超次元ゲイムネプテューヌ~闇夜の円舞曲~   作:KeyMa

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Scene72 欲望の女神~Edin~

 

 

【エディン:郊外エリア】

 

ラステイションに要請を送り1時間程して、ノワール自慢の試作輸送車が届く。若干狭い3段ベットが両サイドについており、快適と言う程ではないが眠ることは出来そうだ。運転席は大型車両に近い構造で、前輪はタイヤ、後輪はキャタピラ式になっている。試作段階の為か、この車両には兵器が搭載されていない。

 

「くー…すぴー…」

「よくまぁ、眠ってるわ…」

「………」

 

予想外なのはノワールを差し置いて、率先して自ら助手席にプルルートが座ってきた。が、座ってからの予想通りというべきか、ぐっすり眠っている為に、後ろに居るノワールも呆れている。これから向かう未知の領域もあってか、ブラン、ベールも気を休めている雰囲気ではない様子でいる。とは言え、ピーシェを連れ去られたことによる焦りと、キレイジョウ・レイと、操られているとはいえ加担したナナ…剣士に対する怒りが、プルルートが隣に座るまで込みあがっていた。狙ってやったのか分からないが、それの御蔭か殺気立っていた感情が抑え込まれている。プルルートを気にしていると、ネプテューヌ並みに調子が狂う。

 

「ねぇ、エース。聞いていいかしら?」

「…質問には答えるが、その名で呼ぶ必要はないだろう」

「こっちの方が慣れ親しんでるから、そこは仕方ないと思ってね」

 

後ろに居るノワールが質問をしてくる。緊張しているようには見えないから、落ち着く方法を教えてくれと言う訳ではないのだろう。寧ろ、後ろの三人はそれを熟知しているはず。

 

「どうして、あなたは向こうの私達…というより、女神を裏切る前に下準備してから行くって考えはなかったの?」

「その考えも1つの案だった。候補生達を鍛え上げる…だが、奴等の後ろには強大な神が潜んでいる。その神が復活する前に潰す。それが一番打倒だと思った」

「でも、結果は負けたと…」

「ああ、最後の最後で力負けした」

「自信過剰…とも言えますわね」

「…あったかもな」

 

ここで、言葉が切れる…と思ったが“あ、あともう一つ”とノワールが口にする。

 

「ナナとは…どういう関係だったの?」

「………」

「まるで、何時かわたし達が質問してくるのを想定していた発言ね」

「…それで、結局はどのようなご関係で?」

 

そう言われ、俺は深呼吸をするように息を吸い、ゆっくりと吐きつつ答える。

 

「…“友”であり、“戦友”でもある」

「恋人でも…あった?」

 

そのノワールの言葉には、首を横に振る。

 

「互いに右腕と呼ぶ仲であり、相棒と言える存在だ」

「好きとか、そういう感情は無いと言いまして?」

「戦場に恋愛感情など不要…。そもそも、アイツは………ん?」

 

アイツは“男だ”と言おうとした時に正面奥を見ると、国境ぐらいの所にポツンと人影のようなものが見える。

 

「…?急にしかめっ面になって、どうしたのよ。それに何で速度緩めちゃってるの?」

「…奥に誰かいる」

『え?』

 

かなり遠くにいる為に、誰なのか、本当に人なのかという事は判別できない。だが、こんな訳の分からない場所で待ち構えているのであれば、快く出迎えてくれるとは思えない。それこそ、エディンと言う街の警備員という可能性もある。此方としては、女神全員がここに集結しているのはバレたくない。速度を緩めていたのを更に緩め、進むのを停止する。

 

「で、どうする?全員でフルボッコに?」

「…お前達は奥の方で隠れてほしい」

「どうしてですか?わたくし達じゃ役不足と申して?」

「目の前に居る人物が、エディンの関係者だった場合、四カ国が女神不在という情報を流される可能性がある。そして、一斉に攻めていくことも考えられる。それだけは避けたい」

「確かに、あなたのいう事も一理あるけど…もし、あなたがやられたらどうする気なのよ」

「その時は、お前達が不意打ちを出来るような立ち回りをする」

 

と、あまり質問に対しての回答になっていないが、そう言いつつ“待って”という言葉を無視し車両から降り、人影の所まで歩み寄る。全てを飲み込むような闇、月明かりのみが照らす中、近づくにつれて立ち止まっていた人物が何者だったか見えてくる。

 

「ここで待っていれば、何れ奴らが来ると思っていたが、貴様か…」

「お前は…マザコング…」

「…マザコングではない、マジェコンヌだっ!!」

 

進路を妨害していた人物は、神次元のマジェコンヌだった。七賢人と関わりのある人物である以上、女神を置いてきて正解だったか。

 

「ん゙っん゙ー…貴様、こんな所に何用だ」

「ただの、観光だ」

「こんな夜中に?それも、あんな軍用車両のようなのに乗ってきてか…貴様、何か隠しているな?」

「…ここで待機しているということは…この先に七賢人の基地でもあるのか?失敗続きのお前だから、ここを担当という事か」

「余計なお世話だっ!!それに、あんなとこ当に抜けたわっ!!今の私は、女神をこの手で倒す事のみ…世界がどうなろうが、私には関係ないっ!!」

「…そうか」

「しかし、女神ではないにしろ、貴様にも色々とやられたからな…その恨み、ここで晴らしてもいいだろう」

 

奴の迫真とも言える言葉遣いからして、七賢人を裏切って個人的に動いていると見てもいい。だが、演技と言う可能性もあるが、どうも奴は戦う気満々なようだ。こんなところで時間を費やす程暇ではないが…。

 

「止めときな…お前じゃ役不足だ」

「奴らと一緒にするな…私が、ただ単に遊んでいたと思うなよ?はああああ…」

 

と、自信満々に戦闘の構えに入り変身でもするかのように、エネルギーを溜めている。変身されるのは厄介だ。無益な戦いだが、潰しておいた方がいい。

 

―――――プッ

 

「…!!な、なんだ?…この…ねっとりした…っ!!くそ…何処へ…!!」

 

奴が変身してチャージしている最中に、汚いと思うが今まで噛んでいたガムを、含み針の如く奴に向けて放つ。当然汚らしいと拭い捨てるが、その目線を切っている間にテレポートで後ろに回り込み、背中に向けて衝撃波を纏った蹴りを二発、よろめいた所に体を空中に舞いながら回し蹴りを放ち、そのまま地面に叩きつける。

 

「ぐぁっ…!!」

「…喧嘩を売ってきたんだ。ウォーミングアップは無しだ。お前の知っている事、全て洗いざらい話して………ん?」

 

白か黒かはっきりしていない以上、七賢人やその内部情報を知っているのであれば聞き出そうと思ったが、返事がなく近づいてみると、身体を揺すっても白目をむいて完全に気絶している。どうやら、手加減せずに衝撃波を纏った蹴りが予想以上に強く入ってしまったようだ。周りを警戒するも、どうやら本当にマジェコンヌ一人で待っていた様子だ。

 

「(…これでよく、打倒女神と言える。大した目標なこと)」

 

念の為に、マジェコンヌの身体を弄り、手掛かりになるようなもの、追跡装置がないかを探ってみる。…通信機や小型カメラ等の類は見つからない。となると、裏切ったのは強ち嘘ではない可能性が高い。しかし敵とは言え、こんな所に置いておくのもあれだ。吐き捨てた砂泥塗れのガムを銀紙に包み、ポケットに仕舞いつつマジェコンヌを担ぎ上げて車両へと戻る。

 

「戻ったぞ」

「…成程ね、騒がしいと思ったら」

「しっかし、またコイツなの?本当しつこいわね」

「しつこいと嫌われることを、きっと知らないのでしょうね」

「…言っとくが、此奴は今のところ七賢人とは無関係だ」

 

そう言うと、“え、そうなの?”と言いたいのか目を丸くして見ている。まぁ、そういう表情をされても仕方ない事をしてきたのだから、これは当たり前の対応と言うべきか。物騒なのをはぎ取り、縄で締め上げて後部座席に置いておく。

そして、再び運転を再開して暫くしてマジェコンヌが目覚め、女神達が尋問を開始する。一応の情報源なのだが、“知らん”の一点張りが続いていく…が、気が付けば隣にプルルートが居なくなっていて、何時の間にか女神化して、脅迫並みの行動により口を開くも、誘拐事件は七賢人の仕業で、何故指揮を執っていたキセイジョウ・レイがああなってしまったかまでは分からず。

 

「ふ~、すっきりしたぁ」

「…楽しそうで何よりだ」

「あ~でも~、あのオバサンは許せないよねぇ。後は~ナナちゃんも連れ戻さなくちゃね~」

「…あ、…あへ…、あー…」

 

楽しそうに話しかけるプルルートに対し、社内ミラーで後方を確認すると、暫く再起不能なマジェコンヌと、“こっちに被害が来なくてよかった”と言う表情の3人の姿があった。決戦前にこんな状態で大丈夫だろうか…。

 

 

 

と、考えているうちに、明らかに異質な建物が見えてくる。一旦手前で停止し、車両に設備としてあった双眼鏡で、エディン周囲を見渡す。

 

「あれが、エディン?」

「あまり、陽気な場所ではありませんわ」

「なんか~じめじめしてるって感じ~?」

「ハリボテ…では無さそうね。しっかりと作り込まれているわね」

 

ここから見渡す限りでは、警備員は見当たらない。まるでいつでもウェルカムと言わんばかりに、正面扉が開いている。…と言うよりも、まるで研究所としか言いようがない、街と言える建物が存在していない。必要最低限の建物しかないと言った印象だ。

 

「あの大きな建物が教会だろう。…ここから先は歩きだ。俺が、ポイントマンとして行く」

「また一人で…と、言いたいところだけど、データ通りであれば、あなたは一人でも大丈夫そうね」

「ま、何かあったら後ろの私達がいるんだから、問題はないでしょ?」

「サポートは、お任せ下さいまし」

 

軽く頷き、外に出ようとした時、プルルートに裾を引っ張られる。

 

「…どうした」

「あのオバサン、どうするの~?このまま放置~?」

「そうだった…ここに取り残していくのもあれよね」

「…そこらの野に放っておけばいいのでは?」

「野に放つって…」

「くねくね…かしら」

 

これで話は終わりだろうと思い、車両を後にしようとするも、まだ何かあるらしくプルルートが服の裾を放そうとしない。

 

「………?」

「ナナちゃんと、戦うのかなぁ…?」

「あの様子では多分な…」

『………』

「だが、俺はあいつに嘗て助けられた恩がある…今度は、それを返す時だ。ピーシェの事も心配だ。モタモタしている時間はない」

 

その言葉を聞き女神全員が頷き、プルルートも悩みが解消したのか裾から手を放してくれる。

 

 

 

 

 

【エディン:教会内】

 

そして、何事も無く中央の建物へと侵入する。その後ろ直ぐに女神達が着いてくる。入ったはいいが、電力が行き通っていないのか、夜ということも相まって内部は非常に暗い。

 

「うぅ、見えない~」

「これが…省エネって奴かしら?」

「微灯も無しとは…随分と徹底してるわね」

「ですが、内装はしっかりしてますわよ?それとも、キャンドルでも灯して、賛美歌でも歌う心算なのかしら…」

 

と、後ろで会話する声が聞こえる。銃を取り出し、アタッチメントとして装備してあるフラッシュライトを付け、壁にある地図を見る。どうやら、この施設は直ぐ近くの“地下溶岩洞”の熱を利用して電力供給する仕組みのようだ。

 

「奴らが居るとしたら、会議室(ここ)制御室(ここ)か…」

監視室(ここ)も考えられるわよ」

『………』

 

と、意見が合わず何処を捜索しようと、全員が考えていた所、突然全明かりが付き、スピーカーと思われる雑音がし、全員が耳を傾ける。そして、そのスピーカー越しの声には聞き覚えがある。

 

≪アーアー…テステス≫

「…どうやら、隠れる必要も、探す必要はなくなったみたいね」

「ええ、そのようですわね」

≪ここに来るのは分かっていた。まぁ、予定より随分と早いけど、同時に貴様達が統率する世界も変わる時が来たってことね。…大広間に特別空間を用意したわよ。そこで待ってるわ…くくく…はーっはははは!!≫

「如何にも、悪者って感じね」

「場所は分かった。行こう」

 

そう言って、全員で確認した地図を元に大広間へと向かう。

―――――どうやら、本当に出迎える事しか考えていないのか、ここに向かうまで妨害される事は何一つなかった。そして、大広間に着くと、何処かへ飛ばされるのではないかと言う、ポータルが用意されている。

 

「…ご丁寧に、この先に居ると書いている」

「罠…という考えは?」

「罠として使うなら、複数用意するだろう」

「ピーシェちゃん、ナナちゃん、今行くよ~」

 

と、唐突にプルルートがポータルへと駆け込んでいく。“ちょっ!”という形で、それにつられるように女神全員ポータルに入っていく。

 

「………。仲がいい事」

 

そう言いつつ、奴が待ち構え、剣士が居ると思われるポータルへと入る。

 

 

 

 

 

【???:変質多次元空間】

 

ポータルを潜ると、そこは電脳世界に入ったかのような風景が広がっている。全員揃っている事を確認し、道なりに歩く事にする。

 

「どうしたの~?」

「………、いや…」

「これで何回目よ、後ろを振り向くの…」

 

入ってすぐの事だが、後ろから数人の気配を感じている。が、後ろを見ても、女神一行しかいない状態だ。上手く隠れているのか、新型の迷彩でも取り入れているのか…兎に角、今はご丁寧に道なりで、且つ道標が着いている所を進むのみ。

 

暫くそんな状態で進むと、玉座の間とも思える場所に辿り着く。

 

「ようこそ…待っていたわ」

「ノワールちゃーん。来てくれると信じてたわぁ!」

「げっ、またアンタなの…」

「あ~、ピーシェちゃーん!!」

 

そいつ(レイ)は、まるで本当の魔王の如く王座の椅子に座っている。その後ろに、メカニックなアーマーを着込んだ奴が、椅子の横から顔を出し一宇目算にノワールの名を叫ぶ。当の本人は凄く嫌な顔をしている。そして、プルルートもまた玉座の椅子の隣に別の椅子が用意されており、そこにピーシェが肘掛けに体を預けるように寝ている。…だが、その周辺に剣士の姿はいない。

 

「…剣士は…俺の相棒は何処だ」

「ふふっ、そう慌てる必要はないわぁ。直ぐ近くに居るもの」

 

奴の言葉通り次の瞬間、上の方から俺目掛けて誰かが飛び降りてくる。刃物を持って振り下ろしているのを見た為に、咄嗟にローリング回避するも右額の皮一枚掠めてしまう。そして、その相手が振り下ろした刃物は、衝撃で氷のように粉々に砕けていく。

 

『ナナ(ちゃん)っ!!』

 

女神達がそう言い、前を向くと女神化しているナナが、左手に刀を携え佇んでいた。左出て斬られた場所を拭いつつ、立ち上がると同時に剣士も立ち上がり、お互いに顔を見る状態になる。

 

「彼方を…殺す…呪われし…彼方を…」

 

そう言いながら、左手に持っている刀を抜き取り、此方へと向けてくる。流石のその光景に、女神達は女神化済みのようだ。

 

「信じられないけど、こんな日が来るなんてね…でも、戦っては見たかったのよね」

「でもぉ、お友達をこんな状態にする、そこの貴方は…更に許せない存在ねぇ」

「短いとは言え、友達と言えるナナを…テメーって奴は…」

「ええ、それに子どもにも手を出すなんて、流石においたが過ぎますわ」

 

全員が殺気を出している中、奴はそれでも俺と交えた時と同様、微動だにせず座り方を買えただけだ。

 

「ふ~ん…ってか寧ろ、こっちがおいたが過ぎているって感じなんですけどぉ?ああ、あとこっちばかり気にしてると…死ぬよ?ほらぁ」

「………。」

 

奴が後ろを指さすと、ステルス迷彩を外したかのように見覚えのある四人が現れる。

 

『なっ!!』

 

そこには、直ぐ傍に居る女神四人のソックリさんがいる。それも女神化した状態だ。

 

「クローンか」

「そういうことよぉ。力も貴様達と変わらないわぁ」

「でもぉ、触っても微動だにしないからねぇ…やっぱり本物が一番ねぇ」

「…は?」

「…貴様は黙ってろ」

 

アノネデスの余計な一言で約二名が睨み付け、椅子の後ろへ引っ込む。とは言え、後ろから現れた偽女神によって退路は塞がれている。逃げ場無しという所か。

 

「後ろは私達がするわ。あなたは正面をお願い」

「いいのか、そんな簡単に」

「私だって、アイツは許せないけど、自分自身を見ているのもなんだか気持ち悪くてね」

「その件に関しては同感ですわ。感情がない自分を見ているなんて、ただ虚しくなるだけですもの」

「安心しろ。こっちはさっさとぶっ飛ばして、そっちに加わってやるからよ」

「あたしもそっちに加勢はしたいけど、あの木偶の坊が表情を変えるかも、見て見たいものぇ。特別、最初はお願いしちゃおうかしら」

 

…約一名だけ若干違った路線に入っているが、倒す事に関しては共通している。考えてみれば、奴が撃った物が原因で、今の剣士はこうなっている。

 

「開放の仕方を、教えてもらおうか」

「知ってたところで、教える訳ないでしょ~?」

「…意地でも口を割らせる」

 

銃を取り出しキセイジョウ・レイに銃口を合わせ、目標をセンターにしつつ引き金を引く。…が、その瞬間に剣士が持っている刀を振り抜いてきた。

 

「(っ…!かわし切れない…!)」

 

動きは、記憶喪失だった頃の妙なぎこちなさが無く、嘗ての剣士が使っていた劔流に近い剣技を放ってくる。だが、女神化状態だからか、その抜刀速度は想像より早く、のけぞりだけでは避けきれない為、仕方なく銃を受け流しとして使う。

 

―――――銃の先端が、カミソリのように切られてしまった事を除けば、避ける事に成功する。今持ち合わせているのは、貰った銃と、呼び出せる両双剣…貰った銃は試し打ちしていない為に、どういう性能なのか分からない。迂闊に使う訳にはいかない。双剣を呼び出しつつ、右腕を開放し防御の構えを取る。

 

「こんなことをしてまで、お前は何を成し遂げたいんだ?」

「馬鹿な女神達や、愚かな愚民共への復讐よ」

「…それで、この騒ぎか」

「私に従わないムシケラな奴は、生きてく価値なんてないのよ。…ほら、前」

 

奴の“前”と言う台詞に合わせるように、剣士が此方に刀を携えて向かってくる。居合をしてくる刀に対して、両剣モードと双剣モードを屈指し撃ち返してく。それだけでなく、向こうは氷の刃を多数作り出し、高速でそれを飛ばしてくる。最大火力でのパイロキネシスで溶かしつくしていくも、このまま続けば消耗戦になってしまう。兎に角、隙を見て意識を刈り取る打撃技を放つ。それを成すには、やはり変身するしか…―――――

 

 

 

 

グサッ―――――

 

 

 

 

『っ…!!』

「なっ!!」

「同じことの繰り返しって飽きちゃうからね…」

 

何と、刃物の打ち合いの最中に、キセイジョウ・レイが突然剣士を押し出し、俺が向けている刃に無理やり押し付けてきたのだった。間一髪のところで位置をずらして急所は外したが、両剣が腹を貫通してしまっている…。

 

『ナナっ!!』

「剣士っ…!!」

「………、えい…す…申し訳…ありま…せん…」

「………」

「そうそう、女神や愚民だけじゃなく、私を滅ぼそうとした貴様等の力も、許せないから…」

 

勝機に戻ったと思われる剣士は…生きているが、脈が弱くなっている…。

 

「でも、悲しむ必要はないわ。直ぐ、そいつと一緒の場所へ連れてってあげる」

「エース、何やってるの!!」

「おい、悲しんでる場合か!!」

「前、前を向いて下さいましっ!!」

 

 

 

…許せん。こんな自分勝手に動き、気に入らなければ滅する。それが、自分を支えていた市民や仲間であっても。だが、此奴に勝てる力を、今の俺はあるのか?…いや、エンデと同等の非情さを持った女神を野放しには出来ない。ここで、食い止めなければ―――――

 

 

 

 

 

――――――力が…欲しいか…?

 

 

 

 

 

 


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