咲-saki- 四葉編 episode of side-M   作:ホーラ

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お風呂シーンなどは作者がワカメの神依をしたことによりキンクリされました。今回から競技開始です


第22局[余裕]

 九校戦初日

 

 

私たちは朝早くから競技場に来ていた。目的は七草先輩のスピード・シューティングの試合とそのあとの時間に行われる渡辺先輩のバトル・ボードの予選。初日から七草先輩と渡辺先輩の出番があり、私と達也は念入りに見に来るよう言われていた。バトルボードは私も出る種目であるから見るのは当然なのだが…

 

まず最初は七草先輩のスピードシューティングだ

 

「スピード・シューティングは予選と本戦では戦い方を変える人が多いが、七草先輩は予選も本戦も同じだからね」

「もし咲が出るとしたらどうするの?」

 

後ろから不意に話しかけられた。

 

「おはよう、エリカ、レオ、美月。初めまして四葉咲です。吉田家には以前お世話になりました。咲でお願いします」

 

最後の自己紹介は吉田君にしたものだ。

 

「吉田幹比古です。ご高名はかねがね…」

 

どうやら緊張しているようだ。

 

「ミキ、そんな緊張しなーい、咲普段は優しいのよ!怒ると怖いけど」

 

「あら、怒ったことあったかしら」

 

「一人でテロリスト潰したでしょ…そんなことより咲だったら予選と本戦で人格変えるの?」

 

なるほど、それを聞きたかったのか。

 

「たぶん変えるわね、予選は全部潰せばいいだけだから、できるなら半径5√3、約8.5の球、ダメなら10mの立方体で魔法を使う空間を定義して通るクレーを圧力で潰すかしら。これは人格変えなくてもできるわ。本戦は別の魔法使うけれど」

 

「なんで7mの球なんだ?半径5mでいいんじゃないか」

 

「あんた馬鹿ね、半径5mの球じゃ10mの立方体全部カバーしきれないでしょ。隅のほうにクレーきたらどうするのよ」

 

「確かにそうか」

 

魔法が働く範囲を空中に定義する場合、球の方がやりやすい。一つの点から同心円状に広がるイメージでやればいいからだ。しかし半径7mだと左右2mずつはみ出してしまう。そこに何か機器があった場合、その空間を定義するとその機器まで潰してしまうことになるので、立方体で定義する必要あるのだ。

 

 

「それはそうともっと前の方で見たほうが空いてるし、良かったんじゃないか?」

「この競技は後ろで見ないとよくわからないでしょ。それに最前列の付近は人でいっぱいよ」

「まあな」

 

 エリカが指差した方、観客席の最前列には人が詰めかけている。

 

「馬鹿な男共が多いわね」

 

「青少年だけというわけではないようだが?」

 

「お姉さまーってやつ?まあ一応この国では同性でも結婚できるけども私は異性がいいわ」

 

婚約申し込みが女性も多いわたしはどうなるのか。

 

「でも、会長をモデルに同人誌を作ってる人もいますし…」

 

 

 私は衝撃を受けた。この世界にも同人誌があるのかということに。この世界にはアニメがなく同人誌が展開される余地はないと思っていたが、よく考えてみると江戸時代の版画などは同人誌の祖先のようなものだし、七草先輩を同人誌のネタにするのは理にかなっている。

私はこの事実に衝撃を受けたのでみんなも同じ理由で衝撃を受けたのかと思ったがそんなはずはなかった。

 

「……美月、それをどういう経緯で知ったのかしら?」

「ち、違いますよ!?」

「あら、いいじゃない同人誌、ね、美月」

「え?お、お姉様!?」

「始まるぞ」

 

 

 慌てふためいた美月だったので同人誌を読む仲間として助けに入ると、代わりに深雪があわてだしたが、達也の言葉に冷静さを取り戻した。

 

 

七草先輩は去年も優勝しているし優勝は間違いないと思っていたが、やはり圧倒的であった。

得点有効エリアに入った瞬間にターゲットを破壊していく七草先輩。

もちろん結果はパーフェクト。

 

 

 

 

 

「さすが妖精姫(エルフィン・スナイパー)ですね」

「本人はそのあだ名を嫌ってるようだがな」

「新しいあだ名として七草家のシャープシューターとかどうかしら」

「咲…ダサいよそれ…」

 

エリカにダメ出しされてしまった。ごめんよ菫さん…

 

「今、七草先輩が使用された魔法はドライアイスの亜音速弾ですよね?」

「その通りだ。良く分かったな」

「そのくらいアタシだってわかったんですけど」

 

深雪を褒めた達也をジト目で見つめるエリカに、達也は苦笑いしながら答えた。

 

「まあ、同じ魔法を百回見せられたら誰にでも分かるか」

「一度も外さないのは流石七草先輩、といったところですね」

「一度も外してないのですか…」

「スゲエな…」

 

私もほとんど同じ方法で本戦は戦うだろうが、七草先輩に勝つことができると思った。

 

「あの精度は素直に賞賛を送れる。いくら知覚系魔法を併用していたといっても、それで手に入れた情報を処理するのは自前の頭だからな。流石十師族、名門七草家は伊達じゃないな」

 

達也が感心したように言うがみんなの頭にはてなが浮いていたので、補足説明として私が説明した。

 

「遠隔視系の知覚魔法「マルチスコープ」。実物体をたくさんの角度から知覚するレーダーのような魔法ね。入学式などの時に会長はこれを使って会場全体を監視していました、昨日の老師の幻術もこれを使って見破っていたようだわ」

 

みんなは気づいていないようだったので驚いている。その間に私も達也に聞きたいことを聞いた。

 

「達也さん一ついい?なんで七草先輩は一箇所から遠くのクレーに向かって亜音速弾放つのかしら、私だったら妨害も考えてクレーから1cmぐらいのところにドライアイス発生させてそれで撃ち抜くんだけど。妨害もされないしこっちの方がいいと思うわ」

 

私が七草先輩と戦うことになったらまず亜音速弾を全て亜音速弾で叩き落として自分は述べた方法でクレーを破壊する。そう思って聞いた真面目な質問であった。

 

達也は呆れたようだが返答してくれた

 

「あのな咲、普通の人間は一瞬でドライアイスを作れないしクレーは移動してるから定義しにくいんだ。それに1cmで亜音速まで引き上げられる人もそうはいない。だから七草先輩は一気に大量のドライアイスを作り出しそれで打ち出す距離を長くしてその距離で加速し撃ち抜いているのだろう。それに的から1cmを定義するなら振動魔法とかで壊した方が早いだろ、お前みたいに無駄に魔法力を使ってゴリ押しするのと違って七草先輩のは綺麗な魔法だ」

 

なんか脳筋は黙っとけと言われた気がしたが納得はできた。

 

今日見た感じだと来年スピードシューティングに仮に出るとしても、負けることはないだろう。もし相手が七草先輩と同じや似た方法なら枕神怜で予知モード使いながら亜音速弾を全て叩き落せばいい。領域系だったら領域系をかぶせて無効化すればいい。吉祥寺の不可視の銃弾ならばクレーの色を変える領域系幻術魔法使って相手のクレーを撃ち墜とさせなければいいだけだ。

 

 

 

 

 

次はバトルボード、渡辺先輩の観戦だ。

 

バトルボードはサーフボードのようなものの上に乗り、それを魔法で動かし、全長3キロのコースを3周するものである。コースにはカーブやジャンプ台なども設置されていて、単純なスピードだけでなく魔法の使い分けが重要な競技となっている。平均所用時間は15分、平均時速40km程度で走ることになるので、向かい風を耐えるだけでも相当な体力を消耗するだろう。

 

席についてしばらくすると、ほのかがボソッと呟いた。

 

「深雪や雫は二種目とも達也さんに担当してもらうのに、私は一つだけ、深雪と雫ズルイです」

 

確かに達也に担当してもらうのと他の人に担当してもらうのは違うだろう。達也はなんせトーラスシルバーだ。私も自分のCADを自分で調整できないならば、やって欲しかったに違いない。

 

「作戦も考えたし、練習もつきあったのだが、本番で担当できないのは本当に申し訳ないよ」

「達也さん、ほのかさんはそういうことを言ってるわけではないんですよ」

 

ん?どういうことだろう。達也がこのことに関して鈍感とか朴念仁とか言われているが私も意味がわからない。ここはわかった風な顔をしておこう。

 

達也への攻撃は選手紹介が始まると終わり、話題はレースの話になる。

 

「どうも、先輩たちにはたくさんのファンが付いているようだな」

 

七草先輩の試合同様に、この会場も最前列には人が殺到している。真由美と異なるのはそこに居るのが男子が大半では無く、殆ど女子だと言う事だろう。ipsもあるし合法であるし人それぞれであろう。私も女子の婚約が3割占めてるらしいし。

 

「でも、分かる気がします。渡辺先輩はカッコいいですもの」

 

「美月、渡辺先輩の同人誌はないのかしら?もしないなら作ればいいわね、エイスリンの能力使って紙にイメージするだけで転写できそうね」

 

「お姉様……」

 

同人誌があると知って一人で変に盛り上がっている私に深雪が残念そうな目を向けてきたがそんな目に負ける私ではない。

深雪は勘違いしてるが同人誌はR-18だけではなく、一般物も多い。漫画を描いて雑誌に出してるような人も同人誌を出すこともよくある話だ。

 

深雪にはちゃんと説明してあげなきゃとか考えていると渡辺先輩の試合が始まった。

 

「自爆戦術?」

 

初手に大波を起こし渡辺先輩の態勢を崩す作戦だったが自分の態勢も崩したようだ。私が仮に邪魔をするなら、渡辺先輩の数m先に減速する流れを、自分の前に加速する流れを作る水流を作り、渡辺先輩の邪魔して自分は有利な状況でレースを進める

 

レースは渡辺先輩の独走状態に入っていた。

 

「戦術家だな……」

「性格が悪いだけよ」

 

 

ジャンプ台から思いっきり飛び降りて後ろの選手に向けて水しぶきを上げる。視界を取られた選手はバランスを崩した。

私が"決勝"でとる戦法だとここが肝だろう。あとはいろは坂のような細かいカーブの連続。そこを研究しながら決勝以外は走らなければならない。

 

 

 

1日目七草先輩はスピードシューティングで優勝し渡辺先輩は予選を無事突破した。

 




亜音速弾全て叩き落とすって石川五右衛門もキリトさんもやってたしイメージ簡単そうですよね

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