咲-saki- 四葉編 episode of side-M   作:ホーラ

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第33局[激怒]

九校戦9日目

 

新人戦は優勝で幕を閉じたが、お祝いの席はまだ本戦が残っているため持ち越しになった。

 

今日の種目は本戦ミラージの予選決勝。一高からは小早川先輩と渡辺先輩の代わりの深雪が出場する。

 

私は今日誰とも競技を見る約束をしていないので1人で見ようと思い会場に向かう。

余談だが私はモニター越しに見るより直に会場で見たいタイプであるので、観客席で見ることが多い。モニター越しにイメージするより、直に見た方がいろいろイメージしやすいからだ。

 

「咲さん、今日はお一人でしょうか?」

 

ステルスモモ状態であるのに話しかけられる。話しかけて来た相手は九鬼先輩であった。

 

「ええ、今日は私以外は競技とエンジニアでいませんし、友人と何も約束していないので今日は1人で観戦しようと思っていました」

 

「では私と一緒に観戦していただけないでしょうか?」

 

九鬼先輩がお願いしてくる。

 

「ええ、こちらこそお願いします」

 

1人でいるのもいいが、本の話をできる人がいる方がさらにいいので懇願を了承した。

 

 

私はステルスモモを解除し、九鬼先輩は認識阻害魔法を発動した。九鬼先輩は知覚魔法を得意としているが、認識阻害や幻術などの魔法も得意としている。2人を隠す場合、私のステルスモモより使い勝手が良いのだ。

私たちが観客席に着くと本の話となった。私と九鬼先輩は読む本の種類が微妙に違う。なので会うといつもこうやって面白かった本の情報を交換をしているのだ。

 

 

 

 

試合開始1分前、私が最近読んで一番面白かった本を紹介しているとき枕神怜が発動した

 

「五分後未来変えれるで〜」

 

私は九鬼先輩に少し謝り、怜の神依をし未来視を行う。その未来視で見えたのは、第1試合の小早川先輩の発動しようとした魔法が発動せず落下していき、医務室に運ばれる未来であった。

 

このもうCADなどに私がとやかくいうことができないタイミングで発動したと考えると、摩利先輩と同じ条件、つまり精霊魔法が関わっていると考えられる。精霊魔法の種類がわかればいいのだがここからだとよくわからない。

 

ならばと、私は私自身が編み出した最高高等精霊魔法を発動する。

 

「絶対服従」

 

その呼び名の通りエリア一帯の精霊などを強制服従させ相手のSB魔法の発動を一定時間無効化する。もし相手の術式者の精霊魔法の適正が私より高かったならばこの魔法は無効化されるが私は神の憑代、精霊魔法の適正は世界でもトップクラスだ。そうそう負けることはない。

 

この魔法を発動することによって未来で見た小早川先輩の事故はないことになった。やはり問題は精霊魔法だったようだ。

 

小早川先輩の事故は起きることはなかったが、前半飛ばしすぎたのが原因により後半失速してしまい、惜しくも予選敗退となってしまった。よって今日一高の優勝が決まるかは深雪に託されたのである。

 

 

「やはり咲さんの魔法すごいですね」

 

「ありがとうございます」

 

隣の九鬼先輩は私がどんな魔法を使ったかわからないが、何か高等魔法を使ったということを感じ取ったようだ。

 

 

 

二試合目の深雪と三日月先輩の試合までの間2人で再び本の話をしていると、ある噂で観客席がざわついている。その噂の内容とは「四葉の残り一人が大会本部で暴れている」とのことだ。残り一人というのは達也であろう。達也は何やってんだと精霊魔法で一高本部を探ると深雪が泣いていた。

 

これと達也の暴走、先ほどの試合の事故を考えると深雪に何か仕掛けられそうになって達也が防いだに違いない。深雪が泣かされたことにより私の怒りバロメーターが一気に上がった。怒りで髪が大星のダブリー時のようになり、オーラで九鬼先輩にかけてもらっている認識阻害魔法を吹っ飛ばす。周りの観客の魔法能力を持たないものは突然私が現れたことに驚き、魔法能力を持つものは私のオーラに怯え震えることになった。

 

私は普段、そうそう怒らないのだが、深雪とみなもが何か襲われた時だけは怒りを解放してしまうのであった。

 

「咲さん?」

 

少し怯えたような声で言う九鬼先輩に我を取り戻す。

 

「申し訳ございません、お見苦しいところをお見せしました」

 

認識阻害をせっかくかけてもらったのに私が吹っ飛ばしたせいで明らかに会場の目がこちらに向いている。次の試合は深雪であるから試合中は深雪の方に目が向くだろうがそれまではこちらに目が向けられることになるだろう。申し訳ない気持ちでいっぱいであった。

 

 

 

 

 

それでも深雪の試合が始まると観客は深雪の試合に釘付けとなった。1ピリオド目は三日月先輩がリード、2ピリオド目は深雪が巻き返し少し深雪がリードしている。深雪と競る三日月先輩のミラージの技術はやはり1級品だ。

3ピリオド目に深雪が持ってきたCADは前の2つのピリオド違うものであった。やはり深雪も私と同じで負けず嫌いだ。まあ何度負けても神依に挑んでくる時点で負けず嫌いということはわかっていたのだが。

 

 

3ピリオドの開始の合図と共に、各選手が跳躍をはじめ、光球を目掛けて移動する。深雪と三日月先輩がせるが、三日月先輩が競り勝ち光球を叩きポイントをものにしそのまま地面に降りていく。しかし深雪は空中に留まりそのまま次の光球目掛けて移動し始める。

三個、四個と連続で光球をゲットした姿を見て、漸く観客はその事実を受け入れ声を出す。

 

「あれは飛行術式!?」

 

「先月トーラス・シルバーが発表したばかりだぞ!?」

 

観客は驚いているが驚くことはないとわたしは思っていた。なぜなら発表されていないものならまだしも、発表されているものを使うことは普通であり、どう考えてもミラージバットは飛行術式を使ってくださいといってるようなルールであったからだ。

 

深雪は驚きの声を上げている観客になど興味を示さず更にポイントを重ねていく。十メートルの高度を移動しなければならない三日月先輩を含む他選手と、水平に移動するだけでいい深雪とでは勝負にはならなかった。

 

「咲さんの妹さんはすごいですね、飛行術式とは驚きました」

 

「ええ、自慢の妹です」

 

 

 

 

試合が終わり深雪が私に会いたいとのことなので私は九鬼先輩と別れ、自分の部屋に戻った。

部屋に戻ると深雪がベッドに座っていた。

 

「お姉様」

「深雪、飛行魔法よかったたわよ」

「ありがとうございます、あの、2つお願いがあるのですが…」

「何かしら?」

 

深雪のお願いは2つとも簡単なことであったのでどちらも承諾し、そのうちの1つ深雪の寝るまで手を握るを行うと安心したのか、深雪はすぐ眠りについた。

 

深雪が眠りにつくと私は達也の部屋に向かった。深雪を泣かせた相手を全部ゴッ倒すためだ。

 

「達也さん深雪を泣かせた相手はどこかしら」

「咲が知る必要はない」

 

達也は教えてくれなさそうだ。私もその組織殲滅したいのにと思いムッとしてしまった

 

「深雪が泣かされて怒ったのは貴方だけではないのだけど」

 

「俺は咲と深雪を泣かせたあいつらを許さない、だから咲は今回手を出さなくていい」

 

ようやく私は達也が怒っていることに気づいた。どうやら私は落ち着いているように自分では思っていたが少し頭に血が上っていたらしい。

達也がこんなに怒るのを見るのは3年ぶりだ。この状態の達也に何を言っても無駄であろう。私は仕方なく引き下がるのであった。

 

 

 

 

 

 




まるで九鬼先輩が婚約者のようだ。


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