咲-saki- 四葉編 episode of side-M   作:ホーラ

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第51局[妖異]

週明けの教室はある事件で持ちきりであった。

大手マスコミにスクープ記事が配信されそれが広まったのだがその内容とは不可解な死体が大きな話題となっている。不可解な死体というのは傷口がないにも関わらず死体からは血液が抜かれていたのだ。

 

私は傷口無しに殺すことは普通にできるが、傷口がないのに血液が抜くことはイメージがつかず不可能なので相当特殊な術を使うのであろう。その奇妙な連続殺人事件は巷では吸血鬼事件と呼ばれていた。吸血鬼だったら傷跡つくだろというツッコミは野暮である。

 

「例の吸血鬼事件、四葉はどの程知っている」

 

私は十文字先輩と七草先輩に呼び出されていた。場所はクロスフィールドの部室。ここは非公式な密会の場として公然の秘密となっている。

 

「十文字家と七草家からの問いでしょうか?」

「ああ」

「それならお答えできません」

 

やっぱりかという顔を七草先輩はする。実は七草家が四葉の息のかかったところにちょっかいをかけたらしく本家から七草家とは冷戦状態と聞いていたから、答えることができないのだ。一縷の望みをかけて私を呼んだのかもしれない。達也は口を割らないだろうし深雪だったら達也もセットでついてきそうとのことで私が呼ばれたのだろう。

 

「しかし先輩と後輩という関係なら話は別ですが…」

 

妥協案を出すと真由美は食いついてきたので話すことにする

 

「私が知っているのはUSNAでも似たような事件が起きているとのことだけです。これは本家からの情報ではないので喋っても大丈夫だと思います」

「それはどこ情報だ」

 

本家ではない出どころの情報だと聞いて十文字先輩は疑問に思ったのかもしれない。

 

「北山さんが向こうで聞いた情報だそうです。向こうも情報統制が引かれており情報通の同級生から聞いたらしいです」

 

私が情報を話すと七草先輩達も情報を話してくれた。被害の実数は報道の3倍で、狙いは魔法師。そして七草家と十文字家は共闘することになったそうだ

 

「無理なお願いということもわかってるんだけど四葉家も共闘してくれないかしら」

 

「その件についてはお断りします」

 

七草先輩は私の言葉に肩を落とした。たぶん冷戦状態じゃなくても四葉はこのことに関して関与しないだろう。四葉はこのような俗世のことより能力向上に心血を注いでいる。それに私も身近な人が巻き込まれたならともかく面倒ごとに関わりたくない。リーナの件で手がいっぱいであるのだ。

 

「しかし私たちが仕入れた情報を先輩後輩として渡すのは問題ないと思います」

 

先ほどと似たような提案をして、七草先輩と十文字先輩はそれを受け入れ、その場はお開きとなった。

 

 

 

 

 

翌朝、凶報が達也のメッセージにエリカから送られてくる。レオが吸血鬼に襲われたとのことだ。他人事であれば関わらないつもりだったが一高の生徒、それも友人が関係する出来事となったら関わらないわけにはいられない。幸い命に別状はないらしいが放課後お見舞いに行くことになった

 

放課後、病室に向かうと病室の前の長椅子にエリカが座っていた。私に婚約を申し込んでるエリカの兄がレオに依頼したらしく、不機嫌なエリカは絶対兄と結婚するなと私に言ってきた。確かに友人が義妹になるのはちょっと嫌だ。

 

病室に入るとレオは体を起こした。少し辛そうだ。

 

「酷い目に遭ったな」

「みっともないところ見せちまったな」

 

照れ臭そうにレオが笑って答える。

 

「見たところ怪我は無いようだが」

「そう簡単にはやられないぜ、俺だって無抵抗だった訳でもないんだぜ」

「じゃあどこに攻撃もらったんだ」

「それが俺にもよくわからないんだよなあ」

 

話を聞くと何か私の神依に似たような能力であった。体の力が抜けると似たようなことぐらいだったらパウチカムイでできる。一応、レオの身体見とこうと思い、清水谷竜華の神依を行う

 

「レオ、ほんますごいなあ…その状態やったら普通話すこともできへんで」

「どういうことだ咲」

 

突然喋り方が変わった私をみんなが見る。

 

最高状態の清水谷先輩と言われる状態の竜華は相手の体温、鼓動、呼吸などがを感じることができていた。この世界に置き換えるとそれに加えサイオン保有量や精気残り量などが見えるのであった。

 

 

「えらい精気食われとるで。ほとんど残ってへんし怜やったらぶっ倒れとるやろうなあ」

 

精気とは生命力の塊である。血肉を食らう魔物はこれを糧としていると考えられており、もしかしたら原作怜もこれに似たものを使って未来視してたのかもしれない。

 

「咲、それはどうすればいいんだ」

「普通は時間を待てば回復するんやけど、この状態はきついやろうし、よっしゃ今日は特別やで」

「「は?」」

 

私がベットに腰掛け太ももをポンポンとすると一斉に声が上がった。

 

「ただの膝枕やないで!うちの膝枕はヒーリング効果あるし得意やねん!」

 

怜が膝枕気持ちいいと言っていたので、なぜか私の膝枕はヒーリング効果が付いていた。これは神依無しにもついているので母などにもよくせがまれるが竜華神依時にはその効果が倍増していた。

 

「本当にいいのか?」

「そんな遠慮せんでええって、レオもその状態じゃきついやろ」

 

レオは少し恥ずかしいようだったが、私の服を汚さないようにかタオルを私の太ももの上に一枚引き、太ももに頭を乗せるとすぐに眠りについた。

 

「お姉様の膝枕…」

「今度またしてあげるで」

 

よく考えるとみなもや母にはよくしているがあまり深雪にしていないことを思い出す。

 

「この事実を学校のみんなが聞いたらレオ刺されるわね…」

「俺もしてもらったことないぞ」

 

エリカと達也が次々と言ってくるので別に減るものじゃないので今度してあげる約束を取り付ける。枕神怜が咲の膝枕はうちだけのもんやと言っているが別に怜だけのものではない。

 

「本当にレオもすごいけど咲さんもすごいね、あの精気の量でしゃべっていたレオも驚異的だけど膝枕をしてもらってるレオの精気の回復量これ100倍以上だよ…」

 

幽体を見ていた幹比古がそういう。

その幹比古曰く、レオが遭遇した相手はおそらくパラサイト。妖魔とか悪霊の類らしい。最初はみんな信じられないようだったが、実際似たようなものの神を使ってる私が近くにいるのですぐに納得した。

 

一時間後レオが目を覚ました時、精気はほとんど回復しているようで元気になったのを見てからエリカを除いた私たちは帰宅した。

 

 

 

 

 

 

 




荒川さん使いたかったなあ…

今日は鶴田姫子の誕生日です。同じくipsのキャップやのどっち、竜華や憧ちゃんも祝福

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