超次元ゲイムネプテューヌ~闇夜の円舞曲~   作:KeyMa

45 / 83
Scene41 消失する意思~Lost Memory~

 

「流石だ…いや、本来であれば、これくらい出来て当然なのだろう。なぁ、女神候補生?」

 

キラーマシンのコアがある向こう側から、ネプギアには聞き覚えのある声が聞こえる。その人物はキラーマシンのコアを拾い上げる。そして、その人物はネプギア達を見定めるように見つめる。

 

「ッ…!!」

「誰、あのオバサン?」

「…なんか、怖い…。」

 

全員がその人物を見て、ただ者ではないと察する。ネプギアは恐怖に近い物を感じている。だが、驚いているのはネプギアだけではなかった。

 

「マジック・ザ・ハート…何故テメェがこんなところに居やがる…!」

「ほう…お前が、奴が言っていた“ジン”という名の男か…。」

「はん…犯罪組織の幹部に知られてるなんて、光栄だわ。」

「幹部…!!」

 

アイエフが、何故ジンが会ったこともない上に幹部の情報が殆どないにも関わらず、その名を知っている事に疑問を感じつつも、幹部クラスが目の前にいる事で問いただす。

 

「幹部ってことは…アンタがネプ子…女神様を…それに、永守をあんな風にした張本人…!」

「成る程、奴の言う通り既に正体はバレていたのか。その通り、私が女神を倒し、その永守という男も倒した…。」

「やっぱり…!」

「だが、そんな事を知ってどうする。知って何かが起こる訳でもあるまい。」

「く…。」

 

現状、実力差は明らかだと感じているアイエフも、成す術無しと言った表情をしている。

 

「…でだ、なんでテメェがこんなところにいる。」

「何、今はお前達と戦う気など無い。これの回収と、ジンと言う男を見に来ただけだ。」

「…何…?」

 

だが、マジックは直ぐにネプギア達に背を向け、立ち去ろうとする。

 

「待ちやがれ…!!」

『ジン(さん)…!』

 

ネプギア達の制止を無視し、ジンはマジックに向けて鞭を振るう。だが、その一振りは当たる事無く空を切る。

 

「いねぇ…!!」

「そう急かすな。何れお前達と戦う時が来る。精々、その時までもっと力を付けてくる事だ…私を倒したければな…。」

 

マジックは既に上の方におり、そして姿を暗ましてしまう。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

【ルウィー:教会】

 

あの後、ルウィーのゲイムキャラがキラーマシンの封印を問題なく施す。只、封印を行っている最中に、ゲイムキャラが2つに分かれる事が発生する。ガスト曰く‘調合仕立てで、不安定な状態’が原因らしい。とはいえ、新たにルウィーのゲイムキャラの力を手に入れる事が出来、キラーマシンの封印も出来たという一石二鳥の状態だ。戻って来た後は、アイエフにマジックの事を知っていたことを問われたが、説明するのも難しく‘獨斗と会えば分かる’と告げ、その場を後にするしか方法がなかった…。

 

でだ、余りにも色々な事がありすぎた為、ネプギアがイストワール様に報告後、全員に休息の指示が出る。とはいえ、翌日にはリーンボックスに向かって、教祖のチカさん直々のクエストをするという事になった。ガストとブロッコリーは旅には着いてこない代わりに、ガストからは購入してすぐ自分の商品が届くという端末を、ブロッコリーは独自に情報を入手する為に出回りする事となった。また、ロムとラムは世界中の迷宮の事もあり、暫くはルウィーに残る事となる。まぁ…今ん所、特に問題がある訳でもなく1日はゆっくりできるだろうと思った。

 

「んだよ…休憩しようと思った時に…。」

 

ルウィー教会の貸し出し部屋でひと眠りしようと思った時に、5pb.の歌を着信に設定してある俺の携帯の着信が鳴り響く。「日本一からか?」と思ったが、着信相手は、同じ転生者であり、リーンボックスの新しい女神候補生として活動している“スミレ”からだった。俺はズーネ地区の戦い後、彼女から色々とお互いの事を話し合うようになっていた。同じ転生者だからなのか分からねぇけど…。そんな事もあり、獨斗よりは会っている。しかし、向こうから連絡を掛けてくるのは珍しい。携帯の通話ボタンを押し電話する事にした。

 

「どうした、そっちから掛けて来るとは珍しいじゃねぇか。」

 

…?通話は繋がっているし、向こうの物音は聞こえるが何も言ってこねぇ。しかし、呼吸音は聞こえるから繋がっているっちゃ繋がっているようだ。訳も分からず「ん?」と俺は言ってしまう。まぁ直ぐに深呼吸する音が聞こえたから、スミレから何を言ってくるか待ってみる事にしよう。

 

≪お願い…助けて…。≫

「…は?」

 

声が聞こえたかと思ったら、第一声が「助けて」と…漫画みたいな展開だとは思うが、行き成り言われたら「何言ってんだ」になってしまう。

 

「ちょい待ち…何があったんだ。」

≪うん…実は…。≫

 

疲れている体に鞭を打つかのよう、頭を切り替え、リーンボックスで何が起こっているかを聞き出すことにする。大方、リーンボックスに向かったリンダが、何か仕出かしているのだろうとは思う。そして、俺は理由を聞いて居ても立って居られないような感情が沸き上がる。気が付けば、俺はルウィーの教会を後にし、リーンボックス行きの飛空艇に乗っていた…やっべ、連絡しときゃよかったなと思ったが時既に遅ぇよな…。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

いーすんさんから暫く休息を取るように言われて、私達はルウィーの教会を借りて一日を過ごす予定です。翌日には、リーンボックスに向かって教祖であるチカさんのクエストを受ける事になってます。それで、日が暮れるあたりから、明日に向けてどうするか皆さんと相談する事になりました。アイエフさんがジンさんを呼びに行って、私達は話せる場所で待機しています。…スミレちゃん、元気にしてるかな…?

 

「あいちゃん、戻ってこないですね?」

 

確かに、呼びに行くのにちょっと長い感じがしましたが、暫く待っているとアイエフさんが慌ててこっちに来ました。

 

「ねぇ、そっちにジンは来てない!?」

「え、来てませんが…?」

「ん~?部屋に居なかったの?」

「じ、ジンさんが、どうしたです?」

 

どういう訳か、アイエフさんが怒っているのか慌てているのか、その両方が混ざっている感じの顔をして、私達もどう返答すればいいのか…。そうして、アイエフさんの口から驚くべき返答が返ってきました。

 

「あのバカ、何処にもいないのよ!部屋中探しても、空き部屋を探しても、職員に聞いても分からないって…!」

『ええええええ!!』

「…兎に角、連絡してみるわ。」

 

アイエフさんは、私達の反応を見て状況を把握すると、Nギアを取り出してジンさんに通話を試みるそうです。ジンさんは、通話してくるのが分かっていたのか、直ぐに通話に出てきたようです。私達にも聞こえるようにスピーカーモードにしてくれました。

 

「ちょっとアンタ、何勝手に出てるのよ!一体何処へ向かってるの!!」

≪す、スマン…昼間にスミレから連絡があってな…。≫

「それじゃあアンタ…一人でリーンボックスに向かってるっていうの!?」

≪ああ…。そんなことより、ニュースTVを見てくれねぇか…。≫

 

なんだか、ジンさんが深刻そうな声でTVを見るようにと言い、私はNギアでニュース番組を起動しました。

 

〔…ーンボックスが数日前から突如、犯罪神崇拝の規制が解除されました。教会に取材を求めても、取材に応じる事がありません。〕

 

そのニュースを見て、私達は驚愕しました。

 

「な、何よこれ…。」

≪俺も今知ったばかりだ。兎に角、情報を集めなければな…。≫

「ルウィーの国際展示場の件もあるんだから、また一人で勝手に無茶するんじゃないわよ。」

≪分かってる。無茶しねぇ範囲で捜索s―――――≫

 

 

 

 

 

【ドゴーーーーーンッ】

 

 

 

 

 

「…爆発?ジン、今の音は何!?」

 

突然、アイエフさんのNギアのスピーカーから轟音が鳴り響き、ジンさんに問いかけるも、通話が切れてしまったみたいです。

 

「一体、何が起こったんでしょうか…?」

「…兎に角、私達も休憩してる場合じゃないのは確かね。」

 

そうして、私達は急遽リーンボックスへ向かう事になりました。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

【リーンボックス】

 

あのズーネ地区の戦いから、僕を受け入れてくれたベール姉さんや、チカ姉さん、特訓に協力してくれた特命課のケイブさんに恩返しをする為にも、僕はこの国の為に貢献をしている。チカ姉さんは、最初は険悪だった…なんというか、職員というよりも他人みたいな…ベール姉さんと同じ女神化の能力を持っているからか嫉妬みたいなのもあったのかな。でも、お互いに話していく内に、チカ姉さんは、ベール姉さんが本当に大切な人だなと分かったし、チカ姉さんも僕の事を必死に理解しようとしてくれた。

 

確かに、この女神化という力は、皆を幸せにするには十分すぎるとは思う。代償として、僕は‘普通の生活’というのが犠牲となってしまった。それが、この世界でも孤立してしまった理由なのだろうとも思えた。だけど、この力があったからこそ、ベール姉さんや、チカ姉さん、獨斗さん、ジンさん…色々な人と出会う事が出来た。特に、ジンさんは同じ形でここゲイムギョウ界に来て、永守さんと同じく僕を女神としてでなく、一人の人として接してくれたのも大きい。永守さんが行方不明になってからも、良く日本一さんと来てくれて、色々とお世話になった。だからこそ、今度は僕が皆の為に、ベール姉さんを助けると言う使命で、今はケイブさんが所属しているリーンボックス特命課の仕事をしている。

 

「ああ、お疲れ様です!ケイブさん、スミレ様。」

「状況はどうなってますか?」

「現在確認中であります。恐らく、エンジンルームの故障による爆発かと…。今の所重傷者は見当たりませんが、エンジンルームに近い所はまだ捜索中であります。」

「他に問題は?」

「今現在、他の飛空艇も調べているであります。エンジニアの報告によれば、殆どの飛空艇のエンジンにトラブルが確認されているであります。」

「…スミレ、私はあの中を捜索するわ。貴方は情報収集をお願い。」

「分かりました。」

 

リーンボックスに到着したばかりの一隻の飛空艇が、エンジンルームから爆発が起きたという報告を受け、僕とケイブさんが現場に直行した。チカ姉さんの様子が可笑しくなってから、こんな状況が続いている。そんな状況だからか、僕はジンさんに助けを求めて連絡を入れた。そして、今日中には着く予定とは言っていたけど、嫌な予感がする。大体夕方ぐらいには着くとは言っていたけど、もしかしたら、その爆発が起きた飛空艇に乗っていたのではないか…と思ってしまう。そうあって欲しくない一心で、周りの人から情報を聞き出してく。話を聞く限りでは、到着してから突如爆発したという事と、整備不良とは思えないという事。やっぱり、これも犯罪組織の仕業なのだろうか?そんな時、通信機から連絡が入ってくる。

 

≪爆発したエンジンルーム付近で、人を発見しました!外傷は見当たりませんが気絶しているようです。現在、救護搬送作業に当たっています。≫

≪外見は?≫

≪男性で、170cm程度、髪は茶髪…見た目は筋肉モリモリマッチョマン、カウボーイのような鞭持っています。≫

 

その連絡から来た言葉を聞いて、目を見開いてしまう。詳細に当たる人物に心当たりがあるからだ。僕は居ても立って居られない為に、現場へ直行する。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

【リーンボックス:教会】

 

飛空艇の事故から、怪我人として発見した“ジン”を特命課の医務室へ、ケイブさんと協力して運んだ。既に外は日が暮れてしまっている…。ネプギアちゃんに、ジンさんの事を含め連絡をしたが、今回の飛空艇事故の為、全飛空艇便が停止して空から此方に来ることが出来なくなったと聞いた。此方からも、飛空艇が再発進出来るようになるのは未定だと報告する。そんな中別案で、ラステイションの港からリーンボックス行きの便を出すと言う。ただ、部品が破損している為に、代わりに集める事となり明日着くと言う。その船の手配をしたのが、ラステイションのユニちゃんだと言う。ただ、本人は既に教会を後にしており、現在何処に行っているのかは分からないとのこと。そんな時、医務室の出入り口が開く。

 

「邪魔するわよ。」

「…ユニちゃん?」

 

なんと、扉を開けて入って来たのはラステイションのユニちゃんだった。それと、隣にライダースーツのようなのを来た女の子が立って居る。医務室のベットに寝ているジンさんを見ると、目を見開いてこっちに寄ってくる。

 

「ちょっと、女神様!ジンに何があったんですか!!」

「お…おぉ、おちつい…!」

 

僕の肩を掴んでその子は思いっきり揺さぶってくる。ぅぅ、き、気持ち悪くなってき…。

 

「その辺で止めときなさい。スミレが大変な事になってるわよ…。」

「まずは手を放して、深呼吸して落ち着きなさい。」

 

ユニちゃんとケイブさんの制止を聞いて、その子は深呼吸をして“御免なさい”と謝りつつ、一緒に冒険をしてた仲間だと聞く。というと、この人がジンさんが言っていた正義感での師匠に当たる人…。

 

「そ、そんな事より、どうしてユニちゃんがここに?」

「アタシは昨日からこっちに来ていたわ。…か、勘違いしないでよね!アタシはただラステイションのシェアを、ここから少しでも取れればと…。」

 

何時ものように理由を隠すように誤魔化しているけど、こっちにユニちゃんが来ている事は少なからず、リーンボックスとしても有難いと思う。

 

「う…。」

「どうやら、お目覚めのようね。」

 

ケイブさんがそう言い、ベットの方を見るとジンさんが目覚めたらしく、上体を起こそうとする。一応ケイブさんが、“私に任せて”みたいな合図をし、自然と僕達はケイブさんに任せる事になる。ケイブさんはジンさんと面識があるし、恐らく大丈夫だろうとは思う。

 

「ああ、無理はしなくていいわよ。…気分はどう?」

「気分?…ツツ…偉く頭を強く打った感があるし、良くはない。まるでウィスキーにニトロを入れて飲んだみてぇだ…。…ところで、ここは何処だ…?」

「ここは貴方が良く知っているリーンボックスよ。最も、ここは特命課の医務室で、貴方も中々入れる場所ではないから、混乱してしまうわね。」

「…リーン…ボックス…。」

 

…何か様子が可笑しい。ジンさんはクエストの関係で、何度か特命課本部に足を踏み入れてはいる…にも関わらず、特命課どころかリーンボックスという言葉を聞いて苦悶の表情をしている。

 

「ちょっと、ジン。本気で言ってるの…?アタシの事分かる?」

 

不安になった日本一さんが、ジンさんに寄り質問する。しかし、次の言葉にここに居る僕達全員が驚愕してしまうのだった。

 

 

 

 

 

「…いや…分からねぇ…。俺が、誰なのかも…。」

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。