咲-saki- 四葉編 episode of side-M   作:ホーラ

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横浜騒乱編オーラス



第45局[白虎]

呂が身につけている白虎甲は彼の鋼気功を増幅するものである。鋼気功は空気の層を身に纏う魔法であり、相手の攻撃を弾く性能を持つ。それに加え、実はこの装備は四神白虎の加護を得ており普通の装備よりはるかに性能が高く、この装備を身につけている今こそが彼の本気であった。彼の前には竜に乗った小娘1人。この計画の最大の障害になると予測されていた四葉咲であった。

 

彼女は竜を使い雷を放ってきたが、白虎甲を身につけている彼には効かない。なぜならば青龍は春、白虎は秋をそれぞれ司る四神であり論文コンペの今は秋。白虎の力が強くなっており青龍の力は弱まっているからだ。

それに加え相性も良くない。青龍の五行は木、白虎の五行は金。五行相克説により金は木に強いと言われている。

青龍では白虎に相性が悪いのだ。

 

咲はそれを思い出したのだろう。玄の神依を解除し、竜を消した。その間に呂が咲に迫る。咲は呂と同じように鋼気功を発動し、身を守るが彼の攻撃は続く。咲は術式解体を放ち、呂の移動魔法を解除しながら後ろに飛び去るが、それを見切っていた呂は移動魔法無しでそれに追撃する。しかし呂は咲の方ではなく咲とは逆の方に飛んでいた。彼のボスが得意にしていた魔法「鬼門遁甲」を咲が使ったからである。

 

鬼門遁甲で時間を稼いだ咲は爽を神依し、赤い雲を発動する。

 

爽の能力の元ネタであろう五色雲による世界の構築によると、赤い雲は金銀珠玉の宝物を作り出したと言われている。爽はその能力を使い相手に金、つまり数牌を集めた結果、自分は字牌を集めることになり大三元を聴牌していた。その能力を置き変えると金銀珠玉に関わるものを自由に操れる能力となった。

 

今回の場合だと金、つまり白虎の力を咲は呂から自分に移した。呂は自分の白虎甲の効果が消えたとわかったが引くわけにもいかず振り返りそのまま咲に接近する。

 

咲は防御魔法を剥がした呂に対して、爽のカムイであるアッコロカムイを発動する。アッコロカムイは咲原作でも伝承でも赤く染め上げる能力であり、それをこの世界に置き換えても当然赤く染め上げることになる。相手の血でだ。

 

そこにいたのは体中血まみれの格好でその場を静かに見ている咲であった。

 

先ほどまで咲と戦っていた呂は肉片となり咲と咲の周りは呂の血で赤く染め上がっていた。その様子は爽が赤い海水でずぶ濡れになって帰ってきた状態と皮肉にも酷似していた。

 

 

 

 

陳祥山は魔法協会支部へと通じる廊下を1人で進んでいた。内部に侵入しデータの入手を行うためだ。しかし思ったより広くてなかなか目的につかない。陳祥山は鬼門遁甲を発動していた。鬼門遁甲は方位を操り、人々の意識を誘導したり、相手を目標に辿り着かせなくしたりできる大亜連合の秘術である。

協会が広くてなかなか目的の場所につかなかった陳はだんだんイライラしてきた。

 

「人は鬼門遁甲かけている時、また鬼門遁甲をかけられているのよ」

 

振り返るとそこには、血を身にまとい死神のようなオーラをした最重要注意人物の四葉咲がいた。

 

「なぜ鬼門遁甲が効いていない…」

「私の目を舐めて貰っては困るわよ、見えないことになってる貴方なんてお見通し。あと知らないようだけど相手の鬼門遁甲が発動してるのが見えるのなら、鬼門遁甲は後出しした方が強いのよ」

 

咲は眼鏡をかけていないので忘れがちだが、美月と同じような目を持っている。なので咲に対しては鬼門遁甲が効かないのである。なので咲は呂を倒した後、陳祥山に鬼門遁甲を逆に掛け返し、データを盗み出される前に追いついたのである。

 

「じゃあおやすみなさい、続きは夢の中で」

 

本当は殺したかったがもういいカムイは残ってなかったので、咲は淫乱の神パウチカムイで陳祥山に意識が飛ぶほどの快感を与え失神させた。

 

 

 

 

「咲さんが奇襲部隊全滅させました」

 

急いで魔法協会に向かっている同じくヘリの中にいる真由美達に呪符で見たことを幹比古は伝える。

 

「全く咲は…一体なんなんだよ」

「やりたい放題じゃない…」

 

摩利とエリカの意見が珍しく一致した。

 

「お姉様…」

 

姉は無理していないだろうかと深雪は心配している。固有能力の強い神を短い間に連続で変えて使うと、天照大神と違う感じで意識が引っ張られると姉は言っていた。天照大神の時のように1日だけならいいが、もし姉が今の優しい姉の人格でなくなってしまった時のことを考えると深雪は胸が潰されるような思いであった。

 

 

 

 

 

協会のものに陳祥山を引き渡した後、私は神依を解除し、今協会の廊下の壁にもたれかかって座っている。流石に今回はきつかった。続け様に神依を変える行為は疲労が溜まる。2+2の4人までなら問題ないのだが、5人目になると体力の削られ方が段違いになる。もしかしたら麻雀は4人で卓を囲むからかもしれない。

 

私は目を閉じ軽く一眠りしていると、誰かが近づいてくる人の気配がし、目を開ける。

 

「こんなところで寝ていると風邪をひくぞ」

そう話しかけてきた老人は異相の持ち主であった。頭はつるりとそりあげられ僧形であるが着ている服はブランド物の高級スーツだ。

筋肉が落ちているが肩幅は広く、若い時は十文字先輩のようにごっつい人であったのだろう。そして灰色の太い眉にどんぐり目。風格ある顔立ちである

 

「お気遣いありがとうございます」

 

そして、一番異様なのは白く濁った左目。小説やアニメなどでもオッドアイは強いのは鉄板である。実際キャップも強い。私は警戒レベルを引き上げる。

 

「そんなに警戒するのはよせ。私は四葉のスポンサーだ」

「スポンサー…ですか。それは失礼しました」

 

スポンサーということは四葉に資金援助しているということだろうか。私を四葉と知っていることにも一瞬驚いたが、九校戦でTV中継もされていて一般人でも知っているし、スポンサーが知らないわけないかと思い直した。

 

「それでスポンサー様が私に何の御用でしょうか?」

「いや、特に用はない。ただ作品の一つを見に来た帰りにたまたまお主と会ったにすぎん」

 

作品?作品とは何であろう。

 

「今日の働きご苦労であった。大陸の軍が跳梁跋扈するのをよく防いでくれた。レンガの一つでもいるか?」

「そんな大金は高校生である私には身の丈にあっていませんので」

 

レンガとは1千万円の隠語である。確か、座布団が1億なはずだ。

ここで金を貰ってしまうと何をやらされるかわからないので、断っておく。別にお金には困っていないし。

 

「それならまた別の機会にするとするか。これにて失礼する。また会う機会があるだろう」

 

長い付き合いになるこの老人とのこれが最初の出会いであった。

 

 

 

 

 

 

翌日

母との通話を終えソファーに身を埋めた。玄の力を使ったことは母に怒られてしまった。確かにあの能力はわかりやすいからなぁ。

 

達也は軍の仕事で対馬に行っている。深雪は少し寂しそうだ。少し震えてるのを見ると人を殺してしまったことに少し後悔してるのかもしれない。

達也の代わりに深雪の震えが止まるように抱きしめてあげる。抱きしめると深雪は私の胸の中で泣き始めた

 

「お姉様、どこにも行かないでください」

 

私の懸念は外れていた。深雪は私が何処か遠くに行くように感じたので震えているのであった。

 

「深雪を置いては行かないわ、だって私は深雪のお姉さんだもの」

 

私はこう言い深雪を強く抱きしめた。




爽の能力は自分の考察も入っているので赤い雲に関してはあってるかどうか分かりませんが、この物語はこれでいきます。
パウチカムイは女の子に打ちたかったなあ…快感を感じる大の男なんてどこにも需要ない…

次回からは追憶飛ばして来訪者編です、追憶編は来訪者編の後あたりにやります

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