咲-saki- 四葉編 episode of side-M   作:ホーラ

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オリジナル展開です。解説は書いてありますけど流し読みでも大丈夫です。


第47局[神儀]

2096年元旦。

私は朝から目が回りそうになるぐらい忙しかった。毎年のことなのだがこの後慶春会が行われ、それが終わると夜には歳旦の儀、通称神儀が行われる。

そのこともあり私は和風着せ替え人形のような扱いを受け、白粉を塗りたくられる。

1時間ほどいじくりまわされ、解放された時には帰りたいと100回ほど既に思っていた

 

「お姉様、あけましておめでとうございます」

「みなも、あけましておめでとう」

 

控え室で新年初めてのあいさつをみなもと交わす。一応みなもはいつもはあんな感じだがちゃんとした言葉遣いもできるのだ。

 

「お姉ちゃん、やっぱり綺麗すぎるよ…」

「金髪と和服は毎度似合わないと思うんだけどそうかしら?」

 

すぐにみなもの口ぶりは戻り、たわいもない会話をしているとそこに新たな姉弟が合流する。

 

「咲お姉さま、みなもさん、あけましておめでとうございます」

「咲さん、みなもさん、あけましておめでとうございます」

 

私の再従兄弟の黒羽姉弟の亜夜子と文弥だ。

 

「亜夜子さん、文弥君、あけましておめでとうございます」

 

みなもも同じように私と挨拶する

 

「うわあ…」

 

感嘆の声をあげたのは文弥であった。

 

「咲さん、すごくお綺麗です」

「呆れた。そのままじゃない、しかも毎年のことでしょ」

 

亜夜子は深雪とみなもをライバル視しているが私のことは尊敬してる節がある。深雪みなも亜夜子の三竦みの上に私がいる構図となっているのであった。

 

その後、津久葉家の夕歌さんや新発田家の勝成さんと新年の挨拶を交わしていると、そこに控えめな振袖を着た家政婦が彼らを呼びに来た。

 

「失礼致します。皆様の慶春会への案内役を仰せつかまりました桜井水波と申します」

 

案内役は夏休み本家にいた時にあった水波のようだ。表立って顔にでることはないが少し緊張していた。それもそのはず、この会の入場はよく言えば伝統を重んじてる、悪く言えば頭がおかしいと思うところがあるのでそれが恥ずかしいのだろう。

 

次々と入場していき、最後は私とみなもが残っていた。

 

「咲様、みなも様、ご案内いたします」

 

少し疲れているようだった。早く終わらせてあげるのがいいだろう。

 

「ご当主様の嫡女、四葉咲様、及びその御妹君、四葉みなも様、おなーりー」

 

相変わらずこの入場は頭がおかしい。端正な様子で膝を折り一礼しながら私が当主になったらこれは廃止と思っていた。

その後、私が礼から顔を上げると会場がどよめくのも毎年のことだ。

 

水波に案内され私とみなもは席に着く。私たちは真夜の両隣に案内された。それについての疑問は一座からは出ない。真夜が親バカだと知っているからだ。

 

「皆様、新年おめでとうございます」

 

彼女の魔法"流星群"を表すかのような黒地に金糸を使った着物を見に纏う真夜がまず新年の挨拶をし、ここからは各分家の挨拶などが始まり次に食事、新魔法の発表などが行われ四葉家にすると明るい様子で会が進むのがこの慶春会の特徴である。

今年もその例に漏れず例年と変わることなく終了した。こんな様子から慶春会は私以外自由参加であるが、こんな和やかに交流することはこの会以外ないので深雪や達也などの例外は除くとほとんど全員出席なのであった。私は次の歳旦の儀もあるので強制参加なのだが。

 

 

慶春会が終わると次は歳旦の儀である。私は慶春会が終わると同時に移動し巫女服に着替え、家の中心部にある儀式専用の和室に向かう。なぜ家の中心部にあるかというと風水的に和室が真ん中にあると運気が上がるからである。

 

私が着くとそこにいたのはお母様と葉山さんなど複数名の執事であった。お母様は上座ではなく下座に座り、私は上段の間についた。

 

これから行うのは神降し、神依と違い本当の神を降ろす行為だ。まず私は神を降ろす前に祝詞(のりと)をあげる。これは神に神の力を請うためだ。そして祝詞を終えた私は「神」、神代小蒔の神依を行なった。

 

 

 

 

 

 

神代小蒔

永水女子2年であり牌に愛されし子と呼ばれている。身体に9人の神を宿していて対局中にそれを降ろし自身に憑依させることにより様々なスタイルを発動させる。しかし私のように9人を自由に選ぶことはできない。

咲はこの世界に転生し神代の神依をする際、イメージができなかったのでまず神代の能力について考察することにした。

 

永水女子のメンバーは霧島神宮の巫女であり、霧島神宮が祀っている神は天津日高瓊瓊杵尊(アマツヒタカニニギノミコト)。

余談だがこの神は天照大神の孫である。

日本書紀にはこの神は天照大神の命により日本国土を統治するために高天原から天下りしたといわれている。これは天孫降臨といわれ、降り立った位置が九州の霧島連峰の一部の高千穂峰と伝承が残っており、その近くに霧島神宮は立っている。その神話降り立つまでに案内役の神や従事した主だった神を数えると8人であったので祀っている神と合わせると合計9人と原作ともぴったり合うことがわかる。

その神のことを調べ咲は9人の神の能力のイメージができた。

次に神の力をどう使うかである。一般的に神の力のイメージは加護である。咲も例に漏れず神の力を加護の力だと考えた。

最後にいつ降ろすかを考える。いちいちおろしまくって加護変えまくってたら流石に神も怒ると思ったので、区切りがいい元日に降ろすことにした。実際、霧島神宮でも元日に歳旦祭と言われるお祭りがある。そして一回の加護が続く時間を一年と考え、元日ごとに更新することにした。

 

 

この3つを合わせて神代小蒔の神依を考えると、元日、9人のうち1人の神を降ろしその神にちなんだ加護を一年間得るとイメージとなる。対象は四葉一族である。四葉一族じゃなくて対象が個人の場合もあったがそれは結果的に見て四葉一族にプラスとなることであった。

 

 

 

 

咲は既に神依を始め、原作通り寝ている。神が降りるに連れて咲のオーラが人間ではないものに変わっていく。後ろから後光がさし、本当に神のなったような有様だった。

 

「そちがこの我らの憑代の母親か」

「そうであります」

 

真夜も緊張していた。十師族相手にするぐらいでは緊張することはないが相手は本物の神である。気後れするのも無理はない。

 

「我の名は天忍日命である」

 

天忍日命とは天孫降臨の際、弓矢を持って先導した神である。

 

「あいも変わらずこの者はすごい。他国の神の子孫とはいえ人の身ながら我らを宿すとは。」

 

神は寝ている咲の口を使いながらしゃべっている。その口ぶりは本当に驚いている様子であった。

 

「今年の加護はどんなものなのでしょうか?」

「うーむ、こぞ(去年)よりも今年は争いごとが多い。我の力は武によるものが多くを占めている。武においてこの一年向上する加護を与えよう」

 

天忍日命は大伴氏の祖先と言われており、大伴氏は5,6世紀には有力な軍事力を持つ氏族となっている。咲はこの神が降りてきたときは武、魔法力関係の加護を得るとイメージしていた。

つまり今年の加護は一年間魔法力向上のバフである。

 

 

そう言い残し神は天高原に戻る。咲は元のオーラに戻り、座りながら寝ている。今年の儀式もこれで終わりだ。なぜこのように少人数でやるかというと、加護の時、加護以外にも何かある場合がある。

 

今回の場合だと未来視。去年より今年の方が争いごとが多いというところだ。去年は争いごとは横浜騒乱だけなので、今年は二回以上起きるのであろう。

 

話を戻すと加護だけじゃなくデメリットもつく場合がある。それを知らせないためだ。4歳の時、咲は一族の者何人かが命を落とすが一族は発展するという予言をし、一族全体を動揺させていた。それが四葉をアンタッチャブルと呼ばれる一件を作った。

そのことから加護以外はこちらで握りつぶし、一族の者にデメリットは教えないためだ。日本の第二次世界大戦時の情報統制に似ている。

 

真夜は咲を自分と同じ部屋に運び、咲に頬ずりしながら元日を終えた。

 

 

 

 

 

 

私は朝になり目を覚ますと、自分のではない体温を感じ横を見る。そこには私に抱きつくお母様がいた。多少驚くが、毎年のことなのでいつも通り引き剥がす

 

「抱きつくのやめないとお母様嫌いになりますよ」

 

寝ているにもかかわらずその声を聞いたお母様は飛び起き離れてくれる。

 

「咲、怒ってる?」

「別に毎年のことなので怒っていません、それで今年の加護と予知や予想される悪い出来事を教えてください」

 

淡々と聞く私に嫌われたくないとお母様は答えてくれる。なるほど、争いごとが多いということはやはり今度のUSNAの留学生には達也の予想通り気をつけた方がいいかもしれない。

 

また抱きついて来ようとする真夜を押しのけ咲は帰宅の準備を始めに自室に戻るのであった。

 




なんで咲劣等生ssを書くために日本書紀の勉強をすることになったんだ…神代小蒔の能力が不明なのが悪いからリツベ早く個人戦書いて




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