咲-saki- 四葉編 episode of side-M   作:ホーラ

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ランキングのポケモン小説読んだしまったせいでポケモン熱が復活してしまいあまり執筆速度が上がらない状況。レヒレ強い


第70局[失敗]

入学式はアクシデントも無く予定通りに終了した。

七宝君の答辞の挨拶も無難なものであり、去年のように会場全ての目を釘付けにするわけでも無く、一昨年のように在校生ばかりか新入生までがハラハラするようなものでもなかった。

少し問題があったとすれば、咲が何かパフォーマンスすると新入生は勘違いしていたことぐらいであろうか。厄介な来賓との会話はめんどくさがった咲が深雪に任せておいた。

 

 

 

 

 

咲たち7人は入学式からの帰り道、喫茶店アイネブリーゼで昼食をとり、いつも通りコーヒー片手の雑談をしていた。

 

「そういえば、新入生の首席君の勧誘はどうなったの?」

 

会話がふと途切れた瞬間に、雫がそう訊ねた。特段の意図があったわけではない。

例年、新入生総代は生徒会に入るのが慣習となっているので、今年もそうだろうと確信した質問だった。

 

「…だめだった」

 

自分のせいでもないのに、 がっくりと肩を落とし項垂れるほのかを見て、聞かなきゃよかったと雫は後悔を味わうことになる。

 

 

 

 

そう、それは約1時間半前のこと…

 

咲とあずさは琢磨の生徒会の勧誘に向かっていた。新入生総代に生徒会の話をするのは入学式が終わってからという不文律がある。入学式前は生徒ではないというのが理由だ。なので入学式後に勧誘をするのだ。

 

「ありがたいお誘いではありますが、辞退させて頂きます」

 

あずさの生徒会への勧誘の答えがこれである。

 

「理由を聞かせてもらえるかしら?」

 

固まってしまったあずさに代わり、琢磨にあんまり友好的に思われていない咲が訊ねる。

 

「自分を鍛えることに専念したいんです」

 

琢磨は咲を見返しながらこう答える。今の目は咲を軽蔑する目ではない。強い意志を持った目だ。挑戦的な目とも言えるかもしれない。

 

「俺は十師族に勝てるぐらい、強い魔法師になりたい。それが俺の目標です。だから生徒会で組織運営を学ぶより、部活で魔法を鍛えたいと思います」

 

琢磨の言葉から自分の力で十師族になりたいという意志を咲は感じる。咲を嫁にもらって十師族になるのではなく。そういう考えは咲好みだ。

 

「そうですか…….」

 

思ったより早く硬直から脱したあずさがため息をつくようにそう言った。それほどショックであったのだろうか。

 

「それは残念な話だけど、七宝君がそう決めているなら仕方ないわね。部活頑張ってください」

 

そう咲が言うと、琢磨は足早に立ち去った。

 

 

ーー回想終了

 

 

 

「本人が部活を頑張りたいと言ったんだから仕方がない」

 

達也のその言葉はほのかに気にするなと言い聞かせてる意味合いが多かった。

 

「でも、新入生が誰も生徒会に入らないのは後々のことを考えると都合が悪いわね」

 

そう言うと、深雪が思いついたというように軽く手を打ち鳴らした。

 

「そうだ。水波ちゃんを役員とするのはどうでしょう」

 

深雪の発言に、これまで静かに聞き役に徹していた水波は顔を強張らせた。

 

「深雪、私の水波ちゃんを虐めないで」

 

咲は水波に抱きつきながら助け船を出す。咲に抱きつかれた水波は恥ずかしいのだろう、顔を赤くしている。そんな様子を見て3人は頭に疑問符を浮かべる。

 

「水波ちゃん家関係の人って紹介されたけど、咲の愛人なの?」

 

雫がそういうと水波はもっと顔を赤くした。

雫がそう言った理由は、咲が水波に見せる態度が一般的な使用人に対する態度には見えなかったからだ。

雫の家は富豪であり、ほのかも雫の親友として雫の家によく出入りしている。幹比古の家も古式魔法で有名な名家であるので、3人とも使用人とどう接したらいいかわかっているし、他の人の使用人との接し方も見ている。しかし咲のような接し方をする人は今まで見たことがなかったのだ。大袈裟な表現ではあるが咲の愛人と言われても納得してしまうぐらいの態度であったのだ。

 

「愛人ね、確かに水波ちゃん可愛いからそれもいいかもしれないわね。どう水波ちゃん。私の愛人にならない?」

 

咲は上目遣いで水波にそう言う。水波は咲の言葉と視線で思考がショートしていて答えを返すことができない。水波のそんな様子を見た咲はクスクス笑い水波から離れ頭を撫でる。

 

「水波ちゃんごめんね。深雪より私の方が意地悪だったかも」

 

咲は冗談半分で言っただけであったのだが水波には刺激が強すぎた。

 

 

「それに首席を生徒会に勧誘するのが慣例なんだから、代わりも成績で選ばなければ」

 

達也が何事もなかったかのように話を戻す。

 

「それだったら次席は誰だっけ?」

 

ほのかと幹比古はどう言ったらいいかわからない様子であったので、雫のあまり空気の読まない性格がここではプラスの方面に働いた。

 

「えっと、七草先輩の妹さんの七草泉美さんだね」

 

ほのかは入試の結果を端末を見るのではなく、ちゃんと記憶していた。

 

「三位が双子の片割れの香澄ちゃんね。七宝君とこの二人は本当に僅差の点数だった気がするわ、確か3人だけ突出した点数だったことは記憶にあるわね」

 

咲はもう既にいつも通りの態度に戻って思い出すように言った。

 

「じゃあ、七草先輩の妹さんどちらかが生徒会役員になってもおかしくないということですね」

「けど順当にいけば泉美さんの方じゃない」

 

幹比古の発言にまるで興味なさげに淡々と雫が反論する。その雫の言葉に深雪は少し嫌そうな顔をしている。その顔に気がついた咲は疑問に思った。朝会った時はお淑やかな子であり、深雪が苦手に思うだろう要素は思いつかなかったからだ。

 

実は入学式後、真由美と共にやって来た泉美と香澄は深雪に挨拶をした。その際、泉美が深雪の美しさに感動し、やや崇拝的な様子であったことに、深雪はやや苦手意識を持ってしまったのだ。それを別の場所で琢磨の勧誘をしていた咲は知らなかったので、疑問に思うのは自然である。

 

「決めるのは咲だが、最終的は本人のやる気しだいだろうな」

 

達也の発言は、深雪の内心を斟酌するものともそうでないとも取れるどっちつかずのものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




咲×水波 ありですね(のどっち風)

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