【リーンボックス教会:執務室】
「ようこそ、おいで下さいましたわ。ささ、お座りになって。」
「………。(相変わらずだな、リーンボックスの教会は…。)」
まず、ここへ来た理由を話さなければならない。前回の子ども達を寝かしつけた後、イストワールが慌てた様子で2点報告があった。最も慌てている理由は1つ目の物で、ある国から宣戦布告のような連絡を受け、自国へ来て欲しいという連絡。ただ、誘拐事件の対策、罠の可能性も含め女神が迂闊に席を外すわけにはいかず、俺がライブカメラを付けた状態で
〔…え?ここが、リーンボックスの…執務室…?〕
〔な…なんなのよ、ここは!!ただの遊び場じゃない!!〕
〔神聖なる女神の仕事場…だというの…?〕
〔ほぇ~、ねぇねぇ、なんであのポスターの男の人ってぇ、服着てないのかなぁ?うわぁ!男の人同士てぇ、キスしようとしてるぅ!!〕
〔えぇ…。〕
〔ちょぉっ!プ、プルルート、見るんじゃないの!!ってかエース、変なの映すな!!〕
ライブカメラ越しにリーンボックスの空間に圧倒される(?)4人の女神の声が、スピーカーから漏れている。その執務室は、ネプテューヌ並みの趣味部屋と化している。充実したゲームの数々、レース用の筐体とも言える運転席付きのコントローラー、この世界では最先端を進んでいるであろう作業用PC…だが一番の問題は趣味としている内容であるBL系のフィギュアや絵が飾られている。ネプテューヌ達なら当たり前の光景なのだが、リーンボックスの女神ベールの私情を知らないのであれば当然の反応と言える。ちなみに、電波の関係上ノワールとブランはプラネテューヌに来ており、ライブカメラの前に居る。ちなみに、プラネテューヌの様子は、リーンボックスが用意した大型TVにライブカメラを出力して映像を出している。
「改めまして…わたくしがリーンボックスの女神、ベールですわ。先立っては正体も明かさず、失礼いたしました。」
「…要件を聞く前に、聞きたことがある。何故、今回のライブカメラの要件を飲んでくれた。」
普通であれば、今回の要件は受け取り難いがOKという返事な事。それなりの理由があって飲んだと考えるのが無難だ。
「その事に関しては、そちらの現状を把握しての決断…という事で宜しくて?」
〔と、言いますと?〕
「此方では被害は少ないですが、誘拐事件が起きています。故に、そのような事で他国のシェアが落ちるような事があっても、素直に喜べませんわ。わたくしの策略でシェアを得る…そうでなくては華がありませんわ。」
〔その余裕が、後であなたの足を引っ張っても知らないわよ?〕
これからライバル関係になるであろう他国に、塩を送るとも言える気遣いという事か。
〔…それで、ルウィーに来てたのは自らスパイ行動を行っていた。…という解釈でいいのかしら?〕
「ええ、ご明察。想定より、頭は悪くないようですのね。これは、少し訂正が必要ですわ。」
〔気に入らねーな…見下した言い方しやがって。〕
要件を聞く予定だったのだが、他国へ自ら入っていた等聞いておかなければならない事が、女神達にあるようだ。(プラネテューヌは除く)
〔詰まる所、自国以外を見聞きした上で踏み切ったというのなら、それなりの自信があるという事よね?〕
「あら、御察しが宜しくて…。わたくし以外の女神は、お頭が弱いと計算していたのですが…。これも訂正しなければなりませんわね…。」
《お頭が弱いのはあの子だけ(よ・だ)!!》
〔おぉ~、綺麗にハモったぁ~。〕
〔何でこういう時に限って、お二人の息はぴったりなんでしょうか。〕
ここのノワールとブランは、元居たところの二人と比べると意気投合しやすい所があるのかもしれないな。漫才している場合ではないのだが。
〔ですが、私達女神4人に対して1人で挑む心算でいるのですか?〕
〔だったら尚更、流石に調子に乗り過ぎてるって事よ…その伸び切った鼻っ柱を叩き折ってやるだけ…!〕
「…と、ルウィーの女神は仰ってるが、そっちは戦争する気などないのだろう?」
「ええ、わたくしは何処ぞの女神と違いまして、野蛮な事はしませんわ。」
〔…んだとゴラァっ!!〕
カメラ越しに殴り掛かろうとするブラン、それをナナが落ち着けと言わんばかりに抑えている。…まぁ、ネプテューヌの話からして、友好条約を結んでない時はこんな感じだったのだろう。
「つまり、戦い以外で決着をつけると言いたいのか。」
「ご名答ですわ。わたくしは、正々堂々と大陸全土のシェアを頂いてしまおうと思ってますの。見て下さいまし。このリーンボックス製の最新ハードを普及させれば、自然と人々の信仰はリーンボックスへと集まる寸法ですわ。」
「…でかいな。」
「大きいだけではありませんのよ?性能だって、何処のハードより数段上と言ってもいいですわ。」
ベールが指を鳴らし、職員がその最新ハードと言うのを持ってくる。中々の大きさでX字の模様が入っている。コントローラーも十字キーがある場所がアナログスティックと言った具合になっている。
「それに、わたくしにはあって、あなた方には足りない
《モノ…?》
そうベールが言うと、ビデオチャットの画面へと目を向ける。まるで何かを見定めているような、嘗め回しているような目をしている。
ぽいーん―――――ぷりんー―――――ぺたーーーん―――――ぺたんこ―――――ガチムーチ―――――
〔むぅ~…じろ~っ…。〕
バイーン!!
〔うわ~っ!?効果音が全然違う~!!〕
…一体何処から突っ込めばいいんだ?さっき聞こえてきた、無料で配布されてそうな効果音はなんだったんだ?あと最初の最後尾にあった効果音は俺か、俺なのか?
「ふむふむ…、人並が二人、平均以下が一人、絶望的なのが一人…。」
〔ほっ…私は人並か…うんうん…。〕
〔えぇ…そこ見てたんですか…。〕
〔て…てめぇ…絶望的ってのはどういうことだコラーっ!!〕
「あらあら、名指しした覚えはありませんが…心当たりがあるという事ですのね。」
〔なっ、ぐっ…ぐぐぐ…!!〕
自ら墓穴を掘りつつ挑発を受け、それに乗っかるブランは女神化をする。…人の教会で何してるんだ。
〔てんめぇえええ!!今からそっち行ってブっ潰してやらぁ!!〕
〔だからって、ここで暴れないで下さいっ!!〕〔わああああっ!!暴れちゃダメだよぉ~!!〕
「ふふっこの様子でしたら、既に白黒はついていると思いまして?」
「まだ始まっていない。白黒つけるのは一足早いのでは?」
「心配ご無用ですわ。全てリサーチした上での勝負ですから、負ける事などありませんわ。」
ベールらしいと言えばそうだが、随分と強気と言うか無謀とも言える。ついでに差し出されたハードは俺への手土産だそうだ。おまけとして、戦闘用特化のコンバットショットガンも手土産と言う。ベールの説明では、ポンプアクションとセミオートを切り替えられると言う。…その割には随分と重量を感じる。
「わたくしからは以上ですわ。ふふっ残り少ない繁栄を、どうぞお楽しみくださいませ。」
そう言って、高笑いをしつつベールは部屋から出ていく。任務や戦いでなければ、俺が出る出番は少なそうだ。
――――――――――
【プラネテューヌ:教会】
「ぐううう…許さねー…ぜってー、あいつだけは許さねー!!」
リーンボックスのライブチャットを終え、何やら色々と手土産を持って帰るエースさんは帰還する事となりました。ベールさんの自信満々な態度にお怒りなブランさんは、その怒りが収まることなく女神化を解除しない様子でいます。帰路の最中のエースさんは一応電話で、ライブチャット後の会話に参加する形になっている。
「でも、まさか真っ当な方法で来るなんてね…。」
「んなもん関係ねー!こっちも正面から受けて立つまでだ!!」
〔同じ土俵で戦うだけだろ。〕
「そういうこったっ!要は向こうのハードが見向きもしねーハードを、こっちが用意して売り捌けばいーだけだろーが!そうと分かったなら、さっさと行動に移さねーとな!!」
そう言って、ブランさんは颯爽に教会から出ていく。先手を取られた以上、長居する理由もありませんから、無難な考えではありますよね。
「まぁ、ブランさんの言う通りですね。解散して、打てる対策をやっておいたほうがいいかと。」
「そうね、急ぐに越したことはないしね。まぁ、こっちとしてもハード性能には自信あるし、販売促進キャンペーンとかやっておかなきゃね。」
「ノワールちゃんも、帰っちゃうのぉ?」
「あなたねぇ…一応言っとくけど、シェアを奪い合う関係には変わりないんだから、もっと緊張感持ちなさいよね。」
そう言ってノワールさんも教会から出て行った。
「ねぇ~ナナちゃん、あたし達も何かした方がいいのかなぁ?」
「ええまぁ、流れ的にはした方がいいとは思いますよ。」
〔…悪いが、今回は女神自身の問題だ。協力はするが支援はしないからな。記憶探しとか。〕
「ほぇ?」
「…あ。」
色々とあって忘れがちですが、私は記憶喪失だった。エースさんに会ってから何か引っかかりがあるものの、記憶の扉を開けるまでにはまだ至っていない状況です。…とはいえ、今は対リーンボックスの事が大事でしょう。
「…分かってますよ。」
「えぇ~、えー君助けてくれないのぉ?」
『………。』
…一週間後―――――
【プラネテューヌ:教会】
ノワールさんとブランさんが、一週間ぶりにプラネテューヌへと赴く。理由はまぁ、経過報告というべきでしょうか。ただ、この場にエースさんはいない。どうも一週間前に渡された銃の性能報告をして欲しいと、リーンボックスに招かれているそうです。
「どう?あなた達の国は…何か変化でもあったの?」
ノワールさんが確認を含め、話を仕切る様に話し出す。その言葉に反応するように、ブランさんは首を横に振る。
「かなりのリーンボックス製のハードが入って来たわ。でも、わたしの所ではシェアの変化はないわ。」
「プラネテューヌも、同じような状況ですね(。・Д・)ゞ」
「ほぇ~、そうなんだぁ~。いーすんいつの間に調べてたのぉ?」
「プルちゃんが遊んでたり、寝ている間に調べたんですよ…。」
「相変わらずなのね、プルルートは…。」
そう言いつつ、自分の所もシェアの変化は見られないとノワールさんは言う。国民から意見やアンケートを集めたところ、ラインナップ不足や故障多発と言ったのが原因と言います。プラネテューヌとルウィーに関しては、大きすぎるや操作する為のコントローラーが持ちにくいとか…言い始めたらきりがありません。ああそうそう、プルちゃんが何気にいーすんと言ったのは、数日前にエースさんが“いーすん”とポツリッと呟いていたのを、プルちゃんが聞いて、“イストワールの名前を略して言うなら”との事。それでプルちゃんはお気に入りになりイストワールさんを“いーすん”と呼ぶようになり、最初は困惑してましたが慣れたようです。ただ、その時のエースさんは時々左手に付けてる白色のネッグリングを見つめていた時と同様、何処か遠くを見ていたような上の空だったような…とプルちゃんは言ってました。
―――――ドドドドドドッ
「な、何の音?」
「外からのようですが…。」
バーンッ―――――
と、外からの足音が扉の前まで近づき、ものすごい勢いと共に見覚えのある人が入ってきました。
「あなた達、よくもこのような卑怯な手を使ってくれましたわね…!!」
「入ってきて、第一声がそれ?」
「わたし達が何をしたと…?」
「…白を切るお心算ですの?そうは、いきませんわよ。これほどの屈辱を味わったのは、生まれて初めてですのよ?」
何か不満な事があったのか、お怒りな表情でリーンボックスの女神様であるベールさんが、私達が集まっているプラネテューヌへと赴いてきました。その後ろから、面倒臭そうな感じでエースさんが入ってきました。
「エースさん。」
「あ~、えー君。どうしたのぉ?」
「…見ての通りだ。国民からのリーンボックスの製品が酷評である事。その事でお怒りのようで…。」
「そういう事ですのよ!それもこれも、あなた方による卑怯なネガティブキャンペーンのせいですわ!そうに違いありませんわ!!」
「めがてぶきゃんぺーん?」
「ネガティブです、プルちゃん…。」
…だそうです。エースさんも情報を集めて“仕方がない”と述べていたのですが聞く耳持たずと言ったところだそうです。おまけに、“あなたはスパイなのですね!”と言われたらしい…。
「あの、横から申し訳ないと思うのですが、私達は何もしませんよ?( ˘•ω•˘ ).。oஇ」
「え…えぇ?で、では、本当に何もしていないと…?わたくしの国では、大人気のハードですのよ?」
「でも、国民からの意見はそうなってるのよ。何もしてなくてね。」
「私とプルちゃんも、特に何も…。」
「わたしからしたら、負け犬の遠吠えにしか聞こえないわ。そっちでは人気だとしても、こっちの大陸ではニーズが合わなかった。それが全てね。」
「性能を求めすぎて、デカくなり過ぎたのも受け入れ難かったのだろう。」
自信たっぷりに言ってた一週間前とは打って変わり、形勢逆転のように言いたいことを言っていく形になっている。ただ、これだけの意見を言っても、どうもその張本人は負けを認めていないみたいです。
「…そ、そうですわ。これは罠ですわ!!わたくしを陥れる為に仕組まれた罠!!そ、それに、ハードだって、胸だって、大きい方がいいに決まってますもの!?」
『………。』
「…てめぇ…遂に胸って単語使いやがったなコノヤロー!!」
負けを認めないベールさんに呆れてしまう中、禁句が混ざっていたせいかブランさんが女神化してしまう。
「表に出やがれ、出なければ今この場で叩き潰してやるっ!!」
「わーわー!うちの教会内で暴れないでください!!(゚□゚;)」
「いいなぁブランちゃんは~、何時でも直ぐ変身して~…。」
「…私は止めませんよ?」
「全く、賑やかすぎる。」
「あ、あなたは変身しちゃダメよ!ナナも、何投げ捨ててるのよ!!」
どんどんカオスな方向へと進む中、ベールさんが何かを決心したかのように口を開く。
「いいですわ、そっちがその気なら決着をつけて差し上げますわ!無論、こんなちんけな場所で決する気はありませんわ。」
「…結局、野蛮な考えになってるな。」
「お、お黙り!!戦いの場は、わたくしが女神として生を受けた神聖な場所とさせていただきます!!」
エースさんから突っ込みを受けたものの、なんだか武力で争うような展開になってしまいました。なんかもう止める為の手段が思いつきません…。
「はっ!てめーのホームグランドに来いってのかよ。偉そーな態度の割に言う事はせけーな。」
「何とでも仰いなさいな。あの場所でなら、わたくしは最大限の力を出す事ができましてよ。それに、そちらは4人で戦ってもいいのですから、ハンデという事でいいですわね?…全身全霊をもってあなた方を叩き潰してあげますわ!!」
「どう考えても、そっちが有利よね。それに、そっちに行く理由が見当たらないんだけど?」
「それならそれで構いませんわよ?ただし、それで来なかったのでしたら、そちらの大陸の女神様は、わたくしを恐れて逃げたという事を広めるだけですわよ。」
そして、勝手に話が進んでいき来る来ないは自由だが、逃げ場を無くすような言い方をする。…あれ、四人?
「終いには挑発かよ…いいぜ、その挑発乗ってやろーじゃねーかっ!!」
「あれ、エースさんは?」
「女神同士の喧嘩だ。元傭兵、現旅人の俺は無関k―――――」
「いいえ、あなたはわたくしと一緒に戦ってもらいますわ。」
私の疑問含め、その言葉に全員が“えっ?”と言いたくなるように固まってしまった。
「…指定するのはいいが、俺はあんたに仕える義理はないが?」
「確かに…でも、あなたはわたくしの国で使用予定の銃を、無断で開封して改造した。つまりは、ライセンス違反にあたりましてよ?それを帳消しにする為にも、手伝ってもらいますわ。」
「あ、あなた、そんな事してた訳?」
「………。」
「黙っているってことは、間違ってねーのか…。」
「…という訳だ。」
「ちょっと、エース。待ちなさい!!」
ブランさんが挑発に乗ってしまい、もう逃げる事は出来なくなってしまったのもありますが、エースさんは今回、敵に回ってしまうみたいです。エースさんが部屋を後にすると同時に“数時間後が楽しみ…待っていますわよ。”とベールさんも言葉を残し部屋を出ていく。
「…行っちゃったぁ~。」
「なんか、ややこしい事になりましたね。」
「もう…話を勝手に決めないで欲しいわ。」
「う…わ、悪かったよ…。」
そう言いつつ、ブランさんは私達に謝罪をする。ですが、場合によりますが、今回は厄介な事になります。買収されたような形で、エースさんがリーンボックス側についたとなると、何をしてくるか分からない。リーンボックスの女神と一緒に戦うのか、私達の情報を売り有利条件を整え得るのか…。
「…そんなの関係ないわ。別に嫌なら来なくていいし、わたし一人でも負けるはずがない。」
「ですが、ここで行かないとデマを流されるのも困りますしね…行かざるを得ませんね。」
「ナナちゃんが行くならぁ、あたしも行く~。」
「…はぁ、一緒に行動するのはアレだけど、今回ばかりはそう言ってられないのかしらね。」
ノワールさんも、渋々ながら同行するようです。とりあえず、イストワールさんに確認をし、留守番は大丈夫と確認したので、場所を調べつつ全員でリーンボックスへ向かう事となります。
――――――――――
【七賢人:会議室】
「うううううっ!!どうしましょう、どうしましょ!!うううううっ!!」
「こいつは、何時も何時もあわあわしておるな…。」
「はぁ…リーンボックスの女神が色々と回ってから、この調子よね…。」
毎度御馴染みの七賢人の会議ではあるが、何時も以上にトップ(?)は慌てている。原因は、南に離れた島であるリーンボックスという国を、ノーマークとして全く調べていなかった上に、三ヵ国に喧嘩を売ってきた事もあり今に至る。
「ううううーー、どんどん、どんどん国も女神も増え、国が4つで女神が…うううううっ!!」
「何度も言うが…鬱陶しんだ、貴様は!少しは落ち着いて居られないのか。あと、うーうー言うのを止めろ!!」
「おおおお、落ち着いて居られる状況ですか!!何か案でもあるのですか!!」
「むむ、珍しく反抗したっちゅ。」
「あらまぁ、レイちゃんも一皮剥けたのねぇ。でもぉ、それを言う相手は選ぶべきよぉ?」
その事を言われ、“え?”という表情をしつつも、直ぐに何か察したかのように怯えた表情になる。
「おい…誰に向かってその言葉を言った…?」
「ひぃっす、すみません…ちょっと気が動転してしまって…その…。」
「だが、今回はわし等が手を出す必要はなかろう。女神同士の潰し合いなのだから、これで何処か潰れてくれたら好都合じゃわい。」
「そうねぇ…リーンボックスの女神は幼女のヨの字もないし、興味ないわ。」
一人を除き、全員が今回は手出し無用という形をとるが、万が一を考えてしまうという思考の為か、またしても“うううううっ!!”と言いつつレイと言われた女性は慌てだす。
「ああ…クソッ。我慢の限界だ…。」
そんな状況にウンザリしたのか、マジェコンヌは立ち上がり部屋を出ようとする。
「あら、マジェちゃん。何処へ行くの?」
「決まっている、リーンボックスだ。そこの女神を潰しに行く。ついでに全員潰してしまえば、そこの女も少しは黙るだろう?」
「ええ?ま、マジェコンヌさん…?」
「ほう、珍しく情でも出たかのぅ?」
「ちょっとちょっと、あなた熱でもあるんじゃないの?」
「遂にオバハンは、思考までも老化してしまったっちゅか?」
…と、ディスられっぷりである。
「ち、違うわ!!何もしない貴様等にウンザリしてたから、ひと暴れしたくなっただけだ!!それとネズミ、一言多いぞ…。」
「ふぅん…それじゃあ、そんな優しいマジェちゃんに、アタシから手助けも込めて、愛のプ・レ・ゼ・ン・ト。」
「ええい、何が優しいだ!!あと、下らないものだったら、その場で壊すぞ。」
「アーさんのパワードスーツはまだだけど、ようやくマジェちゃんの
「…愛しの…彼…?」
全く身に覚えのない愛しの彼に“?”が大量に頭から放出されているような表情をする。“きっと気に入ってくれるわ”と言いつつ、その彼がいる場所へと案内されるマジェコンヌである。そして、その愛しの彼がいる場所へと連れていかれる。
「どぉ?元通りよぉ。」
「…おい。」
そこにあったのは、描写はなかったが嘗て女神によってボッコボコにされつつバラバラになった、ゲーム等(カセット系限定)を複製し、それ以外は破壊するという事に特化しつた人工AI搭載独立戦闘マシン”コピリーエース”である。態々パーツを回収し修復をしたのである。旧型ではあるものの、戦力としては申し分ない為に修復し再び戦地へと投下したいという考えであった。
「貴様、からかってるのか?」
「あら、気に入ってくれないの?元通りにしただけじゃなくて、マジェちゃんやアーさんの戦闘データを最適化して、より女神との戦いにも対応できるようにしたのよ?ついでに、腕に磨きをかけて特別にチューニングしたのよ。」
「そこじゃない…此奴は私の愛しの彼でもなんでもないわっ!!あと、何をチューニングしたと言うんだ。」
「うふふ…それは、稼働してからのお楽しみよ?」
そう言って、パワースーツに身を包んだ男は部屋から出ていく。そして、マジェコンヌは、要らないとはいえ、試運転を任されてしまった為に恐る恐るコピリーエースの電源スイッチを押すのだった。