デート・ア・無限サバイブ・鏡像の戦士外伝・神衣・ライフ 作:にゃはっふー
それはとある地方、隠された研究機関。
『アドベント』
黄金に輝く鳳凰が舞い上がり、壁や床などの建物を破壊し、鏡から多くの怪物達が現れ、職員を襲う。
だがケガは負わさず、気絶させながら、武装した者、顕現装置・リアライザと言う物を装備、武装した者達が現れるが、それは止まらない。
銃弾、レーザーと言う高エネルギー弾が躊躇い無く放たれるが、
『シールドベント』
全て盾で防がれ、そして、
『ソードベント』
瞬間、二振りの剣を持つそれに斬られる。一人が斬られるともう一人がと、一人一人が把握する瞬間、その前に地に倒れ、制圧完了する。
『弱いな………』
そう言い、黄金の戦士、仮面ライダーオーディンはゴルトセイバーを捨て、静かに歩き出す。剣はすでに鏡のように砕け散り、欠片すら残さず、そのまま歩く。
『………ここか』
分厚い扉の前に立ち、静かに手を置く。
それだけでそれが粉々に吹き飛び、静かに中に入る。すでに制圧済みであり、静かに特性のメモリーチップを差し込み、中のデータなどを取り込み始める。
『………私を見ていて楽しいか? 時崎狂三』
そう呟くと共に、
「あらあら、気づいてましたの?」
腕を組みながら、影を見つめる。影から現れるのは、赤と黒のドレスを着込み、左右非対称のツインテール。片目は時計のようであり、金色に、もう片方は黒く輝く瞳。
時崎狂三、彼女は友人が封印失敗してしまった、最悪の精霊である。
「ここはわたくしも様子を見ていたのですが、欲しいものが無いようですね」
そう言いながら周りを見渡す少女は、一応は長身と短身の銃を持ちながら、くすくすと微笑みながら、こちらの様子を見る。
『欲しいものか………』
「気になりますの? オーディンさん?」
『………』
「あらあらつれない殿方ですわ」「お返事して欲しいですわね」「うっふふふ………」
影から数名の狂三が出てくるが、興味無く、データコピーが終わり、チップを取り出す。
「ここの施設からデータを取るのが目的ですの?」
『私はまだ顕現装置を理解していない、少しでも把握しておきたいのさ。私は知識欲でね。君のことも知りたいな、時崎狂三?』
「あら? 以外と積極的な方ですわね」
くすっと微笑むが、どちらも戦意、武器を手に持っている。
霊装を纏い、天使を出せる構えの時崎狂三。
モンスターを従え、片手にゴルトセイバーを持つオーディン。
火ぶたは、簡単に落とされ、施設は爆発した。
「はあ、施設員殺さずに、狂三の相手は疲れた」
十香、四糸乃とよしのん、狂三の後、琴里が実は精霊であり、それも落ち着き、彼女、園神凛祢との一件が終わりを告げた後だった。
見つけた登録されていない、隠された対精霊機関の施設を襲い、いくつも顕現装置のデータやパーツを手に入れた。
ちなみに、違法実験も摘発してやった。表では違法実験所としていまニュースになり、研究員は全て逮捕、会社も潰れた。
「全く、おかげで私の尾を掴む者もいないだろう。ま、裏の人間なら分かるがな」
そう思いながら缶コーヒーを飲みながら、ニュースを見て、トーストをかじる。
今日は休日、たまには一人散歩するのも悪く無い。昨晩は久しぶりに身体を動かしたのだし、気分を切り替えに出るかと思いながら、出ていく。
それが、いけなかった。
「………ん?」
「にゃ~♪♪」
「くろまるか」
黒猫のくろまる、この辺り一帯でマスコット的な地位を掴み取ったボス猫の補佐官。ボス猫である灰色猫のはいいろに従う猫である。
その愛らしさに、多くの人からエサを手に入れては、他の猫たちに分け分けする猫であり、はいいろは縄張りを守ると、連携が取れている。
二匹ともよく新入りや子猫をつれてくるため、よく知っている。
「にゃー」
「ん? また子猫が流れ着いたのか」
「にゃ」
「そうか、いちいち俺に見せなくても良いんだが………」
俺の周りをうろうろして、着いてきて欲しいと言うくろまる。まあいいと思い、歩き出す。こいつらの住処は多くあるが、この辺りなら、とある廃屋だったなと思いながら、歩く。
猫の面倒をよく見る野良猫たちであり、時折自分は里親を見つけてやる。そんなことをしている。
そして、そこで見たのは………
「ああ、もう、仕方にゃいですね~♪」
昨晩殺し合いした時崎狂三が、骨抜きになりながら、子猫を膝に乗せて撫で撫でしていた。
「本体ずるいです~」「わたくし達にも撫でさせてください~」
そう言って影から顔を出すのは分身体の時崎狂三であり、彼女達も近場の猫達を撫で、陶酔しきっていた。
………わおー………
内心そう思いながら、気配を消し、くろまるには後日と呟き、全力で物音を消し、静かに帰る。
くろまるは気にせずその輪に入り、より時崎狂三の声がとろけていた。
(………うん、けして私の存在は気づかれてはいけない)
だが、
「………」
その時、曲がり角から誰かが、
世界がスローモーションに流れる中で、その人物と、
僅かに、
目が、
合った。
「か」
全力で逃げた。
その日、影から視線を感じる。
建物から視線を感じる。
もの凄く視線を感じて、そして、
「……………………………………」
ああうん、時崎狂三がこちらを見ている。
フラクシナスに連絡して助けてもらうか? いやと首を振る。
(彼女は先ほどの会話で本体が猫にデレデレだったか知られていないか確認だろうか? 詳しくは分からないが、ああ言うタイプは自分の趣味を知られたら殺そうとする………物理的に可能なのが問題なんだよな)
あの時、一瞬だが時崎狂三だった。通り際に片目を見たが、時計の瞳だったし、時崎狂三らしい声も聞こえた。黒いワンピースの、時崎狂三だった。
そして、背後に映る鏡には、ああ、光が消えた瞳でこちらを見る。その顔はもの凄くあれであり、口元がつり上がっていて、いつでも殺せる準備はしている。
(………やばい)
だがなにもできず、その観察対象になっていた。
その後は何事もなく家に帰り、戸締まりはしっかりとして、シャワーを浴びて、すっきりして、寝床で横になる。
(まあ気にしたら負けだ、気にしたら)
そう思い、今日も今日で静かに寝ることにした。
………………………
「あらあら………寝ていますか? 神衣さん?」
腹の辺りに何かの重みを感じながら、吐息がかかり、少し女性の香りを感じる。
(………どうしよう)
知らないうちに狂三が中に入り、馬乗り状態と言う事態は命の危機しか感じない中で、どうすればいいのだろうか?
とりあえず、これは………
「………なにかようか、時崎狂三さん」
「あらあら、おはようございます。それともこんばんわ? ですかしら?」
月夜の灯りで照らされる、赤と黒のドレスを着た少女。それが微笑みながら、腹の上に乗っていた。
「分からないな、なぜ君がこんなことをしているか分からない。説明を求めるよ」
「あらあら、それは困りましたわね………神衣さんがわたくしのあんなところを見たのが悪いのですわよ?」
頬を赤く染め、静かに銃を眉間に向けている。これなに?
「乙女のあんな恥ずかしいところを盗み見るなんて………もうわたくし、こうするしかないんです」
「恥じらいながらやる行動じゃないなっ」
そして引き金が引かれる瞬間、それを避け、狂三を突き放し、急いで窓を壊し逃走する。
「あら酷い、わたくし、勇気を出して来たというのに突き飛ばすだなんて………酷い殿方ですわ………アハッ、アッハハハハハハハハハ」
「これが俗に言うヤンデレか!? いや違うなッ」
「ならこう言ってあげますッ、わたくしの想いを受け取ってくださいまし!!」
どうすればいいのだろうか? そう思いながら走り出す。インカムは置いて来たし、そもそも狂三の一番嫌なのは、あれが第三者に知られることだろう。
いや、だからって命狙われるとは思ってもみなかったよ。
こうしてデスレースが始まった。
「神衣さんどこですの!? ちなみに突き飛ばした際、わたくし、胸を触られましたっ。もう殺しても文句は言えないですわね!?」
「そんなの分からないよっ、そして本当だったらごめんなさい!!」
「死んでくださいっ」
町の中を走り抜ける中、ほとんど身体能力だけに頼りながら、ミラーモンスター達が様子を見に来てくれている。だが、
(こんなくだらないことで正体が知られる訳にはいかないが、よりそれで殺されるのはごめんだっ。それより、突き飛ばした際妙に柔らかかった辺り、もう殺されても文句言えないな俺………)
時々空き缶や石を足で蹴り上げ拾い、投げたりして距離や攻撃を防いでいるが、それでも攻撃は止まない。
だがそろそろ………
「………っと、インカムは無いが、電話があった」
私はいつも寝間着に着替えず、すぐに動けるように寝間着ではなく、普通の衣類で寝ている。しわになろうと気にしない。
「もしもし琴里か」
『お兄ちゃん? 狂三の胸触ったくだりを詳しく』
急いで切った。電話先に鬼がいた。妹ってあんたに冷たく、静かに声出せるんだね。ここ最近新たな発見続き、学者冥利に尽きる。
しばらくしてまた連絡が入った。
「もしもし」
『私だシロウ、琴里は落ち着かせた。なにがあった』
村雨令音、彼女からの連絡だが、
「狂三とトラブルが起きました、命狙われてます。理由は言えません、言えばもう狂三は全てを壊すでしょう」
いまもまた、連絡していることに気づき、目を見開き追いかけている。いま俺は屋根や建物を跳び回りつつ、逃げている。
『そうか………しかし、このままでは君は殺されるだろう』
「………最悪ですが、通信やカメラ類を全部俺から外してください。この件は他人が関われば関わるほど酷くなります」
『………いいのかい?』
「いいもなにも、彼女には士道に攻略してもらわないといけないので。俺は死ぬわけにはいきません、琴里には何も聞かないで欲しいと言って欲しい」
『………』
しばらく沈黙がある中でも、すれすれを弾丸が飛び交う。
『分かった、弾痕などはこちらで処理する。君が狂三の胸を触ったことは聞かないでおこう』
「待って、それは関係ないッ!!!」
だがすでに切れていて、何か向こうは向こうで別の意味で勘違いされてそうだが、
「あらあら、いいんですか? そうですか、優しく殺してあげますわっ」
「もうほとんど側にいた!!」
それでも逃げながら、時間を稼ぐ。対策を考えなければいけない。
森林の中、木々や岩を足場に跳び回りながら、それを避けている。
「以外と逃げ足はお早いんですわねっ」
「これでも運動神経は高くなければ、士道のバックアップも何も出来ないと思ってるからね」
その言葉に少しだけ怪訝な顔つきになり、静かににらみつける。
「………貴方も精霊を助けると言うお人ですの?」
「………さあね」
正直、俺と言う人格ではそう言うしかない。
「少なくても、妹のような琴里や、友人である十香、四糸乃、よしのん。そしてバカな幼なじみの手伝いぐらいはしたいと思ってるよ」
「………」
その言葉に、別の意味で不愉快と言う顔つきになり、引き金を引こうとするが、
「! 狂三上ッ」
「!?」
【アァァァァァァァ】
突然空から怪物が現れ、それに銃弾を当てて、その場から避ける。
「わたくし達ッ」
すぐに影から戦闘態勢の狂三達が現れると共に、その怪物が武器を持って構える。
撃たれたというのに、あまり効いていない様子であった。
(精霊通常武装での攻撃における、ミラーモンスターの防御力実験を開始する)
その後ろで困惑する素振りを見せながら、内心そう呟いた。
(現れろ、ガルドストーム、ガルドミラージュ、ガルドサンダー)
数体のモンスターが現れ、あらあらと呟きながら、軽くくちびるを舐める狂三。
「平気か?」
「全然平気ですわ」
「そうかじゃッ」
そう言って、俺は逃げ出した。狂三はそれを見逃し、時計、天使刻々帝を出現させて、戦いを始める。
【ガアッ】
【ヒャ】
【オオオォォォォォ】
鞭を使い、火の鳥のように攻撃するガルドサンダーに対して、それを避けながら複数の銃撃をたたき込みながら、その銃を羽根による投擲でたたき落とし、戦斧を振り下ろす、ガルドストーム。
飛行を得意とするガルドミラージュにも、空を飛びながら戦う姿を、ゴルトフェニックスで観察させている。
「ちっ、どこかで観察でもされているのかしら?」
「不愉快ですわねッ」
「仕方ありません、少し本気を出しますか!!」
そう言い、スピードが増したり、うまく回り込んだりした狂三がモンスター達を倒すと共に、それは砕け散り、エネルギーとなった。
「? これは………エネルギー?」
「!? 本体っ」
分身体の狂三が急いで、光の球体に触れようとした本体を助け出す。ゴルトフェニックスがその分身体を吹き飛ばしながら、その倒されたモンスターを食い終え、その場から去る。
その様子に、あらあらと、
「助かりましたわわたくし」
「いえ、しかし、まさか………」
「ええ、わたくし達よりも使いやすいようですわね」
倒されてもエネルギーの固まりとなり、本体であるゴルトフェニックスの栄養源となり、また彼らを生み出す。倒されてもまたと繰り返しだ。
「そして本体はその数倍上、その主もまた格別と………はあ、面倒なことですが、いい情報が手に入ったと、よしとしましょうか」
「ですわねわたくし………それでは」
「神衣さんを殺しましょう♪♪」
「「「「「「まだやるんですの!!?」」」」」」
「………」
腕を組みながら、目を閉じていると、廃屋のガラス越しにゴルトフェニックスが帰還して、後始末をしたことを伝える。
これで誤認してくれればいいがと思う。
(ゴルトフェニックスでモンスターを食わせたが、実際はそんなことせずともあの三体は生み出せる………)
ミラーワールド、あのエネルギー空間がある限り、簡単に作り出せる。元々ゴルトフェニックスと違い、科学者である自身がいればいくらでも作れる。
(作り出せないのは仮面ライダー用の専用モンスター達や、神崎優衣や神崎士郎が生み出したモンスター達。後はオリジナルとも言えるモンスターか)
だが必要を感じない。使い捨ては三種類あれば問題ないうえ、強力なモンスターであるドラグブラッカーとゴルトフェニックスがいる。
「………とりあえずここでかく」
その瞬間、銃弾が飛来して、それを避ける。
(まだ俺を狙うか!?)
そして今度は雨のように弾丸が放たれ、それを避けながら走る。
「キッヒ、キッヒヒヒッ。だ・め・ですわよぉぉぉ神衣さあぁぁぁん………わたくしの思い、受け取ってくださいまし」
もう追いつかれ、どうするか懐のデッキに触れる。
(仕方ない、ここで狂三を排除………)
その時、一瞬だが、ある少女の顔が過ぎる。それにデッキから手を離して、仕方ないと、逃げる算段をする。
「狂三っ、俺は別に猫好きな少女は好きだぞっ」
「あら嬉しいことをお言いになりますわねっ、では楽に殺してあげますわっ!!」
弾丸が放たれる中、移動を早める弾丸を叫ぶ狂三。まずいと思った瞬間、すでに目の前にいて、首を捕まれ、宙に浮かぶ。
「それでは言い残すことはありますか神衣さん?」
首締めている状態で聞くことではないなと思いながら、ミラーモンスター達に待機命令を出しつつ、それを見る。
目が血走ってる。ダメかと思ったとき、
「にゃ~」
「「!?」」
その時、はいいろが子猫を加えて現れた。
「はいいろ?」
「なっ、なんですの?」
突然のことに手を離し、その場にしりもちを付く中で、はいいろは流れ着いた猫一家を連れてきたらしい。とてとて歩き、子猫を俺の手に置いた。
「にゃ」
「あうん、いま取り込んでるんだけど………」
「にゃ~」
「いや、だからな」
まだ猫を置いてくるので、その様子におろおろしている狂三。触りたいのか?と思い、一匹取り上げて、狂三に差し出す。
「な、なんですの!?」
「いや、触りたいのかなと」
「な、ななな、なん、なんでですの!?」
「いや、人慣れするため、はいいろよく家に流れ着いた猫とか、腹空かした猫つれてくるからさ、ほれ」
「にゃー」
元気よく手足を伸ばす子猫に、ああっと葛藤する狂三。なんなんだか、
「………はいいろ、狂三に子猫渡してくれ」
「にゃ? にゃ」
「えっ、えっーーーーーー」
その後、狂三のために、割愛します。
「い、いいですかっ。このことを誰かに言ったら殺しますので、いいですわねっ」
そう言って、狂三は帰り、俺ははっきり言う。
「なんだったんだ………」
「にゃー」
こうして猫に始まり、猫で終わった事件であった。我が家の縁側にはいつものように、野良猫たちの集まりであったりと、猫集い場である。
はっきり言えばいつからこうなったんだろうか? ともかく、猫の扱いがうまくなったのは、この世界に来てからだ。
「琴里、痛くないか?」
「うん、へいきなのだよお兄ちゃん♪」
膝枕をして耳掃除しているいまの自分、猫のように甘えてくる気分屋の妹。
この前のことやら色々と説明できないことがあるため、こうして雑務など言うことを聞く。
「神衣っ、今日はプリンがいいぞっ」
「わた、しは………ホットケーキが、いい、です………」
「神衣、飯の方俺が作るか?」
「ああ頼むよ士道」
こうして友人達と共に、家で過ごす中、膝の上の猫の髪を撫でながら、ため息をつく。
「マジでなんだったんだろうな………」
ちなみに時々我が家に狂三が来ては、猫と戯れるのは俺も知り得ない情報であった………
猫が集う家っていいですね。
それでは、お読みいただきありがとうございます。