで服を脱ぎ、そこら中に落ちている瓦礫や鉄くずをスリングの要領で球磨川さんのいる方向へ飛ばす。

 

『出久ちゃーん』

『そんなんじゃ全然当たらないぜ』

 

 いつの間にか見える範囲まで接近していた球磨川さんへ向けて、今度はしっかりと狙いを定め、即席スリングで鉄くずを飛ばす。

 

「球磨川さん、行きます!」

   

 鉄くずを避けて体勢の崩れた球磨川さんに、鉄パイプを構えて接近戦を仕掛ける。

 

『さぁ、今日はいつまで持つかな?』

 

 素早く体勢を整えた球磨川さんの巨大螺子と僕の持つ鉄パイプがぶつかる。 

 

 

▽火曜日

 

 月曜日に激しい運動をしたから今日のトレーニングは軽いランニングと柔軟だけで、あとの時間は勉強にあてている。

 

 

▽水曜日

 

 球磨川さんもオールマイトもいない今日みたいな日はひたすら海浜公園の掃除をする。夏休みでない時期の平日は、朝と夕方という学校のない時間帯しか掃除ができないからできる限り多くのゴミを掃除できるようにしている。

 

 

▽木曜日

 

 海浜公園の掃除は必ず2日連続でやるようにしている。オールマイトには2日おきに、というような指示を受けているし、超回復のことを考えると今日は休む方がいいのかもしれない。

 だけど、海浜公園の掃除では特定の筋肉を鍛えることができない、つまりより強い肉体を作るためにはより多くのゴミを運び体全体をいじめ抜く必要があるということだ。

 なにより、僕の目標は「雄英高校入学式」ではなく「一流のヒーローになること」なんだから言われたことだけをやって満足していていいはずが無い。

 だから今日も僕はゴミを運ぶ。

 

 

▽金曜日

 

 筋肉通に悲鳴をあげる体を労り、今日1日は3日ぶりの休息日として柔軟と勉強をひたすら頑張る。

 まぁ休息日でない日も柔軟や勉強とかはしてるんだけど、休息日は特別たくさんやっていた。

 

 

▽土曜日

 

 週末は終日オールマイトに鍛えてもらっている。

 メニューは日によって変わり、単純な筋トレから遠泳、格闘技の訓練まで様々なことをする。

 

 

▽日曜日

 

 半休息日的なこの日は、球磨川さんやオールマイトとのトレーニングで習ったことを初めとした1週間のトレーニングの復習と勉強を主に行っている。

 

 

 

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 気がつくと10ヶ月が過ぎ去っていた。

 

 海浜公園を掃除することでオールマイトの個性を受け入れるための、そうでなくともヒーローとなるために不可欠な基礎体力を身につけることができた。

 オールマイトに鍛えてもらうことで身につけた力を上手く扱うための技術を身につけることができた。

 球磨川さんとひたすら戦い続けたことで戦うことへの慣れや貪欲さを身につけることができた。

 

 僕は本当に恵まれている、と心の底から思う。途中からほぼ休みなくトレーニングをするようになってオールマイトに二度ほど怒られたり、球磨川さんと戦っているうちに気がついたら冷蔵庫で近接戦闘ができるようになってしまっていたり、色々問題と言えるようなことがあったけどそんなことがなんの問題でもないと思えるくらい僕は恵まれている。

 

 今朝、ようやく海浜公園のゴミ掃除が終わりオールマイトの個性を受け継ぐことができた。

 今日、ようやく10ヶ月のトレーニングが終わり雄英高校の受験をむかえる。

 

 ようやく、ようやくここまで来たんだ。

 

 ここが、僕のオリジンだ。 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 




▽突然ルビが振られるようになったのは作者がようやくルビの振り方について理解できて舞い上がったからです。
▽『下を向いたらいけないぜ』からの無駄に良いセリフは、「球磨川禊は良いことを言ってからが本場」みたいなことを原作(めだかボックス)で言われていたのでそのことを考えて入れました。
▽螺子の破片がポケットに入っていて〜…の部分は完全に捏造ですが、「却本作り」の螺子と違い『大嘘憑き』の螺子は物理的に存在している上、球磨川くんは暗器とかできなさそうなのでこんな感じになりました。
▽海浜公園にゴミ山なんてありませんが、雰囲気的にゴミ山を倒壊させたかったので捏造しました。
▽トレーニングのやりすぎでオールマイトに怒られた回数が1回ではなく2回になっているのは、球磨川くんとのトレーニングが原因です。
▽出久くんが原作と比べて勉強しすぎなように見えますが、多分偏差値70越えの高校受験の勉強ってこんなもんだと思います。
▽球磨川くんとのトレーニングはセリフや動き付きなのにオールマイトとのトレーニングではそれらがないのは、次回あたりでオールマイト視点の話を書くからです。
▽オリジンは原作1話(4月)なのに今作の9話(2月)がオリジンになっていることに深い理由はありません。「ここが僕のオリジンだ」って言わせたかっただけです。
▽球磨川くんを師事していますが、出久くんは絶対に過負荷化しません。ただ、球磨川くんと関わることで原作より成長が早くなったり逆に成長しなかったりする予定です。球磨川くんと関わったことによる影響については最終章に近くなってから明文化して説明します。



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