咲-saki- 四葉編 episode of side-M   作:ホーラ

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話が進まない…


第20局[精霊]

私は決めた時間通りに目を覚ました。一つ背伸びをし窓の外を見ると、なぜかまだ高速道路であった。不自然さを感じて首を傾げると深雪に話しかけられる

 

「おはようございますお姉様」

「おはよう深雪、何かあった?」

 

私が深雪に話しかけると、バス内の視線全てを集める。何か寝ている間に粗相でもしたのだろうか?

 

「おい、咲。さっきのはなんだ?」

 

前の席から乗り出すようにして渡辺先輩が話しかけてくる。

 

「さっきのとは、やはりなにかあったのですか?」

 

やはり何かあったのだろう。私は渡辺先輩と深雪から大型車が突っ込んできた事件を聞いた。なるほどあれが発動したのか。

 

「それは自律型精霊枕神怜ですね、私の精霊魔法です」

 

「「自律型精霊魔法?」」

 

 

枕神怜、これは清水谷竜華が使った力だ。

園城寺怜をよく膝枕していた彼女は怜の力を膝枕に溜め込み枕神怜として準決勝で使った。枕神怜はアニメでは精霊のように見えたのでそれをイメージで精霊魔法に落とし込み、いろいろインストールして使っている。竜華の力は馴染みやすく神依無しでも枕神怜は使えるようになっていた。

 

 

「簡単にいうと一回命令すると、そのあとは精霊自身の判断で行動を選択してくれる能力を持った精霊ですね、今さっきまでのモードは警戒モードだけでしたので、危険度2まで上がったのでしょう」

 

「お姉様、じゃあさっきのは」

 

「そう、危険度1は私も精霊も動かなくても周りの人で対処できるレベル、危険度2っていうのは精霊が動かないと私に危害が及ぼされるレベル、危険度3は私を起こさないと危険なレベル、危険度2まであがったから魔法を精霊自身が使ったのじゃないかしら」

 

警戒モードは枕神怜が和了が見えず首を振って帰った時に、誰かが和了るんかもしくは流局がわかるのも無駄じゃないと、言っていたことを置き換えこの能力がついた。

 

「じゃあ咲、今もその精霊はいるのか?」

「おるでー、咲以外に話すのは体力使うからあんまり話させんでほしいわ、やっぱり咲以外のみんな精霊魔法の才能なさすぎやわ」

「そのアピールやめい、失礼やろ怜。それにつこうとるの私のサイオンやし。すみません失礼なこと言って」

 

みんな唖然としていたが一応は納得したようだった。

常時発動型なので維持するのにサイオンが吸われていくし、1日1時間膝枕のために動いてはいけないという誓約はあるが、私のサイオン回復量の方がこの魔法のサイオン吸収量よりはるかに多く、本を読みだすと1時間以上動かないことになるので、実質デメリットなしでつかえる。

警戒モードの他にはナビモード、予知モード、分岐点お知らせモードがあり3つまで併用して使うこともできる。しかし神依を行うと纏っている神の数だけ併用できる数が減っていくというデメリットもある。私はこの魔法を一学期中ずっとイメージして作り出したのであった。

 

深雪も納得したかなと思い横の深雪をちらりと見ると何か思い悩んでいるようであった。

 

 

 

 

バスが会場に到着しバスを降りると深雪が話しかけてきた。

 

「あの…お姉様」

「ん、何かしら?」

「神依ではないならその精霊魔法は私にも使えるのでしょうか?」

 

なるほど、神依という単語はバス内では出せないから降りるまで待っていたのだろう。

 

「うーん、使えるモードは限られると思うし、私が使用するよりサイオン使用量は多くなるだろうけど、一応術式は汎用化してあるから使えるは使えると思うわ」

「じゃあ今度教えてもらえないでしょうか?」

 

深雪が懇願するような目でこちらを見てくる。深雪は私の力に憧れてる節がある。便利な力だし深雪に教えてあげたいところなのだが

 

「教えてあげたいけど今回はダメね、この魔法は精霊魔法の適正によりサイオンの使用量が決まるのよ。精霊魔法の適正がない人だと飛行魔法の数倍以上常にサイオン使うのよ。それに加え精霊との対話ができない人だと強引にサイオンを注ぎ込んで会話をするためにさらにその数十倍、美月もたぶん見えると思うけど私のように精霊が見えないならまた数倍されるのよ。汎用化したあと達也さんで実験したけど、これを維持するのは無理と言っていたわね、精霊魔法を精霊と会話できるぐらい使いこなせて、なおかつ精霊を見ることができる人しか私のように使いこなすのは無理だと思うわ」

 

「そうですか…」

 

深雪は残念そうであった。だが今回は譲れなかった。私は神の憑代ということもあり精霊魔法の適正がトップクラスらしいので問題ない。しかし適正がない人が発動する場合、起きてる時ならまだいい。魔法をオンオフできるからだ。だがしかし寝るときにオフにするの忘れてしまい、サイオン枯渇して魔法演算領域にダメージを与えるとかになったら洒落にならない。なので深雪には教えることができなかった。

 

 

その後、達也と合流し話を聞くとあの事故は意図的なものだったらしい。何者かの一高に対しての妨害工作、または私たち四葉や七草家などに対しての攻撃であろう。どちらにせよ気をつけた方がいい。

 

 

 

 

荷物を部屋に置きホテルの周りを散歩する。富士の裾野はやはりすごい。精霊や神たちに力が満ちていく感じがする。ここでなら普段の実力以上の物が出せそうだ。

 

 

 

 

少し喉が渇いたのでホテルの喫茶店で飲み物を飲みながら本を読んでいるとステルスモモを使っているにも関わらず話しかけられた。

 

 

「相席よろしいでしょうか?」

「いいですよ、九鬼先輩」

 

九鬼一馬、二高の生徒会長であり中学の時の私の先輩でもある。九の家は関西を中心とする家なはずなのだが、関東も見てこいという九鬼家の方針で、中学は私の中学と同じであった。知覚能力者であり幻術魔法などは全て無効化してしまうほどの実力者でもある。

私に婚約を申し込んできているのだが、四葉家だからとか、私の顔とかで選んだわけではなく私の為人を知ってから婚約を申し込んできたのだ。なんと常識人。

 

「また本を読んでいらっしゃるのですね」

「ええ、九鬼先輩、今は本を持っていらっしゃないのですか?」

「荷物を置いてきたばかりで」

「なるほど」

 

九鬼先輩も本が好きで話しが合う、しばらく最近読んだ本の話をしていると私を呼ぶ声がする

 

「お姉様!」

 

「どうしたの深雪?」

 

私を見つけて嬉しそうであったが正面の九鬼先輩を見て指数関数のように一気に機嫌が悪くなった。

 

「お姉様、ミーティングの時間ですよ!かなり探したのに見つかりませんし、荷物も本以外部屋に置きぱなしだったので連絡も繋がりませんし渡辺先輩も怒っていらっしゃいました」

 

「忘れてたわ!すみません、それでは九鬼先輩失礼します」

 

九鬼先輩に話しかけられるまでステルスモモを使っていたのが仇となったのだった。というか見つからないなら心配してくれてもいいのに。

 

「いえ、それなら仕方ないです、お話楽しかったですよ」

 

「それでは失礼します」

 

深雪は九鬼先輩を睨みつけてから二人でミーティングに向かうことになった。

 

 

 

ミーティング室に着くと女子選手が全員集合していた。

 

 

「遅れてしまい申し訳ございません」

 

「遅い、何をしていたんだ」

 

ここで深雪は爆弾を投下した

 

「二高の生徒会長、九鬼先輩と逢引をしていらっしゃいました」

 

女子らしい悲鳴が上がった。私は入学時から浮ついた噂はない、そして九鬼先輩は美男子であることが九校内では有名な話である。悲鳴が上がるのも当然だろう。

 

「み、深雪、その言い方は誤解しか招かないと思うんだけど?」

 

「九鬼先輩と話していたのは事実ではないですか。それにお姉様が殿方とあんな楽しそうに話すことはほとんどございません。あれは実質逢引かと」

 

ご、強引すぎる理論だ、まるで自分自身を見ているよう。本の話をできる人が文芸部以外には少ないのでテンションが上がってしまったのは事実だが、逢引とするのが強引すぎる。

 

本来止めるべき役割を持つ渡辺先輩と七草先輩を見るが顔をニヤニヤさせながらこちらを見ている。止める気はなさそうだ

 

誤解を解くのに時間がかかるだろう。そう思うとため息が出るのであった。




竜華の枕神怜が強すぎて構想を練っていると毎回竜華+誰かとなりそうだったので竜華の神依はゾーンだけとしました。


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