オリ主が挑む定礎復元   作:大根系男子

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遅くなりました!
ごめんなさい!
今回もグロ描写なし短めでお送りしますので、よろしくお願いします


純白の花嫁(薄いブックス展開はのーせんくー)

夜になった。

あの邂逅から数時間が経ち、その後も度々骸骨兵やらローマ兵との小競り合い程度の戦闘はあったが特に欠けることもなくそれを切り抜け、平野を越え谷間に入ったとある場所で漸く一息をついている。

野営の支度を済ませ、焚き火を囲みながら現状確認をするところまで漕ぎ着くことができたのは幸運なのか不運なのか。

 

それは兎も角、やっとこさ私も彼ら、つまり第五代皇帝ネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクスと共同戦線を貼る英霊たちと自己紹介を交わすことができた。

今焚き火を囲っているのは哨戒に出ているメドゥーサを除いたカルデアから来た私たちと、そんな真名を教えてくれたイスカンダル王、孔明先生こと小学生だって知ってる大軍師諸葛孔明、そして皇帝ネロ・クラウディウスだ。

 

ちなみに孔明先生の顔を確認したスタッフ達の何人かが悲鳴なんだか雄叫びなんだかよく分からない何かを叫んでいた。

電気関係の修理でお世話になった眼鏡の彼が頭抱えてるのが印象的だったけど、うん、まああんまり関係ないわね。

 

さて。

自己紹介を終えて幾許か。

クラウディウス帝が重たく口を開いた。

 

「カルデアに人理焼却……確かにお前たちの話は孔明やローマ連合を名乗る者達から聞いたものと相違ない。しかして余のローマの現状を話せばならんな……と言っても余のローマは既に此処にいる兵達と僅かばかりの民しかもうこの世界にはない」

「それは一体……」

 

マシュの疑問は最もだ。

何せ前回のフランスは雑竜やサーヴァントから攻撃を受け国王すら喪ってはいたがそれでも兵や民は己の領土を守ろうと戦い何とか国の体を成していたのだから。

そんな疑問に、出会って僅かだがそれでも分かるほど似合わない暗い顔でクラウディウス帝は訥々と語りだした。

 

「我がローマはこの半月の間でその領地を侵攻され首都ローマでさえも奪われた。連合ローマ帝国、そしてお前たちも見た皇帝を騙る逆徒の手によって」

 

胸をかくように自ら抱きしめ、重く、意識していないだろうがひどく痛ましく聞こえる言葉を吐き出す。

まるでそうすることで、苦しさが少しでも空気の中に溶けて消えて行ってくれるのを願っているかのように。

 

「口惜しくも敗走を喫した余と僅かに生き残った民たちは首都ローマよりベルゴムムの山峡まで追われることとなった」

「ベルゴムム?」

「現代で言うならアルプスの麓にある砦と丘の町(ベルガモ)のことだ、ミス藤丸。ここメディオラヌム(ミラノ)から行軍して半日ほど掛かる場所にある」

『ベルガモの山峡っていう事はオロビエ山脈か!成程、この時代碌に開発も道路の整備も進んでいないあそこは天然の要塞だ!少数が逃げ隠れるなら打ってつけだし連合からは手を出しにくい、最適の隠れ家ってわけだ』

「博識ではないか、アニムスフィアの魔術師。時計塔では見かけなかった顔だがこちらの世界でも彼女は良い人脈を持っていたようだな。だがその答えでは部分点止まりだ」

 

そうロマニの事を褒めた孔明先生をちらりと見やってから、少しだけ小さな溜息をこぼしクラウディウス帝は続きを話し始めた。

 

「そう、嘗て栄華と繁栄を極めた余たちが百にも満たない僅かな民草とそれを守る兵のみになったからこそ其処まで逃げ遂せることができた……業腹な話ではあるがな」

そう言ったきり押し黙ったクラウディウス帝に代わり孔明先生が話を引き継ぐ。

 

「王と私も最初は自体の静観を決め込んでいた。理由も分からないまま受肉という聖杯戦争ではあまりにもイレギュラーな形で召喚されたものだからな。そうした『はぐれ』とでも言うべきサーヴァント達は、我々が召喚された当時、それなりの数がいた。そんな明確な召喚者なしに世界の、人理の意思によって召喚された我々はそれぞれこの特異点でどうあるべきか、何を成す事が人理救済に繋がるのかを探る事から始めた」

 

そんな時間はほんの僅かな間で脆く崩れたがね、そう言って皮肉気に頰を吊り上げた。

 

「正しく手探りだったのだよ。何せこの特異点に明確な敵はいなかった」

「いなかった……?」

「そうだ、偉大なる我が祖国の歴史に名を遺した王妃よ。連合ローマ帝国を名乗る彼等は確かにこの時代の異物ではあったが、だからと言ってこの特異点に対して積極的な介入を仕掛けてくることはなかった、物理的にも魔術的にもだ」

 

それは、また何とも奇妙な話だ。

 

「あるとされる聖杯も感知できず、特異点を破壊しようとする敵すらいない。だからこそ私達の他にもいた()()呂布奉先(バーサーカー)ブーディカ(ライダー)、そしてこの地に由縁のある剣闘士。他にも暗殺者や名を名乗らなかった羊飼いもいた。誰も彼もがどうすればいいのか分からないまま、半月が過ぎた。そんな霧中の日々に終止符をうったのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()連合ローマ帝国の軍勢と彼等に付き随う魔獣の軍団だった」

 

それが始まりだ、そう言って溜息をつき空を見上げて彼は話を進める。

 

「我々はぐれの者は完全に初動が遅れた。忘れていたのだよ、これが曲がりなりにも()()()()だということを。戦争なのだ、それも神魔入れ乱れる最悪の部類のものだということを完全に失念していた。そしてそのまま我々は何を果たすべきか、勝利目標すら分からないまま、ただ幻想種の軍勢から無辜の民を守るために戦場へと駆り出され結果、二騎の狂戦士と暗殺者の右腕を犠牲にローマからオロビエの山脈まで命からがら逃げる外なかった」

 

つまりは敗戦。

私たちカルデアは来るのが遅かったのだ。

そしてその間に、予測はつく、あれは準備を済ませたのだろう。

ああ、成程道理であれが英霊の形を成しているわけだ。

 

「これが我々の現状だ。如何にもままならないが、敗戦色は濃い。まともに戦闘に回せるのは私と王、そしてネロ帝だけだ。残る()()の内一人は負傷、後の二人も拠点の防衛をしなくてはいけない。だからこそその三人に拠点を任せ我々は少数でこのメディオラヌムまで偵察に来たのだ。占拠されたローマへと生身の斥候を放っても帰還したものはない以上、我々のようにサーヴァントと戦える存在が直接情報を探るしかなかった」

 

失礼と一言詫びを入れると懐から葉巻を取り出した彼は煙を吸う。

くゆりと零れ溢れる紫煙が空へと昇り、星の輝きの中に消えた。

 

「そして分かったことが我々の敵、即ち連合ローマ帝国は強力なサーヴァントの真名だ」

 

夜空の輝きを数える様に、彼は葉巻に蓄えられていく灰を気にすることなく話し続ける。

 

「敵の首魁こそ分からなかったが、召喚されたサーヴァントは今回判明したあのルキウスという英霊を合わせて合計で六騎。彼らはそれぞれが首都ローマを含め重要な拠点を防衛していて、そして()()()()姿()()()()()()()()()。理由は幾つか考えられるが、どうにも説明がつかないのでね、今回は省略させてもらおう。サーヴァントが直接防衛している拠点は、首都ローマ、フロレンティア、ブリンティジ、マッシリア、そして我々が現在居るメディオラヌムの計五つ」

「どれもローマの歴史における重要な地名ばかりですね」

「マシュ、と言ったかね。よく歴史を勉強しているようで感心だ。物のついでだ、後でそこで目を白黒させている君のマスターにもよく教えておくといい」

「……先輩」

 

マシュが沈痛な顔をしているが、うん、気持ちは分かる。

どうもこの子、地頭は良い癖にどうにも歴史関係が疎すぎるのだ。

 

「……話を続けよう。まず首都ローマだがここを防衛しているのはスパルタの王、槍兵(ランサー)レオニダス。フロレンティアは皇帝の名の由来にもなった智将カエサル、そしてブリンティジにはその妻にして古代エジプト王朝における最後のファラオである暗殺者(アサシン)クレオパトラ。随分と洒落が聞いている話だ、名高き女王にあの地を任せるというのは」

 

喉奥でくっと笑う。

ブリンティジ、流石に私もあまり聞いたことのない地名で立香と揃って訝しんでいるとロマニが補足を入れてくれた。

 

『ブリンティジはその時代だとブルンディシウムと呼ばれていて貿易港として古くから栄えてきた。そして一番有名なのは街道の女王と呼ばれるアッピア街道の終着点なのさ』

「最後の女王に女王の道の終着点を守らせる、随分と皮肉の利いた話だ……まあいい、残りの二つだがマッシリアについては現在も不明だ。我々もあの地には直接行っていない上に何よりあの地には()()()()()()()()()()()され人類が生存できる場所でなくなっている。生存者もなく特に有力な手掛かりが得られる見積もりも低いあの地についてはまだ調べのついていない状態だ。そして最後の一つ、我々が今居るメディオラヌムだが「そこからは余が話すとするか」ライダー……」

 

そう言って豪快に笑うイスカンダル王は朗々と、まるで誇らしいようにとある王の名を口にした。

 

「この地に招聘されしは我が生涯の宿敵、狂乱の嵐と翡翠の灯を纏う不死の王、名をダレイオス三世。古代ペルシャにおいてあの男こそが余に比肩せし最大の勇であった。此度の現界ではどうやら狂戦士の器のようでな、ちと話が出来とらんのだが、うむ、何れはこの遠征での胸の内を武と宴を通して酌み交わしたいものだ」

「補足するが今この地域一帯を闊歩している躯の兵士は全てそのダレイオス三世の宝具『不死の一万騎兵(アタナトイ・テン・サウザンド)』の効果によるものだ。その能力は言わずとも直接戦った君たちならば理解できるだろう」

「はい……幾ら攻撃しても何の効果がないような、どれほど倒しても湧いて出る様に次から次へと敵が現れて……まるで本当に……」

「その通りだ、盾娘。あれらは全て不死不滅の亡者。余の切り札(宝具)が我が朋友たちとの絆の覇道であるならば、ダレイオスの宝具は怒りによって結ばれ現世を彷徨う憎悪と狂気の具現であろうな」

「た、盾娘……えっと、一応、あの、デミサーヴァントです、はい」

 

そんなマシュの訂正に、豪快に笑ってすまんすまんと謝りながらマシュの背を叩くイスカンダル王。

その仕草だけで戦力比に唖然としていた空気が緩む。

……何となく立香に似ているというか、あえて空気を読まずに我が道を行くことで人を魅了する姿は円卓にも中々見られない眩い正の輝きであった。

 

しかし、本当に困った。

今挙げられた英霊たちは誰も彼もが大英雄。

自分のような半端者とは違う、正しく掛け値なしの強力な英霊たちばかりだ。

現にレオナルドも困った顔をしてこちらに問いかけてくる。

 

『成程、現状はよく理解できたさ。勿論こちらから観測したデータと照らし合わせても五つの都市に分散する形で英霊が五騎、その内ローマからは六騎の反応があった。そして聖杯らしき数値が観測できたのも()()()()()()()。これについては後でギネヴィアの意見も併せて答え合わせをするとして、だからこそ尋ねるとしようか……この現状でどう攻勢に打って出るつもりだい?』

 

最もなレオナルドの問いに答えたのはこれまで押し黙っていたクラウディウス帝からだった。

 

「それについては此度の遠征で調べがついたのだ、姿なき賢者よ。余たちが此度このメディオラヌムを通してローマ近辺の諸都市に出向いたのは他でもない!」

 

そう言って立ち上がり、その両腕を星空に向けて仰ぎながら、舞台女優のように宣言する。

……駄目だ、何というかこの子、理由は分からないがローマ皇帝だとかそれ以前に()()()()()()()

 

「勝利を掴むための舞台準備!即ち布石を打つためである!」

「それはつまり、今回の偵察には敵の情報を得る以上に必要なナニカを探していた……例えばそうね、自分たちが自由に戦う為に匿っている民草を庇護してくれる、そんな夢のような場所とかどうかしら?ねえ、クラウディウス帝?」

 

ほらこれだ。

何故だろう、この子のことは嫌になるほど体が嫌がっているというのに、その反面つい合いの手を入れたくなって。

そして落ち込んでいると思わず手を差し伸べたくなってしまう。

一体、何だというのだろう。

そんな私の得体の知れない気分の悪さなんて、当たり前のことだがこれっぽちも知らないクラウディウス帝は満面の笑みで返答する。

 

「うむ!聡明な美少女は余の最も好むものだぞ!その通りだ、()()の言う通り余たちはこの遠征で民を安心して預けられる場所を探し、ついにっ!それを見つけたのだっ!……む、そう言えば、ギネヴィアと言ったか。貴様、何故そんなに他人行儀なのだ?若しや余が皇帝だから畏まっているのではあるまいな?よし!余が許す故、もっと砕けて喋るがよいっ!余好みの愛らしい美少女にそのような態度を取られては、余は泣くぞぉ!というかだ、いっそ()()()()にでもならぬか?うむ、それがよい!そうと決まればッッ!!」

「え、ちょっ、なんでひっつくのよ!?いいから話を進めなさいっ!っていうか貴女何処触っ、んっ……やぁっ……こ、このっ……誰か見てないで止めてぇぇぇッ!!」

 

服の上から、妙にまさぐる感じで抱き着いてくるネロを何とか離そうとしてもがくが、駄目。

余計にこう、なんというか、見せられない感じの絵面になっている気がする。

後、立香。

マシュの目を塞ぐのはいいけど、貴女が目をかっ開いてじゃダメでしょ!

っていうか助けなさいよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『こほん、というわけでだ』

 

あの後ぐだぐだになりそうだった話は哨戒から帰ってきたメドゥーサによって無事軌道修正された。

そう言えばお風呂の約束まだでしたね期待してます、とぼそっと私にだけ聞こえる様に呟いたのが怖かった……本当に怖かったぁ。

 

『余達は犠牲を払い、それでもローマ近くまでたどり着き、そこで()()()()を幻想種がのさばり闊歩する地獄で生き延びていた民達から聞いた』

 

……まあそれは置いておくとしてだ。

 

『……竜や亡者に追われ余が救う事が出来なかった多くの民が縋る様に目指す楽土があるのだという。そこは鍛冶神ヘパイトスが治め彼の邪竜テュポーンが眠るとされるエトナ山より西』

 

あの後、ネロは逃げていた民達から聞いたという話を私たちにした。

その目にあったのは希望だ。

其処に行けば、勝利が、幸福が待っている。

そう信じてやまない、まるで童女のような目だ。

 

『余も噂程度にしかこれまで聞き及んでいなかったが、そこには古くから名も無き、されど確かに形のみ存在している島があるのだという』

 

それを肯定するようにかすかに頷く孔明先生と、クラウディ……ネロの言葉を聞いて早速計測と観測を開始したロマニ達の驚きの中に安堵が見える顔が真実なのだと物語っていた。

……ネロって呼ばないと泣くし抱き着くのだ、あの子。

 

『其処は古の女神と()()()()が治め辿り着いた者の身の安全と暮らしを約束しているらしい』

『こちらでも計測できた。驚くべきことだが、確かに生存反応が、それも人間の反応が確認できるよ。罠の可能性がないわけでもないが、わざわざ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を絶海の孤島に掛けるってのも可笑しな話だしね。僕も信じていいと思う』

『うむ、孔明もそう言っておったしな。まず間違いなかろう。故、余達はこれよりベルゴムムへと帰還し、そのままこの楽土』

 

 

 

―――形ある島へと向かう

 

 

 

『そして民をそこで待たせ、漸く本当の意味で反攻の狼煙を上げるのだ』

 

そう力強くネロは言い切った。

 

「……まあカルデアの計測データでも大丈夫そうって言ってるんだし、何とかなるのかしらねぇ」

 

他人事のように、そう呟く。

他人事、そうだ他人事だ。

ああでも嫌だ。

敵国(ローマ)だっていうのに、嫌な感傷が胸に押し寄せては返す。

気持ち悪い、本当に。

何度も踏みにじられ、何度も苦しめられてきた国が、その皇帝が苦しんでいる。

喜んで嗤ってやればいいというのに、どうにもそういう気が起きない。

それが何故か妙に居心地悪くて。

ああ、嫌だ。

 

だからこうして、見張りをかって一人岩場の陰から身を乗り出して遠くを見る。

星明りがやけに煩い。

胸のざわめきが収まらない。

死ねばいいのだ。

人理を直す、つまり問題となる破壊の要因さえ潰せば多少の犠牲は世界の方が帳尻を合わせてくれる。

だから喜べばいいのだ、多くのローマ市民が死んだことを、犠牲になったことを。

そうすることが、憎悪を灯を絶やさないことが女王として正しいはずなのだ。

決して絆される様なことがあってはいけない筈なのだ。

 

なのに何故か、そういう気持ちになれなくて私は一人此処で宙を見る。

少しでも茹った頭が冷える様に。

少しでも騒がしい心が鎮まる様に。

 

「……これもどれも全部ルキウス(あいつ)の所為よ……」

 

そう零す。

情けない。

一人で何かを喋ってないと、何だか宙に潰されて気持ち悪さ(不安)が零れ落ちてしまいそうで、嫌だった。

だから、どうしようもなくなって、つい、独り言を言っていた。

 

 

 

だから、それに返事をされるとは思ってなかった。

 

 

 

「なにがー?っていうかちゃんと起きてるー?」

「……何時まで起きてるのよ、馬鹿娘。明日に備えて夜更かしせずにさっさと寝なさいって言ったでしょ」

「いいじゃん、ちょっとぐらい」

 

そう言ってからよっこいしょと私の隣に腰を下ろしたのは立香だった。

そのまま何も言わず、宙を見ている。

一分か五分か、それとも十秒にすら満たないのか。

何とも言えない時間が流れて、結局根負けする形で私は口を開いた。

 

「……どうしたのよ」

「……別にー」

 

こちらを見ず、ただ楽しそうに星を見続ける立香。

 

「用がないなら早く寝なさい。明日だって夜明け前には出るの、それぐらい覚えてるでしょ?」

「失礼な。私だって鶏じゃないんだからそれぐらい覚えてるよ……それに、用ならあるしねー」

 

そう言うと星から目を離し私の方を見て、

 

 

 

「ギネヴィアと一緒に居たかったんだ、ただそれだけ」

 

 

 

そんな恥ずかしいことを嬉しそうに言うのだった。

 

「……もぅ……馬鹿じゃないの」

「馬鹿ってなんだよー」

「馬鹿な物は馬鹿よ、このバカ娘」

「あー!知らないんだー馬鹿っていう人が馬鹿なんだよ、それ」

「……そう言えば、立香。貴女、ローマの歴史について習いたいんですっけ?いいわここで夜明け前まで講義してあげるからきっちり覚えて帰りなさいな」

「ごめんなさい私が悪かったのでどうか勉強だけはご容赦を」

 

なんて早口で言って謝り倒してくるものだから、なんだかおかしくて。

唇から笑いが零れて。

立香と二人で顔を見合わせながら、静かに、でも心地よく笑ってしまった。

 

「……ありがとうね、立香」

「んー、どういたしまして?」

「なんで疑問符がつくのよ、もうっ」

 

胸が苦しくなって、でも不思議と軽くて。

なんだか、分かった気がした。

そうだ、何てことはない。

 

「ねぇギネヴィア?」

 

こんなに一生懸命歩むこの子達が生きる世界を、

 

「なぁに?」

 

嗤ってやれるほど、

 

「今回もさ、」

 

私も如何やら、

 

「ええ」

 

冷血にはなれないらしい。

 

「必ず勝とうね」

「当たり前よ。任せておきなさい。何てったって私は」

 

 

 

―――貴女の杖なんだから

 

 

 

それで良いと思える自分が居て、それに悲鳴と憎悪と吐き気と憧憬を覚える自分が居るから。

どうしようもなく、気持ち悪いのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜が明ける。

世界が開く。

また一日が始まる。

それは祝福。

それは歓喜。

新たな一歩を踏み出すための希望へと続く試練の灯火。

 

「私は、」

 

だからこそ、存在するのだ。

どんな希望も。

どんな祝福も。

どんな歓喜も。

 

「破壊する」

 

全てを打ち壊すサカシマが。

 

「私は全てを、世界を、土地を、文明を、愛を、希望を」

 

何故なら此処は全ての特異点で最も異質な特異点。

千里眼を持たずしてこの世の絡繰りを見抜いた男が築いた、人類最後のマスターと、彼女の為の試練の場。

 

「善き者、悪しき者、その是非を問わず、その慈悲を問わず」

 

故にサカシマ。

愛ある悪意が牙を剥く。

 

「私は、そうだ私は」

 

だからこそ、

 

「戦うモノ、殺戮の機械、だから私は」

 

 

 

 

 

 

 

「全てを破壊する」

 

 

 

 

 

 

 

宙より降る星の涙は、彼女が立つ崖の下。

身を潜めて、息を殺して希望へと歩いていく者達を穿つように降り注ぐのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




間に合った!(間に合ったとは言ってない)
いや、ごめんなさい。
GWだしまさか呼び出しはないだろうと思ったら元気に電話が鳴って仕事してたら、中々書けれませんでした。
言い訳です、本当また明日って言ってたのに遅くなってしまいごめんなさい。
おまけに短めです、もうちょい書いた方がええんでしょうが時間的にこれが限界でした、筆が遅くて申し訳ないです。
明日についてもですが、元気にお仕事な作者なので明日の投稿は今回ぐらいぎりぎりか、ちょっと日を跨ぐかもしれないので許してやってくださいナンデモシマスカラ。

さて今回は説明回、次回は久々のガチンコ戦闘です。
自陣はカルデア組以外は連日の遠征でぼろぼろ、という感じ。
相手は元気もりもり文明破壊ガール。

うん、そろそろテコ入れしよう(白目)



あ、ところで皆さん。
オリ主の真名当て、それからカルデアに居ない『居るべき存在』はわかりましたでしょうか?
もしよかったら考えてみてやってもらえると嬉しいです(*´ω`*)

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