咲-saki- 四葉編 episode of side-M   作:ホーラ

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第54局[形代]

翌日、シリウスもといリーナとの決着は着いたらしい。

達也を殺そうとしたリーナに深雪がキレたらしく、魔法戦をすることになったそうだ。その魔法戦は深雪が勝利したらしい。やはり加護が効いているのであろう。帰ってきた深雪はなぜか少し顔を赤くしていたのだが。

勝った報酬で情報をいくつか聞き出したのだが吸血鬼はUSNA軍の脱走兵。精神操作を受けてる可能性が高いらしい。

達也は変なデバイスで探知機を吸血鬼に埋め込んだらしく、七草家のチームと吉田君達のチーム合同で追いかけることになったそうだ。

 

 

 

2日後、なかなか吸血鬼が捕まえられないらしく、機嫌が悪いらしいエリカから達也が逃げてきたせいで、私たちとほのかの4人の食事になった。達也は私たちをはべらしているという目を向けられ、早々に食堂から退散し屋上に来ている。真冬の屋上は寒いのだが魔法を使えばそういうことはなくなる。便利な世界だ。

正面にいる達也の両手に花状態を完全に無視しながら本を読んでると、今まで見たことがないオーラに気づいた。

 

「へえー……なるほど、これが吸血鬼ね」

「どういうことだ咲」

 

深雪の顔を見たところ冴えない顔をしている。達也とほのかはわかっていないようだ。

 

「校内に吸血鬼が入って来たのよ、場所はたぶん通用門ね。確か今日、どこかの業者が何かのデモをすることになっていたはずだわ。たぶんそこの社員なのね」

 

そのことを話すと達也の端末が鳴った。相手は七草先輩で、やはり学校に吸血鬼が入って来たという旨だった。

 

私たち3人は飛行術式で空中に飛び上がり、屋上には飛行術式をCADに入れていなかったほのかだけが置き去りとなった。

 

 

 

 

私たちが向かった搬入口には業者しかおらず、トラックから荷物を降ろしていた。その2人は私の神依に似ていて、何か纏ってるように見えた。それならあのキャラが使えるかもしれない。

 

「達也深雪、私が攻撃されそうになったら守ってね」

 

そう言い残し、私は初めてのキャラの神依をする。相手も自分たちと似たような気配を感じ取ったのかもしれない。2人揃って私に電撃を放って来たが、深雪がその電撃を領域干渉で無効化してくれた。しかし敵の1人が走り出し、私の近くにいる達也と戦闘を始める。

時間を稼いでもらっている間に魔法のイメージする。ぶっつけ本番で成功するかわからないが試してみるしかない。

 

「避けて!」

 

私はイメージした魔法を放った。

 

 

 

狩宿巴と滝見春

どちらも永水女子の選手であり麻雀では無能力者である。しかし、巫女さんだからであろうか。岩戸霞が攻撃モードになって良くない神を降ろした場合、元に戻すための祓い手を2人で行なっていた。

咲がこれをこの世界に直すと何か悪いものを祓うという巫女のような能力になる。

 

咲はパラサイトを良くない神、憑かれている人たちを岩戸霞、とイメージし魔法を発動したのだった。

 

 

 

私の放った魔法は上手くいったようで、私の魔法により乗り移っていた2人と2体のパラサイトは分離した。

 

「サキたち何してるの!?まさかミアを殺したとかじゃないでしょうね」

「殺してはないはずよ、初めてだからわからないけど」

 

リーナが合流してくる。ミアとはあの女性のことだろうか。その間に吉田君達が合流してくる。

 

「伏せろ!」

 

十文字先輩が注意を促し、私以外には何もないと見えるところから雷球が飛来する。せいぜい弓矢のスピードだが、行動不能に至らしめるには十分なものだ。

うっかりしていた。祓ったはいいけど、祓った後のこと考えていなかった。今まで攻撃してこなかったのは、いきなり依り代を失い、スタンが入っていたのだろう。

私には本体が見えるが対抗手段がない。一応今強引なイメージが思いついたが、成功するかは50%ぐらいだろう。

 

「ねえ、達也さん。50%ぐらいの確率なら一体は封じ込めれるけどそれ試してもいいかしら」

「50%か…試してみてくれ」

 

言質を一応取ったので私は新しい神依をする。

 

 

岩戸霞

永水女子3年大将であり、あだ名はおっぱいおばけ。本家の神代に、分家としては一番近い血を持ち、生きた天倪として神代が稀に降ろしてくる恐ろしい神を代わりに宿して手なづける役目を担っていた。

咲はこの能力に目をつけた。恐ろしい神を手なづけれるならば、神以下のパラサイトごとき支配できるのではないかと。

 

 

私はパラサイト一体をみて、自分に乗り移らせるイメージをする。そして力を込めると、掃除機に吸い込まれるようにしてパラサイトは私に乗り移る。パラサイトが頭の中で暴れ、気分が悪くなり膝をついてしまうが、時間が経つとようやく大人しくなりパラサイトは支配できたようだ。

なぜ2匹できなかったのは、霞は原作で一体しか使役していなかったので、イメージができなかったからだ。

 

「咲、大丈夫か!?」

「平気、1匹は封印したわ。もう1匹は頼むわね」

 

達也が珍しく慌てるように聞くので、笑みを携えて答える。平気ではない気持ち悪さだが、治まって来ているし大丈夫であろう。

 

その間、もう一匹のパラサイトはだんだん物質次元における存在が強まってきた。どうやら私と美月の2人で見たかららしい。

私がもう1匹のパラサイトを封印した光景をみたパラサイトは、私を警戒しているらしく、パラサイトが見えるもう1人、美月の方に向かった。

 

「達也さん、美月が」

「わかっている」

 

美月は吉田君が守っているが、吉田君にはパラサイトがまだ見えていないらしく苦戦している。そのまま押し切られるかと思ったとこに、達也の術式解体のサイオンの奔流が襲いかかりパラサイトを吹っ飛ばした。

 

 

 

「逃したか」

 

達也は悔しそうだ。不可避ではなかった戦いを選んだ以上敵の捕獲をしたかったのだろう。しかしその後、達也は何かを思い出したような顔になる。

 

「そういや咲、封印したとか言っていたな。どうやって封印したんだ?」

「私自身に取り憑かせたのよ。それでパラサイトを使役してるの。ほら、雷球使えるでしょ。結構危なかったけど便利な能力増えてラッキーだわ」

 

雷球を小さく発射して見せると達也も含めみんな唖然としていた。達也が唖然とするのは珍しい。

 

「え…サキは他の人たちみたいに思考を変えられたりしないの?…」

「別にパラサイトだけが精神を変えて憑代を支配することの専売特許持ってるわけではないじゃない。今度は私がパラサイトを逆に支配してあげたの。美月の目だったら弱々しいパラサイトのオーラを今なら私から感じ取れると思うわ」

 

眼鏡を外した美月は私を見て確認した。

 

「本当に咲さんに取り憑いているんですね…」

 

 

 

 

咲の話を聞いた達也は口を閉じていた。

咲はあれを実行する前50%の確率と言っていた。

それなら失敗した時の50%はどうなっていたのだろうか。咲がそう簡単にパラサイトに負けるとは思えないが、もしそのことを想像するだけでも怖い。それに、咲の案をどうしようもなかったとはいえ、軽率にGOサインを出したのは自分自身である。

自分がほとんど何もできなかったことと軽率な行動をとったことに対しての後悔、そして咲を失いそうになった恐怖に、1人達也は手が震えるのを抑えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




永水女子はこういう時、実際活躍しそうですよね

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