超次元ゲイムネプテューヌ~闇夜の円舞曲~   作:KeyMa

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Scene53 闇への誘い~dark inside~

 

 

――――――いよいよ、犯罪組織の犯罪神…いや、エンデとの最終決戦が迫ってきた。

 

失敗はデータや資料の通りであれば、明日の作戦の失敗とは、ゲイムギョウ界だけでなく、全人類・宇宙の歴史全てが“無”へと還る。それだけは、阻止しなければならない。それに、それをしなければ、あの人の“死”が無駄になってしまうし、きっと死んでも死にきれない情報となってしまう。そのプレッシャーは、守護女神、その候補生、そして有志による志願兵の皆さん全員が感じているはず。

 

「………。はぁ…。」

 

地の文を読み返す事になるけど、私は計画書を何回も見直している。頭の中に叩きこむというのもあるが、より正確にして尚且つ最適化を…。

 

≪やはり、気になるのだな。≫

≪貴女が、気にする必要はありません。≫

「ゲイムキャラの、皆さん…。」

≪これが、運命(さだめ)だった…と言えば、感情を持つ守護女神達は怒るかもしれませんね。≫

≪ですが、あの男性の言う通り。一人の命より、この正解の運命を救う事こそが、我々の使命…。≫

 

ゲイムキャラさん達のいう事も分からなくもない。ネプテューヌさん達が救われる事、そして、犯罪組織を無くすこと。これが絶対条件ではあった。しかし、時間をかけすぎたのか、エンデというニグーラ、獨斗永守の暴走という第三勢力の存在。これが、ゲイムキャラすらも想定していなかった事態だった事。いえ、ゲイムキャラは惑星チキュウの情報は知っていたが、このような事態になることは全く想定していなかった…。

 

「………。他に、方法は無かったのでしょうか。」

≪時間を掛ければ、恐らくあったでしょう。ですが、今回ばかりはそれすら許してくれなかった…。≫

≪運命とは、時に残酷だな。守護女神とて、どんなに夢見ようが、その運命には逆らえない時があるのだろう。≫

「…私は、そうとは思えません。逆らおうと思えば、その運命に逆らえるのではないでしょうか。」

 

そう言うと、何かを考えるかのようにゲイムキャラさん達は暫く黙り込み、また喋り始める。

 

≪我々は極力、心を表に出さない。そして、最も効率的で被害が最小限である方法を我々は選ぶ。ゲイムギョウ界からしたら、あの男の犠牲はコラテラル・ダメージであり、致し方ない犠牲だったのだろう。≫

「………!?」

≪貴女…その言い方は…。≫

≪だが…あの男は、ゲイムギョウ界に多大な影響を及ぼした。一般市民にも、女神に…それこそ、我々にもだ。不思議とあの男は、死ぬには早すぎる。≫

≪あの人には、まだまだこの世界でやらなければならない事が残っている…そんな気がします。≫

≪イストワール、貴女が悩む必要はありません。≫

≪きっと、この世界が平和になった時、私達はまた各地に眠ることになりますが…女神には奇跡を起こす力を秘めています。それに掛けてみるのもいいかもしれませんね。≫

「皆さん…。」

 

私が思っていた以上に、ゲイムキャラ達にも影響を与えていた。…永守さん。貴方が歩んだ道は、この先も永遠に残されそうです。

 

〔突然と申し訳ないけど、途中から話は聞かせて貰ったよ。〕

「…ケイさん?」

 

通信から、ラステイションの教祖のケイさんの声がした。どうやら、途中から聞きたいことがあったらしく、掛けていたようです。

 

〔作戦に関してだが、此方で最適化を引き受けよう。〕

「それではケイさんに負担が…。」

〔貴女のお陰で、此方はかなり楽をして貰っている。僕一人だけじゃない。ミナも、チカも協力してくれる。幾ら戦闘に出てないとはいえ、貴女ばかりに負担を掛けてはいけない。ゆっくり休んで、明日に備えてくれ。〕

≪…いい教祖達「仲間」を持ったな。大戦時もこのような関係で在れば、変わっていたのかもしれないな。≫

「分かりました。それではケイさん。ミナさんとチカさんにも、よろしくお願いしますと伝えて下さい。」

 

ケイさんや、ミナさん、チカさんに、今回の作戦の最適化を任せ、私は明日に備え眠ることにした。今は、この作戦が成功する為に、皆さんが協力し、全力を出せるように私自身も英気を養わなければ…。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

遂にこの時が来た…翌日の朝、プラネタワー付近にあるヘリポートにわたし達は集まっている。俺達は、獨斗永守の願いを叶えるべく、再びギョウカイ墓場に向かう事になる。普段なら、盛り上げるべくはっちゃけそうなネプテューヌさんも昨日の事があったからか、集中力が高まっている雰囲気を出している。…それにしても、気づけば凄い人数になった。ゲームとしては、パーティーを組むとなると、どうしても溢れちゃうキャラが出る程だ。そして今、ギョウカイ墓場に向けて俺達を乗せている飛空艇、それを守るようにラステイションの高機動戦闘ヘリ5機による通称オメガ部隊、リーンボックスの水空両型戦闘ヘリ2機によるアルファとベータの計7機が周囲を回っている。プラネテューヌとルウィーは大型飛空艇を守る為の、兵士達により守られている。俺達は、既に輸送飛空艇内にある空間移動装置が設置されている部屋に乗り込んでおり、指示を待っている。…因みにだが、5pb.は戦闘に参加できる程の実力は持っているものの、今回はリーンボックスを代表とし、全国でシェアを増加させるべくエールを送る事に専念している。ガストからは、大量の支援物資という名の回復薬などが支給されている。教祖方も、戦闘能力は高いものの、女神不在の指揮をすべく、各教会に待機している。

 

「皆さん、犯罪組織とは恐らく、これが最後の戦いになると思います。…早速ですが、皆さんと協力して考えた作戦をお伝えします。」

「これが終われば、ゲイムギョウ界は平和になるんだね!よーし…!」

「一時的な平和になるかどうか…それは勝ってからじゃないと分からねぇな。まぁ、やるだけの事をやるまでだ。」

「ヨメが、ヨメが一杯だぁ…!アタシ、これなら死んでもいいかもぉ…。」

 

無線からイストワール様の声がして、いよいよ今回の最終作戦を言うようだ。それを聞いて日本一も俄然とやる気が出てきている。そして、周りの緊張感や集中力も最高潮へとなる。約一名は、いつも通り平常運航に近い言葉が漏れている。

 

「確認となってしまいますが、目標は犯罪神であるエンデの討伐です。有志兵は、ギョウカイ墓場から出てくるモンスターを退治。女神率いるギョウカイ墓場突撃部隊は、ギョウカイ墓場の指定範囲に入り次第、高速艇を射出、ギョウカイ墓場に乗り込んで下さい。突入後は、女神様の指示に従ってください。以上です。」

 

ガックンッ!!

 

集中力が高まっている中、“指導者は女神”とも言える内容に周囲は「え?何時もの事?」的な感じのリアクションをする。ネプテューヌさんは、ズサァッというひと昔前のようなリアクションを披露している。最も、現在のギョウカイ墓場の内部は未知数に近いものの、やはり聞きたかったのは、内部で何があったらこうしろみたいな事を期待していた…のかもしれない。

 

「本当に…それで大丈夫なの?」

「そーだよ、いーすん。それって結局いつも通りってことなの?」

「平たく言えばその通りだね。ある程度の事例や見立てはしたけど、それが今回も起きるとは限らない。それに、女神達と協力して平和を手に入れれば、それだけシェアを会得出来る見込みすらある。だが、これが最終決戦に値する程の戦いと言うのを忘れてはいけない。気を引き締めて、そして無事に帰ってくる事。」

 

イストワール様への質問だが、ケイ様の方からその答えが返ってきた。確かに、最前線で戦う女神様を見れば、この世界の兵士達の士気は高まる。そしてそれが、シェアにもなるというイメージか…上っ面だけの士気高揚の戦士が居なければいいが、ここまできてそんな戦士は流石にいないだろう。

 

「ただ、気を付けてほしいのは、シェア広範囲増加装置は今も尚問題なく動いているのは確認している。四カ国のシェアの半分以上を使っているから当たり前と言えば当たり前だね。」

「恐らく、半日程はギョウカイ墓場に居ても、害はないでしょう。ですが、精密機械に近い状態で、耐久性には難があります。」

「女神様ならともかく、一般兵がその範囲から出てしまったら、何が起こるか分かったもんじゃないわ。だから、特別な加護を受けている人以外は、その装置外から出てはいけませんわよ。」

 

シェア広範囲増加装置。以前、ギョウカイ墓場に突入した際に使用された個人用シェア増加装置を改良し、周囲にシェアエナジーを発生させアンチエナジーを弾くだけでなく、半径15m以内に居れば、バフのような効果があるという。見た目は、電波発生装置のようなのを、杖に取り付けたような…ガラクタではないけどそんな感じ。そして、教祖様の言う通りであれば、耐久性に難がありちょっとしたことで壊れる可能性があるという。その装置自体は、回避力の高いケイブが担当となる。そして、徐々にギョウカイ墓場へと近づいていく。

 

≪此方、オメガ02。目標のギョウカイ墓場が見えてきたぞ。≫

「分かりました。…では、突撃隊はギョウカイ墓場への転送を開始に備えて、空間移動装置に入って下さい。」

 

装置を操作する職員が、オメガ部隊の指示を聞き空間移動装置を起動させる。

 

「空間移動装置、起動。システム、オールグリーン。座標、準備完了。」

 

職員が装置の安全を確認、全てが問題ない事を言い装置へ入るよう誘導する。

 

≪…まて、オメガ部隊。此方のレーダーにギョウカイ墓場から、此方に何かが向かってくるぞ…それもかなりの数だ!!≫

 

リーンボックスのベータ機からの無線により、どうやら此方に何かが…恐らく敵性勢力が悪あがきの為に向かってきているのだろう。それを小型艇に乗っている俺達にも、何が来ているのかを確認する為、映像が映し出されてくる。

 

「な、なんだ…あれは…。」

「ちょっと、ちょっとぉ!ここにきて新種のモンスター!?ノワール、何アレ!!」

「わ、私に聞かないでよ、ネプテューヌ!!」

 

ギョウカイ墓場から次々と現れるクジラ型とワイバーン型のモンスター。そして、まるでエイリアンに侵食されたような戦闘ヘリが向かってくる。無線越しにも慌てている声が響いてくる。どう考えても、あの戦闘ヘリだけは、出てくるゲームを間違えていると言わざるを得ない、場違いともいえる異質な感覚を漂わせている。

 

≪怯むな!ここで退いたら、全てが台無しになるんだぞ!迎え撃て!!≫

 

そして、オメガ部隊による先制攻撃によって、制空権争いともいえる空中戦が始まる。エイリアン型戦闘ヘリは、まさに戦闘ヘリの如く機銃とミサイルを備えていて、それを使ってきている。ワイバーンは炎の玉、クジラは水の玉を放ちつつ体当たりをしてくる。画面越しからでもわかるが、数では圧倒的に不利な状況もオメガ部隊による見事な連携と、アルファ・ベータ部隊の超火力によって互角にやり合っていると言った感じだ。

 

「この距離でなら…。皆様、装置へ乗り込んで下さい。」

 

そして、ギョウカイ墓場に向かう為の転送有効範囲に突入したからか、転送装置に入るように職員は促す。…するのはいいのだが…。

 

「わわわわ!空飛ぶ肉まんが…!!」

「はうぅ!ねぷねぷ…あ、暴れないでで下さい…。」

「う、うぅ…せ、狭いぃいい…。」

「申し訳ありません。もう少し…いえ、一人分開けれるようお願いします。」

「ひ、一人分って…無茶言うわね…。」

「ちょ、べ、ベール姉さん…!!」

「いいじゃありませんの。こうすれば、スペースは空きますわよ。」

「そこ、百合ってんじゃないわよ!!」

「ね、ネプギア…押し付けないでよ…。」

「ご、ごめんね…!わ、悪気があるわけじゃ…。」

「く、苦しい。(あわわ)」

「は、早く、うごかしなさいよ!」

「そ、装置が壊れないか、心配なのだけれど…。」

 

…この有様である。吹き出しに出てない人物もいるが、それでも装置に入るにはキャパシティオーバーと言っていい程ギュウギュウに詰まっている。

 

「ジンさんも、移動するなら入って下さい。」

「………。えぇ…。」

 

このギュウギュウの中に野郎が一人入れっていうのか。人によっては幸せなんだろうが、これはこれで命がけだぞ。ええぃ、ままよ!!傍から見れば、電車の扉にはみ出しながら入ってるおっさんのような感じだ。

 

「…よし、OKです!転送開始します!3・2・1―――――」

 

 

 

 

 

ドゴォオオオオオ―――――

 

船内から爆発が起きたのか、飛空艇全体が揺れる。

 

「な、なんだ…!?」

≪せ、船内に敵性勢力を確認!左エンジンが大破!右エンジンがやられると墜落s―――――≫

「ど、どうしました!応答してください!!」

 

無線から反応が無くなり、雑音のみが垂れ流れる。

 

「…チッ。」

「じ、ジン!どこ行くの!!」

「決まってる。右エンジンを死守しに行く!終わったらすぐ合流する。テメェらは先に行ってろ!!」

 

そういい残し、俺は颯爽と部屋から飛び出る。

 

「待ってよ!アタシも戦うよ!!」

「日本一。なんでこっちに来やがった…!」

「ジン一人だと、無茶しそうだからね!」

「…勝手にしろ。」

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

ジン君と日本一ちゃんが部屋を飛び出し、追いかけようと思ったが、優先すべきは女神…いや、女神候補生として、ゲイムギョウ界の脅威を取り除く事。それが、今ボクに出来る事。何人か追いかけようとしたのもいたけど、イストワール様からの制止もあり、ボク達は転送装置に収まり、そして…ギョウカイ墓場へ、僕は三度目となる。

 

「スミレ、大丈夫?」

「ベール姉さんこそ、大丈夫なの?」

「心配ご無用、ですわよ。貴女がいるんですもの。」

「(それ、チカ姉さんの前で言ったら大騒ぎしそう…。)」

 

そんな事よりも、今は集中しなければ…そう思い、顔を一度叩く。そして、周囲を見渡すと、何か心配事があるかのような表情のネプギアがいた。

 

「あ、スミレちゃん?」

「…どうしたの?浮かない顔して。」

「ああ、うん。えっとね…。」

 

どうやら、昨日の寝る前の出来事で悩んでいたと言う。確かに、大切な人までかは分からないけど、それなりの時間を過ごした人があんな形でいなくなったのだから、気が落ち込むかと思っていたが、ネプテューヌさんは平常運航を保っている。ただ、なんとなく…どこかから元気なんじゃないかと心配している。

 

スパァンッ――――――

 

「あいたぁ!!ちょ、ユニちゃん、急に何!?」

「アンタねぇ、一人で悩む必要はないんじゃないの?」

 

話を聞いていたようで、ユニがネプギアの背中を(思いっきり)叩く。それにつられ、ロムとラムもこっちに集まってくる、。

 

「そーそー!いまは、わたし達という頼れる存在がいるじゃない!」

「ネプギアちゃん、一人じゃない。(うんうん)」

「そういう事。今はボクだって、皆よりは劣ってるけど、出来ることはやるよ。それに…。」

 

そう言いつつ、皆にネプテューヌさんの方を見るように促すと、ノワールさんやブラン、ベール姉さんだけじゃなく、ブロッコリーさんやMAGES.さんと言ったメンバーがネプテューヌさんに話しかけている。

 

「…よし、装置は無事動いたわ。いつでも行けるわよ。」

 

ケイブさんが、持っている装置の準備が出来たという。それを聞き、ボクを含めた全員が頷く。再び、このギョウカイ墓場の深みへと足を踏み入れる事となる。

 

 

 

 

 

 


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