咲-saki- 四葉編 episode of side-M 作:ホーラ
二学期始まって最初のイベントは何と言っても生徒会選挙であろう。しかしここ近年は立候補者が1人であり、信任不信任しか問わないつまらないものとなっている。
なぜなら数年前自由な生徒会選挙を掲げたが、魔法の乱闘が起き多数の生徒が重症を負ったかららしい。私はそちらの方が戦国時代のようで面白いと思ったのだが、中条先輩辺りにはドン引きされるのがわかっていたので口に出さないでおいた
もちろんクラスで選挙のことが話題になるが、現副会長の服部先輩はどうやら部活連の会頭になるらしい。
それならば中条先輩が有力候補であるが、彼女は生徒会長にならないと言っている。中条先輩は性格的に生徒会長や九校戦の選手のような表で行動するタイプではなく、技術エンジニアや会計など裏方のタイプであるので、確かに生徒会長には向いていないだろう。
候補者がいないならもういっそあみだくじで決めればいいんじゃないんだろうか。
ある日の帰り道、私と他いつものメンバーで喫茶店に集まっていた。話はやはり選挙の話になる。最有力候補の中条先輩を支持するかしないかの話になるとレオは私と同じく少し厳しい意見。
雫と美月は中条先輩を支持する派のようである。
あみだくじにすればいいと私が言おうと言った瞬間、エリカが予想外のセリフを発する。
「そうだ、深雪が立候補しなさいよ!」
確かに深雪は生徒会長にふさわしい器であろうが達也が許すだろうか。エリカが支持する理由を並べると深雪が言い返した。
「ならお姉様はどうかしら。お姉様は一科生二科生問題について深く考えていらっしゃるし、九校戦史上初めて三種目で優勝してます。知名度も実力も十分かと」
「私は風紀委員なのよ、生徒会の仕事内容知らないわ」
深雪の意見に否を返しとく。私は生徒会役員でもないので、私が1人立候補しても不信任過多で再選挙になるのがオチだろう。
「それだったら達也がなったらどうだ?」
この意見に同調するほのかと深雪の扱いに達也は困っているようであった。確かに達也が生徒会長になっても面白いかもしれない。いろんな意味で。
あくる日、エイミィから衝撃的な噂を聞いた
「咲が生徒会長に立候補するって本当?」
「え?もう一回言って貰えるかしら」
「だから咲が生徒会長に立候補するのかっていうこと」
「私の耳がおかしくなってたわけではないのね」
エイミィから聞くとどうやらその噂は既に広がっているようだ。周りのクラスメイトも聞き耳をたてている。
「そんな気はないのだけど。それに私なら不信任になるのがオチよ」
「咲は知らないと思うんだけど、一高には咲のファンクラブがあって.それがこの学校だけで400人ぐらいいるよ。九校全体だと2000人らしいけど。だから咲が不信任になることない」
ファンクラブがあるという情報は聞いていたが人数に絶句してしまった。数字は誇張されるのが古来より鉄板であるが、もしこの数字通りに受け取るとこの学校の2/3が加入してることになるではないか…
「あと咲は深雪や達也と付き合ってるとか、二高の九鬼先輩と付き合ってるとか、九校全体合わせて100股かけてるとか変な噂立ちまくってるから気をつけた方がいいよ」
誰だ100股とかいう小学生みたいな数字好む奴。穏乃や淡、怜といった100という数字大好き人間リストに加えてやろうHAHAHAと現実逃避していたが、ダメだ。どうしても前半部分が無視できなかった。九鬼先輩との噂は仕方ない。私の失策だ。しかし達也と深雪との噂はどうしようもなかった。達也と深雪を愛しているのは事実だが、それは家族愛だ。しかし噂は塞ぐことはできない。この事実に頭を痛めるのであった。
新学期が始まり一週間が立ち生徒会選挙が公示されたが1日目は誰も立候補者はいなかった。
選挙が公示されて次の日、達也のもとに真由美が現れた。そして達也は強引に生徒会室に連れていかれたが、やはり選挙がらみであろう。
「深雪にはまだ時期尚早だと思っています」
「深雪さんに……ってなんでわかったの!?」
昼休み前に連れ出したのは、深雪がいないところで相談したかっただろうことと時期からわかった理由をこたえ、深雪がまだ早い理由も話した。
「じゃあ咲さんはどうかしら?」
「わかりません」
達也の回答に真由美は疑問符を浮かべていた。それを見て達也は答える
「咲は魔法力、知識力、知名度は申し分ありませんがあいつはテンションが上がると九校戦のように何やりだすかわからないやつです」
「そういうところも咲さんのいいところだと思うんだけど…」
真由美は咲をかっているようだ。
「まあさっきの理由は建前で本当の理由は別にあります。それは咲を生徒会長にした時のデメリットです」
「デメリット?」
魔法科高校の生徒会長には大きな権限が与えられ、卒業後も生徒会長をやっていた事実だけである程度の価値がある。なのでデメリットが真由美は思いつかなかった。
「ええ、例えばこの前のブランシュ事件。咲がテロリストを叩き潰してくれなかったならば、俺たちが行くことになったでしょう。もし仮に咲が生徒会長だったならば、先回りして殲滅することはできなく、なおかつ咲は生徒会長という立場から学校に残ることになり、テロリスト殲滅に従事できなかったでしょう。これから何か一高がまた襲われると咲が予知しても、咲は生徒会長なので自分が動くことができないという生徒会長という立場に縛られる可能性があります。咲を生徒会長にすることは鳥を鳥籠に入れてしまうような可能性があるところがデメリットです」
達也の意見を聞き真由美は考え込んでしまった。
「咲は結構自由に動くので杞憂かもしれませんが。もし頼むならば、咲はどっちかというと頼まれれば断れないタイプであるので、会長1人で丁寧に頼めば多分断れませんよ」
達也はそうニヤリと笑ってアドバイスするのであった。
5時間目、七草先輩が私の教室を訪れ生徒会室に連れていった。達也がいないことを考えると深雪を認めない達也を説得してくれという頼みだろうか。
「お願い咲さん!生徒会長に立候補してくれない」
七草先輩がいきなり深々と頭を下げるので私は困惑してしまう。
「頭をあげてください七草先輩。理由をお聞かせ願えますか?」
「深雪さんは達也君の鉄壁のブロックでダメだったの。あーちゃんは咲さん深雪さんがやればいいと言ってるし消去方で咲さんしか残ってないのよ、咲さんは九校戦の活躍で知名度も実力もバッチリだしらいいと思うんだけどどうかな」
「私は生徒会の仕事を知らないのですが?」
「深雪さんに教えて貰えばいいじゃない」
どうやらこの面倒ごとのあみだくじのあたりを私がひいてしまったようだ。しかしここまで真剣に頼まれたら断ることはできない。生徒会長になったら図書館に自分が読みたい本を入れれるかもしれない。生徒会長の力でこんな感じのこと咲を部に入れるために部長していたなあ、とそう思いながら七草先輩のお願いを受けた
3日目に咲が生徒会長に立候補した。咲は一年、そして生徒会役員でもないのだが一高の生徒は1〜3年までほとんど咲のファンであり批判的な意見は一つもなかった。皆、既に選挙演説の時に咲がどんなパフォーマンスをするかに注目しているようだ。
そしてその日、生徒会選挙の日がきた。
真由美が生徒総会において出した生徒会役員資格制限撤廃議案は反対派の意見もあったが、賛成多数で可決された。
そしていよいよ咲の選挙演説だ。少し微笑んだ顔で演台に向かう。演台の前に立ち、綺麗にお辞儀すると拍手が起こった。生徒たちは喋ることなく、固唾をのんで咲の演説に集中していた。
「皆様は何か負けたことがあるでしょうか?」
咲の第一声がこれだ。これだけでは生徒たちは咲の真意をつかむことができない。
「私はもちろんあります。先日、そこの深雪にアイスピラーズブレイクで敗北しましたし、一度も勝つことができていない相手もいます。しかし負けることはダメなことでしょうか?いえ、そんなことはありません。負けは悔しいですが次に勝利するための布石であるからです。
二科生の皆さん、自分を二科生だからと卑下することはなく前に向かって歩き続けてください。自分を卑下して立ち止まってしまったら自分の実力はそこで止まってしまいます。前を向いて歩くことによっていつか勝ちたい人にも勝てるかもしれません。
一科生のみなさん、驕ることなく同じように前を向いて歩いてください。平家物語にもあるように栄えた物は必ず衰えます。なぜなら栄えたものは驕ってしまい鍛錬を忘れてしまうからです。それを知らずに驕り、歩みを止めてしまうのは身を滅ぼすことへの第一歩です。
私が生徒会長になるあかつきにはこういった意識の改革を行いたいと思います」
咲はそれだけ言って再び頭を下げた。会場は割れんばかりの拍手が起きた。特に二科生から大きい。何か思うところがあったのであろう。咲はこの演説で一科生二科生の間の意識の問題しか話さなかった。常々ぶつくさ文句言ってた内容だ。
達也はあいつ生徒会長にするのは意外と良かったのかもしれないと思い直した。
次の日の投票は全員が咲の信任に投票、咲は一年生ながら生徒会長となることになったのだ。
あーちゃんごめんよ…
阿知賀準決勝大将戦
百速vs百年生vs百巡先vs百合と言われてて笑った覚えあります