IS:織斑家の長男   作:ロック・ハーベリオン

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早く書き上がったので投稿します!













原作開始
これだから面倒事は嫌いなんだよ


(こ、コレは想像以上にキツい……)

 

あくる年の4月

中学から高校へと進級した多くの学生達が心機一転

新しい学び舎で緊張を顕にする今日この頃

織斑家の次男――織斑一夏も、そんな世間の新入生らと同じ様に、入学した新たな高校での初日を開始した

 

否、唯一他と違う点を挙げるとするなら、死にそうなくらい青白い顔をしているという点にあるだろうか?

右を向いても女子、左を向いても女子

 

そんな環境の中に一夏は居た

 

 

ココは“国立高等専門教育学校兼IS技能開発訓練校”つまり“IS学園”と呼ばれる学校である

そして世間ではISがまだ“女子”のみにしか扱えない為、一夏のいるその場所は所謂“女子高”であった

故に、その中にたった一人で通う事になった一夏の顔は、今にも死にそうなほどに憂鬱に染まっていた

 

(……どうしてこうなった?)

 

それは自分のミスだろ

受験の日、私立藍越学園の受験だったのだが、前年にカンニングやら、不正行為やらがあったらしく受験会場が変わったのだ

しかし、その会場はどうデザインしたらこうなるんだ的なぐらい道がわかりづらく、案の定一夏は迷った

そして、ある部屋に入ったがそこはIS学園の試験会場で、置いてあった適正確認用のISを興味本位で触ってしまい、あら不思議、男なのに起動できちゃいました♪

そして、世界初の男性操縦者としてIS学園入学が強制決定されたのだ

 

「はぁ〜…」

 

一夏は深い溜息を吐きながら、教室の中に唯一見知った顔を見つけて助けを求める

豊満な胸、そして昔と変わらぬポニーテールを揺らす大和撫子、篠ノ之箒に向って

しかし箒は、数年ぶりに再会した幼馴染である一夏の必死な“救援要請”を、「すまない……」というどこか悲痛な様子で無視した

このタイミングでクラスに唯一の男に話しかけるなど、注目の的になるに決まっている

そんな目立つ真似をあえて・・・買ってやれるほど、箒の性格は今も昔も豪胆では無かったのだ

 

(箒ェ……)

 

一夏は薄情な幼馴染に向って呪うような視線を送る。

しかし箒は何処吹く風で窓の外に視線を向けた

『空はあんなに青いのに……』と、聞こえてきそうな出で立ちである。

なので仕方なく、一夏は視線を己の机の上に落とした

本当なら2つ後ろの席にいる自分の妹、織斑マドカに助けを求めたいが、後ろを向くと他の多数の女子と目が合いそうだ、と思ったためやめたのだ

ちなみにそんな様子を見て、マドカもため息を付きたくなったのは仕方がないと思う

一夏の横顔をジッと観察する無数の女子

IS学園の一年一組は、まさにそんなどこか奇妙な静寂に包まれていた

 

「全員揃ってますね~。ショートホームルームを始めますよ~」

 

そんな雰囲気の中、救いの声が聞こえた気がした

 

(ああ、これで俺への興味は少しは薄れるはず…

神様、ありがとう!)

 

一夏がそんなことを思ったのもつかの間

 

「私はこのクラスの副担任になる事になりました。山田 真耶と言います。皆さん、一年間よろしくお願いしますね」

 

残念!山田先生の話は無視された!

そんなゲーム音声が聞こえてきそうな感じだった

視線は薄れず一夏に突き刺さる

 

(神は死んだ…)

 

無視された山田先生は少し弱気になりながらも学園の説明をしていく

そして、

 

「そ、それじゃ自己紹介を始めましょうか?出席番号順でお願いします」

 

最後まで無視された山田先生は自己紹介を促していく

そこは無視されず、次々に自己紹介を始めていった

しかし、

 

(自己紹介が始まってるんだからこっちをガン見しないでください…!)

 

それがお前の業だ、一夏

そんなことを一夏が考えていると

 

「…くん?…斑くん?織斑一夏くん!?」

 

「え?は、はい!俺!?」

 

山田先生に呼ばれてやっと現実に戻ってくる

 

「大声出してごめんなさい!で、でもね、今自己紹介で『あ』から始まって次は『お』で始まる織斑くんなの。嫌かも知れないけどやってくれないかな?」

 

「い、嫌とかじゃないですから!そんなに謝らなくてもやりますから!」

 

「本当ですか?本当にやってくれますか?」

 

「やります!やりますから…えー…織斑一夏です、よろしくお願いします」

 

「「「「………」」」」

 

しかし、女子生徒たちは無言で一夏を見続けていた

そして、その目には他の情報、はよ!、と言っていた

 

(何だ、この視線!他にも何か言わないといけない空気になってる…えーと…)

 

そして、一夏は大きく息を吸い、ある一言を言った!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…い、以上です!」

 

ズンガラガッシャーン!!

その場にいた殆どがずっこけた

うん、お前ら、新喜劇出れるよ

 

「あれ?ダメ?」

 

「駄目に決まってるだろ馬鹿者!?」スパァーン!

 

そして、バ夏は出席簿で叩かれる

叩いたのは姉の織斑千冬だった

 

「ってぇ!げ!呂布!?」

 

「誰が天下の飛将軍だ馬鹿者!?」ズドーン!!

 

今度は拳骨で殴られた

 

「うごっ!!ち、千冬姉!」

 

「学校では織斑先生と呼べ馬鹿者!」ガンッ!

 

「ぐおお!!」

 

…もう別に言わなくても分かるよね?

 

「織斑先生。もう会議は終わったんですか?」

 

「ああ、山田君。クラスへの挨拶を押し付けてしまい申し訳ない。それと会議以外にも用事があってな」

 

「いいえ。副担任ですからこれくらいはしないと…」

 

「さて、私がこのクラスの担任の織斑千冬だ。私の仕事はこれから一年でお前達を使い物になる操縦者に鍛えぬくことだ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導する。そして『IS』を使う事の意味も伝えていくつもりだ。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな」

 

言っていることは軍隊の隊長です

そんなんで大丈夫か?(先生として)

 

「「「「きゃーーーーーーー!!!」」」」

 

「ぐああぁぁーーっ!耳がぁー!!」

 

一斉に奇声を上げた女子達の声はソニックブームを起こしたかのような大音量で一夏の耳を襲った

 

「キャー!千冬様、本物の千冬様よ!」「ずっとファンでした!」「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです!北九州から!」「私、お姉様の為なら死ねます!」

 

わぁお、バカしかいねぇ

 

「毎年毎年…なぜこれだけお調子者ばかりが集まるんだ…この反応が来るたびに嫌でも新年度が来たことを体感させられる…」

 

…お疲れ様です

 

「キャーーーーー!お姉様!もっと叱って!罵って!」「でも時には優しくして!」「そして、つけあがらないように躾をして~!」

 

言うまでもないがどんどん言っている内容が酷くなっていってる

 

「で…?挨拶も満足にできんのか、お前は…」

 

「千冬姉、俺は…」スパァーン!「バカ兄貴」ボソッ

 

「織斑先生と呼べ!」

 

「……はい、織斑先生…」

 

そして、バ夏が千冬のことを姉と呼んだせいで

 

「え…?織斑くんって、あの千冬様の弟?」

 

「それじゃあ、世界で唯一男でISを使えるっていうのもそれが関係して…」

 

「いいなあっ…代わって欲しいな…」

 

すぐに正体がバレた

 

「静かに!それともう1人紹介する奴がいる。入ってこい!」

 

千冬がそう言い、教室に入ってきたのは

 

「男!?」「春也さん!?」「春兄!?」「兄さん!?」

 

織斑家の長男、織斑春也だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

春也said

 

さて、事の発端は俺の弟、一夏がISを動かしたことにある

男なのにISを動かせたことで他の男でもISを動かせるんじゃないかと世界は中学から高校で全国男性適性検査を行った

それは俺のいた料理学校『当月学園』でも行われた

 

「全く、卒業まじかだってのに。厄介なことで」

 

「そう言うな、焔月。コレばかりは仕方の無いことだろ」

 

「へーへー。相変わらず春っちは真面目なことで」

 

検査で順番待ちをしていた俺は学校の友人、焔月智裕(えんげつともひろ)と話していた

 

「とは言ってもよ、あれから一人も男性操縦者は見つかってないんだぜ。こんだけ探してもいないんだからやる意味ないだろ」

 

「…そうでもないと思うがな」

 

「あん?春っち、なんかあるの?」

 

「はあ、面倒なことにその唯一の男性操縦者は俺の弟だ。血筋的なことを言うと俺も動かせるだろうな…」

 

「春っち、マジ?」

 

そして、案の定俺もIS(束さんのコア)を動かせることが発覚した

先生からはどんまいって言われたよ

そして、姉貴が呼ばれ、俺はスコールにも連絡をとった

 

「んで、姉貴。俺もIS学園に強制入学か?」

 

「…そうなるな。全く、どうしてこうなった…」

 

「俺に言われても知らん。全ての元凶はあのバ夏だ。つーか、もう一度高校生活かよ…」

 

「あははは。まあ、どんまいとでも言えばいいのかしら」

 

「たくっ、他人事だと思いやがって。悪いがNEVECは巻き込むぞ、スコール」

 

「ちょっと!?また仕事増やさないでよ!?」

 

「そこんとこは俺が対応する。というかIS学園に入ったら全て明かす。創設者の事も束さんの弟子の事もな」

 

流石にVSやコアのことは言わないがな

 

「あなた、本気?世界中から狙われるわよ?」

 

「ハン!やれるもんならやってみなってんだ。裏情報は全て掴んでるし、力もある。余程のことがない限り負けはしんさ」

 

「まあ、それならそれで良いけど。とりあえずはテストパイロットってことにしておくわね」

 

とりあえずこれで俺の身はNEVECにあることになる

余程の馬鹿でなければ手出しはしてこんだろ

 

「そうだ。束で思い出した。あいつは一夏とお前のこの件に関して何か関わってるのか?」

 

「いや、全く知らないだとよ。束さんでも想定外のことらしい。それにまだ白騎士もできていなかった頃の話だが、その時は束さんのコアは俺にも反応しなかったんだ」

 

「なら何故?」

 

「これは前から束さんと考えていたことだが、産みの親()育ての親(千冬)、両方ともが女性だったことが原因でISは女にしか動かせないと考えたんだ」

 

「男性を知らないからISは男性を受け付けない?」

 

「憶測に過ぎないがな。だが、ある程度は合ってると思う。でも、二人に共通してよく知っている男が」

 

「一夏とお前か…」

 

「ああ、白騎士のコアからコアネットワークに俺たちの情報が流れたんだろうな。しかしこれはいい傾向だと俺と束さんは思う。俺達がISを使い続ければその情報はコアネットワークに流れ出る。そして、」

 

「最終的に男性でもISを使えるようになるって訳ね。何年かかるのかしら…」

 

しかし、情報を流すにはコアネットワークに俺のコアも繋がないといけないか…

今までは通信以外では拒絶していたからなぁ

大丈夫か?

 

「まあ、それはいいとして。姉貴、IS学園に入学するにあたって条件があるってことを上に伝えてくれ」

 

「どんな条件だ?」

 

そして、俺は条件をつらつらと言った

 

・俺の世間への公表はIS学園入学後にすること

・必要以上に俺に関与しないこと

・寮の部屋は一人部屋を約束すること

・NEVECへの追求はしないこと

・もし、一つでも破ったらISを全て無期限の凍結処理にするということ

 

「まあ、こんなとこか」

 

「通るかは知らんが伝えておく。お前の素性についても」

 

「言っていいぞ」

 

「わかった」

 

こうして俺の2度目の高校生活が決定した

というか、要求が簡単に通り過ぎて若干不安になるな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、入学日

俺は制服を着て校門の前で待っていた

俺のことが発覚するのが遅かったため、つい先程制服等が届いたばかりなのだ

その中には教科書とかも含まれていた

俺じゃなかったら大変だぞ、これ

 

「すまない、遅れた」

 

「よう、姉貴。そこまで待ってないから安心しろ」

 

「そうか、それとここでは織斑先生だ」

 

「了解、織斑先生」

 

「行くぞ、教室に案内する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここで待っていろ。呼んだら入ってこい」

 

「はいはい」

 

教室の前まで来た

姉貴は先に入っていったが ゴン!

…バ夏が殴られたな

というかそろそろ耳塞がないと

 

「「「「きゃーーーーーーー!!!」」」」

 

うるさっ!?

扉越しで耳塞いでいるのに!

全く、バカしかいねぇな、こりゃ

はぁ、だから来たくなかったんだよ

 

「入ってこい!」

 

ん、呼ばれたな、さてと行きますか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「男!?」「春也さん!?」「春兄!?」「兄さん!?」

 

教室に入った春也はそんな声を無視し、千冬を見ながら一夏を指さした

そして、空いている手で首を切るポーズをした

千冬は苦笑いをしながら頷き、

 

「ふんっ!」「ごはっ!」ガァツッッッン!!

 

春也は一夏を思いっきり殴った

 

「「「「「ええぇええええぇぇえええええ!!!!????」」」」」

 

「は、春兄…。どうして…?」

 

「るせぇ、バ夏。てめぇがIS動かしたせいで俺までこんなとこに来るハメになったんだ。殴られて当然と思え」

 

正論と言えば正論である

しかし、先程の千冬よりも威力のある拳骨を落とさなくてもいいだろうに…

 

「春也、自己紹介を」

 

「はあ、面倒な。織斑春也。そこの世界最強(ブリュンヒルデ)の弟で、そこでくたばっているバ夏とその後ろにいるマドカの兄だ。今年で19になる。本当なら高校を卒業する予定だったがそこの愚弟がISを動かしたことが判明した影響で俺も動かせることがわかり、ここに来た。趣味と特技は料理と発明。好きなことは俺自身が面白いと思うこと全般。嫌いなことは面倒事とごく一部を除いた馬鹿どもだ。ここにいるお前らがその馬鹿で無いことを祈るとしよう。それからNEVECのテストパイロットでもある。他にも肩書きはあるが時間がないので次の機会にでも言おう。3年間よろしく頼むぞ、年下共」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ホームルームが終わり、授業までの休み時間

世界で唯一の男性操縦者を見ようと1年1組の教室の廊下は生徒で溢れかえっていた

まあ、そこに居たのは唯一ではなく、二人の男性操縦者だったが…

 

「視線がウザったい…」

 

「ははは、まあ、仕方がないと思うしかないな。それにしてもまさか兄さんまでここに来るとは、な」

 

「ああ、どこぞのバ夏のせいでな」

 

「それについては悪かったって、春兄…」

 

「はぁ、過ぎたことだからもういい。それにしても」

 

春也は目線を廊下のほうに移す

 

「はぁ、何処ぞの兎じゃないが有象無象どもめが…」

 

春也は確実にストレスを溜めていた

 

「ちょっといいか?」

 

「うん?」「あん?」「ん?」

 

3人は声のした方を向くとそこには

 

「箒」

 

「よぉ、久しぶりだな、箒」

 

篠ノ之箒がいた

 

「ええ、お久しぶりです、春也さん。それと一夏も。後…」

 

「初めましてだな、篠ノ之箒。織斑マドカだ。生まれが特殊だったからお前とはあった事が無かったな」

 

「言っとくが血は繋がってるからな」

 

「そうですか…。うむ、これからよろしく頼む、マドカ。それはそうと一夏をお借りしてもいいですか?」

 

「え?俺?」

 

「「どうぞ」」

 

「ありがとうございます。一夏、来い」

 

「ちょ、ちょっと待ってて!箒!」

 

一夏は箒を追いかけてどこかに行ってしまった

 

「…なあ、兄さん。箒は」

 

「皆まで言うな。お前の思ってる通りだ」

 

「「はぁ…」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――であるからして、ISの基本的な運用は現時点で国家の認証が必要であり、枠内を逸脱したIS運用をした場合は、刑法によって罰せられ――」

 

スラスラと教科書を読んでいく山田先生

授業は次々に進んで行った

しかし、ここに全くついていけてない人物がひとり

 

(全然わからねぇ…)

 

織斑一夏であった

 

それに対して春也は

 

(月面基地完成まであとわずか、か。便利上ラビットハッチとでも名ずけるかな。ここが完成すればコズミックエナジーの観測が可能になるかもしれないな)

 

バイザーを付け、NEVECでの仕事をこなしていた

というかこいつに対して授業は意味は無い

既に全て覚えているのだから

 

「織斑くん、何かわからないところがありますか?」

 

「あ、えっと……」

 

狼狽えていた一夏に山田先生が話しかけてきた

 

「わからないところがあったら訊いてくださいね。なにせ私は先生ですから」

 

一夏の様子を見た山田先生がえっへんとでも言いたそうに胸を張った

何故か先生の部分がやたらと強調している気がするがまあ、そんなことはどうでもいい

そんな山田先生に一夏は……

 

「先生!」

 

「はい、織斑くん」

 

何か決意したかのように立ち上がり、やる気に満ちた返事をした

そして、

 

「ほとんど全部わかりません」

 

やはり、バ夏だった

 

「え……。ぜ、全部、ですか……?」

 

一夏の予想外な答えに山田先生は顔を引き攣らせる

さっきまでの頼れる態度が一気に無くなった

 

「え、えっと……織斑くん以外で、今の段階でわからないっていう人はどれくらいいますか?」

 

挙手を促す山田先生だが、誰一人手を挙げなかった

 

「春也くんは大丈夫ですか?」

 

「ええ。というか今の説明でわからないそこの愚弟がおかしなだけですから安心してください、山田先生」

 

バイザーを少しズラして山田先生に話す春也

授業を聞いていないように思えて彼はきちんと聞いていたのだ

ただ、基礎中の基礎のため聞き流していたが…

 

「……織斑、入学前の参考書は読んだか?」

 

突然教室の端で控えていた千冬が一夏に訊いてくる

 

「古い電話帳と間違えて捨てました」バァン!

 

素直に答えるバ夏に本日四度目の千冬による制裁が下された

 

「必読と書いてあっただろうが馬鹿者。あとで再発行してやるから一週間以内に覚えろ。いいな」

 

「い、いや、一週間であの分厚さはちょっと……」

 

「やれと言っている」

 

「……はい。やります」

 

千冬のギロッとした睨みに一夏は従うしかなかった

しかし、自業自得なので春也もマドカも一夏を庇いはしなかった

というかあからさまにため息をついていた

 

「ISはその機動性、攻撃力、制圧力と過去の兵器を遥かに凌ぐ。そういった『兵器』を深く知らずに扱えば必ず事故が起こる。そうしたいための基礎知識と訓練だ。理解が出来なくても答えろ。そして守れ。規則とはそういうものだ」

 

千冬がそう言う

確かにこれは正論だ

しかし、

 

「兵器、ねぇ」ボソッ

 

春也は少し違った

確かに今の現状を考えるとISは兵器として見られている

しかし、本来の目的は宇宙開発

今のこの発言を束が聞いたらどう思うだろうか、と考えていた

 

 

「……貴様、『自分は望んでここにいるわけではない』と思っているな?」

 

そんなことを春也が考えていたら話はどんどん進んで行った

 

「望む望まざるにもかかわらず、人は集団の中で生きてなくてはならない。それすら放棄するなら、まず人であることを辞めることだな」

 

「織斑先生、流石に言いすぎだ」

 

しかし、その発言に春也が突っ込んだ

 

「…はあ、山田先生、続きを」

 

「あ、はい」

 

千冬はそれに気づいたがあえてそれを無かったことにし、山田先生に続きを促した

 

(教師の威厳ってやつか…。ままならんもんだな、姉貴)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前、バカだろ。すまん、バ夏だったな」

 

「春兄はなんでついていけるんだよ…?」

 

「おまえと違って俺は参考書を読んできているからだ」

 

「その割りには真面目に授業受けてなくないか?」

 

「…勘のいい奴は嫌いだよ」

 

授業の合間の休み時間

マドカは箒と話をしに行ってしまったため、春也と一夏は二人で話を進めていた

そこに

 

「ちょっとよろしくて?」

 

1人の女子が話しかけてきた

金髪ロールでお嬢様と解る喋り方だった

 

「ん? なんだ?」「あ?」

 

「まあなんなんですの! そのお返事は! 私に話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度と言うものがあるのではないのかしら?」

 

「…」「はぁ」

 

それは春也が嫌いな馬鹿だった

一夏も高圧的な態度で話し掛けて来たこの金髪に対し、あまりいい顔をしていなかった

 

「悪いな、俺、君が誰だか知らないし」

 

「私を知らない!? このイギリス代表候補生にして入試主席のセシリア・オルコットを!?」

 

「おう、知らん」

 

「つーか、途中で自己紹介止まったしな…」

 

「あ、質問いいか?」

 

そして、再び一夏は爆弾を落とした

 

「ふんっ、下々の者の要求に応えるのも貴族の務めですわ。よろしくってよ」

 

「代表候補生って何?」

 

ゴンッ!がたたっ!

 

セシリア・オルコットの見下した発言を華麗にスルーした一夏に対し、教室でこの会話を聞いていた生徒は全員ずっこけた

 

 

 

「はぁ、お前文系じゃなかったのか? 字で分かれや」

 

「あ、あなた本気で知らないとおっしゃいますの!?」

 

「おう、知らん」

 

「信じられませんわ。極東にはテレビも無いのかしら…」

 

「…はぁ、読んで字のごとく国家代表IS操縦者の候補生だ。お前、絶対わざとやってるだろ…」

 

「そう、つまりはエリートなのですわ!」

 

春也が一夏に代表候補生の説明を簡単にすると、セシリアは胸に手を当てて偉そうに言い放つ

 

「まあ、所詮候補生。代表選手から見れば半人前もいいとこだ」

 

「なっ、あなた私を侮辱しますの!?」

 

「俺は事実を言ったまでだ」

 

「くっ。だ、大体あなたISについて何も知らないくせに、よくこの学園に入れましたわね。男性でISを操縦できると聞いていましたから少しは期待していたのですけれど、残念過ぎますわね」

 

「俺に何か期待されても困るんだが」

 

「確かにお前に期待するだけ無駄だ、無駄。宝くじが当たるのを期待したほうが幾分がマシだ」

 

「ふん。まぁ、でも私は優秀ですからあなたの様な人間でも優しく教えて差し上げますのよ? まぁ、泣いて頼まれたら、ですけども。何せ私入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから」

 

セシリアの方も話している内にノッてきたのか、声のトーンを上げながら教卓に立つ

しかし、一夏は今の発言の中に思い当たる所があったのか、

 

「なぁ、入試ってあのISに乗って戦うアレか?」

 

と聞く

そして、また爆弾発言をした

 

「それなら俺も教官倒したんだが」

 

「はっ?」「ん?」

 

「っていうか倒したと言うよりあれは自爆だったけど」

 

「いや、何があったんだお前んとこ…?」

 

「行き成り量産機で突っ込んで来たから避けただけだったんだけど、そのまま壁にぶつかって気絶してた」

 

「…試験官ぇ」

 

「そう言う春兄はどうだったんだよ。心配ないと思うけど」

 

「俺は免除だ」

 

「「ハッ?」」

 

「俺はギリギリに見つかったからな。試験をする暇なんて無かったんだよ」

 

「えぇ…」

 

キーンコーンカーンコーン…

 

「っ………! またあとで来ますわ! 逃げないことね! よくって!?」

 

話が途切れたからか、そう言い捨ててセシリアは自分の席に戻っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それではこの時間は実践で使用する各種装備の特性について説明する」

 

そして、とうとう千冬の授業が始まった

横では山田先生がノートを取っていた

いや、あんた教師だろ…

 

「ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」

 

思い出したように言う千冬

しかし、一夏は何のことか分からないといった顔をしていた

 

「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけではなく、生徒会の開く会議や委員会への出席……まあ、クラス長だな。ちなみにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点で大した差は無いが、競争は向上心を生む。一度決まると一年間変更は無いからそのつもりで。自薦他薦は問わない。誰か居ないか?」

 

千冬がそう言った瞬間

 

「はい。織斑君がいいと思います」

 

「え!? お、俺!?」

 

「私もそれがいいと思います」

 

「なっ」

 

「私は春也さんがいいと思います」

 

「面倒な…」

 

「私も春也さんを推薦します」

 

男性操縦者二人に白羽の矢があがる

 

「なら、俺は織斑マドカを推薦します!」

 

「!?一夏!?貴様!?」

 

「ふははは!!お前だけ逃れようなんてそうはいかないぞ!」

 

「お前、実の妹を売るなよ…」

 

しかし、一夏は抵抗にマドカを推薦した

 

「では候補者は織斑一夏と織斑マドカに織斑春也……他にはいないか?」

 

見事に織斑1色な推薦になっていた

流石、織斑家、俺達に出来ないことを平然とやってのける!そこにシビれる憧れるー!

 

「納得がいきませんわ!」バンっ!

 

しかし、セシリアが席を勢い良く立ち上がり喋り出す

 

「そのような選出は認められません! 大体、男がクラス代表だなんていい恥晒しですわ! わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

 

セシリアの発言に一夏はイラつき、春也は目を閉じていた

春也を知る者からしたらその姿は軽くキレていると見られただろう

 

「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります! わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!いいですか!? クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれはわたくしですわ!」

 

(クラストップねぇ。てめぇよりもマドカの方がレベルは上なんだがな)

春也は声に出さずそう思うが、セシリアは止まらない

 

「そんな選出は認められません! 男がクラス代表なんていい恥晒しですわ! このセシリア・オルコットにそのような屈辱を1年間味わえとおっしゃるのですか!? 大体、文化としても後進的な国に暮らさなくてはいけないこと自体私にとっては耐え難い苦痛で…!」

 

そして、ついに

 

「イギリスだって大したお国自慢無いだろ。世界一不味い料理で何年覇者だよ」

 

一夏がキレた

 

「なっ美味しい料理は沢山ありますわ! あなた、私の祖国を侮辱しますの!?」

 

「…」

「………」

「「………」」

 

 

 

売り言葉に買い言葉

2人の言葉が途切れクラス中の視線が2人に向けられる

 

「…決闘ですわ! わざと負けたりでもしたら私の小間使い、いえ奴隷にしますわよ!」

 

「ああいいぜ、しのごの言うより分かりやすい」

 

春也はそのまま静かな教師2人の方を向く

教師、2人共先程から表情を変えていなかった

傍から見れば教師として平然としているよう見えただろう

しかし、色々と春也にはその表情から漏れ出る怒気を感じた

千冬はキリッとした顔で、山田先生はニコニコ笑顔で

 

そんなことに気づかず話は進んでいく

 

「なら、ハンデはどうするんだ?」

 

「あら? もう」

 

「いや、俺がどれだけのハンデ付ければいいのかって」

 

そのセリフを一夏が放った一呼吸後、教室の生徒の殆どが爆発するように一斉に笑い出した

 

「織斑君、それ本気で言ってるー?」

 

「男が女より強かったって言うのは昔の話だよ?」

 

「オルコットさんは代表候補生だから、素人の織斑君がむしろハンデを貰う方だよ?」

 

「今なら間に合うからやめといた方がいいって」

 

「もし男と女が戦争したら三日持たないっていうよ」

 

「………はぁ、馬鹿共目」ボソッ

 

一夏はクラス中からの反応に驚いた

そして、

 

 

「あ、あぁ。そうだな。ハンデは取り消「クッククク」?」

 

「クハハハハハハ!!!」

 

ハンデを取り消そうとした瞬間、春也が大声で笑い始めたのだ

 

「ハハハハ!ハハ、はあ、下らん」

 

「え?」「はあ?」

 

「聞こえなかったか、下らないと言ったんだよ。とんだ茶番だな。おい、金髪コロネ」

 

「わ、私のことですの!?私には「うるせぇよ。自分の立場もわかっていない奴は金髪コロネで十分だ」っ!?」

 

一夏とマドカはこの時思った

あ、本気でキレてる、と

 

「聞くがよぉ、IS開発したのは誰だ?」

 

「ふんっ!そんな質問簡単ですわ!篠ノ之束、はか、せ…」

 

「気づいたか?ISで世界最強と言えば?」

 

「織斑、先生…」

 

「そうだ。どちらもお前が極東の猿って言った日本人だ。それからお前は代表候補だろ。つまり、国の顔って訳だ。そんな奴がおおやけに一国をバカにするのか…?」

 

「わ、私は…」

 

「まあ、家のアホがそっちの国をバカにしたからチャラだがな。てめぇも問題発言してるってこと自覚しろ、愚弟」

 

「うっ…!」

 

そして、春也の発言は止まらない

 

「それからさっき男よりも女が強いって言った奴、てめぇもバカだ」

 

「なっ!?」

 

「女が強いってのはISが動かせること前提でだ。それが無かったらどっちが強いかなんて知らんがな。言わせてもらえば俺たち二人はISを動かせる。つまりはお前ら同等の立場にいるってことを忘れるなよ。最後に男と女が戦争した場合負けるのは女だ」

 

「「「えっ!?」」」

 

「ねえ、織斑さん。それは流石に」

 

「事実だ。お前らの敗因は一つ俺が男だったってことだ」

 

女尊男卑の傾向がつよいクラスメイトが反論するが

 

「それがどうして敗因になるのよ!?」

 

春也は即答する

 

「俺はIS全てを凍結することができる」

 

「えっ…?」「はあ?」「うそ?」

 

「はっ、ハハハハ。嘘も休み休みいいなさ「事実だ」…織斑先生?」

 

「織斑兄は実際にそれができる」

 

「嘘でしよ?なんで、何でそんなことが…?」

 

そして、織斑春也は

 

「さて、改めて自己紹介しようか。俺の名は織斑春也。NEVECのテストパイロット兼技術開発部門顧問でありながら創設者。そして、

 

 

 

 

 

 

ISの生みの親、篠ノ之束の一番弟子だ」

 

 

 

 

自分という異端な存在をクラスに知らしめた

 

 









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気をつけてはいますがこれからも起こると思うのでどんどん報告してください!
この場を借りて感謝を述べます!
本当にありがとう!

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