超次元ゲイムネプテューヌ~闇夜の円舞曲~   作:KeyMa

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Scene74 帰ってきた男とお騒がせ幼女~BeforeIncident~

 

 

【プラネテューヌ】

 

「あ~んっ!!ん~!!おいひー!!やっぱり、コンパが作った料理は最高だよぉ!!」

「厳選して、ただ挟んだだけですけど、ねぷねぷにそう言って貰えると嬉しいですっ」

 

犯罪組織が壊滅してから一週間が過ぎた。激しい戦いの末に、リーンボックスの廃棄物処理場で起きた事件よりも、無くしたものや失ったものは多い。それでも、獨斗永守という数年だけの付き合いで印象は人それぞれだったが、彼の犠牲もあり各国含め、街全体の被害は最小限に収まり、街並みはたった数日で復旧。失ったシェアも、驚く程に元通りとなった。そして、私が諜報部として活躍しているプラネテューヌも―――――

 

「…本当、ネプ子も変わらないわよね」

「んん、何が?」

「あんな目にもあった上に、色々とあったのに、街並みが数日で戻ったと思ったら、ピクニックって…」

「だからこそだよ!あんな事があったから、思いっきりはじけちゃおうって訳で、毎日がハッピーエブリディなのっ!!」

「全く、意味がわからないわ…」

「あはは…」

 

ネプ子にとって、獨斗永守はどういう存在かまでは分からないけど、断言できるのは大切な仲間、友達であったこと。そんな彼が率先してあの魔剣の糧になって亡くなった。事件解決後、最初こそ落ち込んではいたけど“俺と同じ悲しみを増やさない”…という解釈でいいのか…それを胸に刻んだのか、気が付けばいつも通りのネプ子がそこに居た。ただ、何時も付けているネッグは永守にプレゼントした奴を付けている。恐らくは、その想いを忘れないようにする為なのだろうか。

 

「でもネプ子、結局シェア率は元通りとは言え、下降傾向だってイストワール様に言われたばかりじゃないの。そんな調子で大丈夫なの?」

「大丈夫だよ、問題ない!!」

「お姉ちゃん…なんかそれ、ダメなフラグが…」

「心配ないよ、ネプギア。そんなフラグも含めて、わたしが活躍すれば、シェアなんてちょちょいのチョイだよ!!」

「流石です!…でも、それをする為の考えがあるですか?」

 

コンパがそれを言った瞬間、ネプ子は明後日の方向を見つつ、口笛を吹いて誤魔化す様にしている。ネプギアとコンパは苦笑。私は…分かっていたとはいえ、溜息が出てしまった。諜報部で何とかしていると言っても、女神の活躍でない以上限度もある。それでも、ネプギアがネプ子程ではないにしろ、あの戦いから成長したのがわかるように、最前線に出る事が多くなった。とは言え、シェア自体は微々たるものだけど下降傾向である事に間違いはない。

 

「まぁ、ネプ子らしいっちゃネプ子らしいし、それもこれも、今に始まった事でもないし…」

「何独り言、言ってるの?」

 

―――――ガサガサッ

 

『ん?』

 

そんな事をしていたら、後ろの雑木林から何かが向かってくる音がする。音的にはこっちに走ってきている感じにも聞こえる。

 

「も、モンスターですかっ!?」

「ここは、女神が管理しているエリアですから、モンスターが出る事は無いと思いますが…」

「じゃあ、誰なんだろ」

「分からないわ。でも、モンスターではないはずよ」

 

そうして、念の為に身構えて置くも、雑木林から出てきたそれ(・・)を見て、驚きつつも呆気にとられる。

 

『………』

「…ほぇ?」

『子ども(です)?』

 

そこに現れたのは、黄色いショートヘアの元気そうな子ども。見た目的には5、6歳ぐらいだろうか。…でも、なんでこんな子がこんなところに?

 

「………、あーーーーーーーーーーっ!!!」

「な、なに…この子?」

「さ、さぁ?」

「ねぷてぬっ、ねぷぎゃっ、あいえふっ、こんぱっ!!」

「…え、ええ?」

「だ、だれ…です?」

 

私含めて、混乱してしまう。突然現れた子どもが、教えてもない私達の名前を、完全一致でないとは言え、まるで知っているかのように言ってきた。…その子が叫び声のようなのを聞いたかのように、雑木林の方からもう一つの足音がしてくる。そして、出てきた人物は―――――

 

「およ?えすえす、おそいーっ!!」

「………。これも運命か…」

 

 

 

 

 

『え、永守(えい君)っ!?』

 

 

 

 

 

――――――――――三週間後

 

 

 

 

 

【プラネテューヌ:教会・居間】

 

「まぁ…そっちはそっちで、偉い事に巻き込まれてたのね…」

「そんなところがあるなんて、夢みたいです」

「でも、永守さんの事を考ましたら、あっても可笑しくはないのでしょうか?」

 

ネプテューヌ達がピクニックに行っていた所に出くわして、早三週間が過ぎた。俺が向こうで体験したことを伝えると、驚きはしたものの仰天という程ではない反応だった。それも、俺や転生者という存在がある以上、外の世界があるという事を認めなくてはいけない。そんな感じで受け止めているのだろう。だが、驚くべきことは、俺がネプテューヌ達と出くわした日から、四年程いた神次元に対し、戻ってきた超次元では4日しか経っていないと言う。4日しか経っていない超次元に飛ばされたのか、そもそも時間軸が違うのかもしれない。とは言え、三週間経つが各国に俺が生存しているという情報が流れたには流れたが、市民の反応は驚く程ではなかった。どうも、死亡扱いではなく、行方不明という扱いになっていたらしい。あとは、ピーシェが全員の事を知っているのかというのは、写真を見せたからという事で納得している。実際には子アイエフが勝手に操作して見たという事だが…。

 

「ねぷてぬ、あそんでっ!!」

「もー、ピー子…何度言ったら分かるの?わたしは、ねぷてぬじゃなくてネプテューヌ!それに、今忙しくて手が離せないの!えい君と遊んだら?」

「やーだ!!ねぷてぬとがいいの!!ねぷてぬ、ねぷてぬ、ねぷてぬ!!…むぅー!!」

 

まぁ、文章の通りだが見ての通り、ネプテューヌは仕事でなく絶賛ゲーム中である。そこへ執拗に遊んでと言うピーシェに対し、目の前のゲームに集中したいネプテューヌは、適当に言いふらし、ゲームの画面から目を離さないでいる。…ピーシェの事をピー子というのは、本人に聞かないと分からないが、自分の名前を正しく言ってくれないからだろうか。そんなネプテューヌの態度に、興味を示して欲しいと両手をブンブン上下に動かし、ネプテューヌの名前を呼ぶも相手にされず、ピーシェは顔を膨らませて、ゲーム機に対してやってはいけない禁断の行動に出る。

 

「あっ!!もーっ!勝手に電源抜いちゃだめ…あれ?…ねぷーっ!!」

「ねぷてぬー、あそんでーっ!!」

「ぐふぅ!!」

 

電源を物理的に抜く…と言うよりは電源コードを引きちぎってしまった。新しいコードがない限り、あれはもうただの物置になってしまった。そして、ピーシェは思いっきりネプテューヌにダイブする。その威力は既に俺が知っている…あれは女神やゴ〇スのような鋼の肉体を持っていない限り、あらゆるものがリバースしてしまう。

 

「それにしても、ねぷねぷ…すっかり仲良しさんですねぇ」

「と…言うよりも、翻弄されているって感じがするわ」

「三週間で、あれだけの関係になるんだ。ネプテューヌのいい所だろう」

「あれを、仲が良いと言っていいのか…私、間違ってるのかな」

 

俺も嘗ては部隊として、子どもと接する機会は多くあった。その為のアレコレも叩き込まれているが、ああも直ぐに溶け込むことはなかった。同じ属性だからだろうか…とはいえ、四年ぶりにネプテューヌの騒がしい光景を見ると、懐かしくも忘れていた感が出てくる。向こうが騒がしくなかったと考えれば、そんな考えが出てしまう。

 

「そうそう永守、一応報告しとくけど、諜報部としても調べたんだけど…収穫は無しよ。他の国にも情報提供したんだけど、今だ手掛かりどころか通達も無し」

「それにしても、変ですね。たった一人を探すだけですのに、三週間掛かっても見つからないなんて…」

「そうか…」

 

行方が分からない剣士を捜索すべく、イストワール達に事情を説明し、写真を元に捜索に協力してくれることになった。勿論、自ら足を運んで捜索してみたが収穫がない。確認の為に携帯のアプリとして使っている、超次元マップを確認する。考えられるのは、4カ国の国外にある島々か、土の中に居るか…。

 

「アンタなら大丈夫だろうけど…あんまり、国外の島を捜索しない方がいいわよ?女神の加護がない分、モンスターが住み着いているし、何より未調査の場所もあるから、無暗に足を運ぶのはお勧めしないわ」

「…肝に銘じておこう―――――

「捕まえたっ!!」

「…ぴぃー…ぱーんちっ!!」

「ねぶゔゔゔうう!!!」

 

そんな情報交換をしている最中も、ネプテューヌはピーシェを追いかけていた。そしてようやく、背後から抱き着くように捕まえた…のだが、身体能力の高いピーシェは、地に足を付いていないにも関わらず、身体を反転させつつネプテューヌの顎目掛けて、ストレートともアッパーともとれるスマッシュを放つ。悲痛な声と共に、ネプテューヌは仰向けに倒れ込む。

 

「ああ…何てこと…ピーシェさん!」

「だって、ねぷてぬが…」

「…綺麗に、入ったわね。流石のネプ子もダウンかしら」

「大丈夫そうですよ?流石、ねぷねぷです」

「…あ、ありのまま今起こったことを話すよ…わたしは、後ろから掴んでるから、体制的に高威力の攻撃は出来ないと思ったら、放たれたパンチはバズーカ級だった…」

「長々と解説どうも。だが、流石にやり過ぎだろう」

 

子どもとは言え、流石に限度があると見てピーシェの元へ歩み寄る。

 

「ピーシェ、ネプテューヌに“ごめんなさい”は?」

「…ぴー、わるくないもん。あそんでくれない、ねぷてぬがわるい!!」

「だが、手を出すのはよくないことだ。…仮に、もしプルルートに同じ事やってみろ。相手はどう思う?」

「…わかんない。でも、やだとおもう」

「よっぽどの事がない限り、叩いたり蹴ったりの暴力は良くない。お互い、楽しくなるように行動する。…出来るな?」

「…うん。ぴぃ、やってみる」

「よし、いい子だ。後でねぷのプリンを御馳走しよう」

「え、いいの!!」

「ちょっ、今のは聞き捨てられないよ!!」

 

仕付けのようになってしまうも一応は収まったが、プリン…特にネプのプリンという言葉は聞き捨てられないと飛び跳ねるように起き上がり、俺に向かって指をさしてくる。この小説を読んでくださっている人には説明は不要だろうが、ネプのプリンとは、ネプテューヌが自分用のプリンとして“ネプの”と記してある事以外は至って普通のプリンだ。何故プリンが好きなのかは未だに分からず、自らの拘りなのかプライドなのか知らないが、“ネプの”と書かれたプリンを取られるのは、三度の飯より嫌な事だと言う。しかしながら、ここ三週間の間に、ピーシェはそのプリンが他の普通のプリンよりお気に入りとなっている。それを食べたピーシェに、ネプテューヌがピーシェに対して喧嘩するという大人気ない状態にもなった。プリンの一つや二つで…という訳にはいかないらしい。…でだ、俺が試しに“ネプの”と書いたプリンを渡すも、“違うっ!ねぷてぬのじゃない!!”と言い食べなかった。完璧にコピペ出来てないとはいえ、ピーシェにも何か拘りがあるのか…。

 

「聞き捨てられない以前に、遊んであげなかったのも良くない。何をしたらこうなるとか、俺よりは分かっているはずだろう?」

「う…そ、それは…」

 

と、前回もそうだがここまでがテンプレと化している。ネプテューヌには酷だろうが、第三者からしてみれば、叱った後にネプのプリンで解決できるのだから安いものだろう。…これで、怒られたらプリンが貰えるってのを覚えなければいいが。

 

「それにしても、永守さん変わりましたね」

「…確かに、変わったわね」

「そうですね。前とは変わってるです」

「変わった…?」

「何と言いますか…以前はずっと無表情だったのですが、ピーシェさんを怒っている時は少しばかり起こり顔だったり、優しい顔をしてましたよ?」

 

イストワール達にそんな事を言われ、手を顎に当てつつ、顎を撫でるように手を動かす。数年間、殺伐とした空間で生きてきた身から、日常的な空間へと触れている変化だろう。

 

「…ところで、ネプテューヌ。バルコニーのアレはいいのか?」

「外…?あ、ああああああ!!」

 

ずっとゲームやピーシェの対応に追われていたからか、バルコニーに二人の人物がおり、どういう状況になっているか全く気になっていなかったようだ。でだ、肝心の外はと言うと―――――

 

 

 

 

 

「どうです?ネプギアちゃん」

「はい、すっごく…柔らかいです…」

「ふふ、それはそれは…ついでに、お姉ちゃんって呼んでもいいですのよ?」

「え、そ、それは…私には、お姉ちゃんがいるし…それに、スミレちゃんにも、なんか悪いし…」

「ボクは毎日されてることもあるからいいけど…ベール姉さん、そろそろやめておいた方がいいんじゃ…?」

 

外では、絶賛百合百合な空間が広がっていた。どういう訳か、ネプギアも断っているのだが、普段味わえないその豊満なブツに、満足げな表情をしている。とは言え、スミレと言う義理の妹がいるにも関わらず、更に妹を増やそうと考えているのだろうか。

 

「どうです?永守さんもタッチとかしてみます?あなたでしたら、特別いいですわよ」

「…気持ちだけ受け取っておこう」

「やっぱり、乗ってくれませんね」

「くぉらあああああ!!ベールぅ!うちの妹に、なにしてくれとんじゃ!!」

 

様子見の為に外に出たと思ったら、俺を落とす心算でいるように誘うも丁重にお断りする。そこに、ネプテューヌがまるで怪獣が進軍するような足音でベールの元へ近づいていく。

 

「お、お姉ちゃん!ち、違うの、これは…はぅ…」

「いいじゃありませんの、たまこうして親睦を深めるのも悪くないことですわよ?」

「そう言うが、ここ数日は毎日来ているが…」

「そーだ、そーだ!!」

 

大体一週間ぐらい前から、ベールはプラネテューヌへ毎日のように来ている。本人から特に話を聞いていないから、来ている理由は不明。…が、今日に限っては何か話があるらしく、ベールは訳ありとも言える表情に変わる。

 

「…今日は、あなたを誘いに来ましたのよ?」

「ええ、わ、わたしぃ?まさか、わたしも攻略対象で姉妹丼!?」

「本当にそうなのか?」

「はっきり言いますと、全然違います」

 

自分もぱふぱふの対象と思い込み、何やらうねうねしているがスミレがきっぱりと違うと言う。なにやら本当に訳ありのようだ。一番は事件でない事がいいのだが…。

 

「スミレの言う通りですわ。…ブランから連絡が行ってますわよね?」

「…え?そうだっけ?」

「…それは初耳だ」

「…分かってはいましたが、伝えていませんのね。まぁ、いいですわ。移動用の車は用意していますので、そこで詳しくお話をしますわ」

 

と言いつつ、ベールは何気なくネプギアも一緒に誘うように誘導している。ラステイションに行けば、ユニと会えるから連れて行かない理由はないだろう。すると、部屋からピーシェがテンション高めで出てくる。

 

「なになに、どっかいくの!?」

「うん。ちょっとラステイションまで行くことになったからね。ピーシェはお留守番だよ」

「おるすばん?やだ!!ぴぃも行く!!」

「だーめ!今日は仕事の関係で行くんだよ。遊びにいくんじゃないからね!」

「なんで!ねぷてぬ、ぜんぜんしごとしてないのに!!」

「ねぷっ!!あ、あれは、こういう時の為にやる気を充電してるんだよ!!それを今日発揮するんだから!!」

 

分かり切っていたが、ここ三週間はプラネテューヌに付き添いで回っていただけだから、別の国へ見学とかはさせていない。子どもだけあって冒険心と好奇心があり、自分の目で見に行きたいのだろう。ルウィーのニテールランドのチラシを見たら、行ってみたいと言い出したのも、子ども故の好奇心で動いていると考えられる。

 

「諦めろ、ネプテューヌ。連れて行くしかない」

「ええ!?えい君は何時からピー子の味方になったの!!」

「子どもは、何事にも邪魔されず…という訳ではないが、ある程度自由にして、何がいいのか、何がいけないかを教えなきゃダメだ」

「むぅ~…」

 

どうも、ネプテューヌは自分の意志を尊重したいのか、納得しない様子で見ている。あまり待たされるのも良くないと思い、ベールに向けてアイコンタクトをしてみる。ベールも既に察していたらしく、溜息をしつつネプテューヌの元へ向かう。

 

「ネプテューヌ。ここは永守さんの言う通りにしたほうがいいですわよ?このまま話してても同じことの繰り返しになりますし…それに、待たせてるブランにも申し訳ないですわ」

「べ、ベールまでぇ…」

「ぴぃ、ついてっていいの?」

「勿論ですわ、ピーシェちゃん」

「ほんと!やたぁ!!じゃあじゃあ、ぴぃね―――――」

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

とまぁ、色々とあったが今はベールが用意したリムジンに乗って、ラステイションへ向かっている。向かっている理由としては、事件といえば事件であり大事にはなっていないものの、情報を共有すると約束している為にラステイションへ向かうそうだ。なんでも、ラステイションでは最新のネットワークを構築して、セキュリティ面でも完璧だと言う。それに伴い、情報を共有する為の衛星も稼働中だと言う。ところが、ブランが掴んだ情報によると、ラステイションのサーバーから、その衛星に向けてハッキングをした形跡が見つかったと言う。そこで、ベールに頼み込んで裏取りをしたところ、確かにラステイションから衛星に向けてハッキングされた跡があったと言う。それを報告する為に、ブランはラステイションに向かったと言う。大事ではないにしろ、一大事でもある為四カ国が集まり、犯人が分かれば捕まえようという考えである。話し方によっては、ネプテューヌが大爆笑しかねない。

 

「…で、何故俺が助手席なんだ。普通はベールが座るべきだろう?」

「まぁまぁ、いいじゃありませんの。偶にはトップが座るところに座ってみるのも、悪くはないでしょう?」

「はぁ…心地いい、幸せぇ…」

「流石に、人に見られると恥ずかしいよ、ベール姉さん…あと、ネプギア…正気を取り戻してくれない…?」

 

まぁ、大体は後ろで百合百合したいが為ってのもあるが、俺が百合空間に入るの、それはそれで気まずい。それよりも、一番の心配はネプテューヌとピーシェだ。あの後、一緒に行く事になったはいいが、ピーシェは“ねぷてぬの背中にのっていく!!”と空を飛んでいきたいと言う。流れ的に断れない為、ネプテューヌは女神化してラステイションへと向かったが…ピーシェが大人しくしているとは思えない。まぁ、当の本人も“だいじょーV!お茶の子さいさいだよっ!”と意気込みを語っていた。

 

「…それで、後ろに乗っているのは?」

「ああ、彼女ですか?彼女が、今回ハッキングの裏取りをしてくれましたのよ?」

「挨拶が遅れて、申し訳ありませんビル。わたしは、リーンボックスでプログラムを担当しています、“ツイーゲ”と申しますビル」

「…ビル?」

「ご心配なく。彼女はリーンボックスが誇る“天才プログラマー”ですわ。実績もちゃんとありましてよ?」

 

人は見かけに寄らずとは言うが、流石に語尾のせいで不安が込み上がる。とは言え、ベールが自信満々に言うのだから、腕は確かなのだろう。今はハッキング元を辿って、何処の誰がやったのか、何を閲覧していたのかを調べている。そんなことをしている内に、ラステイションへと入り、教会が見えてきたのだが………

 

「(…?教会に向かって何か落ちてきている…)」

 

教会に向かって、天高くから何かが落ちてきているのが見える。運転手も気づいたみたいだが、何が落ちてきているかはわかってない様子だ。何となく不安もあり予想は付くが、目を凝らしてよく見ると…ネプテューヌだった。何故か女神化が解けていて、尚且つピーシェは凄く楽しそうにしている。ここまで、怖いもの知らずと来たか…。そうして、爆音…という程ではないが、軽い砂埃と共に教会のベランダあたりに落下した。

 

「…落ちたか」

「何か、言いまして?」

「いや、着けばわかる」

『…?』

 

砂埃の置き方からして上手く着地は出来たのだろうが、はっきり言えばお騒がせとしか言いようがない。ネプテューヌは頑丈だから大丈夫だろうが、ピーシェに何かあったら、神次元のイストワールや、プルルートに何言われるか………。

 

 

 

 

 

しかし、この事件を境にまたしても、厄介な事件へと発展してしまう事になろうとは、この時の俺は知る由もなかった―――――

 

 

 

 

 

 


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