咲-saki- 四葉編 episode of side-M   作:ホーラ

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九校戦オーラス、ダンスパーティーイメージできなくて苦労しました


第35局[閉幕]

九校戦10日目最終日

 

 

一高のモノリスコードのメンバーは破竹の勢いでモノリスコードを勝ち上がっていた。

状況に合わせた魔法を上手く使いこなす服部先輩、攻撃の単一工程魔法が得意な辰巳先輩、防御役として最適な障壁魔法を使いこなす十文字先輩、決勝の三高戦も危なげなく勝利しモノリスコードの一高優勝で今年度の九校戦の競技は全て終了した。

 

 

 

 

後夜祭

 

二週間前から打って変わり、後夜祭会場は和やかな空気となっていた。大会の緊張感から解放され、その反動により多くの生徒たちは友好的な精神状態になっていたのだ。

 

会場には生徒だけではなく大学関係者や大会スポンサーやメディアプロまでいた。有望な生徒を先にリクルートしたいのだろう。

 

一番囲まれているのは深雪であり、二重三重と人に囲まれていた。だが横には市原先輩がおり、怜悧な視線により不躾な物をガードしてくれていた。

達也もひっきりなしに、たぶん企業関係と思われる人に話しかけられていた。

 

当然私は知らない人と話すのは好むことではないので、ステルスモモを発動して隅で立ちながら本を読んでいた。この本がちょうど持ってきた最後の本であったからだ。明らかに私を探しているような大人が多く見受けられたが、その人達は私を見つけられずにいた。

 

この後のダンスパーティーも見つからずにこのまま過ごしたい。そう思うのであった。

 

 

 

 

 

 

「人気者だね」

「本当はのんびりさせてあげたいんですが」

「妹さん達のことではないよ、君のことだよ達也君」

 

達也はうんざりしているとばかりに顔を顰める

 

「四葉に顔をうっておきたいのもわかるがな、ところで咲はどこだ、会場にいないようだが」

「咲はこういう知らない大人に話しかけられるのがとても嫌いで自分に認識阻害の魔法かけてます。次のダンスパーティーもサボるつもりなんじゃないですか?」

「あいつの場合囲まれるのが目に見えるからな。ちゃんとエスコートしてやれよ」

 

渡辺先輩はニヤリと笑いながら言った。どうやら咲を引きずり出したいようだ。咲は嫌がるであろうが。そのまま渡辺先輩は外へ出て行った。きっと恋人の千葉家の次男に会うためであろう。なかなか渡辺先輩も青春を謳歌しているようだと達也は柄にもなく思うのであった。

 

 

 

 

お偉い方が退場し、白々しい化かし合いが終われば、さらに和やかな浮ついた空気に包まれた。生演奏の管弦の音がソフトに流れ始めたからである。会場にいる男子は積極的に声をかけていた女子と共に会場中央に集まっていた。

 

本家のダンスパーティーのパターンだと、そろそろ達也の魔の手が私のステルスモモを打ち破ってくるので達也が周りにいないことを確認すると本に栞を挟み、さっさと会場から退出することにした。本当は会場にすら来たくなかったのだが達也がそれを許さなかったのである。

急いで会場の出入り口から退場しようとすると首根っこ掴まれた。私が逃げると思い、出入り口で張っていた達也だ。

この世界のステルスモモは誰かに接触されると効果が消える。この効果は阿知賀編7話ラストからだ。

 

「離して、逃げないとまずいことわかるよね」

「深雪が咲と踊りたがっていたんだ、逃すわけには行かない」

 

達也はニヤリと深雪という最強カードをきってくる。達也もだが私も深雪に弱いのだ。

 

「じゃあ、今から相手探すの面倒だし、最初達也さん踊ってくれないかしら?」

「お前と踊りたい奴なんて会場中全員だと思うが…まあいい踊ってやるぞ」

 

私は深雪の側を通りながら後でねと言い残し会場中央に向かう。ダンスパーティーをやるならやるで何か面白いことをしようと思い達也とパーティ会場の北東で踊ることにした。

私たちは視線の嵐に晒されていた。急に隠れていた私が出てきたからであろう。達也は居心地悪そうだ。

 

達也のダンスはステップを暗記しているので正確さだけは満点だ。

それならばと思い少しタイミングを外し踊る、意外とついてきた

 

「おい、咲、やめてくれ…」

「お返し」

 

達也が懇願するようにいうが取り合わない。達也を困らせながら一曲踊りきった。その後、達也は勇気を出して申し込んできたほのかに連れていかれた。ほのかナイス、離脱チャンスと思い出入り口に向かおうとするが一瞬で囲まれる。

 

「あ、あの四葉さん私とも踊っていただけないでしょうか」

「私とも」

 

完全に囲まれてしまって次々とダンスの申し込みされる、全員と踊るのか…と思っていると見知った顔が近づいてきた。

 

「みんな、咲さんを困らせてはダメだよ」

 

周りの女子はその声を聞き一歩下がってくれる。助け舟を出してくれたのは九鬼先輩だ。

 

「ありがとございます」

 

「いえいえ、あんなこと言った後で悪いんですが咲さん僕と踊ってくれないでしょうか?」

 

なるほど、九鬼先輩もダンスの申し込みに来たようだが九鬼先輩と踊るのは嫌でないので断る理由がなかった。

 

「ええ、喜んで」

 

私たちは次は会場の南西で踊った。九鬼先輩はやはり家の関係でダンスの練習をすることがあるのだろう。とても上手でありリードされてしまった。私たちは観客の男女の視点を一点に集めているようであった。曲が終わると私たちに拍手がおくられた。九鬼先輩は感謝の言葉を述べた後すぐに他の学校の女子に話しかけられていた、九鬼先輩はやはり女子に人気である

 

これで準備は完了したので最後の曲まで踊らなくてもいいのだがそうは問屋がおろさないようだ。次は終わった後、一番に来た愛梨ちゃんと踊ることとなった。女子同士でペアは同性結婚が認められているこの世界ではそんなにおかしいことではない。言いたいこともあったのでこれを機に言うことにした。

 

「ね、愛梨ちゃん、愛梨ちゃんがクラウドボール私に負けた理由分かる?」

「咲さんが強かったからですか…?」

「違うわ、愛梨ちゃんには驕りがあったのよ、十師族やナンバーズ以外を見下す驕りが。私は相手が誰だろうと全力で叩き潰す。全力でやらないと経験値は微量しか得られない。それが貴女と私の違い。その経験の差が積み重なってあの試合となったのよ、負けたならくよくよしてないで次は勝てるように頑張らなきゃ」

 

とりあえずアドバイスをしておいた。立ち直るか立ち直らないかは自分次第だ。その後三日月先輩、エイミィ、雫などと踊った。後二曲となり、ラストは深雪と決めていたので誰と踊ろうかと思っていると三高の制服の男子が私に手を伸ばした。

 

「四葉さん。俺といかがですか?」

「四葉は多いんで咲でいいですよ、そうねお願いしますわ」

 

私は手を伸ばして来た婚約者候補の一人、一条の手を取った

 

「この前の試合はありがとうございました」

「こちらこそお礼が言いたいです、草原ステージで誰も倒さずに勝つなんて思いつかないとジョージは言っていました」

 

話しながらこの前のモノリスコードの試合のお礼をする。彼の言うジョージとは吉祥寺のことであろう。

曲の終盤になり、私は少し気になったことを彼に尋ねる。

 

「ねえ、なぜ鳥は飛ぶのだと思う?」

 

一条はびっくりしているようであった。私も婚約者候補に直接聞くのは初めてである。

 

「鳥は鳥だから空を飛ぶんだ。鳥は飛ばなくなった時、鳥ではなくなる」

「そう…それが貴方の答えなのね」

「ああ」

 

曲が終わった。私は深雪を探す前に一言言う。

 

「もっと縛られずに生きるといいわ」

 

暗に不正解といい深雪のところへ向かった。

 

 

 

私が深雪のところへ着くと深雪はホッとしたようだった。どうやら私が踊ってくれないと思っていたらしい。

 

「お姉様、最後は深雪と踊って頂けませんか

「ええ、喜んで」

 

私の提案で会場の北で踊ることにした。

今回、私が男役、深雪が女役だ。エイミィの時はエイミィが男役を踊ると言われ驚いたのだが、もしかしたらエイミィの実家も海外では有名な家なのかもしれない。

 

「お姉様、流石です。今までの人の中で一番踊りやすいです」

「達也さんはどうだったのかしら?」

「お兄様はダンスが苦手ですから」

 

私たちは踊りながら顔を見合わせて笑った。

 

「深雪少し空中で踊らない?」

「飛行術式でですか」

「ええ」

 

わたしの提案に深雪は驚いたようだがその後すぐ了承してくれた。私たちは飛行術式の羽が出る方を発動し50cmほど浮きながら空中で踊る。もともと端で踊っていても私と深雪が踊っているということで会場で一番目立っていたのだがこの魔法を発動することで会場の目を全て釘付けにするほど目立つこととなった。

それは天使二人の踊り、いや神と天使の踊りだった。それほど二人が踊る光景は浮世離れし、会場を魅了していた。

 

曲が終わり会場の北側に降り右手を上げ、最後の私の仕掛けを発動しようとした。

 

 

薄墨初見

永水女子の三年であり、能力は北家の時、鬼門を晒すことにより裏鬼門の牌が集まってくるので小四喜や大四喜が上がりやすいという能力だ。咲がこの世界に置き換えると鬼門、その次に裏鬼門という順に陣を敷くことにより、その陣同士を結びそれに直行する同じ長さの線の2つが作り出す正方形の空間内で北側から発動する自分の魔法の効果が上昇するという風に置き換えた。

とても準備が大変であり、その場所に陣を敷くためには自分が行かなくてはならないというデメリットもあるが、準備が完了すればやったことはないが戦略級魔法並みの魔法ができると予測していた。

 

 

私が発動しようとした魔法は光を屈折し暗くする魔法、火花を散らす魔法と太ももにほんの少し残った母の力の弱々しい流星群であった。

 

右手を上げ指を鳴らすと魔法が発動する。

事前準備によりこの簡単な魔法は天井に夜を作り出し流星群と花火を大量に引き起こした。

しばらくそのままにし生徒が十分堪能しただろう頃にもう一度指を鳴らし魔法を解除し綺麗にぺっこりんとお辞儀をする。

 

 

九校戦の後夜祭は私の魔法により締めくくられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




九校戦終了です。やりたい放題できて書いてて楽しかったです。最後のダンスパーティーは稚拙な文章になってしまいましたが…

次回から夏休み編をパパッとやって横浜編に入りたいと思います。

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