Scene52 傷跡~LostHappyEnd~
プラネテューヌ墓地で、劇的な出来事が起きてから少し経つ。その墓地に居る女神含む人々が、ある墓に花を手向けている。その墓には、プラネテューヌの女神が、信頼していた男に渡した白色のバンドが添えてある。
突如とゲイムギョウ界に舞い降りた男“獨斗永守”。何事に対しても、勇敢に、孤高に困難に立ち向かい、時には地獄の火山の噴火の如く戦い、時には平原を吹き抜ける一陣の風のように駆け抜け、最後の瞬間まで自らの信念を曲げず、命の炎を燃やしここに眠る。
「あれは、禁断の秘術ですの。禁術文庫114号の514ページに記されていたものですの。」
その本に記されていた禁術は、互いに信頼し合える善と悪の、魂の共鳴が必須。そして互いの血と膨大なエネルギーと、多くの人々の魂を捧げ、最も信頼し合う悪の魂を生贄にすることで、その対象の武器に全ての闇の眷属を、魂ごと滅ぼす力を秘める事が出来る。だが、通常の武器、女神の武器に宿したところで、その力に耐え切れず使えないまま壊れてしまうという。魔剣ゲハバーン等の闇の剣であれば、数日だけ耐えられるという。
「今、その魔剣は、真の闇を呪う剣となったですの。…魔剣ゲハバーンと言うよりは、邪聖剣ゲハバーンですの。」
「うん、わかるよその意味。えい君の意志だけじゃない。多くの人達が望んだ闇を憎しみの力…滅びの力が…。」
ネプテューヌだけでなく、その場にいる全員がゲハバーンから漂ってくる“喜怒哀楽愛憎恐”と様々な感情とも言えるエネルギーが溢れているのを感じている。
「済まなかった、女神達よ…こんな形で協力する事に―――――」
「仕方のない事だったんだよ。」
「ね、ネプギア…アンタ…。」
「永守さんが望んだ道だから、誰の責任でもないと思う。永守さんの最後の願いを叶える事、それが、私達女神として…いえ、私達をここまで支えてくれた人への、恩返しになるかと…。」
「呪われた運命、因果を崩す…。そして、アイツの宿敵を倒す事。それが、アイツが叶えたかった事ね。」
アイエフが言う事に、ネプギアは頷く。魔剣ゲハバーンによって繰り返された犯罪組織との、過去の女神の宿命。それを、この世代で終わらせる事。それだけではなく、永守の宿敵であるニグーラを女神の手で倒す事―――――
「やっぱり…。このような結果になってしまわれたのですね。」
『い、いーすん(さん)(イストワール)?』
全員が驚くのも無理はない。プラネテューヌ教会に待機していたイストワールが、この墓地へやってきたのだ。そして、今まで起きていた事を見据えているかのような状態である。
「彼は…任務を、自ら付けた償いを受ける為、全うしたのですね…。」
「イストワール、どういうことか説明してくれるかしら?」
「ええ、全てお話する心算です。皆さん、プラネテューヌの教会へ…。永守さんのお願いです、あなた方にも知る権利があります。」
「敵であるオイラ達にっちゅか?…まぁ兄貴のお願いなら、行くしかないっちゅ。」
「アクク、吾輩達の知らない所で何をやっていたか、知る権利があると…。」
「…あんなもん見せられて、黙ってられるかってんだ。アタイも知らねぇ事をやってたんだ。ここまでやらかして、下らねぇ事だったら死んでも承知しねぇよ。」
―――――――――――
【プラネテューヌ:協会】
墓地に居た全員が入っても、余裕がある大部屋。そこには、教員だけでなく、犯罪組織マジェコンヌの永守の配下に居た人や医師、研究者達もいた。そして、その医師達から資料を渡され、目を通すこととなる。普段、このようなのを嫌がるネプテューヌも、目を通している。
「ゾディアーク…計画…。」
ジンが資料に目を通し、ある言葉を見てボソッと言う。その資料には、永守の身体の経過診断、永守や不覚にも一時的ながら、ジンも暴走という形で呪いが表面化した際の、呪われた力。ニグーラの第二形態の如く、人間の第六感にあたるのをニグーラの力、又はアンチエナジーを利用し表面化することで、女神に匹敵する強靭な力と半不老の力を手に入れる事が出来る、と資料には書いてある。だが、これを通常の人間が利用するには、闇の力に対抗しゆる強い精神力か、相殺する為に女神の力を利用するという二つがある。前者は、精神力に自信のある被験者達を利用するも、次第に暴走又は殺意に飲まれる結果となる。後者は、ゾディアーク化自体は上手くいくものの、拒絶反応が起きそのまま息絶える者が続出してしまった。有志もいたとはいえ、64人が死亡、12人が情緒不安定又は精神崩壊、植物人間となってしまう。
「信じられない…こんな事が…。」
「あ…アンタ達、こんな事してタダで済むと思ってないでしょうね!!」
「ユニ!落ち着きなさい!!」
そのあまりにも非人道的な行為に、ユニはマジェコンヌの医師、研究者に向けて銃を構えてしまうも、ノワールがそれを制止する。“憎いけど、撃ったところで何も変わらない”と言い、悔しながら銃を下ろす。
「非人道的なことは承知の上です。これは、私達の好奇心による独断です。ハーミット様…いえ、獨斗様はこの計画には反対でした。“この呪われた力は広めてはならない。”と…。」
それは、好奇心もあるが、もしこの世から女神が全員いなくなり、その悪に対抗しうる手段が確立すれば、少なからず次の世代の女神が誕生するまでの時間稼ぎが出来ると。そう踏んで医師や研究者達は成果を上げようとするも、どれもが満足する結果どころか、死者が出るばかりと
「この力、何処か似てるわ…。」
「似てる?ブラン、何か知ってまして?」
ブランは語りだす。ある大戦後に、アンチエナジーと呪われた魂を利用し、ラステイションのある魔石に、ゴーレムだけでなく、デーモンや妖怪と言った悪魔を象り、仮初の命を吹き込むことで、自分だけに従える、従順な悪魔を作り出す秘術が、ルウィーのおとぎ話に存在すると言う。その秘術を、まるで人間に移したかのような…とブランは言う。
「結論から言えば、ブランさんの言う通り…悪魔の力を人に移して、呼び覚ますようなものですね。」
そして、この技法もニグーラ同様、記憶からも抹消され封印されることとなる。問題はその封印先だ。その封印先は、仮初として作られた“惑星チキュウ”であり、永守が居た場所でもある。負のものはそこに放りすれてばいい、まさにゴミ捨て場のように扱われていた。だが、時が経つことに、その惑星の事も記憶から、歴史から消えてしまう。嘗ての女神達は、果たしてこれを望んでいたかは分からないが、結果として獨斗永守と言う異分子がゲイムギョウ界に紛れ込むこととなり、ジンの記憶しているシナリオから大きく外れてしまう結果となる。
そしてもう一つ、獨斗永守の経過診察。はゲイムギョウ界の人と変わらないが、ある技術…封印されたニグーラ、ゲイムギョウ界の技術を、完全なる偶然とはいえ、発見してしまい利用し体内の精神力を具現化するという、魔法とは違った力を手に入れており、彼が生まれる頃には、誰もがその力を体内に宿していることとなる。そして、それは同時にニグーラの復活を意味し、彼の平穏な生活はそれ以降なく戦いにのみ人生を捧げ、更に3年前の出来事により、永守は全てが中途半端となった人間、ニグーラと融合し、悪魔のような右腕とゾディアーク化を持つ第四のニグーラであり、女神の加護を受けた第五の女神ともいえる
「(そんな…どうして…。)」
その経過診断の最後に日記的な形でメッセージがある。ニグーラ―を完全に滅ぼした後、獨斗永守は“死”を選んでいた事が綴られている―――――
“元あった世界が崩壊した事を受けたと同時に、このゲイムギョウ界に闇を齎した責任。そして、自らもニグーラに成り下がった。この呪われた連鎖を防ぐには、異分子を全て除かなければならない。1ではなく、0にする為、世界が本当の平和が訪れた時、自分のような戦士は不要な塵と同じ存在になる。そして、願わくは女神の為になる死を選ぶ。その為には、女神の味方を装っていようが、憎まれる事を躊躇なくする。”
―――――どんな形で在れとも、死ぬ事を選んでいたと綴られている。そして、一向は全てに目を通し終える。
「そして、永守さんがいっていたエンデが、完全体になるまで2日…つまり、明日その剣を持って出撃する事になります。」
「こ…これって…(そわそわ)。」
「いーすんさん、これ…。」
「よくわからない漢字とかもあるけど、何でこんなに知ってるのよ?」
「………。」
「もしかして、これを知ってしまったら、アタシ達の行動に支障が出るとでも?」
「そ、それは…。」
女神候補生達が、イストワールに食い下がる。スミレも加担するかと思ったが、ジンに止められる。加わったところで、何も変わらないと…そんな視線を感じとり食い下がる。
「イストワール…どうして、ここまで知っていながら、ユニ達にこの事を報告しなかったのかしら?」
「まるで、感情論に近いですわ。納得しろと言われても、これは難しい気がしますわ。」
「そうね…これだけじゃ、納得いかないわ。」
その勢いに乗るように、疑問を解消すべくノワールを始め、ベール、ブランもイストワールに問いかける。そして、その空間がどよめく――――――
「やめてよ、皆!!」
「ね、ネプテューヌ…(お、お姉ちゃん…)?」
イストワールに問い詰めていく全員に対して、ネプテューヌが急に怒鳴る。
「何で止めるのよ。まさか、これで納得できたとでもいうの?」
「確かに…わたしだってこれで納得は出来ないよ。でも、今ここで言い争うべきじゃないよ。今、わたし達に出来る事。えい君の宿敵、エンデを倒す事…ううん、呪われた運命、不幸な人達を増やさない事。それが、えい君が最後のお願い。それを叶えることが、えい君への感謝になるんじゃないかな…。」
「ネプテューヌさん…。」
「いーすん、わたしは大丈夫だよ。うん…!だから、何すればいいかな?」
「………。はい、兎に角、皆さんは明日に備えて、英気を養って頂くことです。一度、各国に戻って準備をして下さい。」
――――――――――
【ラステイション:教会】
「ノワール…本当に休まなくて大丈夫なのかい?」
あの後、自国へと帰るよう促され、一時的に全員帰還することとなる。ラステイションに、ブラックハートことノワールが帰ってきたことは、瞬く間に広まる。それにより、更に士気が上がるのが分かり、犯罪組織の残党も何かを察したかのように自首する動きが見られる。
「まぁ、貴女がやってくれてるのだから、事務での間違いはないわよね?それでも、自分の目で見て起きたいのよ。」
「でも、本当に大丈夫なのかい?幾ら、支援で受けたシェアクリスタルで回復したとは言え、明日は重要な戦いが待っている。」
「そうだよ、お姉ちゃん。大丈夫とは言え、やっぱり明日に備えるべきじゃないの?それに―――――」
「それ以上は言わないで。私がやりたいからやってるの。」
その言葉を最後に、ケイとユニは何かを察したのか、互いに目を合わせ頷き部屋を出ることにした。
「………。」
「ユニ。やはり、君も拭い切れなんだね。」
「え…?」
「彼…獨斗永守の事を、後悔しているって事だよ。」
その名を聞き、ユニは一瞬ムッっとした感じになるも、少し俯いた状態で深呼吸をする。
「そうね…忘れろって言う方が難しいわね。表には出してなかったけど、お姉ちゃんは彼の事気にしてたし、アタシだって色々と教わりたい事もあったし、恩もある。」
ケイは魔剣のデータを見て、“これ程の力を目の前にしたのは初めてだ”という程、強力なものだと言う。だが、そんなケイでも、気にかかる事があると言う。
「…ボクだって気にしてるんだ。ラステイションにも結構貢献していたし、形は違えど、一度ならず二度もノワールを助ける事に手を貸した。それだけじゃない。彼に憧れる人やファンだっているんだ。全く、彼は最後の最後で、大きな穴を作ってくれたと思うよ。」
「大きな、穴…?」
「今のノワールがそうだろうね。今見ればわかるけど、余り見るのはお勧めしないね。ボクから言えるのは、暫く一人にしておくことだよ。彼女のプライドの事を思うなら…。」
そう言い残しつつ、ケイは持ち場に戻るように歩いて行く。
「見ない方が…いい…?」
最後に何か言ったようにも聞こえたが、それを聞き取ることは出来ずやはり気になる為、ユニは執務室前まで向かう。特に何も変わらない執務室の扉
「………?」
…だが、何故だか何時もの扉とは思えない雰囲気がするのを感じるのだった。扉を開けようと思ったが、扉を開ける前に耳を開けて聞いてみる事にした。
「(え…泣いてる…?)」
完全に聞こえはしなかったが、啜り泣くような、そんなのを我慢するような声が、聞こえたような気がする。
「(あ、あれ…?目から…。おかしいな…止まってよ…。)」
突然と体から湧き上がる“悲しい”感情に戸惑いながらも、涙を抑えようとする。だが、その感情を押させることが出来ず、声を抑えて大粒の涙を流すのだった。
守るべき存在の人を、自分達の手で殺めてしまった罪悪感を抱えながら…。
――――――――――
【ルウィー:教会】
日が沈む光、夕焼けが執務室を照らしている。その執務室で、ブランは今までの資料や明日に備えての作戦資料に目を通している。ロムとラムの二人が、最初こそ、わたしが負けたと聞いた時は怒りと悲しみによって、自暴自棄になったと言うが、今や討伐クエストでならBクラスでも難なく熟せるほどに成長していると確信する。
「(二人とも、随分と立派になってるじゃない。)」
やはり、内心まだまだ子どもだと思っている部分もあり、過保護になっている所もあり、徐々にシェアが落ちているのではないかと思っていたが、教祖のミナの手助けもあってか、シェアの影響は犯罪組織に奪われた分以外は、なんら変わりはないという。そんな資料にも目を通しつつ、お寺ビューを使い浮上したギョウカイ墓場の監視をもしている。3年の間で、送信した写真は直ぐに最適化され全教会に送信されるシステムへと昇格していた。
「………。これが、今のエンデね…。3年前とは見る影も無いわね。」
嘗てマジェコンヌによって捕まった時に手を組んでいた時の描写と見比べても、既に見る影もない程に化け物へと変化しているのを確認する。まるでラスボスの第一形態後ともいえる姿になっている。Gなんちゃらの第四形態に比べればまだマシなのか、見た目的にも…。
「二人の様子を見て、今日は休もう。」
そう呟きながら席を立ち、隣のロムとラムの部屋へと向かう。
「…?どうしたの、ミナ。」
「あ…ブラン様。」
ロムとラムの部屋の前に行くと、扉の前にミナが心配そうに立っていたのだった。話を聞くと、明かりはついており気配があり中に居るのは確かだが、声を掛けても返事がないらしい。ミナの性格からか、どうも開けるのに戸惑ってしまっているようだ。“まぁ…”と同意を求めている感じでため息をしつつ、ブランは扉をノックして中に入る。
「ロム、ラム…?」
「本を、読んでいますね…?」
その扉を開ける音に反応するかのように、二人はブランの方へ振り向く。しかし、二人の顔を見てブランとミナは驚いてしまう。
「あ…(くしくし)。」
「お姉ちゃん…ミナちゃん…。」
魔導書の勉強をしているのか、確かに本を読んでいたのだろう。しかし、二人の表情は何処か悲しそうな顔をしている。ロムに至っては涙目になっているのだった。驚いたと同時に、二人の元へ駆け寄る。
「ロム、ラム!どうしたの…!?」
「お二人共、何がありました!?」
「あのね…本を読めば、この気持ち、抑えられるかなって…。(グスンッ)」
「でもでも、なんでだろ…本をいっぱい読んでも、ロムちゃんと、同じ気持ちが、収まらないよ…。」
そして、その感情を抑えきれなくなったのか、ロムとラムはブランとミナにしがみ付いて大泣きしてしまう。無理もない…今まで、職員やハンターが重症を負ったりするも、亡くなったという報告はそこまで無い。とは言え、流石に今回の騒動では、犯罪組織に所属していたのが大半亡くなっているものの、ルウィー以外でも戦死した人々はいる。それでも、その中に、友人と言える人は存在していない。だが、二人は直接手を汚してないとはいえ、友人…兄のような存在である“獨斗永守”を殺める事に協力してしまった。そんな経験をしたことがないからか、複雑な感情に戸惑いもあり、悲しみもあるのだろう。
「(永守…貴方の想いは確かに受け取ったけど、その分の傷跡…代償は重すぎるわ…。そう、貴方のように、感情を抑え込む術がない人にとっては…。)」
薄々は感じていたが、獨斗は時々ロボットのように、“このような事をすれば、人はこんな反応をするだろう。”というのがあった。全ては感情を制御する術があるからこそ成せるが、残された者の事は…特に“感情を持つわたし達”には数字だけでは出来ないことがある…それを痛感しつつ、二人を強く抱きしめるのだった。
――――――――――
「………。何時ものベール姉さんじゃないね。」
「そう思う?わたくしも、何時ものお姉さまとは違うと思ってよ。」
曲がり角のところで、スミレと教祖のチカはベールを覗き見るように眺めている。紅茶を飲みながら、何時ものようにPCの前でオンラインゲームをしていれば問題ない。しかし、今は紅茶を片手に飲みつつ、部屋の外にある窓の外をずっと眺めているのだった。そう、数十分前には―――――
「ああ、3年間もゲームをほったらかしにしてしまいましたわ!!四女神オンラインも、ギルドの方々にも事情は分かってもらえているとは言え、報告しなくてはいけませんわ!!」
…とまぁ、いつも通りで安心したのも束の間。今は何処か上の空という感じである。二人がこのような状況に陥るまでの理由は分からないが、何時もと違う雰囲気に戸惑いもある。
「やっぱり、あの獨斗永守の仕出かした儀式が原因ね…。お姉さまを悩ませるなんて、死んでも許せないわ…!」
「でも、あんな報告書を見られた後じゃ…。」
「そ・れ・で・も・よ!わたくしだって、複雑な心境な上、5bp.だって、報告を聞いたら驚いてたのよ。万死に値しますわ!」
幾ら、最終的に放っておけばゲイムギョウ界を脅かす最悪な存在になろうとも、それが身内に近い存在で在れば、話は変わってしまう。
「(まさか…わたくしとしたことが、普段問題ないゲームですら凡ミスをするなんて…。獨斗永守という存在は、それだけ周りに影響を及ぼす程に活躍してしまわれたという事ですのね。永守さん…最後の最後で、途轍もない置き土産を残してしまわれましたわね。最も、一番の心配事が的中しなければいいのですけれど…。)」
ベールは紅茶を飲みつつ、ある事が的中しないことを願っている。獨斗永守を間近で見てきた存在の事を心配しながら…。
―――――――――
【プラネテューヌ:教会】
プラネテューヌの会議室で、明日に備えての会議のような事が行われていた。作戦としては、映像写真を見る限り、ギョウカイ墓場のモンスターはエンデによって力を吸収されているものの、その影響かより凶暴になっているのが確認されている。ジン率いる有志による私兵達が、極力女神が戦闘によって消耗しないよう、戦闘は私兵が率いる。また、輸送中にも何かしらの攻撃に備える為、此方も戦闘機等で支援をするとの事。中には、元犯罪組織所属でハーミットこと獨斗永守の下にいた者たちが名乗りを上げている。これ自体は、獨斗永守が彼らに与えた最後の任務だと言う。どちらにせよ、彼らも今は女神を支援するという想いを持っている。そして、各国からは、パワーアーマーやパワードスーツも導入するという。ちなみに、有志の中には、MAGES.やブロッコリーだけでなく、サイバーコネクトツー、鉄拳ちゃん、ファルコムといった顔触れも揃っている。
「…これが、最後の戦いになると思います。守護女神の活躍もそうですが、皆さんの活躍によって、戦況が左右されることもあります。ですが、私達の願いは、生きて帰ってくる事。そして、永守さんの最後の願い、この世界を…ゲイムギョウ界に平和を…。その為にもどうか、皆さんのご協力をお願いします。」
イストワールのその願いに、全員が頷く。この戦いに終止符を打つ為にも、一致団結し平和を手にいれる為に立ち上がるのだった。
そんな会議の中、アイエフは心なしか苦悶な表情をしている。その表情の変化に気付いたコンパが問いかける。
「アイちゃん、どうしたですか?具合でも悪いですか?」
「ああ、大丈夫よ。考え事をしてただけ…。」
「考え事、ですか?…もしかして、ねぷねぷの事です?」
「…まぁ、大方ね。会議になる前までちょっと話してたのよ。いつも通りゲームしてたけど。」
「あはは、ねぷねぷらしいですね。」
「その、いつも通りに違和感があるのよ。なんか、無心…と言うよりは、上の空というべきか…。」
作戦は完璧だと、その場の全員が思っている。だが、主役である守護女神の事がどうも気がかりであるというのは、会議に参加している全員が思っているのだった。
――――――――
そして、明日に備える為全員が就寝する。いつも通りだった生活のように、直ぐ近くにネプテューヌがいる。ネプギアは“また一緒に寝れる”という気持ちと、いよいよ最終決戦という気持ちが混同している。
「ねぇ、ネプギア。わたし達って、守れてるのかな。」
「…え?」
電気を消して、いつも通り一緒に寝ようとベッドに入った時、ネプテューヌが急にそんな事を言い、その問いに対して困ってしまう。何に対して守れているのか…。
―――――ゲイムギョウ界なのか
―――――友達、大切な仲間か
「わたしね、散々言われてきたんだよね。“上に立つ者は、その下にいる人達の家族や命を背負っている”って…。」
「それって、永守さんが言ってた?」
「うん。“俺の事よりもそっちだろ”とかね。それなのに、えい君は何時も無茶する…。こっちが心配になっちゃうよ。」
最初現れた時は、凄いのが来たと思った。そして、一緒にいるうちに彼の潜在能力は凄いとも感じ取った。それこそ、トゥルーネ洞窟でのノワールへの手助け。ルウィーの誘拐事件のブランの手助け。リーンボックスのCD事件や、ズーネ地区でネプテューヌ達が捕まった時の救出劇。その行動力には、士気高揚とも言えるもの感じていた。そんなのを間近で見てきたからこそ、一番気に掛けられていたのも含め、特別な感情も二人にはある。
「この戦い…勝っても…喜べるか…自信ないよ…。」
「お姉…ちゃん…。」
「………。ごめん、胸、借りるね…。」
ネプテューヌは、静かに泣いてしまう。それにつられるように、ネプギアも涙を流してしまう。最終決戦前…大切な人を手に掛けた…その重荷が圧し掛かるのだった。