比企谷八幡の憂鬱   作:可愛いは正義

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投稿毎度遅くてすいません。

最近は仕事が多忙なため休みが無くて書く時間が中々とれないのです。


長門有希

ハルヒが晩御飯を作ってくれ食べ終わると時間は19時をさしていた。

 

「もうこんな時間かぁ...」

 

長門の部屋に行って話を聞かなくてはいけないので少し体が重い。

俺だって年頃の男の子だから可愛い女の子の部屋を訪ねるのは嫌ではない。

 

だが今回は前提が間違っている。

 

まず涼宮ハルヒの事について話をすると言っていたことだ。

 

もしあの場で涼宮ハルヒの名前が出なければこの呼び出しは断っていただろう。

 

前提が良ければ行くんじゃないかって?

 

あくまで嫌ではないが女の子の部屋に入るとか緊張するし絶対断る。

 

 

「さて...風呂入って向かいますかね」

 

 

簡単にシャワーを浴びてTシャツにジーパンという簡単な衣服に着替えて部屋を出る。

 

エレベーターに乗り込み7階のボタンを押す。

 

「ちょ、、ちょっと待ってー!!」

 

左から聞き覚えのある声が聞こえた気がしたが気のせいだと迷わずに閉じるのボタンを「待って」押せなかった。

 

「ふぅ....はぁー疲れた。ごめんね、ダイエットしようと思って階段から登ってきたんだけど途中で疲れちゃって」

 

えへ、と言いながら舌を出してくる朝倉さんにあざといと返して何階に行くのか聞く。

 

「朝倉さん、何階ですか?」

 

「私は7階に.....あれ?比企谷君も7階に行くの?」

 

しまった....さっき7階押してたんだった。

 

「あ、ああ。長門さんに呼ばれて」

 

「......へえー」

 

どこか冷たい声と瞳で答えた朝倉さんは少しずつ俺に詰め寄ってくる。

 

俺は少しずつ下がっていきエレベーターの扉は閉まり扉と朝倉さんに挟まれてしまった。

身動きは取れず足は震えて額からは冷や汗が伝う。

 

「.......そうなんだ♪」

 

「......」

 

いつもの明るい口調に戻った朝倉さんは丁度7階に着いたことで開いたエレベーターの扉から走って左端の部屋に入っていった。

 

俺は暫くその場で動くことが出来ずにエレベーターの扉は静かに閉まっていった。

 

腰が抜けたのかスルスルとエレベーターの壁に背中を預けて座ってしまい先程から鳴りやまない心臓の音が徐々に大きくなっていく。

 

怖い。

それはもう恐怖心だった。

 

今までも朝倉さんから垣間見た事はあったけど今回のは濃さが違っていた。

 

怖い。一緒にいたくないっていう想いに駆り立てられた。

 

このままエレベーターに乗っていれば、また戻って来てしまうかもしれない。

 

自分の部屋に戻るために足に力をいれるが足は震えていて立ち上がっても力が抜けて倒れてしまう。

 

エレベーターの中を這うようにしてボタンを押そうとしたときエレベーターは開き見覚えのある顔が心配そうに俺を見ていた。

 

「大丈夫?」

 

「長門さん.....いや、そのすまない」

 

腰が抜けて立ち上がれないなんて口が裂けても言えないこの状況で俺がとる行動は一つしかなかった。

 

「と、トイレを貸してくれませんか?」

 

「....どうぞ」

 

 

 

トイレに行きたくてエレベーターの中で崩れ落ちていた、という変なレッテルを長門さんに与えてしまった俺は現在、長門さんの部屋でお茶を出されていた。

 

長門さんの部屋は、女の子が住むには殺風景でテレビも無く、暮らしていくのに必要最低限の小物くらいしか置いていなかった。

 

「どうぞ...飲んで」

 

「お、おう....」

 

先程から何杯飲ませるのん?ていうくらいお茶を勧めてくる長門さん。

本当に尿意に襲われそうになった俺は話を切り出す。

 

「それで俺を呼んで何を話したかったんだ?ハルヒの事って言ってたが」

 

「そう。貴方にも関係ある事......今から話すことは信じてもらえないかもしれない。上手く言語化出来なくて情報の伝達に齟齬が生じるかもしれない....でも、聞いて」

 

「あ、ああ」

 

「わたしと涼宮ハルヒは普通の人間ではない」

 

「...........は?」

 

これはあれかな?上手く言語化出来なくて、皆みたいに仲良くしたり出来ないって意味なのかな?

 

「性格に普遍的な性質を持っていないという意味ではなく、文字通りの意味で、彼女とわたしはあなたのような大多数の人間と同じとは言えない。この銀河を統括する情報統合思念体によってつくられた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェイス。それが、わたし」

 

コンタクト用ヒューマノイドインターフェース?え?何それ格好いいじゃなくて.....えーとこれどういう状況だ?

 

「長門さんは、宇宙人ってことですか?」

 

「そう....わたしの仕事は涼宮ハルヒを観察して、入手した情報を統合思念体に報告すること

 

「情報思念体に報告?」

 

どうしてハルヒが?

 

「情報思念体は、この時代の言い方に言い直すと上司みたいなもの.....わたしが生み出されてから3年間、私はずっとそうやって過ごしてきた。この3年間は特別な不確定要素がなく、いたって平穏。でも最近になって無視出来ないイレギュラー因子が涼宮ハルヒの周囲に現れた。それが、あなた」

 

「ちょ、ちょっと待って。産み出されてから3年?」

 

「そう。わたしは年齢で言うと3歳ということになっている」

 

いや、なっているって.....小町ぃ...お兄ちゃん、わけわからないよ。見た目確かに高校生には見えないが中学生くらいには見える相手が実は3歳とか色々厳しすぎる。

 

「情報統合思念体にとって銀河の辺境に位置するこの星系の第3惑星に特別な価値などなかった。でも現有生命体が地球と呼称するこの惑星で進化した二足歩行動物に知性と呼ばれる思索能力が芽生えたことにより、その重要度は増大した。もしかしたら自分たちが陥っている自律進化の閉塞状態を打開する可能性があるかも知れなかったから。宇宙に偏在する有機生命体に意識が生じるのはありふれた現象だったが、高次の知性を持つまでに進化した例は地球人類が唯一だった。統合思念体は注意深くかつ綿密に観測を続けた。そして3年前。惑星表面で他では類を見ない異常な情報フレアを観測した。弓状列島の一地域から噴出した情報爆発は瞬く間に惑星全土を覆い、惑星外空間に拡散した。その中心にいたのが涼宮ハルヒ」

 

おいおい.....今まで喋らなかった奴がいきなり喋り出すとこうなるのか....。何言ってるのか半分くらい謎だがハルヒが元凶のど真ん中にいることは伝わった。

 

だがそれを信じるかどうかは別の話だ。

 

「つまりどういう意味なんだ?」

 

「涼宮ハルヒは自律進化の可能性を秘めている。恐らく彼女には自分の都合の良いように周辺の環境情報を操作する力がある」

 

え、何それ凄い。

 

だが疑問が残る、仮にそんなことが可能ならハルヒはとっくに宇宙人や未来人や異世界人や超能力者に会えているはずだ。

 

ハルヒが会えていないのは、俺が一番知っている。あいつの涙を見た俺が。

 

「だけどそんなことが仮に可能だとしてどうしてあいつは宇宙人や未来人や異世界人や超能力者に会えていないんだ?望めば思いのままだろ?........」

 

言いながら気付いてしまった。

 

ある違和感にそして、それは長門さんの言葉で確信に変わる。

 

「だから彼女はSOS団という部活を作り、わたしや“朝比奈みくる“を連れてきた」

 

「朝比奈さん?.....」

 

「そう。彼女も普通の人間ではない」

 

まじかよ.....。

 

「あなたは涼宮ハルヒに選ばれた。涼宮ハルヒは意識的にしろ無意識的にしろ、自分の意思を絶対的な情報として環境に影響を及ぼす。あなたが選ばれたのには必ず理由がある」

 

「俺が選ばれた......」

 

「そして最近。また異常な情報フレアを観測した」

 

「最近?」 

 

「貴方がトラックに轢かれた時。あの時貴方は頭を強く打って死んでいたはずだった」

 

俺が本当は死んでいた?

 

「でも情報の書き換えが行われた」

 

「.....それがハルヒが起こしたって言いたいのか?」

 

「そう....」

 

「....それなら何故ハルヒは俺の右腕の骨折までは治してくれなかったんだ?」

 

「あの時彼女が望んだのは貴方が生きること。死なないこと。だから右腕の骨折は治らなかった」

 

.......筋は通っている気がする。

 

だけど.....。

 

「信じて」

 

「........」

 

「情報統合思念体が地球に置いているインターフェイスは私一つではない。情報統合思念体の意識の一部は積極的な動きを起こして情報の変動を観測しようとしている。あなたは涼宮ハルヒにとっての鍵。危機が迫るとしたらまず、あなた」

 

「長門さん以外にも宇宙人はいるってことか?」

 

「そう.....」

 

「誰か教えてくれないか?」

 

「それは言えない。この時代の人間への情報の伝達は禁じられている」

 

「.....今の話はしても良かったのか?」

 

「.....貴方には知っておいて貰いたかった」

 

「そうか....」

 

 

俺は部屋に戻りモヤモヤしたまま布団をかぶり眠りについた。

 


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