咲-saki- 四葉編 episode of side-M 作:ホーラ
「神の力ってどういうことですか?」
「文字通り神の力だ、あの子の魔法は魔法の領域を逸脱している」
真由美は父がなぜここまでいうかわからなかった。咲の力はすごいものだったが父にここまで言わせるものではなかった。
「例えば真由美、5歳の頃今の十師族当主に九校戦のスピードシューティングで勝てるか?」
「それは…無理ですね」
今でもほとんどの当主相手には無理だろう、勝てそうな相手は競技と相性が悪い障壁魔法が得意な十文字家ぐらいだ。
「四葉咲は5歳で十師族当主全員を負かせた、負けなかったのは老師だけだ」
「そのようなことが….」
「真由美お前は四葉咲のどの神をみたんだ?」
「キャストジャミングを発する能力を見ました、後から咲さんから聞いた話では「大」の能力と言っていました」
「「大」の能力はキャストジャミングとかいう生易しいものではない。固有魔法以外使えなくする魔法だ」
「え?それはどういうことでしょうか?」
「10年前十師族合同の旅行があったのだ、懇親会の意味も兼ねた腹の探り合いだがな、そこに普通は何をいうかわからない子供など連れてくるわけがない。だが四葉殿は親バカでな。四葉咲を連れて来ていたのだ」
「10年前というと咲さんが5歳の頃ですね」
「そうだ、その時四葉殿が急に咲と対決してくださいませんかと言い出したのだ、当時の十師族当主にだぞ」
「最初はこんな小さい子に負けるわけないと思っていたが最初に四葉殿が負けたのを見て考えが変わった。ルールはアイスピラーズブレイク、特殊ルールとして固有魔法無しでだ」
ほとんど九校戦と変わらないルールである、固有魔法を持ってる魔法師の絶対数が少ないので固有魔法無しというルールが付け加わってもほとんど変わらないのだ。
「四葉殿は力を抜いたのでは?」
「他の皆もそう思ったようだ、なにせ魔法が発動していなかったからな、しかし実際に戦ってみると違った。魔法を発動させようと思っても魔法式にサイオンが流れ込まないのだ」
真由美は父の言ってることに想像がつかなかった。
「次の日は「照」だった、お菓子をあげると喜ぶかわいい神だったが魔法となると違った。速さも強度も桁違い。しかもそれがどんどん上がっていく、老師も勝つのに苦労していたよ。四葉殿が四葉咲の能力を神依と呼んでいたが誇張ではない。」
「そんな…」
「たぶん四葉殿は四葉に敵対したらこの子が出るぞということを示すために連れて来たのだろう、だがなぜか嫁に手放す可能性も今のところある。あの子を手に入れれば四葉やうちと並ぶ力を持つ。この話を知ってる家はライバルが増えて欲しくないので他所には話さない。だから咲の本当の実力は世間では流れない。戦略級魔法師である妹のみなもが一番有名なようにな。これが四葉咲の本当の実力が意図して流れていない今の魔法界の現実だよ」
「つまり咲さんをどこが取るかによって家のパワーバランスが変わるということですか」
「もし四葉家のままだとパワーバランスが崩れ四葉家一強になり、四葉が暴走した時に二十八家や百家合わせても止めることができないだろうと他の十師族は危惧しているのもあるから婚約を申し込むんだ。容姿に惹かれて出しているところもあるようだがね。しかしその条件が厳しすぎてお手上げといったところだよ」
「あの二つの条件ですね」
真由美はこの前咲本人から聞いた二つの条件を思い出した。
「まだ質問の方はなんとかなるんだが魔法戦がどの家でも厳しい。同じ四葉家の四葉深雪は何回か勝っているらしいが天照大神と言われている4人の神には勝ったことはないらしい」
これほどまで言われる咲に深雪は何度か勝っている、四葉の力はどれほどのものなのか
「真由美、四葉咲の弱点を暴きたいので九校戦ではアイスピラーズ以外に出せ、これだけ情報を与えた対価だ」
弘一は自分で喋りすぎたと思ったようだ。
「わかりました」
いつもだったら断るところだがこれだけ珍しく情報を教えてくれたので断ることはできなかった。
明日から九校戦です
今日高校の卒業式みたいですね、卒業された皆さんご卒業おめでとうございます