超次元ゲイムネプテューヌ~闇夜の円舞曲~   作:KeyMa

80 / 83
Scene76 空から舞い降りし少女と予兆~Plutia~

 

 

【ラステイション:工場地帯】

 

…前回からの続き。ラステイションの教会、厳密に言えば執務室のあっちこっちに隠しカメラが仕掛けられていた。多分全部見つけたと思いそれで終わりかと思ったけど、ユニが仕掛けられていたカメラの数に腸が煮えくり返るよう、犯人を捕まえる事になり、ベール姉さん達への報告なしに街へと出向いている。出向く前に、ラステイションの教祖であるケイさんに会ったが、犯罪組織での活躍もあり特に止める素振りは無かった。それでいて、肝心のユニはと言うと―――――

 

「もう、ムカつく…!!お姉ちゃんを隠し撮りする輩なんて、あたしがメッタメタにしてやるんだから!!」

「なんか、私に言われてる感じがする…」

 

…とまぁ、未だに怒りが収まってない感じ。ネプギアが持っている電波逆探知機で大体の位置までは分かるけど、そこからは虱潰しで探さなければならない。盗撮してる相手がモンスターでなければ、多分ボク達でも十分対応は出来るとは思う。そして、ネプギアが持っていた電波逆探知機が無ければ、途方に暮れていただろうと…は思うのだけど、やっぱり気になる。

 

「ところで、ネプギア。その電波逆探知機も、あの小型カメラ同様に偶々持っていたって感じ?」

「うぅん、これは何時も持ち歩いてるよ。モバイル用充電器と電波逆探知機は、女の子の必須アイテムでしょ?」

「どういう事なのよ…。スミレ、あんたの元いたところもそうなの?」

「え?そこでボクに振る?あったとしても、モバイル充電器ぐらいだと思うけど…」

「えぇ、嘘!?」

 

持っていない事なのか、時代の最先端に行き過ぎなのか分からないけど、ネプギアが両方持ち歩かない事に驚いている。いや、普通は持ち歩かないよね?…でも、ここに住み着いてから、自分の思っている事とは違う事もあるし、持ってた方がいいのかな。

 

「ねぷぎあー、おなか空いたぁ!!」

「え、そ、そうなの?」

 

すると、突然とピーシェちゃんがネプギアの背中にしがみ付いて、お腹が空いたと言う。…時間的にも昼を回ろうとしてるから、仕方ないとはいえ、小腹を満たせるような、それこそ飴玉の一個も持ち合わせていない。その間も“お腹空いたー!”と言い続けている。うーん困った…。

 

「ふっふーん、ピーシェって、こどもよね?」

『え?』

「わたしはもうおねえさんだから、お腹すいたってガマンはできるわよ?」

「わたしも、おねえさん」

 

そんなピーシェちゃんに対して、自分達は子どもじゃないから我慢できるよアピールするラムちゃんとロムちゃん。その二人の行動に感化したのか、顔を膨らませながらもネプギアにしがみ付くのを止める。

 

「………、ぴぃもおねえさん…」

「じゃあ、ガマンできるよね?」

「………ガマンする」

「なでなでっ」

「ラムちゃんも、ロムちゃんも凄い…」

「自分よりちっちゃい子がいると、俄然大人びるのね」

「子どもの成長は早い………うん?」

「どうしたのよ。上なんか見て」

「いや、あれ…」

 

ふと、子どもの成長に関心…みたいなことをして上も見上げたら、何か飛んでいるのを見る。よく見ると、ベール姉さん達が女神化して飛んでいる。ただ、一人見慣れない人が棒のようなのを掴んで飛んでいる。でも、色は違うけど雰囲気や恰好から、変身中の永守さんではないかと思われる。

 

「お姉ちゃん達だ…」

「でも、どうして?」

「そんなの、追えばわかることじゃない。ぼさっとしてないで、いこ!!」

「あ、まって、ラムちゃん」

「ぴぃもいくっ!!」

「ちょっと、待ちなさいよ!!」

「…お姉さんになった気だったけど」

「あはは…」

 

考えるよりも行動という形でラムちゃんが走り出し、それを追いかけるようにロムちゃん、ピーシェちゃん、先走る事が心配と思ったユニが追いかけていく。まぁ、悪い気はしちゃうけど、考えるより後を追った方が分かるから…。変身した方が早く着くけど、それだとバレるし、何よりピーシェちゃんを抱えて行くには、ネプテューヌさんの事もあって危険だと思い、街中を徒歩で行くこととなる。

 

 

 

 

「…ここに、入ってたわよね?」

「う、うん…」

「ねぇ、ネプギア。電波逆探知機はどうなってる?」

「えっと…さっきより反応は強くなってるけど、ここがそうとは断定は出来ないかな」

 

そうして、追いかけている内にベール姉さん達が入っていった場所へとたどり着く。外見はどう見ても、倒産してから大分たったと思われる廃工場と言った感じ。建物の壁が削れ落ちている、水流を送るような太いパイプや、目の前にある横引の門も錆付いている。

 

「でも、お姉ちゃん達も、もしかしたら盗撮犯を追ってるのかな?」

「もしそうだとしたら、ボク達が出る幕じゃないと思うよ?」

「えぇ?せっかくここまで来たのに?」

 

ラムちゃんとユニが若干不満げな顔をしている。確かに、ここで盗撮犯を突き止め、尚且つ捕まえればお手柄なんだけど、頼まれたわけでもないし、もし同じ盗撮犯を追いかけているのであれば、仕事の邪魔になるのではないか…そう考えていた矢先だった。

 

「く、クラタン…っ!!」

「ああ!!逃げたぁ!!」

「ぴ、ピーシェちゃん!!」

 

ピーシェちゃんが抱きかかえていたクラタンが、ピーシェちゃんの腕から抜け出し、廃工場へと向かう。それを追いかけるようにピーシェちゃんは、門の隙間を潜り楽しそうに追いかけていく。

 

「ど、どうする?」

「どうするも何も、追いかけなきゃ不味いでしょ」

「…こうなっちゃったら、引き返せないよね」

「す、スミレちゃんまで…」

 

とは言え、門は錆び付いているが、肝心の鍵自体も錆び付いていて飽きそうにない。ロムちゃんとラムちゃんは、ピーシェちゃんと同じく門の隙間を潜っていけそう。実際この会話の後、ボク達を待つかのように先に門を潜り抜けている。問題は、ボクとネプギアとユニはそうは門の大きさ的に少し潜り難そう。…仕方ないから、ジンさんが考えそうなプランBと言う事で入るしかなさそう。

 

「…よっと」

「す、スミレちゃん!だ、大丈夫?」

「…考えはいたけど、そう入るのね」

 

門の横の壁が少々高いけど、跳躍する事で壁の上に手が届く。少し服が汚れちゃうけど、そのまま攀じ登って、二人を持ち上げるように手を出す。二人共しょうがないと言った表情をしながら、ボクの手を掴んで壁を攀じ登って建物の中へ入る。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

【ラステイション:廃工場】

 

教会の外に出た後、飛んでいく為に四女神は女神化する。俺も楽して空を飛ぶには変身しておく必要がある。それでいて両剣を呼び出し、それをテレキネシスで持ち上げて引っ張っていくという荒業で飛んでいく。ノワールからは“今度からト〇トンボでも用意しとく”と言われる。…それは兎も角、目的の場所へたどり着く―――――

 

「よぉーっしぃ!!じゃあ、犯人を見つけるよぉ!!」

「っ!!し、静かにしなさいよ!!犯人に逃げられたらどうするのよ!!」

「ほ、本日のおま言うスレは、ここですかぁ?」

『………』

 

女神化を解いて着地した途端、この大騒ぎである。これが四女神であるが、侵入としては不味い事をしている。

 

「…さっさと中に入ろう」

「そうですわね、犯人を捕まえる事が最優先ですわね」

「わたし達に、漫才をやっている暇はないわ」

「ま、漫才なんてしてないわよ!!」

 

と、突入前にこんな事があったが、建物内に入る。恐らく犯人が出入りする為に調整したのだろう。侵入したと思われる扉は錆び付いているが、ドアノブは錆取や油による調節がされており、見た目とは裏腹にスムーズにノブが回る。中は暗く一部埃だらけな所もあるが、廊下は比較的綺麗にされている。…犯人は綺麗好きか?ライトは付ける程ではないが、全員武器を構えて進む為、何かある事を踏まえ、フラッシュライト付の銃を構えて進む。恐らく、“制御室か管理室あたりを占拠しているのでは”と推測したノワールについていく事となる。管理室は外れだが、制御室の扉が少し開いているらしく、中から薄く光が漏れているのが分かる。足音を殺すように扉の前に集まり、少し開いている扉からノワールが中の様子を伺う。

 

「…!!誰かいるわ。武器を構えて、全員で突撃するわよ」

 

ノワールが小声でそう言う。全員が武器を構え、ノワールがそれを確認し終えると、扉を勢いよく開け中へ入る。

 

「動かないで!!…手を上げて、ゆっくりこっちを向きなさい!!」

 

中に居た人物は、多数のハイテク画面を使って何かしていたようだ。ノワールに言われるがまま、ゆっくりと手を上げつつ、椅子を回転させ正面を向く。…やはり…と言うようよりも、その人物はパワードスーツのようなのを身に着けているのだが、以前見た“アノネデス”に似ている。だが、身に着けているパワードスーツは、神次元に居たアノネデスと比べると、かなりの最新モデルと分かる程だ。例えるなら、ポ〇ゴンとポ〇ゴン2ぐらいの違いと言えばいいか。

 

「あなたね、私の国にハッキングしたのは…」

「………」

「黙ってないで、さっさと答えなさいっ!!」

 

冷静を装っているが、ここまで来る際のぶっ飛ばすと言った事は本当らしく、剣を握っている手が力強くなっている。

 

「…あっはぁあん、そんな他人行儀な喋り方しないでぇ!!アタシの事は“アノネデス”ちゃんって呼んでね☆」

『………』

「…ね゙っぷぅ゙!!」

 

…予想はしていたが、手を上げながらゆっくりと立ち上がったと思った瞬間、両手で自分を抱きしめるようにしつつ、身体をクネクネさせてのオネェ言葉である。俺以外のその場にいた4人は、空気が止まったかのようにピクッとなり、その目の前に人物の特徴を理解し、ネプテューヌは予想外の相手に、ギャグマンガの如く倒れ込む。

 

「うっそぉ!!お、オカマさん!?その見た目でぇっ!!」

「あ~らぁ、失礼ねぇ?心は誰よりも、乙女よ?でも、約一名は驚いてないみたいだけど…あなたひょっとして、アタシの事調べ済みだったり?」

「…いや、似たような人物を見たことがあるだけだ」

 

どうやら、このアノネデスは今のところ俺の事は初見らしい。演技の可能性も捨てきれないが、同じ特性を持っているのであれば、ハッキング犯である事は間違いないだろう。

 

「…本当、分かりやすい程にオカマね」

「しかも、ちょっと毒舌だったりするんですわよね?」

「当ったりぃ!!胸ばかりに栄養が偏ってるかと思ったけど、意外と冴えてるのねぇ?」

 

妙な挑発にベールがムスッとするが、それに構ってる暇はないと言わんばかりに、ノワールがアノネデスに突っ掛かる。

 

「あなたの事はどうでもいいのっ!!今回の犯行はあなたがやったって事、認めるの!?」

「…ふ…ふふふ…」

「な…何よ…」

 

突如、アノネデスは不敵な笑みとも言える声を出す。

 

「…生で見るノワールちゃん、やっぱり可愛いわぁ…想像以上よ」

「ふぇ!?な、なに言ってるのっ!!そんな事言って気を反らそうと―――――」

「やだぁ…本気よ?ホ・ン・キ」

 

そして、アノネデスが指を弾くと同時に、周囲から大量のモニターが現れる。

 

「…こーんな写真撮っちゃって、ごーめんなさーい☆」

「あ…ああああああああ!!」

「あああ!!あっちもノワール…こっちもノワール…全部(ぜーんぶ)、ノワールだぁっ!!

「あ・と・ね。貴方にも、感謝しておかないといけないわね。たまに一緒に居るけど、ノワールちゃんに手を出さなかった事」

「…お前の盗撮という趣味に、付き合う気はない」

「連れないわねぇ。でも、そういう所で、感謝してるのよぉ?あと、響きが良くないから、盗撮よりパパラッチって言って欲しいわ☆」

「………」

 

ネプテューヌが騒ぎながら言ったように、モニターに映し出されているのは、執務室で仕事、休憩等をしているノワール。それもあらゆる角度から撮影されている。どう言おうが、やっている事は完全に盗撮である。

 

「そう…何を隠そう、アタシってばノワールちゃんの大ファンなの!!ノワールちゃんの事、何でも知りたくて、つい出来心でぇ!!」

「ここまで来ると、あっぱれだな…」

「何、関心してるのよっ!!そんな写真の事より、私が言ってるのはハッキングの事で―――――」

「そんな事ぉ?じゃあ、これもぉ?」

 

アノネデスが再び指を弾きならすと、映し出されていた画面が全て切り替わる。

 

「え…あ…あぁああああああ!!」

 

最初の写真が映し出された時よりも、顔を赤くしつつ激しく動揺している。そこに映し出されているのは、ノワールが“裁縫”をしている姿。“出来上がった衣装を喜んでいる”ような姿が映し出されている。

 

「ノワールが、お裁縫してるっ!!」

「そういう事する人だったかしら」

「…知らなかったのか」

「そ、そうなのぉ!!案外家庭的なタイプでねぇ!!皆には内緒で腕を磨いてたのよぉ!!」

「…あの服、何処かで見た事あるような気がしますわ」

「気のせいっ!!100%気のせいだからぁ!!」

「落ち着け、ノワール。相手の思うツボ―――――」

「黙ってて!!って言うか、それじゃないって言ってるでしょぉ!!」

 

俺の制止も聞くことなく、ハッキングの件でYesかNoを聞き出したい事と、自分の趣味?が暴露されそうな感じで、軽いパニック状態であるのは目に見えている。相手の作戦か、そういう姿を生で見たいのかは分からない。どちらにせよ、今のノワールは完全に冷静さを失っている。そんな状況を見逃さずにいたのか、更にアノネデスの行動はエスカレートしていく。

 

「…ふーん?それじゃないって言うなら、これの事ぉ?」

 

再びアノネデスが、指を鳴らすと映像が切り替わる。

 

「あああああああああああああああああ!!!!!!」

「おお、これはぁ!!」

「誰がどう見ても、コスプレね」

「どの衣装も、最限度が高い…」

「あの衣装、やっぱり四女神オンラインの衣装だったんですのね」

「見ないでぇえええええええ!!!!」

「ヤダッ!取り乱したノワールちゃんもかーわーいーいー!!Exclusive!!」

 

ノワールの取り乱した姿に興奮しているのか、カメラを取り出してその様子を激写する。…この世界でまだアナログなカメラがあるとは…と思う程、見た目は新品だが、撮った写真がカメラから排出される。

 

「ぐぬぬぬぬ…!!いいわ、とりあえず盗撮の罪で牢屋に放り込んでやる!!」

「ついでに、プライバシーの侵害も漏れなく着いてくる。これ以上罪を重くしたくないなら、従うべきだ」

 

だが、アノネデスはその要求を見越していたのか驚いた様子はなく、“ふーん”と言いたげな態度を崩していない。

 

「あーらそう。そういう事なら仕方ないけど、いいのかしら?」

「何よ、抵抗する気?」

「そうじゃないのよ。アタシがこの椅子から暫く離れるか、この部屋から…厳密に言えばこの建物から出ると、ここの写真を含めた奴が全部(ぜーんぶ)、世界中に公開される手筈になってるけど、それでもいいかしら?」

「え、えぇ!?」

「最初は独り占めにしようかと思ってたけど、世界中をノワールちゃんで埋め尽くすのも、悪くない思う訳…ね?」

 

アノネデスが言った事が事実かどうかは分からないが、本当であればノワールのプライドが許さないと言う感じだろう。

 

「確かに、この写真が全て公開されましたら…」

「恥ずかしくて、表を歩けないわね」

「だいじょーぶじゃないかなー。このノワールちゃんチョーかわいいーしー」

「棒読みですわよ?」

「シェアが下がるとは思えないが…流石にやり過ぎだ」

 

ファンとか、知りたいの領域を超え過ぎているのは明白だ。ホールドアップ目的で銃を構えようとしたが―――――

 

「…いいわよ、好きに公開しなさい!!その代わり、あなたの命は無いわぁ!!」

 

完全に吹っ切れたのか、女神化したノワールは高く飛び上がり、アノネデスに向けて剣を振り下ろす動作へ入る。

 

「ふふっ…そう来なくっちゃ」

『っ!!』

 

アノネデスが不敵な微笑みをした瞬間、周囲にあったモニターが、突如意思を持ったかのように動き出す。データ系モンスターの“ときめきシスター”等に似ているが、まるでアノネデスを庇うような動きをしている。

 

「このぉ!!」

「う、上から来るよ!!」

 

強さは此方が遥かに上なのか、殆んど一撃で粉砕出来る程の耐久力しか持っていない。持参した拳銃が9mm弾だからか、此奴だけは一体に三発使う事になり、非効率だと判断し結局は拳と蹴りになる。

 

「ふっふふっ楽しかったわ、ノワールちゃん。あぁ、後ね。写真を公開するってのは嘘だから、安心してね」

「隠し扉か…!!」

「っ!!待ちなさ―――――くっ!!」

 

そんな中、アノネデスは壁のような場所が突如開き、そこから忠告をしつつ部屋を出ていく。それを追いかけようとするが、減るどころか一向に増えていくモンスターが、足止めをしてくる。

 

「うわわわ、全然減らないよ!!」

「一体、一体は大した事ないですけど…」

「流石に、ここまで多いと鬱陶しい…ぜ!!」

「はぁああああ!!」

 

無限増殖と思う程に、モンスターは現れてくる。この部屋全体がスポナーとも言うのか。だが、流石女神と言うべきか。一瞬の隙を見て、ノワールはアノネデスが出て行った場所に斬撃を放つ。そこまで頑丈ではなかった様子で、切り刻んだ場所は向こうへと通じる廊下が見えている。ならば、やる事は一つしかない。

 

「…ここは俺が引き受ける。お前達は奴を追え」

「またそういう事言って、大丈夫なの?」

「四天王と殺り合うよりは、遥かにマシだ」

 

全員戦いながら、若干考え込むように見えたが、直ぐに理解してノワールが作った道へと出ていく。そして、その道の入り口を通さない様に位置取りをする。…約一名だけそうではなかった。

 

「…ネプテューヌ」

「確かに、えい君は以前より強くなってる。けどね、あの時みたいになるのはごめんだよ!!なんだって、パートナーなんだから!!」

 

内心、全く…と思いつつも、ネプテューヌなりに心配してるんだと分かる。

 

「…なら、やる事は分かっているな?」

「そんなの簡単でしょ?」

『この部屋ごと、壊しちゃう(ブっ潰す…)!!』

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

「生ノワールちゃんに会えたんだもの。アジトの一つぐらい…ドリームズカムトゥルー☆」

 

完全なる勝利とも思えるくらい、ウキウキ気分のアノネデスが薄暗い廊下を、アタッシュケースを抱えながら走っていく。余りの嬉しさを抑えきれないのか、トゥルーの部分が巻き舌になっている。だが、暫く進み、非常口の扉を開けた時、遥か後方から激しい音がしたのを、アノネデスは聞き逃さなかった。

 

「あらヤダ。扉を力尽くで、突破されちゃった?予算の関係で仕方ないけど、ゼロ距離でのRランチャーに耐えるくらいの耐久度にしとけばよかったかしら。やはり、あの男の事をよく調べないといけないわね」

 

実際はノワールが壊したのだが、アノネデスは永守が壊したものだと思い込んでいる様子であり、もう少し情報収集した方がいいとも思っている。持っている資料の中から“永守の写真”と“戦闘データ統計”を取り出し眺めている。そこには、女神とは異なった能力を持ちながら、女神と同等かそれ以上の戦力を持っている…と論文風に記述してある。

 

「…ん?」

 

そんな時だった。余所見をしていたのもあり、反応に遅れたアノネデスは、前方から来た何かに足元から登られる。

 

「ちょ、ちょちょ、何々、何処か行って!!」

 

その何かは、ピーシェの元から逃げて行った“クラタン”だった。だが、慌てているのか、アノネデスはモンスターかネズミと勘違いしているらしく、アタッシュケースに乗ったクラタンから距離を置くように腕を伸ばして引き離す。

 

「あーーーーーーー!!クラターーーーーーンっ!!」

 

―――――ドスーンッ

 

「グッボバア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!!」

 

クラタンを追いかけてきたピーシェは、アノネデスの存在を無視するかのように全力で飛び掛かる。その威力は絶大であり、オカマ口調とは思えない野太い声を発し、そのまま仰向けに倒れ込む。

 

「あぁ!ピーシェとクラタンっ!!」

「わわわ!!だ、ダメでしょ、ピーシェちゃん!!ご、ごめんなさい!!」

「ごめんなさい!!アタシ達が注意していれば…」

『ごめんなさいっ!!』

 

ピーシェの行った行為に、赤の他人に迷惑を掛けてしまった為、ネプギア、ユニ、スミレ、ロム、ラムは頭を下げて謝る。だが、ボディアーマーの御蔭か、アノネデスは一大事には至ってない様子であり、上半身を起こす。

 

「全く、一体どういう仕付けをしてるのよ…ん?ピーシェ?」

 

若干苦しそうに、腹部を抑えながらだが、“ピーシェ”と言う名前にアノネデスが反応する。

 

「アンタの名前…ピーシェって言うの?」

「うん、ぴぃだよっ!!」

 

馬乗りになりながらだが、何かを考えながらピーシェをマジマジと見ている。…自分が持っていたアタッシュケースの中身が散乱している事を忘れているかのように…。

 

「…これって…お姉ちゃん?」

「戦闘データも…?」

 

アタッシュケースが衝撃で開いており、姉であるノワールの写真が写っているのを、ユニは拾い上げる。スミレも遠目ながら、誰かの戦闘データ的なのが混ざっているのも注目している。戦闘データは兎も角拾い上げたその写真から、ユニはある答えに辿り着く。

 

「っ!!アンタなのね、盗撮犯はっ!!」

「えぇ!!」

「Whoops!!お気に入りをプリントして、お守りのように持っていたのが仇に!!…はっ!!」

 

アノネデスが、カメラを仕掛けた人物であり、盗撮犯であると見抜いたユニ。それを確信させるかのように、思わずアノネデスもポロッと口を滑らしてしまった。犯人であると100%確信したユニは、問答無用と言わんばかりに女神化し、アノネデスに向けてX・M・Bの銃口を向ける。

 

「許さない…」

「う………」

「す、凄い殺気…」

 

銃口を顔面に向け、情け無用とも言える程の殺気が出ており、ネプギア達もその気迫に飲まれてしまう。体制も悪い為に、完全に追い込まれた状態であるが、そんな状況に追い打ちをかけるかのように、突如後方の扉が爆発しつつ吹っ飛び、女神化したノワールと、ブラン、ベール。遅れてネプテューヌと永守もその場へと辿り着く。

 

「このオカマっ逃がさないわよ!!…あら、ユニ?」

「お、お姉ちゃん?」

「ああ!!えいえす!!」

「…ピーシェも来てたのか」

 

何方も一報入れてない為に、何でここに居るの?と言った表情をしている。だが、アノネデスからしたら、女神が増えた上にサイドアタックをされている状態。とても逃げるのは出来ないと思ったのだろう、溜息をしながら両手を上げる。

 

「はぁ…、はいはい。降参よ」

「抵抗は、しないのか」

「だって…ねぇ、アタシは戦闘よりも知略派よ?油断したとはいえ、アタシの知略が力で捻じ伏せられちゃったもの。それに、隠し玉も持ってないし、アタシからしたらどう足掻いても絶望よ…」

 

 

 

 

 

【ラステイション:教会・ベランダ】

 

それから数十分後、駆け付けたラステイション警備隊によりアノネデスは連行される。思いっきりコスプレ写真を見てしまった妹達に、“忘れてー!”と叫ぶノワール。おやつの時間も過ぎてしまって元気のないピーシェに、持ってきたプリンを半分こしようと元気づけるネプテューヌ。ハッキングの件は分からないままだが、緊張の糸が切れたような雰囲気になっている。その夕方、ベランダにノワールとユニ、何故か呼び出された永守の姿があった。

 

「…ねぇ、二人共。コスプレなんてする私って、イヤよね…女神らしくない…よね?」

 

今回の件で、自身が隠れてコスプレしていることが、仲間内とは言え明るみになってしまった。コスプレは女神らしくないと思っているのか、思い悩んだ表情をしている。

 

「ユニ…あなたが、コスプレをしている私が嫌なら、私…コスプレを…」

「うぅん…やめないで…」

「…え?」

 

そんな自分は嫌だと思っていたのか、ユニの返答にノワールは驚いた表情をしている。

 

「それってつまり、お姉ちゃんがお仕事に余裕が出来てるって事でしょ?」

「…そうね。最近、時間に余裕が出来てきてるのは確かね」

「それって、アタシがちょっとは役に立ってる事…かな?…なんて、思ったりして」

「うぅん、ちょっとじゃないわよ。すっごく助かってる」

「お姉ちゃん…!!」

「…やめる必要は何処にある。好きなんだろ?隠れてやる程。止めて、ストレスが溜まって、効率が落ちたら元もないだろう」

「なんか、途中に言い方は突っ掛かるけど…そうね…実は、調子に乗って大きめな男装もあるのよ。あなたが良ければ、付き合ってもいい?」

「…時間があれば付き合おう」

 

…と、残りのメンバーは外で覗いており、今後とも変わらない生活を送るのだろうと全員が一安心した所で、今回の件は幕を閉じる形となる。

 

 

 

 

 

「―――――ぃて、退いて、退いてぇ~!!」

『…?』

「(………、この声は…)」

「退いてぇ~~~~~~!!」

 

突如、何処からか声がするが、永守のみ声の主に心当たりがある。そして、徐々にその声は大きくなっていく。

 

「っ!!すまん…!!」

「わぁっ!!」「のわぁっ!!」

 

何かを察知した永守は、一言添えて二人を突き放す。突如の事だったからか、バランスを崩してしまいノワールとユニは尻餅をついてしまう。永守の突如の行動に怒りが込み上がってくるが、次の光景でその感情も吹き飛んでしまう。

 

―――――ドスーンッ

 

「何々!!今の音は!!」

 

本日二度目のドスーンッとなる。強烈な勢いだったのか、振動と砂埃が経ち、異様な光景だったために全員がベランダへと駆け寄ってくる。

 

「い、たぁ~い…」

「ね、ねぷぅ!?だ、誰…?」

「プルルート…俺の方が、遥かに痛いと思うが…」

『…プルルート?』

「ほぇ~?あぁ、えー君!!ごめんねぇ~」

 

そう言いつつ、落ちてきた少女“プルルート”は立ち上がる。

 

「えっとぉ~改めまして。あたし、プルルートって言うのぉ。プラネテューヌの、女神だよぉ」

『………。え、えぇえええええええ!?』

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

【ラステイション:刑務所】

 

ここは、ラステイションが誇る巨大な刑務所。多くの犯罪者が居ながら未だに脱走者は出したことがない事で有名な場所でもある。牢の頑丈さもさることながら、熟練された警備兵にも定評がある。その中に、アノネデスの姿もある。どうやら、ボディスーツに脅威がないと判断したらしく、そのままの恰好で収容されている。…そのスーツの内部から、静かに着信の音がしている。

 

「…もしもし、アタシ。あなたが求めてた例の子、見つけたわよ?態々人工衛星にまで潜ったのに、貧乏くじを引いた気分よ…。えぇ?救助はあの忍者に?…まぁ、いいけど。…え、()()()()()も見つけた?それ、抜け出す事に成功したら、kwsk聞かせてもらおうじゃないの」

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。