超次元ゲイムネプテューヌ~闇夜の円舞曲~   作:KeyMa

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The 6th Encounter ~新たなる野望を抱えし者達編~
Scene73 終わらない宿命の道標~debriefing~


 

 

【???】

 

「(何だ…体が…動かない)」

 

―――――力が欲しいか

 

その言葉が聞こえた瞬間、周囲が全て古ぼけた写真のセピア色に染まっている。そして、写真の如く、俺を含め身動きが取れない状態になっている。それと、その言葉を発した声は、聞き覚えのある声でもある。

 

≪そう力む事はないぞ。力は、欲しくはないのか?≫

「(力とは、どういう意味だ。まさかとは思うが、蒸〇でも出来ると言うのか、ゼロ)」

≪〇着…という訳ではないがな。力というよりは、“闇”の力の方を開放する時だ。平たく言えば、お前がゾディアークとか言ってた形態になる為のリミッターを外す。そうすれば、今お前がしている方法で出来る≫

 

しかし、何故この場に来て行き成りそんな説明をされるのか…。今までテレパシーが出来なかったと言えば説明はつくが、俺がやろうと思えばいつでもできる状態でもあった。恐らくは…と考えた時、察してかゼロが言う。

 

≪今のお前は、セグゥ…女神の力に近い存在だ。そこに闇の力を注ぐ…当然反発し合い、最悪お前の身体は、闇の力で木端微塵になるかもしれない。更に、これは俺とお前の魂が憑依する事…≫

「(…その話し方では、今までの変身も不完全だったと言うのか)」

≪まぁ…そうなるな。元より、この技術はセグゥと編み出した術式だ。今までは、ノーリスクで変身する技術のみが受け継いでいた。だが、この憑依は互いに信頼し合う者の魂と共鳴、お前から生命力を奪いつつ、驚異的な力を流し込める。今のお前は不老に近い存在であっても、俺自身はニグーラ…人間、女神とは反する存在。何が起こるかは分からない≫

 

どうやら、相当なリスクがあるようだ。元より俺が死ねば、俺の身体の中で繋ぎとめている二人も実質死ぬ事になる。それを恐れて今まで隠していたのか、さっきのように力に耐え切れず死んでしまうか…。だが、その力はある意味嘗て道を外した時に、見出せなかった力でもある。今の俺は違う…力を求める為に全てを捨てるのではなく、嘗てのS.T.O.P.時代のように、誰かを守るために行動にでる。

 

≪嘗て、エンデを倒す為の力が欲しかった時とは違うな。自信の為でなく、誰かの為に力を開放する…そんな目をしている。お前なら十分、この力を振るえるだろう。さぁ行くぞ。お前の相棒の為にも、奴を止めるぞ≫

「(…ああ)」

≪ならば…詠唱と共にこの言葉を叫べ―――――≫

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

【???:変質多次元空間】

 

「さぁ、御祈りはしたかな?懺悔はしたかな?さぁ、その女と共にくたばっちゃえっ!!」

 

その言葉と共に、キセイジョウ・レイは永守と剣士に目掛け、剣士が持っていた刀を振り下ろす。そこへ、自分達のクローンよりもそっちを助け出そうと動き出そうとするも、やはり自らのクローンが邪魔をし、助け出しに行けない状態となっている。

 

「…っ!!」

 

だが、レイは振り下ろした刀を、あと数センチで届くという所で止め、距離を置くように離れる。

 

「(な、なんだ…この私が、目も合ってない殺気だけで、殺される感じがした…)」

「お、おい。どうしだんたよアイツ…」

「わ、わからないわよ…一体、何が…?」

「怒りとは違った…説飯難いですわ…」

「…まさか、アタシもブルっちゃうなんて…ねぇ…」

 

その額からは、動揺ともいえる冷や汗を流している。女神もクローンも含め、全員がその形容しがたいと言える状況になっている。そうしている間に、永守は剣士に対し、上着を破り貫かれた部分を強く縛り当て、応急処置を終える。そして、立ち上がると同時に、右腕から黒いオーラが溢れているのが分かる。その状態から、永守はゆっくりと右腕を上げる。

 

「印(サイン)…破壊(ラーク)っ!!」

『っ!?』

 

永守がその言葉を叫び終えると同時に、永守の身体から黒いオーラが光りつつ溢れ出し包み込まれていく。まるで、女神化の際に発する光が、暗黒色となったとも言える。そんな悍ましい変身光景である。その黒い光から現れたのは、永守だと思われる人物が、悪魔のような姿へと変わっていた事。変身後の本人も、それが分かる。以前のように黒い特殊装甲に包まれているのではなく、文字通り“魔人化”したと言える。それを象徴しているのが、側頭部に角が飛び出ている事。その状態を見たクローンは一番の危険と察したのか、本物よりもその状態の永守を先に倒すべく、全員がそっちへ飛んでいく。

 

『なっ!!』

 

そして、その場にいた全員が驚いた。瞬時に両手に刃物を持ち、襲ってきたクローン女神四人に対し、切り裂く動作をしたが、気付けばクローン女神四人は床に伏せており、モンスターがやられた際の結晶片の如く消えていく。本物の女神四人とアノネデスは呆気に取られていたが、キセイジョウ・レイだけはしっかりと何が起きたか見えていた。

 

「(何て奴だ…あの数秒の内に双剣で複製体一人に複数回斬撃を与え、且つその場から動いていないように思える程の速さ…そして、一振り毎に放たれる強い殺気。それが、あの斬撃の強さか…)」

 

クローン女神を一瞬で倒した永守はゆっくりと立ち上がり、標的であるキレイジョウ・レイに向けて右手に持っている双剣の剣先を向ける。

 

「くくっ、“私を殺す”とでも言いたいのかな?自我はあるが、完全に操れてないと見ている…どうかなぁ?」

「………」

 

その問いに対して、永守は言葉を発することもなかった。だが、向けていた剣を降ろして構えなおす。あくまでも、ここで倒すと言う心構えのようだ。

 

「ここで、貴様を倒してもいいが…お互い100%の状態でなければ意味がない。ここは仕方ないけど、本当の私に受け渡すしかないわねぇ」

「何を、言ってるのあなたは…」

「100%じゃねーだと?」

「それに、“本当の私”とは?」

「言った通りよ。んじゃ、そういうことでね」

 

すると、キセイジョウ・レイが突如女神化のように光出し、普段の姿へと戻ると同時に、彼女の身体から漆黒の色に染まったシェアクリスタルのような物体が現れ、キセイジョウ・レイは倒れ、シェアクリスタルは突如現れた亜空間へと飛んでいく。

 

『ナナっ!!』

「っ!!」

 

そして驚くべきことは、その亜空間に逃げたシェアクリスタルと共に、剣士も引っ張られるように吸い込まれてしまった。永守はそのシェアクリスタルを追うべく動き出そうとした時、突如膝をついたと同時に変身が解け何時もの永守が現れるが、四女神からしたら何時もの永守とは言燃えない程、息が上がっている状態だった。その異変に気付いた為に、変身を解いた女神が永守の元へ走っていく。

 

「えー君っ!!」

「ど、どうしたのよ急に!!」

「はぁ…はぁ…、済まない…練習無しで、即興で…やるものじゃないようだ…」

「それを、ぶっつけ本番でやったというの?」

「無茶しすぎですわっ!」

 

奴に言われた通り完全に操れていないのか、強大な力の代償のように驚異的にエネルギーが吸い取られ、スタミナもほとんど残っていない状態へとなってしまった様子だった。息は整ったようにも見えるが、それでも笑っている足に活を入れるかのように、永守は自らの太ももを叩き、立ち上がろうとする。

 

「ちょ、何処へ行くのよっ!」

「はぁ…決まっている。奴を、追いに行く」

「追うって、あの亜空間に…?」

「この中で、奴を追えるのは…国を持っていない俺以外に…誰が居る…?」

「で、でもぉ~…」

『………』

 

四女神も助けには行きたいが、亜空間の先は何処なのか、入ったら戻れるのか、その場合自らの国をどうするかという考えで埋まる。

 

「ちょっと、良いかしらぁ?」

『え…?』

「っ…!」

 

闘いの騒動が収まったからか、今まで隠れていたアノネデスが寄ってきて、永守の首元に注射のようなものを打ち込む。

 

「あ、アンタ…!!」

「て、てめー…!!」

「その注射は…まさか…!!」

「へぇ~…まだ悪さ、するんだぁ…」

 

この土壇場で撃たれた注射に、ノワールはナナ…剣士に投与された物ではないかと動き、それを察したように女神全員が、アノネデスに対し明らかな敵意を見せている。しかし、当の本人は誤解だと言うように慌てている。

 

「ちょ、ちょちょちょ、何か勘違いしてなーい?ほらほら、彼の様子ちゃんとみてよぉ!!」

「え?…だ、大丈夫なの?」

「…毒ではないようだ。何を打ったんだ」

「そうね、分かりやすく言うならエリ〇サーのようなものを、液状にしたものかしらね。まさか、レイちゃんがあんな事になるなんて思ってなかったのよ。罪滅ぼしにはならないだろうし、この状況だと白旗上げる以外思いつかないわ」

 

アノネデスは、倒れているキセイジョウ・レイを見つつ言う。ある時に帰ってきたら、あんな状態になっていたと。そして、未知のサンプルが無くなっていたと…。永守は、十中八九それが原因ではないかと察している。その逃げた球体の先に、そのサンプルもあるのだろうと…あれがなんであれ、またしても見ず知らずの人物…ましてや、剣士に乗り移り、この世の全てを破壊する行為に出る可能性もある。だが、誘うかのように逃げた球体が入ったゲートは開いている。まるで、追えるものなら追ってみろと言わんばかりに…。

 

「う、う~ん…」

「…どうやら、眠り姫が目覚めたようだ」

『ピーシェ(ちゃん)っ!!』

「あっ!!えすえすっ、ぷるるとっ、ノワルっ、ブランっ、べるべるっ!!」

「…はぅっ!!」

「だいじょうぶ~?なんかされてない~?」

「うんっ!!なんか、すこし力がみなぎるっ!!」

「(…なんか捕まる感じだったけど、今なら逃げられそう。そうと決まったらすたこらさっさだわっ!!)」

 

ピーシェの前に全員が集まる。目覚めたピーシェは全員の名前を言うが、約一名は言われたことのない愛称で言われた為に、何かに目覚めそうな勢いで胸を押さえている。全員が安堵するが、永守は力が漲っている事に違和感を覚える。が、今言うべきではないと心の襖に仕舞っておくように、開いた口を閉じる。そんな夢中になっている所、アノネデスは隙を見てその場を立ち去ってしまった。

 

「…あっ!!アイツ…逃げたわね!!」

「ほぇ?あいつ?」

「ほっとけ。お前なら、直ぐ捕まえられるだろう」

 

そう永守は言いつつも開いているゲートに近づき、通貨をゲートへと投げ入れる。その通貨は、ゆっくりと速度を下げつつゆっくりと消えていった。

 

「ここを通るお心算で?」

「ああ。お前達は国が、帰る場所があるだろう。頭が不在の国はあってはならない。だとすると、適正なのは俺だ」

「で、でも…」

「それに、奴は俺と100%の決闘をしたいと言った。少なくとも、奴を近くで感じ取れる場所に居る方がいい」

「えすえす…いっちゃうの?」

「ああ、これは遊びじゃないんだ…」

 

未知の領域に踏み込もうとする永守を、心配そうに見る女神達。しかし、誰がどう止めようと、使命のような何かを背負ったその大きな背中を、止められるとは思えなかった。そんな時、ゲートへ飛び込む前に永守はプルルートに、持っていた無線機を渡す。

 

「これは…?」

「可能性は低いが、それに連絡を取れるなら報告する。…世話になった」

「…うん、ナナちゃんの事、よろしくねぇ~」

「そうね…私にも責任はあるけど、今はあなたに託すわ」

「無事であるように祈ってるわ」

「お気をつけて下さいまし」

 

女神の言葉に対し、永守は振り返りながら親指を立ててグッドサインを送る。内心女神達は“古っ!”と思っていたが、その後ろ姿には自信に満ち溢れているように見えた。そして、永守はゲートの前に一度立ち止まり、深呼吸をして飛び込もうとする。

 

 

 

―――――が、予想もしなかった出来事が起きてしまった。

 

 

 

「………、ぴぃも行くっ!!」

『えっ!?』

 

突如、永守について行った方が、面白いのではないかと言う好奇心が勝ったのかという子ども心が、ピーシェには勝ってしまい永守の元へ勢いよく駆け寄っていく。そして、どういう訳かピーシェはタックルするように飛び込んでくる。永守も、女神達が声を掛けた時に振り返って入るが―――――

 

「ごふっ…!!」

 

時既に遅し。ピーシェのタックルをモロに腹部へと受けつつ、バランスを崩し二人共々ゲートへと入ってしまったのだった。それと同時に、ゲートも閉じてしまうのだった。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

【???】

 

とある闇の空間に、男性と女性の二人がいる。二人の下には魔法陣のようなものが展開されており、その魔法陣の中心に何かの風景が移っており、それを見るように視線を下に向けている。

 

「…なんだか、凄い事になってしまったな、セグゥよ。女神戦争をしていた時とは打って変わって、嵐の前の静けさとも言える」

「………」

 

セグゥという、嘗て女神戦争で自らを犠牲にしつつ、終戦へと導いた今や魂だけの存在の女神…そして、そこに語り掛ける本来は敵だったが、正義に目覚め反逆をしたニグーラのゼロ。その魔法陣には、永守の行動した映像が記録されている。だが、セグゥはどういう訳か、何時も以上に乗り気ではないように見える。

 

「ああ、そうだったな…。相手はお前の………いや、やめておこう。お前の気分が悪くなるだけだからな。その時起きた事、嘗ての名前、その後の行方…」

「いえ、良いんです。それも、これも、全て解決できなかった事で招いた出来事ですし…」

「その代償として、今の女神に…獨斗永守にその件を託してしまった。助言は出来るが、俺達が直接手を出せないのも歯がゆい…」

「それでも、私達は見守り続けましょう。それが、今の定めなのですから」

 

その言葉にゼロは頷き、魔法陣の方へ視線を戻す。この先、ゲイムギョウ界が善へ転がるか悪へ転がるかを見届ける為に…

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

「…ぉ……お…ろぉ…」

「………」

 

聞き覚えのある声による呟きが聞こえた気がするが、内容は全く思い出せない。俺は確か、ピーシェに押されて妙な格好でゲートを潜った…そこまでは覚えている。そして、誰かが読んでいるように聞こえる。

 

「…おきろーっ!!」

「くぁwせdrftgyふじこlp!!」

 

目を開けて起きようと思った瞬間、突如腹部に強烈な打撃を受ける。余りにも無防備だったためにモロに受けてしまう…腹部が貫通して無くなるのではないかと思ったぞ…。

 

「あ、おきたおきたっ!!」

「………、他の人には、しない方がいいぞ」

「ほえ?…あ、あとこれ!!きんぴかっ!!」

 

あまり分かってないピーシェは、手に持っているのを見せてくる。それは、入る前に俺が投げた硬貨だった。となると、誰が入ろうとも始めからここに出るように設定されていたというべきか。池ポチャよりは遥かにいいが、最悪の目覚めである事に変わりはない…それよりも、状況と場所を確認する為に周りを見る。正面には森…だな。後ろを振り返ると、絶景とも言える長めからの街並みが見える。

 

「…プラネ…テューヌ?」

 

そこは、見覚えのある街並みだった。そう、間違いなくプラネテューヌ。新次元ではない、超次元の街並みが見える。…まさかと思うが、奴は―――――

 

「わーいっ!!」

「………」

 

本当、子どもらしく自由だな…と思いつつも、こっちの苦労も分からないだろうと言う思いも出てしまう。とは言え、見たこともない街並みを見て、冒険心や好奇心が出てしまうのは子ども故の何とやら…。兎に角、ピーシェを一人にする訳にはいかず、その後を追いかける。気づけば、周囲に剣士の姿が居ないとなると、あのまま連れ去られたか一人で先に何処かへと行ってしまったのか。

 

「今は、ピーシェを追いかけることが先決だ」

 

俺としても観光という形で街に行って、本当に超次元のプラネテューヌであるか調べたいところもある。何せ、超次元としての俺は自ら魔剣の糧として犠牲になり、死亡扱いになっているはずだから、死者が蘇ったみたいな事になって騒ぎになるのも困る。それを避ける為にも、ネプテューヌやネプギア、諜報部のアイエフあたりに出会って事情を説明したいところでもある。だが、そんな悩みも知るはずのないピーシェは、タタタタタッと言わんばかりにはしゃぎつつ前進していく。…こりゃ、教会に向かう前に誰かと会うな、と若干のあきらめが出てしまう。

 

「その時は、その時考えればいい…しかし、それにしても…」

 

―――――腹が減ってしまった。と言わざるを得ない。あの戦い以前に、出向く時から口にしたのは水と噛んでいたガムぐらいだ。それからどれくらいの時間が経ったのか分からないが、腹がペコちゃん状態だ。とは言え、“腹が減って…死にそうだ”という程ではない。ピーシェは、捕まっている間に食事でもとったのだろう、あまりお腹を空かしているようには見えない。

 

「あーっ!!」

 

そんな事を考えていたら足が遅くなっていたのか、ピーシェの声でハッ正面を向き、目視出来る範囲に居ない事に気づく。そして、ピーシェの声がした方へと足を運ぶ。

 

 

 

『…え?』

 

そこに、ピーシェはいた。そして、見覚えのあるよく知った人物が四人そこに居たのだった。

 

 

 

 

 

 


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