咲-saki- 四葉編 episode of side-M   作:ホーラ

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前の小説の投稿部分までは追いつきました


第4局[豹変]

登校しながら聞いた話だと達也は昨日先輩に本当に四葉なのかという目で見られたようだ。

軽蔑されるよりましだがそういう目も大概鬱陶しい。大変だろうなと思いながら歩いていた。

 

昇降口まで達也と深雪と同じだったが昇降口は一科生と二科生で違うのでそこで達也と分かれた。こういうのが差別意識を助長しているのだと思うのだが高校側も今更変える気はなさそうだ。

 

 

「四葉さんたち魔法トライアスロン部に入らない?」

 

「古式魔法部はどう?」

 

四葉さんたちと言っているが狙いは私だ、 先輩たちが達也が離れた瞬間を見計らって次々と私に声をかけにきたのだ、もう既に深雪は新入生総代として知られており生徒会に入るのはほとんど確定だろう、だが私は生徒会に入るかもわからなく私は入試で強度歴代最高を出したこともある。それにもし四葉の名前を上手く使えば色々便宜を図って貰えるかもしれないので四葉の名前は怖いが早くリクルートしたいのだろう

 

 

「先輩たちの厚意はありがたいのですが部活動勧誘は1週間後からではなかったでしょうか?」

 

部活勧誘されるだろうと予測していた私は規則違反ではないかという意味も込め断る

 

「部活単位として声をかけるのは来週でも今は個人として声をかけてるのよ」

 

なるほど、そういう理屈ならこの行為は合法なのかと少し納得してしまったが教室まで付いてくる厚かましさに少し辟易してしまった。

 

「人気者で大変だね、あっ、私の名前は明智英美、日英のクオーターで正式な名前はアメリア=英美=明智=ゴールディ。エイミィって呼んでね」

 

「私は四葉咲、よろしくお願いしますエイミィ」

 

クラスに入って初めて話しかけられたのは赤髪の女の子、エイミィだった。四葉という苗字にも全くビビっていない、そういう性格なのだろう

 

「で、咲はどの部活に入るの?咲ってあれでしょ、歴代最高強度を出したんでしょ?魔法トライアスロン部とか強度とか重要だし良さそう」

 

魔法トライアスロンは魔法を使ってトライアスロンする部活だ。スタミナの役割を持つサイオン量も重要だが馬力の面を持つ魔法強度もこの競技では重要だ。逆に瞬発力の面を持つ魔法速度はあまり重要なファクターではない。

 

「文芸部に入ろうかと思ってるの。この学校でしか読めない本あるし」

 

「えーなんか魔法使えるのにもったいないよー」

 

「魔法が使えるからって魔法使う部活に入らなくちゃいけないということはないわ」

 

「確かにそうだね!」

 

エイミィと仲良く話すことにより四葉と聞いてビビっていた周りの人たちが私に話しかけたそうにしだした。これはいい傾向なのだが年度の最初は無駄に話しかけられることが多く読書の時間を妨げられる。2人3人との会話ならいいのだがひっきりなしに話しかけられるのは正直言ってめんどくさい。私はさっさと履修登録して逃げることにした。

 

 

 

 

 

 

 

「咲、またサボりか」

 

履修登録を素早く終わらしステルスモモで教室を抜け出した後、学校の施設を回るはずの時間工房の前の木陰のベンチで本を読んでいると達也に声をかけられた。

ステルスモモを解除するとこの光景を見るのが二度目のエリカと美月もびっくりしており今日初めて見る達也の横にいる男子生徒は目を丸くしていた。

 

「サボりじゃないわよ、初めまして、四葉咲です、達也さんと同じ苗字なので咲でいいですよ」

 

この世界に来て習った綺麗なお辞儀をすると達也以外の3人は再び驚いたようだ。

 

「西条レオンハルトだ。レオでいいぜ」

 

自己紹介をしたレオはかなりできるという気配がしたが口に出さないでおいた。

 

「サボりじゃなくて読書。読書は知識を広げる素晴らしいものなのよ、3年間通っても行くかわからない施設に行くよりは知識量が増えていいわ、もし行く時になれば調べればいいし」

 

達也はこめかみを押さえた。中学の時、達也はまだ司波だったが咲と同じ学校に通っていた。その時から咲がこういうことをよく言ってた。ただ単純に読書したいがために屁理屈を言ってるだけなのだが。

 

「まあいいか、サボってるの見つかるなよ」

 

そう言い残し達也たちは工房に入っていき私は再びステルスモモを発動した

 

 

 

 

 

 

昼休み、私は文芸部の集まりに参加した

 

 

文芸部の集まりには何人か既に集まっていた

 

「塩釜先輩お久しぶりです」

「よ、咲1年ぶりか?」

 

この人は塩釜京子、実はこの人は本家の分家の分家であり、私とは親戚関係なのだが塩釜家は裏任務が多い分家なので四葉と関係があることが秘密である以上、先輩後輩の立場を取るのが一番いい

 

「いつもお弁当ありがとうございます」

「礼はいいって、咲に食べさすには申し訳ないぐらいの下手の横好きだからな」

 

この人と会うときはいつもお弁当を作ってきてくれる、咲様に会うのにこれぐらい当然といつも言っているが少し申し訳ない

作ってきてもらったお弁当を食べながら自己紹介が始まる

 

「四葉咲です。四葉は他に二人いるので咲でお願いします。」

「私は南部晴季、四葉咲ちゃんって言ったらあの四葉家でなおかつ入試歴代最高魔法強度の子でしょ?本を読むだけのうちみたいな部活勿体なくないかな?」

「いいえ、私はこの学校でしか読めない本を卒業までに全部読みたいと思っていますのでこの部活はぴったりだと思います」

 

まぎれもない本心だが理由は別にもある、本家との連絡は家でもできるが何かトラブル、例えば四葉の回線が傍受された時に使う連絡網として塩釜先輩との接触が必要なのである

 

「それはすごい目標ね。私は最上寿美礼、よろしくね咲ちゃん」

「先輩は卒業してあとは芦屋や朝倉や佐竹などもいるが今日は来てない、うちの活動いつ来てもいつ帰ってもいいし来る日も自由、本を読んでもいいし本に対する感想を話し合ってもいい、ま、とにかく自由な部活だ」

 

なるほど面倒くさくなくていい感じだ

 

「ちょっと文芸部だけ四葉さんをリクルートするのずるくない?」

「魔法トライアスロン部か、咲は自分の意思でここに来たからずるいもへったくれもないぞ」

「あの子は歴代最高魔法強度の子なのよ、こんな魔法使わないないような部活に入ってもしょうがないじゃない」

「それは咲が決めることだ」

 

塩釜先輩と勧誘の先輩が言い合ってるうちにどんどん今朝の勧誘の先輩が集まってきた。言い争いが激しくなって行くうちに私はめんどくさくなってきた

 

 

「先輩達」

「なんだ?」

「勝負しませんか?」

「は?」

「私に勝った部活に私は入ります」

「いや、だがな…」

 

それもそう、咲はあの四葉家であり歴代最高強度を誇って入学してきたから自信がない部活は言い淀んでしまう

 

「1vs10で構いませんので」

「1vs10?」

「その他のルールは私が決めますがご不満はありますでしょうか?明日の朝私の教室に取りに来て貰えればその部活と順番に勝負を受けることにします、私が負けた時点で勝負は終わり、その部活に入ることにします」

 

 

なにせ1vs10なのだ、四葉家といえども自分たちより年下、なおかつどんだけ強度が強くとも速度は新入生の中でもダントツに早い深雪に引き続き2位だが上級生から見れば少し早いぐらい、10人で先制できれば勝てる、勧誘たちはこれは明日早く来たもん勝ちだなと思っていたが塩釜だけは心の中で笑っていた。

 

 

私が教室に戻ると早くもそのことが話題になっていた

 

「咲、どこ行ってたの!一緒に回ろうと思ってたのに!あと先輩達に喧嘩売ったって話は本当?しかも1vs10っていうおまけ付きで?」

「喧嘩は売ってないけど勝負の話は本当よ」

「咲って意外と血の気が多いのね〜」

「エイミィは見た目から血の気多そうだけど」

「なんだと〜」

 

エイミィと話しながら周りを見てるとこっちを疑い見る目が多かった。さっきのことなのにかなり早く伝わってるようだ。

 

 

 

 

放課後、風紀委員に審判と会場の用意の挨拶に行くと好奇心の目が並んでいた。

 

「四葉咲です、今回はお手数をおかけします。よろしくお願いします」

「部活の引き抜き等は部活連の問題なんだがな、まあ十文字にも立ち会って貰えば大丈夫だろう」

 

摩利は完璧に淑女の立ち振る舞いをしているこの子が本当に1vs10でもいいとか言い出す戦闘狂なのか疑問を持っていた。だが四葉直系だったらやらかしそうな気もしていた。

 

「何時間競技場を取ればいいんだ?」

「100ぷ…2時間で大丈夫です」

「一個の部活何分で終わらせる気なんだ…」

「10秒ですよ」

 

 

 

 

 

 

次の日、咲のところに来た部活は25を超えていた、ただ単純に部活に来て欲しいところや単純に四葉家の実力を見たいという部活や何より1週間後の勧誘のためのマスコットにしたいという部活が多かった。

 

勝負の内容はただ単純なものだった

 

私を一歩でも魔法で動かせたら私の負け

先輩達を全員コートより外に出したら私の勝ち

というものだった

 

しかし変なところにこだわりがあり前半1分で決まらなかったら勝負が決まるまで続ける後半があるというものだった

 

これは圧倒的に咲が不利なように見え一番最初に取りに来た部活はガッツポーズをしていた。

 

 

授業は既に始まっており実技の時にエイミィと咲は一緒になった

 

「咲、本当に1vs10で勝てるの〜?」

「勝てるわよ、ちょっと本気出すから勝つのは私に見えないかもだけど」

「どういうこと?」

「まあ見てればわかるわ」

 

咲が何を言ってるかわからないエイミィは今日の放課後咲の試合を観に行くことを決めた。

 

 

 

放課後異変に気付いたのは数人だった

真由美、摩利、十文字、四葉兄妹、塩釜

 

いきなり大気が震えるような感じがしたので真由美はクラスメイトに聞いたが何も感じなかったと答え、摩利は少し恐怖を覚え、深雪は嬉しそうに笑った。

 

 

放課後、たくさんの人が闘技場に集まった。秘密主義の四葉、その力の一端を見たいというところだろう。真由美や十文字は四葉三姉妹で一番やばいのは長女だと親から言われていたので他の人よりも注意して会場を見ていた。

 

 

 

 

 

今日、咲は半数以上の上級生と戦うことになる。四葉とはいえ摩利はそのことに不安ではないのかという疑問を咲に持っていた。真由美や十文字だってこんなことはしなかったからだ。しかし今日の咲は昨日とちがうように見えた。昨日の咲は完璧な淑女であったが今日は淑女ではなく天真爛漫な少女に見えたのだ。

 

「四葉、お前先輩10人相手と戦うのに怖くないのか?」

「摩利先輩、今日戦う相手は先輩じゃないよ、だって実力的に見れば私は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「高校100年生だじぇ!!!!」

 

 

 

 




明日からは1話ずつ投稿です

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